月刊住むひと vol.11 JR中央線 高円寺駅 徒歩9分 賃料7.8万円 〜内見、好きですか〜

2019/04/01 UPDATE

この連載はほぼ実在する(ほぼです)ひとつの物件を取り上げて、この部屋に住んでいるひとの人生はどんなだろう、と勝手に妄想していくものです。

北向ハナウタが描く「住むこと」についての漫画とエッセイ、第11話。

交通:JR中央線 高円寺駅 徒歩9分
賃料:7.8万円(管理費含む)
築年数:築23年
主要採光面:東
間取り:1K / 20.6㎡
- - -
その他:RC造、3階、オートロック

内見はだいたい2、3件が相場らしい

4月。世は新しい年号の発表にざわついてる頃かと思う。新生活のはじまるこの時期は目下引越しシーズンである。ひとが動くだけ部屋に空きが出る。選べる物件も豊富だがその分同じ部屋を狙うライバルも多い、引越し業者が価格をつり上げるのもこの時期だ。

引越しの際におよそ欠かせないイベント、それが「部屋の内見」である。

みんな、部屋の内見ってどれくらいするのだろうと思いTwitterでアンケートを取ってみた結果が以下の通り(単位は「件数」だろうか「軒数」だろうか、今回は「件」で通す)。




結果は過半数が2〜3件という具合。もちろんすぐお目当ての物件にたどり着けば1件目で打ち止めになるかもしれないしその逆も然り、回る件数は自分ひとりではなかなか決められないところだろうけど。

個人的にはもう少し、4件以上が多いのかと思っていた。筆者自身これまで引越しのたびにだいたい4〜5件は回っていたからだ。なにせ都内で内見をするとなると1日でだいたい3件くらいは一気に巡ることになる。2日回ればそれくらいの数にもなるのだ。

少しくらいお調子者の担当者が好きだ

苦手だ面倒だという方もいるけれど、個人的にはけっこう内見が好きだ。なかなか表立って空き家に入る機会もない、合法的に部屋をのぞき見できる最高のイベントである。

小回りのきく軽自動車で、不動産会社の担当者と一緒にグルグル街をつぶさに観察しながら物件を巡る。担当者は上の漫画にも出てくるような若干お調子者タイプのひとが良い。いいところは褒め、ダメな箇所は笑いながら指摘し、移動中もずっとしゃべっているようなタイプ。どうやら部屋の内見をどこか”浦安の夢の国のジャングルを船で巡るアトラクション”と同じフォルダに入れている節がある。

不動産会社のひととの会話は契約を結ぶためであろういろんなテクニックが見え隠れして楽しい。筆者が好きなのは「この物件、他にも問い合わせが来ているらしいので早く決めた方がいいですよ!」という不確かな情報で決定を急かすパターンと、物件としてマイナスな箇所を無理くりポジティブに言い換える就活生みたいなパターンだ。
墓地の隣の物件を「閑静でいいですよね」と押し切ったときは笑ってしまった。このあたりは明確なマニュアルがあるのだろうか、それとも伝承されていくものなのだろうか。いつか不動産会社に勤めているひとにこのあたりの話を直接聞いてみたい。

100点の部屋ってあるのか問題

数え切れないほどの物件があるなかで、内見を重ねたとてなかなか100点の物件に出会えることはきっと少ない。即決というよりは、なんとなく「この部屋に住むかもな」という予感というか、直感のようなものがあって、多少の不安を抱えながら甲だとか乙だとか書かれたよくわからん書面に捺印をする。

やがてその物件に自分の持ち物が運び込まれて生活が始まり、その土地にも愛着が湧き始め、そうして少しずつ加点と減点を繰り返しながら「自分にとって100点の部屋」に近づけていくのだろうと思う。

いまのあなたの部屋、はじめて内見をしたときより点数は上がっていますか。

投稿者名

北向ハナウタ

東京を拠点に活動する兼業ライター・イラストレーター。
好きなおでんは大根、好きなサイゼリヤメニューは、たらこソースシシリー風です。

twitter:@1106joe
blog:http://kitamuki.hateblo.jp/