身体と心を健やかに、野菜を育てる楽しさとお酒にあうシンプルレシピ

コラム・アラカルト

2021.09.13

毎晩、いかにおいしいごはんとお酒を楽しむかに全力を注いでいる。前職がソムリエだったこともあって「このワインはあの食材と合いそうだ」「このレシピならハイボールかなぁ」などと、料理とお酒の組み合わせを考えるのが私の趣味だ。

ある日、日課である散歩をしていると畑を耕すおじいさんが目に止まり、ふと「せっかくなら料理に使う野菜を自分で育ててみるか」と思いつく。仕事を変えて在宅ワークになってからというもの、身体を動かす習慣がない上に、飲酒量ばかり増える悪循環が続いていた。これを機に健康に気を遣ってみようではないか。

とはいえ、どうやって畑を借りればいいのかさっぱり分からなかったので、とりあえず市役所に電話をかけてみた。すると、近所にある市民農園の一区画にキャンセルが入り、空きが出ているのだと言う。しかも最後の一区画ときた。これはいいタイミングだと思い、二つ返事で申し込み、ホームセンターで鍬とスコップ、石灰、肥料、種などを買い込んだ。

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見よう見まねで土を耕し、種を蒔き、水やりをする毎日。新しい習慣に戸惑うかと思いきや、家から畑が近いこともあってかさほど苦にはならなかった。むしろ土や緑に触れたり汗をかくことによって、次第に身体と心が健やかになっていると感じたほどだ。

睡眠の質が向上し、疲れにくい身体に

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畑作業をすることで日光を浴びる習慣がつき、土寄せしたり雑草を抜いたり水をやったりといった作業が、思いのほか運動になる。そのおかげか、以前と比べてぐっすりと眠れるようになった。

新鮮な野菜を毎日食べられるようになると、どうせならおいしくいただきたいという思いから、野菜のことを調べるように。たとえば、普段スーパーではあまり見かけない間引きしたにんじん。その葉には、カロテンやビタミンEが豊富に含まれている。味噌汁に入れたり天ぷらにすると、その栄養素をふんだんに体内へ取り入れることができる。

どんな栄養があって、どう身体に作用するのかをふまえた調理法を実践することで、肌や胃の調子が改善され、疲れにくい身体になったと実感し、「身体は食べるもので作られている」と改めて気づかされた。

「おすそわけ」で感じる小さな幸せ

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多くの野菜が収穫できるようになると、近くに住んでいる両親や友人に野菜を配るようになった。おすそわけをした相手から「ありがとう!」「おいしかった!」と言われるようになり、なんともいえない充足感が得られた。

畑を始めた当初は「自分が食べられる分だけでいいか」と思っていたけれど、こんなにささいなことでも人と喜びを共有できるんだという発見がなによりの収穫だった。やっぱりおいしいものは一人ではなくみんなで分け合うのがいい。

ギブアンドテイクを意識したり、打算的に物事を考えてしまいがちな自分にとって、おすそわけによって得た感情は、特別なものだった。

シンプルなレシピで素材そのものを味わう

収穫したばかりの新鮮な野菜を使ったおつまみを食べると、採れたてはやっぱりおいしいと感じたので紹介したい。素材のうまみをダイレクトに味わえるよう、レシピはシンプルに。

ピーマンのまるごとグリル

1. ホットサンドメーカーに軽く油を引いてピーマンをはさんだら、弱火でまるごとじっくりグリルしていく。
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2. 焼き具合を見て、ひっくり返して反対側もグリルする。ホットサンドメーカーがない場合は、フライパンにふたをしてピーマンをタイミングよく返せばOK。
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3. 両面が焼き上がったら、皿にうつす。
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4. 仕上げに醤油をさっとかけて鰹節をふれば完成。

採れたてのピーマンは青々としていて香りもいい。これまでは中身のわたと種を当然のように取っていたけれど、まるごとグリルすればおいしくいただけると知った。むしろわたや種には血流を促進するピラジンやミネラル成分のひとつであるカリウムといった栄養素が詰まっている。今ではピーマンを収穫すると、毎度飽きずにこのメニューを食べている。

このレシピは、キンキンに冷えたビールに合うこと間違いなし。青々しいえぐみが消え、鰹節の風味が引き立つので、焼酎のソーダ割りも相性がよさそうだ。
まるごとおいしく味わうためには、弱火でじっくり焼き上げるのがポイント。強火にすると表面が焦げ付くので注意。

ルッコラとキウイ、カマンベールチーズのサラダ

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1. ルッコラ、キウイ、カマンベールチーズを食べやすいサイズにカットする。
2. オリーブオイルとレモン汁、岩塩を加えてさっくり和える。
3. 皿に盛って、仕上げに黒こしょうをふったら完成。

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ルッコラは、ごまのような独特の香りと苦味が特徴の葉物野菜。一見扱いづらい印象だが、採れたての食感は格別だ。ルッコラの苦みとキウイのさわやかな酸味、カマンベールチーズのまろやかなコクが相まって、まとまりのある味わいに。素材のおいしさをそのまま生かしたサラダには、酸味と苦みのバランスが取れた辛口の白ワインをペアリング。

柑橘類のアロマとフレッシュな果実味が感じられる飲み心地で、キウイとルッコラの旨みを上手に引き立ててくれる。クリームチーズやマスカルポーネのような、クセのないチーズでも相性◎。フルーツはいちじくや桃など、季節に応じて変えるのもおすすめ。

新鮮な野菜が教えてくれたこと

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野菜を育てることで陽の光を浴びたり、自然に触れたりする機会が増えた。そして、穫れた野菜をよりおいしく味わう大切さを改めて知った。

日常的に身体を動かしているか?
陽の光を浴びているか?
たまには自然に触れているか?
新鮮な野菜を意識的に食べているか?

そんなことを自問自答するきっかけになった。
忙しない毎日で食事がおざなりになってしまう時もあるけれど、新鮮な野菜をシンプルなレシピで楽しむだけで、身体も心も健やかになる。

畑作業や野菜栽培をしなくとも、日々の生活で少し意識するだけでもいい。

夏野菜が終わったら、次は秋冬に向けて畑の準備を始める。じゃがいもにしようか、大根にしようか......。どんな野菜を育ててどう調理しようかと思案を巡らすとともに、時折前述した自問自答を投げかけていきたい。

吉川大智(ヨシカワダイチ)

40カ国200都市の酒場を放浪したソムリエ。バーテンダーやワインバーマネージャーの経験を生かし、レシピ開発やお酒にまつわる記事を多くの媒体で執筆。ライターのほか、取材や編集も行う。

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