歌い手S!Nの「僕とデートしませんか」 その6:円頓寺商店街

2018/06/29 UPDATE

イケメンながらも過激な面白キャラで、若い女子を中心に大人気の、歌い手S!Nさん。そんな彼が、地元・名古屋のビミョ~な魅力をバーチャルデート目線で気ままに紹介します。


アイスム読者の皆さま、こんにちは。六回目の更新となりました、S!Nです。

名古屋の街を紹介しながら僕自身のことも紹介する、というテーマのもと、S!Nと名古屋の街をデートしている女子の気持ちをS!N自身が妄想しながら書く、ちょっと変わったデートコラム。今日も女子目線になりきって頑張ります。

第六回目、名駅に程近い立地ながらおそらくきっとあまり知られていない円頓寺商店街、その近くにある四間道をゆるりと街歩きしてみました。S!Nが向かう目標の無い街歩きについていく私(一人称は既に女子である)、そんなデートをご覧ください。

変な口調で散歩に誘ってきた

「散歩いく」
「どこに行くの?」
「ウウ…!サンポ…行ク…!」
ダメだ、会話にならない。
説明するのが面倒くさいんだろうけど、ふざけた口調になるのは面倒くさくないのかな?

「わかったよ。どこに行けばいい?」
「ウウ…!国際センター…3番出口…12時…!」
彼のLINEは大体短文だけど、たまに変な口調になる。
ツッコまないけど。

「ワカッタ…!ワタシ…!行ク…!」
「えっ、なんですかその口調」
「ちょっと(笑)」
もう!絶対こうなるって思ってた!

だけど好きな人とのこういう予定調和が楽しいことってあるよね。
あれ、ない?

国際センターって、名古屋駅の隣だっけ。
降りたことない駅だなぁ。どこに行くのかしら。

国際センター駅でお昼に待ち合わせ

12時10分。

遅刻かな?
彼の遅刻は珍しいことじゃない。いつもと少し違うのは、事前の連絡が無いこと。
いつもなら『5分くらい遅れそう』とか連絡があるのに。
そう思ってたらスマホが鳴った。

「いつ着く」
「え?着いてるよ?」
「マジかどこ」
3番出口にいることをあらためて伝えた。

「あぁーめっちゃごめん出口間違えた道路渡ってきて」
言われたままに道路を渡ると彼が座って待っていた。
間違えた側なのに座って待ってるのが彼らしい。

「めちゃ間違えてたごめん。待った?」
「全然だいじょうぶ」
「あやうく待たせ過ぎてババアになるとこだったよね、間に合って良かった」
一言余計よ!なんて思いながらゆっくり歩き始める。

「今日はどこに行くの?」
「んーどこというか、散歩。特に目的地はないね」
「そうなんだ。とりあえずついてくね」


地下鉄国際センター駅2番出口から5分程度。

彼についてのんびり歩いている。
この辺りは昔ながらの住宅地で、高層ビルが立ち並ぶ名駅の隣駅とは思えない。
何度かスーツ姿のサラリーマンとすれ違う。お昼時だしランチかな?でもこの辺にご飯屋さんなんてあるんだろうか。

「見てここの家」
「ここ?」
「そう、西側に町屋が並んでて東側には土蔵が並んでるの」
歩いてるだけで意識してなかったけど、確かに古い街並みがそっくり残っている。

「四間道っていうんだけど、名古屋城が作られた当時に商人たちが集まってできた城下町なんだって。でも一回火事で焼けちゃって。それを避けるために道を少し広く拡張したのが始まり。土蔵が石垣の上に立ってるのも火が広がるのを防ぐための機能らしいよー」
「へぇーそうなんだ」
「この辺りは名古屋大空襲の時も被害が比較的少なくて、だからこうやって古い街並みが残ったんだって。最近は改装してカフェとかレストランとして利用されてんの。できるだけ長いこと残ると良いよね、こういうの」
彼の歴史ネタが始まった。いつもは愛想の悪い彼が饒舌になるこのタイミング。
話している彼を見るのは可愛いなって思うんだけど、でも歴史に興味がない私にはあまりピンとこない。

「あと屋根見て屋根」
「祠?」
「そう、祠。ほこらなんて言葉よく知ってましたね。すごいすごい。屋根に祀ってあるから“屋根神さま”っていうんだって。愛知と岐阜にしか無いらしいよ」
「他の県にはないんだ。なんで屋根に祀ってるの?」
「わからん」
「えっ」
「気になったから軽く調べてみたけどわからんらしい。資料があんまりなくて、お社を建てる土地がない庶民が屋根に作ったんじゃないかな~くらいのふんわりとした説らしい」
「へぇー。起源が分からないものが今もこうして残ってるってなんか不思議ね」
「おっ、歴史の良さに気付いてきたかよ小娘」
不思議だと思うこの気持ちが彼の歴史への興味と同じものなら、少しだけ共感できたかもしれない。一言余計だけど。

