しんどいオカマのお悩み相談 その57.昔の恋人を忘れられなくてしんどい?

2019/04/15 UPDATE

しんどいオカマがしんどいお悩みにお答えする、しんどくても頑張るあなたのための人生相談。今回は昔の恋人を忘れられないという女性のお悩みよ。
その痴態によって一生忘れられないトラウマを植えつけるオカマたち。愛だの恋だのには向いていないのかもしれないわね、オカマって。

【お悩み】
30歳の女性で、デザイン関係の仕事をしています。
結婚して子供もいるのですが、いまだに過去の恋愛を引きずって生きています。
昔、恋人を交通事故で亡くしました。二十歳のころから数年付き合っており、結婚も考えていた人でした。
「彼のことがまだ好きで忘れられない」というわけではありません。愛しているのは今の夫と子供です。
しかし、日常のふとした瞬間に彼の顔が浮かび、胸が締め付けられるのです。
忘れようにも忘れられず、気持ちの整理がつかないことがもどかしく、苦しいです。家族に対してもなんだか申し訳ない気持ちになります。
何かご助言をいただけると幸いです。

思い出に罪はないのよ

「昔の恋人たちは、いまどこで何をしているのだろう」
相談を読みながら、そんなことを考えていたわ。
昔の恋人のことって、そう簡単には忘れられないわよね。アタシもふと、なんでもない拍子に、遠い昔に愛した人たちの記憶が蘇ることがあるわ。
まるで全身が心臓になったかのような気さえした、若かりしころの恋。
その胸の高鳴りを超える経験なんて、大人になればなかなか味わえないものだからね。
過去を回想し、当時を追体験することで、胸が締め付けられるような感覚に陥るのは必然かもしれないわ。
ただ、そういった追想によって過去を偲ぶ気持ちは生まれども、昔の恋人を恋い慕う気持ちは必ずしも強まるわけではないのよね。
脳は「好きだった」という強烈な記憶を、映画のフィルムのように淡々と繰り返すだけ。それらによって、郷愁や、惻隠の情を催してしまうだけ。
当時の恋愛感情がずっと続くわけではないのよ。思い出それ自体は、何の罪も生まないということ。
だから、彼のことを無理に忘れようとする必要はないのよ。ただあなたの中にその記憶が存在しているというだけのことなのだから。

それと、あなたは日常の中で、亡くなった彼以外の恋人のことをふと思い出すことはないかしら?
当然あるはずよね。恋人が亡くなったという経験のないアタシですら、時おり元彼のことを思い出して悶々としてしまうくらいだから。
「いつか絶対ぶん殴ってやるからな!あと金返せあの野郎!」と思う元彼もいれば、「もう一度、友人として付き合いたい」と思う元彼もいる。
一度は好きになった人だもの、思い出してしまうのは自然なことなのよ。きれいさっぱりと忘れられることのほうが不自然なの。
亡くなった彼は、あなたの中にある、数ある思い出の中のひとつなのよ。
だから、彼を特別視して、そこから逃げ出そうとしなくていいのよ。彼を思い返すことを無理にやめようとしなくていいのよ。

彼の思い出と向き合いましょう

彼の記憶をまるで心の淀のように感じてしまうのは、きっと家族に対する罪悪感からよね。
それは、彼が「恋人だったから」という一点から来るもの。
あなたは「浮気なんてもってのほか」という、真面目で誠実な人なのでしょうね。
昔の恋人のことをいつまでも心に留めていることで、まるで浮気でもしているかのような気持ちになってしまうのね。
頭脳が発達した人間だからこそ、そして倫理観のしっかりとしたあなただからこそ湧き起こる罪の意識。
それに比べてアタシなんて、恋人とキスしながら「前の彼氏のほうが上手かったな」なんて考えてしまうような、いけないオンナよ。
……あらやっだ、オカマのキスの話なんて聞きたくなかったかしら。
それはそうと。前述したように、いくら彼との記憶を思い返そうとも、「思い出そのもの」には何の罪もないからね。
そこに罪悪感なんて覚えなくていいのよ、また恋をしているわけではないのだから。

それにね、恋愛感情がなくなった彼との思い出の中に残るのは、きっと何かしらの後悔もあるでしょうけど、恩であったり、感謝のようなものもあったりするでしょう?
それは人と人とをつなぐ根源的な感情よ。たとえ昔の恋人に対する気持ちであったとしても、大切にしていくべきものだわ。
思い出とともに生きて行く、それでいいじゃない。
むしろ、たまに彼のことを思い出して、そっと手を合わせるのもいいかもれしれないわ。
彼の思い出とちゃんと向き合うことで、あなたの心は少しずつ救われていくのではないかしらね。
あなたが彼の記憶を思い返すことは、決して家族に対する裏切りではないということを覚えておいて。

悲しみを消し去ろうとしなくていいわ

過去の記憶を思ったとおりに消すことができるならば、人はあらゆる悲しみから開放されることでしょうね。
アタシも忘れたい記憶がたくさんあるわ。元彼と別れ際にキャットファイトして、オカマ言葉で罵りあった記憶とか。
ただ、どんなに悲しい思い出があったとしても、それを優しさと愛情に変えることができるのが人間の良いところでもあるわ。
いま、あなたには新しい家族がいる。思い出を胸に、愛すべき人たちを愛し、これからも生きて行きましょう。

さて、このコーナーでは、読者の方からのお悩み相談を随時募集しているわ。
恋愛でも学業でも仕事でも、あなたがどんなことで悩み、どんな風に解決したいのか、できるだけ詳しく簡潔に教えてくれると助かるわ。
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投稿者名

BSディム

夜な夜なネオン街をねり歩くアラサーのオカマ。
昼間は真面目な係長だが、退勤から3駅で夜の帳をドレスに変える。
中学2年生で周囲にカミングアウトし、以後オカマとしての人生を歩む中堅オカマである。
Twitter:https://twitter.com/BS_dim Blog:http://aiokama.hatenablog.comBook:http://amzn.asia/d/7JDw3kq