しんどいオカマのお悩み相談 その8.就活モードになれなくてしんどい?

2017/04/07 UPDATE

しんどいオカマがしんどいお悩みにお答えする、しんどくても頑張るあなたのための人生相談。今回は就職活動に悩む女子大生からのお悩みよ。オカマ一本槍で生き抜いてきたアタシの話を就活のどこに活かすつもりなのかしら。

【お悩み】
21歳、就活中の女子大生です。就活する気が起きず悩んでいます。
自分の性格を考えるとすぐに結婚できると思えないし、正社員になって親を安心させてあげたいとも思います。しかし、環境に甘えてバイトはほとんどせず、家でアニメやマンガばかり見ていた人間が就活に成功するとは到底思えません。目標とする仕事もなく、就活が怖いです。
どうすれば、どう考えていけばいいのでしょうか?

就活は地獄の入り口なんだから怖くて当然よ

ひたすらアニメを観てマンガを読んで、バイトもせず、就活のやる気がない大学生。
教育・納税・勤労という国民の三大義務のありかたに一石を投じるレジスタンスのようね。

決して安心しろとは言えないけど、世の就活生の大半はあなたと似たような状態よね。
企業から求められるのは専門性の高い知識や経験、そして行動力を兼ね備えた優秀な学生だし、彼らには労働への意欲や志が明確な人が多いから、雇用の需要と供給が一部に偏ってしまうのは必然だわ。
専門知識に乏しく志もない、年収だの福利厚生だのを基準に就活を行っている学生は、おこぼれの内定を争奪するゾンビになるしかないわよね。
粉骨砕身で企業に身を捧げる時代が幕を下ろそうとも、日本にはいまだ新卒崇拝が根強く残っている。無力な学生たちはみなその悪習を受け容れざるを得ず、必死になって身の置き所を探しているわ。
何十社、何百社と面接を受けてなお内定が出ず、擦れて不自然な濡れ羽色になったスーツの男の子たちを見ると、「いっそアタシに永久就職しませんか?」と抱きしめてあげたくなっちゃうわね。

とはいえアタシは新卒時、ちょっとした地元企業にするっと就職しちゃったから、実は就活戦争の過酷さは経験していないのよ。
これじゃまったく参考にならないだろうから、某有名メーカーに10年ほど勤めているオカマに就活当時について聞いてみたわ。
彼女は特に高学歴というわけでもなく、家庭教師をやっていたけど因数分解ができなくてクビになったという経歴の持ち主で、就活でも面接官に袖の下を握らせたとしか思えない成りあがり者なのよ。
それでも就活では百社近く面接を受けて、本人も胃に穴が空くような思いを味わったみたい。
「なぜ諦めなかったの?」と問うと、「無職は嫌だったの」と答えたわ。
驚くほど参考にならなかったけど、なるほど真理ではあるわね。

その後は髪型がダサくて辛かっただの、リクルートスーツの男はそそられないだのと愚にもつかない話を延々と聞かされたけど、最後にこう言っていたのは印象的だったわ。
「就活戦争を終えて待っていたのは虫かごみたいに天井の低いオフィスと、複雑な人間関係と出世争いだった。これがあと何十年も続くと思うと、遠い南の島へ逃げてぼんやりと過ごしたいと考えることもあるわ。イケメンと」

企業からの需要にあぶれたという自覚と、疲弊した周りの就活生の姿、そして先の人生を見据えたときに、自他ともに認める箱入りで育てられたあなたが就活に恐怖するのは当然よね。
でも、就職活動やその後の人生を恐れているのは、実はあなただけじゃないのよ。

なぜ働かなければならないのかしら?

あなたの就活に対する苦悩の元凶は、「自分がなにをしたいのか分からない」という一点に尽きると思うの。
まるですべての物事への興味関心を失わせるような義務教育を終えたあとは、大半の若者がなんとなく高校、大学へと進学している。にも関わらず、これから何十年と勤めるであろう企業をこんな短期間で決めなきゃいけないのは酷な話よね。
そんな中で、誰もがモラトリアムを完全に脱してやりがいのある仕事に就いて、人生を謳歌できるわけがないのよね。
あなたが思っているよりずっと、世の中に夢や希望は溢れていないの。みんな程度の差こそあれ、どこかで折り合いをつけて働いているのよ。

ただね、自分の仕事になにひとつ納得できないまま生きていくことはできないわ。
それは社会という巨大な怪物の胃袋の中で、なすすべもなく心と身体が溶けていくのを待つことと同じなの。
これほど虚しく悲惨な生き方はないと断言できるわ。だってアタシがそうなんだもの。
昼は管理職のまねごとをして、夜はオカマとして管を巻いているけれど、自分がいったい何者なのか、自分の本当の幸せとはなんなのか、そんな疑問は激務の中に消えていくだけ。

働くことは、生きることなの。
だからこそあなたには、今、力の限り就活をすべきだと言いたいのよ。
なんの志もない凡人が出来得る限りマシな人生を送るには、なるだけ企業として体制の整った会社に就職するしかないのだから。
フリーターとして食いつなぎつつ、やりたいことをイチから探すのも選択肢の一つだとは思うけど、それはオアシスを求めて砂漠をさ迷うようなもの。
夢や希望、幸せ、人生への納得をほんの少しでも求めるのなら、一番マシな環境を整えることを目指しましょう。それがあなたにとっての折り合いよ。

明けない夜はない、男にならないオカマはいない

就活なんてしょせんは面接官との騙しあい、化かしあいだからね。企業に対してバカ正直に誠実である必要はないとアタシは思う。
学生の無知と平凡さ、あなたの怠惰を見抜けない企業なんてないのだから、開き直って堂々としていればいいのよ。
オカマバーのママから「バカ野郎!テメェそれでもオカマかよ!!」と罵倒される圧迫面接を受けたオカマよりは気が楽でしょう?

今はとにかく足掻くしかないわ。凡人が凡人であるために。


さて、今回のお悩み相談は以上よ。
このコーナーでは読者の方からのお悩み相談を随時募集しているわ。
恋愛でも学業でも仕事でも、あなたがどんなことで悩み、どんな風に解決したいのか、できるだけ詳しく簡潔に教えてくれると助かるわ。
送り先は、アタシのツイッターアカウント(@BS_dim)のDMか、メールフォーム(okama.onayami@gmail.com)まで。
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また、このコーナーに関するご意見やご感想もお待ちしているわ。とっても励みになるから、気軽に送ってもらえると嬉しいわ。よろしく。

投稿者名

BSディム

夜な夜なネオン街をねり歩くアラサーのオカマ。
昼間は真面目な係長だが、退勤から3駅で夜の帳をドレスに変える。
中学2年生で周囲にカミングアウトし、以後オカマとしての人生を歩む中堅オカマである。
Twitter:https://twitter.com/BS_dim Blog:http://aiokama.hatenablog.com