四間道を抜けてもう少し歩くとアーケードのある通りに着いた。

「商店街?」
「そう、円頓寺商店街。一旦東に抜けるよー」
「うん?わかった」

商店街を抜けるとそこにあったのは、橋。

「そう!これが!かの!有名な!五条橋!」
「えっ、全然知らない」
「いや僕もそんなに知らない」
適当すぎるでしょ(笑)

「名古屋城を建てたときに、堀川を掘削した話、これはもう名古屋港の時にも言ったから覚えてますよね??」
「う、うん」
正直あんまり覚えてない…。

「絶対覚えてないでしょテストに出ますよ!まぁいいや。この堀川を掘ったときに7か所に橋が架けられたの。堀川七橋っていうんだけど、それの一番北側にあるのがここ。五条橋」
「へぇ…」
「名古屋は家康の命令した清洲越しで誕生したんですよ!?そしてその城下の生活を支えたのがこの堀川!そしてその堀川に架けられた7つの橋の一番北にあるのが」
「五条橋なのね、わかったよもう」
「そう大正解よくご存知でしたね。まぁウザいテンションで嫌がらせしたかっただけで、僕もそんなに橋には興味ないんだけどね。商店街にもどろっか」

レトロな街のオシャレなカフェへ

「少しお腹空いたからこのお店入ろうー」
「なごのや?」
「元々は西アサヒって名前で80年近く営業してたんだって。テレビの街歩きとかで何回か見てたから気になってたんだ」
「80年ってすごいね」
「うん超すごい。3年前くらいにお店自体がリニューアルして、今年から名前が変わったんだったかな。たぶん」
「すごいオシャレな感じ」
「2階はドミトリーホテルになってて、斜め向かいには別館があってそこではボルダリングができるんだよ」
「へぇー。なんだかここだけ急に便利ね」
円頓寺商店街はよく言えば昔ながらのノスタルジックなお店が立ち並んでいて、率直に言えば少し寂れた空気が漂っている。
そんな並びにこんなオシャレなカフェがあるなんて思わなかった。

これが定番らしいよ、と彼が頼んだたまごサンドにはペーストではなく玉子焼きが挟んであった。珍しい。
となりのお肉屋さんとコラボしているというコロッケやメンチカツもメニューに並んでいる。
「家のそばにあったら毎日でも通っちゃいそうね」
「ほんまそれなー」

お腹が満たされた私たちは店を後にする。

「こんな感じでダラダラ歩くだけなんですけど良かったですかね」
「今更じゃない(笑)私は楽しいよ大丈夫」
「まぁ僕とならどこでも良いって言いますよね」
それ自分で言っちゃうかなぁ?絶対みとめてあげない!

「絶対みとめてあげない、とか思ってるでしょ」
「えっ!?」
「適当に言ったのに図星くさいのめちゃくちゃおもしろいな」
意地悪を言う時ばっかり嬉しそうに笑うんだから!

「斜め前の路地が、昔ながらの飲み屋街ーー!って感じなんだよ。しかも通りの名前が円頓寺銀座」
「わっ、ほんと。バブルを感じるね。バブルなんて知らないけど」
「お店がママの名前っぽいのとか、タイムスリップみたいな感覚になるよね」
「わかるわかる、実際のその時代は」
「「知らんけど」」
2人で知らない時代の事を懐かしんでるってなんだか不思議。これも彼が歴史好きな理由の一つなのかもしれない。

金毘羅神社の名古屋弁おみくじ、結果は…

路地側から入った円頓寺銀座を抜けると商店街に戻ってきていた。
さっきのカフェの近くだ。
「そしてここが、かの!有名な!金毘羅神社!!」
通りを抜けたすぐにあるこぢんまりとした神社を彼が紹介してくる。

「実はあんまり知らないんでしょ」
「おやおや、よくご存知で。知らないことをご存知ってくそややこしいな」
「しんさんの言うことはいつだってややこしいよ」
「そこ、うるせぇぞ。この神社に関する知識はそんなにないけど、ここはおみくじがちょっと変わってる」
「おみくじ?」
「名古屋弁で書かれてるんだよね」
「なんだかありがたさが弱まる気がするんだけど」
「そうだぎゃあ」
「絶対使わないじゃんそんな方言(笑)」

