回転寿司に行ったら赤ちゃんとの食事ハードルが下がった話

コラム・アラカルト

LIFE STYLE
2021.05.19

子育てをはじめて1年3ヶ月。
人生でいちばん時の流れを早く感じた1年だった。この4月から保育園に通い始めた息子は、家以外に居場所を持ち、すっかり社会の一員になったようだ。

そんな我が子の変化とともに、私自身、子育てを通して生活における視点や、見える景色がガラッと変わった。

それまで外食のひとつの選択肢でしかなかった「回転寿司」がまさか、ナーバスになっていた子どもとの食事ハードルを下げてくれるとは思いもしていなかった。

離乳食は手づくりが大事だと思っていた

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はま寿司、スシロー、くら寿司、かっぱ寿司、きときと寿し。
自宅周辺には、少し車で走ると回転寿司のチェーン店がいくつもある。そのほとんどに足を運んだが、中でもベビーフードを販売しているかっぱ寿司にはとてもお世話になっていた。

今でこそ、子どもとともに外食に足を運ぶ気持ちは軽やかになったが、息子が生まれて間もない頃はなるべく手間がかからないようなものを、けれどできるだけおいしい手づくりのものを与えたいなと漠然と考えていた。

外食やできあいのもの=悪とまでは言わないまでも、今振り返ると「手抜き母さん」だと思われるのが嫌だったんだろう。

「ベビーフードはあんまり使わない方がいいよねぇ。やっぱり子どものごはんは手づくりがいいもんね」
という声を聞いたら「わかるー。短い期間だから頑張りたいよね」と同調していた。

息子が生後5ヶ月を過ぎた頃から、離乳食を与えはじめた。これまで母乳だけを口にしていた息子にとっても、与える親にとっても大きな変化だ。

離乳食初期はブレンダー(ハンドミキサーのような調理器具)を使って、野菜もお粥もどろどろにして与えていた。徐々に固形に近づけていき、メニューのバリエーション、食べる食材も増やしていく。

離乳食開始とほぼ同時期に、息子にいくつか食物アレルギーがあることが分かった。

「子どもが口にするものは、慎重に考えていかなきゃなあ」と思いつつ、共働きの生活で三食オール手づくりは大変だ。大人の食べ物だけでも、洗い物が少なくて済むように丼プラス汁物のシンプルなメニューにしたり、できあいのものをミックスしたりと負担を減らす工夫をしていた。

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基本的に私が台所に立つことが多いけれど、当時在宅勤務をしていた夫も週1、2回は夕飯をつくってくれたので精神的にとても助かった。

とはいえ、夕方は空腹やら疲れによる眠気やらで、子どもの機嫌が悪くなりがちな時間帯。息子の相手をしながらの準備段階からあくせくする食事の時間は、憂鬱とまではいかないまでも少し面倒になっていった。

そして、私たち夫婦の食事を楽しむ時間はどんどん減っていった。

お昼に1回だけ与えていた離乳食も1ヶ月後には朝昼に増え、さらに1ヶ月後には三食食べるように。なくてはならなかった母乳も、離乳食が進むにつれて補助的なものになった。1日の大半を眠って過ごしていた生後間もない頃から考えると、20時に寝て7時に起き、午前と午後に1時間ずつ昼寝をする我が子は、だいぶ人間らしい生活をするようになった気がする。

膝の上や食事用のこども椅子にちょこんと座って口を開けていた息子も、7ヶ月、8ヶ月と月齢を経るにつれて椅子からはい出すように。そして、私たち大人の食事に興味を示し、手を伸ばすようになってきた。

手を伸ばすだけならまだしも、わんわんと泣き出しては「同じものを食べたい!」と言いたげな目で見られると、なんだか切ない気持ちになる。和室にちゃぶ台を置くスタイルで食事をしていた我が家も、子どもの成長につれ、立ち食いそばさながらのスタンディングスタイルに。片方が息子をあやしている間にもう片方が食事をすることも多く、もはや食事が作業になりつつあった。

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今回、この記事を書くにあたって食事の写真を探してみたが、保存されていた息子の写真3,200枚のうち、食事シーンを撮影していたのは数枚ほど。食事中は、記録する気力も残っていないんだよなあ……。

