友達とワインを飲みながら考えた、「楽しい」仕事と仲間のこと。

編集部通信

LIFE STYLE
2025.07.29

先日、長らくXでつながっていたヤクルトファンの友人と初めてごはんを食べに行きました。「今年のヤクルト・スワローズは哲学である」という話をしながら(毎年同じことを言っている気もしますが)、友人の知り合いが作っているというオレンジワインを1本まるっとあけました。お昼から。たいへんおいしかったです。

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おいしいごはんを食べながら話をする時間というのは本当に豊かだなあといつも思います。初めて会う人とも打ち解けたり、緊張がほぐれたり。

以前、アイスム編集長のあずささんが「食が真ん中にある仕事は、そこにいる人みんなが笑顔になるからうれしい」と言っていました。

彼女の前職は、某エンターテインメント企業。私は新聞社で働いていました。ともに、なんというか、昔ながらの慣習も残る会社です。。時代的なものもあり、女性が働くというのは結構大変なものがあったよねという話をよくします。(でも私もあずささんも、前職のことは大好きだし、今も仕事のつながりがあります。ありがとうございます。)

ハードな撮影が続くと、スタッフもゲストもどうしても疲れてくるもの。どんな仕事でもそうです。でも、「食」がその真ん中にあると、その疲れもちょっと緩和されて、とにかく雰囲気がやわらかくなるのです。アイスムの仕事が恵まれているのはこれがあるからだなあと思っています。

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アイスムの撮影終わりに、宴会が始まることも!

さて、この日、お昼からワインをあけた友人も、サラリーマンを経て自分で事業を立ち上げて働いています。(お昼からお酒を飲めることは自営業の特権の一つだと思っております!)

この友人が仕事の話をするときに、何度も「仲間」という言葉が出てきました。「このワインは千葉の仲間が作ってるワインなんだよ」「このお店の野菜は、埼玉の仲間が作ってるものでとにかく全部おいしいんだよ」などなど。仕事と人生が「仲間」であふれている感じ、仕事とプライベートの境目がなくなっていく感じ。そういうのを好まない人もいるかもしれないけれど、私はその感じがとても好きです。

それを聞きながら、なんかいいなあと思いました。一緒に仕事をする人のことを「仲間」って呼べるって、めちゃくちゃすてきなことだよなあ、と。

たしかに、アイスムのメンバーは私にとって「仲間」という言い方がとてもしっくりときます。ちょっと照れちゃうけど。自分で事業をしている人や、フリーランスの人が「仲間」という表現を使うのは比較的よく耳にする気がします。でも思い返してみると、私自身はサラリーマンの時も同じだったような気がするのです。

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「デザート」に出してもらった、レモンサワー

私は普段、自分がサラリーマンには向いていないとしょっちゅう言っているのですが、そうは言ってもあの頃それなりに(あくまでもそれなりに)ちゃんと仕事をこなせていたのは、「仲間」がいたからだなあと思います。

サラリーマンのいいところの一つ、それは雑談のチャンスが多いことだと思っています。

今は天国からきっと見守ってくれている、「パパ友」でもあった先輩との雑談の時間。同じ時期に出産した先輩と子育ての悩みを言い合う時間。「バファリンと同じく僕の半分は優しさでできている。あとの半分はドス黒い何か」と言っていた先輩の毒舌を聞く時間。今、そのどれもが愛しいです。

そして、その時間の真ん中にあった、たくさんのおいしいものを思い出します。

今はなき築地市場場外の『磯野屋』のにらそばや、『フォーシーズンズ』の大葉がたっぷり乗ったスパゲッティ。仕事の愚痴が溜まった時に向かった『焼肉割烹 松阪』の焼肉定食や、特別な日の『三井ガーデンホテル』のビュッフェ。事務作業の合間に先輩とタクシー飛ばして向かった神田の『カラシビ』のラーメンや、同期とひたすら愚痴り合いながら穴場だった会社の展望室で食べたお弁当。先輩に悩みを聞いてもらった喫茶店『コリント』のホットケーキ。あのおいしいものたちを思い浮かべると、あんなに大変だったけれど、それでも「楽しかったなあ」と、しみじみと思うのです。

ああそうか、私はサラリーマンだった頃から、「仲間」と仕事してたんだなあ、と、改めて思いました。働き方が変わっても、そういうところは、あまり変わらないのだなあ、と。そしてあの頃から、「おいしいものを食べながら話をする時間」を大切に思っていたのだなあ、と。

働き方なんて、もしかしたらたいした差はないのかもしれない。誰と仕事をするのか。その人たちを好きでいられるのか。私の仕事にとって一番大切なのは、そこなのかもしれないなあと思います。

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滋賀出張のあと、アイスム進行担当の白石ちゃんと京都のワインバーでいただいた桃とマスカルポーネのアールグレーマリネ

だけど、私もずっと仕事が楽しかったわけではありません。

若い頃私は「仕事というのはしんどいもの」だと思い込んでいました。なんといってもなかなかハードな時代と職場。残業なんて当たり前だったし、今ならパワハラやセクハラに当たるようなことも見聞きしました。同僚を「仲間」だなんて思えない日が続いていました。今思うと、「そういうものだ」と思い込まなくちゃ、やっていけなくなっていたような気がします。

そうじゃないんだと教えてくれたのは、本当に仕事が大変で、自信をなくしていた時期にお世話になった先輩でした。ダメサラリーマンだった私を(まあやっぱりダメだったわけですが)責めず、会議でかばい続け、一貫して自分と上が悪いんだよという姿勢を崩さずいてくれました。そしていつも、ユーモアたっぷりににこにこと仕事をしていて、チームのみんなが疲れた時は、タクシーを飛ばしておいしいものを食べに連れて行ってくれました。

先輩の仕事のやり方を見ながら少しずつ私は、「仕事って楽しんでいいものなんだ」と思えるようになっていきました。これは今思い返しても、自分にとってとっても大きな気づきだったと思います。

たしかに仕事には大変なこともたくさんある。ラクなものではない。でも、どれだけしんどくても、ちゃんと楽しむことはできる、と、今では思います。それは、サラリーマンでも今のフリーランスの働き方でも同じです。そして「楽しい」と思えてこそ、いい仕事ができるのだと思います。

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同じくワインバーの、驚くほどおいしいカヌレ。赤ワインに合います。

私にとって今幸運だなと思うのは、たまたまだけれど、その仕事のまんなかに「食」があること。それがあるだけで、みんなが笑顔になれるものを、題材にできていること。食のパワーみたいなものを、日々感じます。

人生はいつも変化していくので、この先また私の仕事がどんな形になっていくかはわからないけれど、いつだってこうして好きな仲間たちと、仕事を楽しんでいきたいなと思います。それは、私が仕事をする中で一番大切にしたいこと。さらに真ん中においしいものがあれば、それはそれはもう、とってもハッピーです。

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