金毘羅神社の隣には立派なお寺があった。
「ここがこの辺りの町名の由来の圓頓寺なんだけど」
「だけど?」
「ここのことは本当に何も知らん」
「知らないこともあるんだね。なんだか意外」
「調べたらそれなりのことは勿論書いてあるんだけど、自分の好きな武将とかの名前が出てくるわけじゃないから流石に知識として根付かなかった」
興味があるものと無いものでそんなに変わるんだ。私からすればどの話もピンとこないから、よく知ってるなぁという気持ちだけど彼なりの基準があるらしい。

商店街を抜けると大通りにぶつかった。道路の向かい側にもアーケードは続いている。
彼が信号待ちをしながら歩道の角にある像を指さす。
「ゴールデンのぶのぶがおる」
そこには金色の織田信長像があった。

「交差点のこっちには金の信長像と銀の秀吉像があるんだけど、あっち側には何があるでしょうか」
歴史に疎い私でも、その二人の名前に続くもう一人は想像がつく。
「徳川家康?」
「そう大正解。銅色の家康像があるよ。でも交差点って四つ角じゃん。もう一人は誰だと思う?」
「その三人しか思い浮かばないんだけど」
「うん、多分誰も連想できんと思う。カラフルな水戸黄門がおる」
「なんでそのチョイス!?名古屋にゆかりあったっけ」
「単純に制作者が好きだったらしい」
「そんな理由ある!?(笑)」
「理由が雑過ぎてまさに雑学って感じでしょ」
よくそんなこと知ってるなぁほんと。


道路を渡った先の商店街にもスーパーや新しい自転車屋さん、飲食店などがあり、小さいながらも活気を感じた。
そうは言っても、大須商店街に比べるとやはり閑散としている。

「このあたりが栄えてたのは明治から昭和30年代らしくてさ」
「私たちが生まれるずっと前だね」
「ここだけじゃないけど、シャッター街とかってどこにでもあるじゃん。あれが栄えて賑わってた時代を見てみたいなーって思うよ」
「あー気になるかも」
「タイムマシーンが出来たらそうやってずっと街の発展とか移り変わり眺めてたいんだよねぇ」
「自分の人生をどうこうしたいとかじゃないのね」
「まぁそれはなんとでもなるでしょ、タイムマシーンあるって前提なら(笑)」
「確かに」
「でもここ年に数回めちゃくちゃ人あつまるから」
「そうなの!?」
「パリ祭りってやつがあるんだけど、その時は食べ物とか雑貨とかが商店街の両サイドにずらっと並んで週末の大須みたいになるよ。めちゃすごい」
「全然想像できないね」
「今年は11月の10日と11日だったかな。嘘みたいに人くるから」
「じゃあその時またつれてきてよ!」
「いいよ~」
先の約束をするときって嬉しくなるのは私だけだろうか。
そしてこう見えて、彼は約束を破らないってことを知ってる。
秋が楽しみだな。


「そういえばあの名古屋弁のおみくじ、どうだったの?」
話しながら歩くのに夢中で、金毘羅神社のおみくじの結果を聞いてなかったことに商店街の出口くらいで気付いた。

「見てないけどたぶん大吉でしょ」
「なんで分かるの(笑)」


「今日も一緒にいれて楽しかったから」


もう!!!!
デレの振り幅が凄すぎて私の気持ちがついていかない!!!!!!!!




「ほらね」

以上です!


というわけで今回は円頓寺商店街と四間道を歩いてみました。
古い街並みって良いですよね。あと商店街も好き。アーケードがあれば雨も関係ないしね。

四間道はクラウドファンディングで街並みの保全プロジェクトが立ち上がって見事成立したんですよ。
古くからの街並みがその姿を残しているって、それだけで歴史的価値があることで。でもそれがそっくりそのままお金になるわけではないから立ち行かなくなることもあったりして。
それをクラウドファンディングっていう新しい協力の形で守っていくことができたのって、なんかこう、良いでしょ。(語彙力の枯渇)

今回紹介したお店以外にもいくつもオシャレなお店が点在しているので、自分だけのお気に入り、みたいな楽しみ方で好きになるんじゃないかなぁ。
名古屋に立ち寄る機会があればフラッと散策してみてください!

では、また。

四間道・円頓寺商店街
住所:愛知県名古屋市西区那古野1丁目

喫茶、食堂、民宿。なごのや
http://www.nishiasahi.nagoya/
住所:愛知県名古屋市西区那古野1-6-13
電話番号:052-551-6800
カフェレストラン営業時間:11:30 ~ 23:00(月曜定休)

(※掲載内容は2018年6月時点のものです)

りー

りー

今回のカメラマン。
京都で写真とボードゲームをしている人。
今年で5年目となるTwitter参加型グループ展「picture book展」を企画中。
今年のテーマは「時」。
Twitter:https://twitter.com/re_omae