初めてお弁当作りに挑戦してわかった、母の心配りとごはんの楽しさ

コラム・アラカルト

2021.05.26

お弁当の思い出

私は「お弁当らしいお弁当」を作ったことがない(残りものを雑に詰めただけならある)。子どもはいないし、私も夫も在宅ワークでそもそも機会がなかったのだ。

お弁当の思い出といえば、幼稚園に入る少し前、少食だった私のために母が「お弁当の練習」をさせてくれた。母が作ってくれたお弁当を、お昼に家で食べるのだ。

お弁当箱を包むハンカチをほどいて、ゴムバンドをはずし、そろそろとふたを開ける。たぶん、ひとりでお弁当箱を開けたのはこのときが初めてだ。初めてのお弁当は、少しだけおねえさんになったようで誇らしかった。

練習の甲斐もあってか、幼稚園では毎日お弁当の時間が楽しみだった。食べることそのものよりも、うさぎのお弁当箱やキャラクターもののおしぼり入れ、お友達とのおかず交換、今日のおかずはなんだろうとワクワクする気持ちなど、お弁当周辺のものごとが大好きだった。

ある遠足の日、母は「今日はお弁当ぜんぶ食べるといいことがあるよ」と言った。なんだろう?気になって残さず食べると、お弁当箱の底に、ラップに包まれたメッセージカードが入っていた。たしか天使のイラストカードだ。私が残さず食べられるよう母が工夫してくれたことがわかり、嬉しいような気恥ずかしいような気持ちになった。

……と、お弁当にまつわる記憶はいろいろあるのに、どんなおかずが入っていたかは思い出せない。あんなに毎日食べておきながら申し訳ないと思う。

けれど、お弁当箱のふたを開けたときの「わぁ!」と心が浮き立つ感覚は覚えている。母が作るお弁当は、キャラ弁ではないものの、彩りがきれいで華やかだった。

母の料理は見栄えがいい。お弁当に限らず、普段の食卓でも彩りや盛りつけにこだわる。

あの天使のカード同様、子どもたちが食事の時間を楽しめるように工夫してくれたのだろう。

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時は流れ、私も大人になって料理をするようになった。

母と違い、私は料理の見栄えに気を使ったことがない。なんでも大皿にガバッと盛る。私も夫もなんでも食べるから、見栄えをよくする必要性を感じてこなかったのだ。「味がよくて栄養を摂れればなんだっていい」とすら思っている。

……なんだけど、インスタで子どものいる友人たちの手作りごはんを見ていると、私も「見て楽しい」ごはんを作ってみたくなった。

そうだ、お弁当を作ろう!

運動会や遠足の日の、お弁当箱を開けた瞬間のワクワク。子どもの頃は受け取るばかりだったあの気持ちを、今度は自分で作り出してみたい。そこで、行楽弁当を持って夫とピクニックへ行くことにした。

ほとんど初めてのお弁当作り、はたしてうまくいくのだろうか?

手探りでお弁当を作ってみる

そうと決まれば、まずはお弁当箱を用意しなければ。

ピクニックに行くなら、行楽用の大きなお弁当箱がいいだろう。よく行く雑貨屋さんで二段重ねのお弁当箱を見かけたことを思い出し、用事のついでに購入した。500円也。中に仕切りがあるから、おかずカップやバランを使わなくてもよさそう。

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次はメニュー決め。母のお弁当はなにが入ってたっけ?

母にLINEで尋ねると、

「ほとんど覚えてない。定番の卵焼きとウインナーと冷凍食品ばかりだったからなぁ」

と返ってきた。いや、覚えてない私が言うのもなんだけど、もっといろいろ入ってたよ。

そんな母がおすすめするお弁当のおかずは、

「豚肉の薄切りで野菜を巻いたやつ」
「ちくわにツナマヨ挟んだやつ」
「ウインナーに爪楊枝さしてホットケーキミックスの衣をつけて揚げたやつ」

とのこと。

えっ、そんなのお弁当に入ってたっけ?食べた記憶ないんだけど……。

ともあれ、きれいなお弁当を作るコツをネットで調べる。ポイントは以下の3つらしい。

  • 5色使う(赤、黄、緑、白、黒or茶)
  • 立体的に詰める
  • ブロッコリーやミニトマトで隙間を埋める

なるほど。たしかに、インスタで見るお弁当もそんな感じ。

それらを考慮してメニューを決めた。

  • 卵焼き
  • 野菜の肉巻き
  • ツナマヨちくわ
  • たこさんウインナー
  • ブロッコリーとミニトマト
  • おにぎり

どうだろう?いかんせんあのお弁当箱を使うのが初めてだから、量のイメージが摑めない。お弁当箱がスカスカにならないか心配だ。

ピクニック前日の夜、お弁当の仕込みをする。

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まずは、卵3個分の卵焼きを2つ作る。これは普段からよく作っているから簡単だ。卵を巻いていると無心になれるから好き。

