【第一話】週末はどこに行こうか。

2016/12/19 UPDATE

愛妻家ツイッタラーとして、人気のshin5さん。今では20万人を超えるフォロワーがいる彼も、結婚するまでの道のりは楽しいことばかりではなかったそう。奥さんや子どもたちとの思い出を語ってもらいます。

仕事で忙しくなると、必ず妻に電話をする。

「今日も帰りが遅くなりそう。ごめんね。週末はどこに行こうか」

週末の土日、必ず一日は遊びに行こうと結婚してから決めたルール。
家で過ごすのも楽しいけど、なんだか物足りない。

子どもが3人もいれば、休日は朝から、家の中で大運動会が始まって、
気が付けば「ごはん何作る?」「洗濯物干そうか」「掃除機かけたいな」って
妻と話しをしながら、結局家事をして一日が終わってしまう。

せっかくの休みだから、どこに行こうか。
そうやって、仕事の合間に連絡する。
忙しいときに限って、そんな話をしたくなる。

「新しいお店が吉祥寺にできたんだって。どうかな?」
「代々木公園でイベントがあるから、そっちに行ってみたいな」
「久しぶりに海が見えるところに行きたい」
「水族館も行きたいな。江の島とか、八景島とか」

そうやって週末の予定を決めれば、忙しい仕事も乗り切れる気がした。

妻と初めて出会ったのは、会社の飲み会。
その後から話しかけるようになって、好きになったそのときには、彼女に幼い子どもがいることを知った。

「私、実はシングルマザーで子どもがいるの。いま、実家の近くで二人暮らし」
「そうなんだ。写真とかある?見てみたい」
「私とそっくりなんだよね。男の子なんだけど」
「男の子はママに似るっていうよね」

少し驚いたけど、もっと知りたくなった。
それくらい好きになっていた。
たくさん笑って可愛い人。
少し子どもっぽいけど、年上の女性。

そんな彼女にどんどん惹かれていった。
もっと一緒にいたいと思った。

「今度の休みの日。何してる?」
「子どもと家にいるよ。洗濯物とかやっつけないと!」
「どこか一緒に遊びに行きたいなって思って」
「そしたら土曜日おでかけしよう。日曜日は別々ね」
「わかった」
そうして、好きになった人とその子どもと、初めて3人でお出かけをした。
子どもは大好きだったから、手をつないでお散歩して、たくさん走って、肩車をして。
転んで泣いて、必死に笑わせようとして、あっという間に過ぎた一日。

疲れて寝てしまった子どもを抱っこして、彼女と少し手を繋いで
家まで送りながらのんびり歩く。

「今日は疲れたでしょ。あんなに遊んでくれて。ありがとう」
「そんなことないよ。僕もすごく楽しかったから」
「明日は、家事を頑張らなくっちゃ」
「えっ」
「ちゃんと、ごはん3食作って、掃除と洗濯と保育園のご用意をしないと!」
「大変だね。しっかりして偉いよ」
「ほんとに大変だよ!なんてね。でも、今日が楽しかったから、明日も頑張れそう」
「そっか。ならよかった」

その時はまだ一緒に暮らしていなかったから、僕は一人暮らしの家に帰った。

久しぶりにたくさん遊んだ次の日は、正直ちょっと疲れたけど
なんだか嬉しい気持ちでいっぱいだった気がする。

彼女が普段見せない笑顔。おいしそうにごはんを食べる、そっくりな二人の顔。
子どもに優しく怒る彼女。帰り道のちょっぴり淋しそうな声。

そんなことを思いだして、少しふわふわした日曜日。
少しだけ早く寝て、月曜日が来るのを待った。

月曜日。
彼女は元気に「おはようございます!」と声をかけてくれた。
いつもと変わらない、ただの月曜日。

「おはようございます!今日も元気だね」
「はい!週末がとっても楽しかったので」
「そうですか。僕も楽しかったです、週末」
「知ってますよ。顔がにやけてるから」

まだ付き合って数カ月だったから、彼女と会社の中で話すときは敬語で、
いつも変な感じがした。

「子どもがとっても嬉しそうでした。週末」
「えっ、ホント?よかった!」
「ちょっと!ちゃんと話合わせて。ね!」

(ごめん!)
(バカ!!職場の空気をよんでよ!!)

「あの。次の週末はどこか行くんですか?」
「えぇ、たぶんまた誘ってくれると思います。彼が」
「えっ!!?いいの?じゃあ、動物園に行こう!」
「バカ!声が大きいって!!」

週末はどこに行こうか。
今日も、そればかりを考えている。

投稿者名

shin5

都内で働く会社員。Twitterに投稿した日常ツイートが話題となり、22万を超えるフォロワーから注目され、2015年に漫画化した。「結婚しても恋してる」「いま隣にいる君へ。ずっと一緒にいてくれませんか。」は異例の15万部を突破し、仕事を続けながらWebメディアへの連載、執筆活動もスタート
Twitter:https://twitter.com/shin5mt