大人と同じものを食べる嬉しさ

家での食事には、いくつか工程がある。

  • 冷蔵庫の食材を確認する(思い出す)
  • メニューを考える
  • 調理をする
  • 食べる(食べさせる)
  • 洗い物をする

これらをすっ飛ばし、外食では「店を考える」「食べる」に集中すればいい。

息子が10ヶ月になる頃、その日はなんだか私も夫も疲れていて「夕飯は外食にしよう」ということになった。そこで選ばれたのが「回転寿司」だ。

これまでも何度か、息子を連れて外食に行ったことはあった。子ども向けメニューにベビーフードがあればそれを注文し、なければ持参したものをお店の人に確認して食べさせていた。

いつもと違う環境でごはんを食べることは、私達夫婦にとってもリフレッシュになる(息子がおとなしくしていられないなど、場合によってはストレスにもなるけど、今の所は楽しめている)。

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「あれ、もしかしたら納豆軍艦なら食べられるんじゃないかな?」

メニューを見ながら、私は思い出したように言う。

その時期の息子は7倍粥(米を7倍の水で炊いたもの)を主食としていた。軍艦の海苔の部分を取り、お湯でふやかせば息子も食べられるんじゃないか?そう考えたのだ。

タッチパネルで、納豆軍艦と子ども用の器を頼むと、すぐに新幹線に乗った納豆軍艦がやってきた。お店の人から器を受け取ると、海苔を剥がし、ネギをよけて器に入れる。卓上の蛇口からお湯を注ぎ、子ども用のスプーンでくずしてふやかせば、簡易的な納豆雑炊の完成!

動物の絵がついたスプーンでひとすくいし、息子の口元に持っていく。

一瞬「これ食べていいの?」という顔をしたが、すぐに口を開けてするっと飲み込み「もっとくれ」と視線で催促してくる。

「やった、これいけそうだよ!」と夫と顔を見合わせる。

なにより、親と同じものを食べていることに満足した表情がたまらない……!

この時、一気に子どもとの食事に対するハードルが下がったことを覚えている。

「なんだこの時間、めっちゃ楽しいじゃん。そうか、外食も活用していいんだ!」

そう感じ始めてから我が家では、積極的に外食を取り入れるようになった。

家族みんなが笑顔でいられることが大事

子どもを連れての外食で、気づいたことは多い。

まず、おむつの交換台は、チェーン店ならどこの店舗のトイレにもほとんど備え付けられている。そのことに感動した。特に月齢の低いときは、おむつ替えの頻度が多いこともあり、外出の度におむつを替えられる場所をチェックしていた。「ごはんを食べるタイミングで替えればいい」と分かれば、それだけで外出時の安心材料になる。

また、最近はアレルギー対応のメニューが豊富な店舗も増えている。この間は低アレルゲンのカレーライスがあったので頼んでみたのだが、通常のカレーにひけをとらないおいしさで、息子も喜んでパクパク食べていた。

そして、やはり回転寿司の手軽さと提供スピードの速さは、子育て世代にはありがたい。ラーメンや洋食、つまみ、デザートなど、もはや回転寿司屋を超えたメニュー展開を毎度楽しんでさえいる。

回転寿司に限らず、ファミレスやファストフード店を活用することも多い。店内で食べずに、テイクアウトという手だってある。食事の選択肢が増えるのはいいことだ。

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現在1歳3ヶ月になった息子は、食べられるものが徐々に増えてきた。スプーンで与えていた納豆軍艦の即席お粥は、納豆巻きに取って代わり、大人と同じメニューを取り分けてあげることも多い。

子どもの成長とともに私にも少しずつ余裕が出てきて、食事の時間を息子と分かち合える嬉しさを感じるようになった。

こうして、我が家にとって外食は“なくてはならない存在”になった。家族みんながごきげんでいられる時間は意識的につくればいい。ごきげんでいられるなら、なんだっていいのだ。

「よし、今日はいっちょ腕をふるっちゃおうかな!」とがんばりたくなる日もあるし、台所に立ちたくない日もある。これからもHPがゼロの日は、肩の力をだるーんと抜いて、外食に頼っていきたい。家族みんなが笑っている時間を増やすことが最優先なのだから。

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