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野菜の肉巻きも初めてではない。かいわれと細切りにんじんを豚バラスライスで巻き、焼いてから、醤油とみりんで煮からめた。

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次はツナマヨちくわ。ツナ缶のオイルを切り、マヨネーズで和え、縦に切れ目を入れたちくわに挟む。

しかし、どうにもツナマヨの水分が多い。お弁当にこんな汁気の多いものを入れていいの……?明日の朝、なんとかなってますように。

ピクニック当日の朝、いよいよお弁当を仕上げる。

まずはたこさんウインナー。実は、最初から切れ目の入った商品を買ってきていた。フライパンで焼くだけでたこさんになる優れものだ。

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見る見るうちにウインナーの端が反り返ってたこさんになった。以前、自分でたこさんウインナーを作ったときは足がボロボロになって夫に「化け物」と言われたが、さすが市販品は失敗がない。

ゆうべ作っておいた卵焼き、肉巻き、ツナマヨちくわを切る。懸念していたツナマヨの汁気は、ややマシになっていた。

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さて、これらをお弁当箱にどう配置しよう。

頭を悩ませながら、テトリスのように詰めていく。お弁当箱は大きいようで意外と量は入らず、おかずはそれぞれ少しずつ余った。

茹でておいたブロッコリーを無理やり隙間に挿したら、なんだか変だ。夫はゲラゲラ笑いながら「巨木じゃん」と言う。縦半分に切って挿したら、ちょうどよく収まった。こういうことも初めてだと加減がわからない。

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最後はおにぎり。鮭フレークを混ぜたごはんをラップで俵型にし、海苔を巻く。

お弁当箱の下段に詰めて、隙間をミニトマトとブロッコリーで埋めた。

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完成。

おお、すごくお弁当っぽいじゃないか!想像していたよりずっと「それっぽく」なっている。お弁当ビギナーとしては満点じゃないだろうか(採点甘い?)。

あとで知ったが、ミニトマトはヘタをつけたままお弁当に入れると雑菌が繁殖しやすいため、ヘタをとって洗ってから入れるのがいいらしい。初めてだと知らないことだらけだ。

お弁当作りにかかった時間は、前日1時間半+当日1時間半。撮影しながらゆっくり作業したとはいえ、合計3時間もかかっている。楽しかったが、正直かなり面倒でもあった。お弁当を作っているすべての人、偉大だなぁ。

お弁当を持ってピクニックへ

できたてのお弁当を持って、夫と公園へ。撮影係として友人にも来てもらった。

レジャーシートを敷き、保冷バッグからお弁当箱を取り出す。

ふたを開けると、友人が「おぉ~!」と感嘆の声を上げた。私も夫も家でさんざん見てきたが、それでも青空の下で見るとあらためて「おぉ~!」と思う。

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味は、どれもおいしかった。私はなにを食べてもだいたいおいしいと思うのだが、料理上手の友人も太鼓判を押してくれたから、きっと本当においしかったはず。

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ふと見上げると、太陽の光が新緑をきらめかせていて、この景色がお弁当をよりおいしくするんだろうなと思った。

今の私は少食ではなく、むしろ同世代の女性に比べてよく食べるほうだ。グルメでもお料理上手でもないけれど、ごはんは好き。誰かと一緒に食卓を囲む時間が大好き。

それはきっと、幼い頃に「ごはんは楽しい」と思うことができたからだろう。お弁当の練習や天使のカード、きれいな盛りつけによって。

母が工夫してくれたおかげで、私は今もごはんが楽しい。

※撮影は緊急事態宣言の前におこないました。

吉玉サキ

ライター・エッセイスト。10年間北アルプスの山小屋で働いたのち、2018年からフリーライターに。札幌市出身・都内在住でイラストレーターの夫とふたり暮らし。著書に『山小屋ガールの癒されない日々』(平凡社)『方向音痴って、なおるんですか?』(交通新聞社)がある。

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