お月見のはじまり

食べものABC #3

2020.09.30

食べものABC

意外と知らない身近な食べものの語源やルーツを、食トレンド研究家の渥美まいこさんにわかりやすく紐解いていただく「食べものABC」。サタケシュンスケさんのイラストとともにお楽しみください。第三回のテーマは、「お月見」です。


「子どもが生まれてから起きた変化」の1つに、「年中行事との距離感」というのがあります。節分や七夕など独身時代だったら見過ごしていたトピックも、子どもがいると大切なイベント。歌を口ずさんだり絵本を読んだり…そんな日々を過ごしていると、「ああ季節イベントは平坦と思われた日々にアクセントをくれるものだな」と思ったりします。

これまで教わってこなかった年中行事の由来や行事食、その歴史について興味がわいて少しずつ理解を深めています。今回は、お月見とお月見の行事食についてご紹介します。

月を愛でて、秋の収穫を祈るお月見

秋冬のイベントと言えば!ハロウィンやクリスマス…ですよね。陰キャラのお月見ですが、古来から続く日本の伝統文化。ぜひ少しだけでも知っていただけたら嬉しいです。
お月見とは、「一年で最も美しく見える季節に月を鑑賞する」ことと「神様への豊作祈願、収穫の感謝を表すことが目的とされる行事で、旧暦8月15日を指す「中秋の名月/十五夜/芋名月(いもめいげつ)」は聞いたことがあるのではないでしょうか。今年だと10月1日に当たります。

今後の「中秋の名月」スケジュール
2020年:10/1(木)
2021年:9/21(火)
2022年:9/10(土)
2023年:9/29(金)
2024年:9/17(火)

中国から伝来した行事、江戸後期に変化

お月見は奈良時代・平安時代に伝わり貴族の間で流行りました。その頃は月を鑑賞し、お酒や和歌を楽しむ風習として愛されていたようです。そこから時を経て、江戸時代には「収穫に感謝する」という行事の目的も付与されて大衆にひろまり、現在のようなお月見文化になったようです。

■栗名月
お月見には「十三夜」という風習もあります。
これは十五夜の一ヶ月後にあたる旧暦の9月13日を「十三夜」と呼ぶもので、日本だけの風習だそうです。十五夜と十三夜、どちらか一方だけを観ることを「片月見」と言い、これは縁起が悪いとされています。また、十三夜は旬の栗を供えることから「栗名月(くりめいげつ)」とも呼ばれています。

■月見団子
月見団子は満月に見立てて、丸く作ります。伝統的なお供え方法は、月がよく見える場所に三宝(さんぽう)などの台を置いて、15個(地域によっては13個)を高く盛ります。
昔は里芋やさつまいもやススキを供えて名月を祭っていました。

なぜ団子なのか?というのは諸説ありますが、お月見のはじまりである中国では、月餅を供える文化があって、日本でも江戸時代に中国の月餅にならって団子を供えるようになったと言われています。

衣かつぎ
小さいサイズの里芋を皮のまま茹でて蒸し、仕上げに皮を少しめくって食べる料理のことです。この名前の由来は平安時代の貴族女性が外出するときに顔のあたりまですっぽりと衣をかぶり顔を隠していた「衣かつぎ」と似ているから名付けられたそうです。

衣かつぎ

稲穂に見立てたススキ
月の満ち欠けなどを用いて暦を計算した旧暦では、人々の生活と月は密接につながっていました。特に農作業に従事する人々は欠けたところのない満月を豊穣の象徴としていて、秋の収穫の感謝を込めて、芋や豆などの収穫物を月に供えました。しかし、稲穂はまだ穂が実る前の時期であることから、穂の出たススキを稲穂に見立てて飾ったと言われています。

また、お月見のススキには悪霊や災いなどから収穫物を守り、翌年の豊作を願う意味が込められています。地域によってはお月見に飾ったすすきは捨てず、庭や水田に立てたり、軒先に吊ったりして、災いから田や家を守る風習が今でも残っています。

やってみませんか?お月見どろぼう

あまり知られていない風習として「お月見どろぼう」というものがあります。
これはハロウィンの「トリックオアトリート!」とお菓子をもらうのと同じようなイベントで、地域の家々にあるお供えもの(現代ではお菓子)を子どもが自由に取って食べてよいという風習です。

子どもたちは月の使者であり、月見団子を盗まれると豊作になると考えられていたことから、十五夜の日だけは子どもたちがお供えものなどを盗んでも許されるとされていました。

この「お月見どろぼう」という風習、現代版にアップデートしてお友達同士で一緒にやってみてはどうでしょう?


箱や缶の中に個装のお菓子をたくさん詰め込んで、子どもたちには小さな紙袋をもってもらって(お月見のお絵かきとかすると喜ばれそうですね)、「みんなでお月見どろぼうしてみよう!」のかけ声で、お菓子を詰め込んでいく…。子どもたちのコスチュームに特別指定はありませんが、「月の使者」ということだから満月のお面のようなものを用意してもかわいいかもしれませんね。

お菓子をもらったらみんなで月を見上げ、秋の豊作を願うイベントなんだよ、と伝えてあげるといいと思います。

お月見どろぼう

イベントの由来には、感謝や願いが溢れている

暮らしに根付いた季節イベント(行事)の原点を辿ると、家族の健康祈願や作物への感謝の思いから生まれたものが多く、私たちの先祖たちが何を求め、何を願ったのかが少しだけわかる気がしました。

子どもたちが興味をもってくれたタイミングで、季節ごとの行事食を味わい、その背景も一緒に教えてあげたいですね。

渥美まいこ

食トレンド研究家/1986年生まれ、1児の母。
レシピサイトに勤務する傍ら、食トレンドを「歴史」「科学」「消費行動」の視点から考察したnoteが人気。最近は、小難しくなく食文化の基本を伝える活動を進めている。
日本経済新聞、読売新聞、他複数メディアで執筆中。
好きなファミレスはロイヤルホスト、好きな料理はベトナム料理。

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イラスト:サタケシュンスケ

<参考文献>
・すとうあさえ(監修)『子どもに伝える行事の由来と行事食』メイト社(2016)