料理家・冷水希三子の、発酵食品に囲まれた暮らし

コラム・アラカルト

LIFE STYLE
2025.05.12

私たちの暮らしの周りに、自然とあふれる発酵食品。料理家の冷水希三子さんは、手作りをしながら発酵食品を楽しんでいるといいます。冷水さんの生活に溶け込むたくさんの発酵食品を紹介していただきました。


自分が大人になり、料理の仕事をするようになってからは、いつも傍らに食材やら調味料やらがあります。

そんな生活を続けるうちに、いつしか自分で簡単に作れる調味料は、自分で作りたいと思うようになりました。特に「発酵」というものは不思議なもので、時間と環境だけで素材をおいしくしてくれます。

良い食材を選び、手を少し添えれば、あとはひたすら時間に任せるだけ!そしておいしい発酵食品ができたら、後はおいしく料理に使うだけです。自然が作ってくれた微生物を体に取り入れる。「体のために」と無理に意識しなくても、おいしく食べて体の中から元気になれるなんて、こんなにうれしいことはありません。

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自家製の「塩水発酵野菜」

家中を見渡すと目に入る発酵食品。ぬか床は、25年間毎日混ぜながら「育てて」います。

ぬか漬けはそのまま食べたりもしますが、わざと古漬けにして、刻んで煮込みの旨みと塩味に使うと、コクが出ておいしい。また、ぬか漬けじゃなく塩で発酵させた野菜も同じ使い方ができて、料理をおいしく支えてくれてます。発酵した塩味は、角が取れて丸い味わいで、たくさん食べても口も体も疲れません。

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水キムチの汁麺

味噌は、以前は友達が営む味噌屋さんから買っていましたが、作るのも楽しいです。ゆっくり育っていくのを見守っていると、食べる時に愛着がわきます。梅の時期には、その味噌を使って梅味噌を作ったり。

そう、梅といえば、醤油に漬けこんで梅醤油にしたり、酢に漬けて梅酢にしたりもします。梅酢を使って酢飯を作ると、爽やかな風味が付くんです。梅干し自体は発酵食品ではありませんが、こうして梅醤油や梅酢にすると簡単に発酵食品が作れます。

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自家製のキムチ

最近は年に一度、友達数人で集まってキムチを漬けています。時間とともに味の変化があって、それぞれのタイミングに合う料理があり楽しいです。浅漬けで爽やかな時はポッサムにしたり、時間が経って少し酸味が出てきたら納豆と合わせてチゲ鍋にするのが大好きです。

さすがに納豆は自分で作っていませんが、わらで発酵させた"らくだ坂納豆工房"の納豆は今一番のお気に入りです。この納豆も発酵過程で味わいが変わるので、いつも賞味期限ぎりぎりまで待って食べています。

レモンの時期には、レモンを塩で漬けこんで塩レモンを。発酵することでフレッシュなレモンとは違う風味が加わり、お肉の下味などに使うと、風味や塩味が付きながら柔らかくもなります。

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ヨーグルトソースを使ったフリット

また、ヨーグルトは料理にもよく使います。煮込みにハーブなどを混ぜたヨーグルトソースを添えたり、ヨーグルトでお肉をマリネしてカレーを作ったり。

甘酒は料理の砂糖代わりにしたら優しい甘さで良い塩梅だし、おやつのパンナコッタに使ったりしてます。おやつでは、クレープにも塩麹を入れたキャラメルソースをかけたり!発酵食品は、毎日のごはんに少し調味料として使うと、ぐんと料理の味わいの幅が広がる気がしています。

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こんなふうに、日常のあちこちで発酵食品を楽しんでいます。日本に生まれ育つと、あまり意識しなくても食卓には発酵食品が毎日のようにあがっていて、知らず知らずに口にしています。食材やごはんを作ってくれている人たちには、感謝しかないです。

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