素材を信じて料理する 秋においしくなる野菜料理三選

五感をひらくレシピ 番外編

FOOD
2025.09.18

東京と岡山の二拠点生活を始めた、自炊料理家の山口祐加さん。アイスムでは「五感をひらくレシピ」でもおなじみです。岡山での豊かな生活を通して、山口さんが見つけた「素材を信じる」レシピをご紹介します。


今年の初夏に、居住の拠点を東京から岡山に移し、月の1/3は東京、それ以外は岡山にいる生活を始めた。岡山に引っ越した理由のうちの一つに、食材の鮮度の良さがある。以前から地方を旅するのが好きで、旅行先で鮮度の良い食材をお土産として持って帰ることが多かったのだが、これが日常になったら最高だなという思いつきで引っ越した。

五感をひらくレシピでもご紹介してきたように、私はシンプルな料理が好きだ。岡山に引っ越してきてからは、輪をかけて工程や味付けを削ぎ落とした料理をせっせと作っている。まさに今月のテーマである「素材の味を信じて料理する」を実践する生活なのだ。

今回は、これからの季節おいしくなる「里芋・れんこん・ごぼう」をおいしく食べる三つの料理をご紹介したい。

里芋のだし煮

小さな頃から里芋が大好物だ。私が里芋を買ってきたら、ほとんどの場合、一袋分丸ごと薄く味をつけただしで煮る。醤油と塩で味をつけているので、煮たらそのまま食べられるし、みそ汁の具にしたり、薄く衣をつけて揚げたり、とアレンジも効く。帰ってきて冷蔵庫に里芋のだし煮があると、すぐにつまめて助かる。温かくても冷たくても、ぬるめでも、おいしく食べられるお惣菜だ。

里芋を料理する前にお知らせなのだが、里芋は皮を剥くのに5〜10分かかる。耳が暇な人はラジオでも聴きながらやるのがいい。

では、作ってみよう。まず、里芋を煮るだしを用意する。私は昆布とかつお節でだしをとるが、だしパックを使っても良いし、顆粒だしでもいい。だいたい600mLほどあれば十分。

里芋は軽く表面を洗い、泥を洗い落とす。里芋は上下を2mmほど落としてから、皮を剥く。この時、里芋自体を手に持って、りんごの皮を剥くように包丁で剥く。すべるのが怖ければ、まな板に里芋を置いたまま、湾曲した里芋の皮に包丁を沿わせるようにして切るのもおすすめ。

皮が剥けたら半分に切り、水をはったボウルに入れる。しばらく置いておくとぬめりが出てくるので、全部切り終わった頃に里芋をすり合わせるようにして洗い、水を捨てる。

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鍋にだしを入れ、醤油と塩をそれぞれ小さじ1/2ほど入れる。軽く混ぜ合わせ、里芋を加えて火にかける。沸騰するまで中火で加熱し、沸いてきたら弱火にして13〜15分ほど、お好みの柔らかさになるまで煮る。

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ことことと煮える鍋からは、だしの香りが漂う。約半年ぶりにこの料理を作る。これを作ると、また秋が近づいてきたなぁと思う。

ほどよく煮えたら、皿に盛り付ける。出汁に包まれて煮えた里芋は、しっとりとして里芋ならではのなめらかな食感と香りがぱっと開く。何度食べてもおいしく、懐かしい。地味な料理は飽きが来なくていい。

れんこんのじりじりソテー

れんこんは、煮ても焼いても揚げてもおいしい。そして見た目がかわいい。火の入れ方によって食感が変わるおもしろい野菜だ。浅く火を入れればシャキッとした食感が残り、じっくり火を入れれば、むちっとした歯ごたえが生まれる。すりおろして揚げると、もちもちとする。私もまだ開拓できていないれんこん料理がたくさんある。

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油はれんこんで伸ばす

そんな中で、私が繰り返し作っているのはれんこんをじりじりと時間をかけて焼くだけの料理だ。
れんこんは1cm幅に切り、お好きな油(この時はオリーブオイルを使用)を敷いたフライパンにれんこんを並べて焼く。

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中火で5分焼いたら、火を弱めて3分。その間、れんこんはできるだけ触らないでほしい。そうすることでしっかりと焼き目がついて絶品なのだ。

焼き目がついたら、ひっくり返して3分間同じ火加減のまま焼く。

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今回はあえて味付けはせず、お皿にのせて、塩、醤油、バルサミコ酢(+少しの塩)、味噌などなどを食卓に並べて食べてみた。

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個人的にはバルサミコ酢、味噌がよく合うなと感じる。この料理はたくさん作っておいて、お弁当の隙間埋めに使ったり、サラダのトッピングにしたりとアレンジもできる。じっくりと焼いたれんこんは、手間に対しておいしさが何倍も返ってくる料理なのだ。

ごぼうと玉ねぎのポタージュ

きんぴらごぼうと豚汁に入れる以外、ごぼうをどう料理していいかわからないという人はけっこういると思う。私もごぼうに関しては冒険をせず、いつもの料理を繰り返し作るタイプだ。

でも今回は、豚汁に使って残っていた1/2本のごぼうを使っていつもと違う料理を作ってみたくなった。ごぼうの風味を存分に味わえるポタージュがあったらきっとおいしいだろうなと思いつき、冷蔵庫にあった玉ねぎを味のベースに使って作ってみることに。

ごぼう1/2本に対して、その半量の玉ねぎを使い、どちらもごく薄切りにする。片手鍋に水 大さじ2、米油 小さじ1を加えて、蓋をして弱目の中火で5分炒める。この時に水を入れるのは水蒸気の力で火を早く通すためだ。

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途中、蓋を開けてみて水が飛んできたら少しずつ水を足して、合計10分程度炒めれば、力を入れずに噛み切れるくらいやわらかくなる。

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そこへ牛乳を加え、沸騰直前まで温めたら、ハンドブレンダーで撹拌する。

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あとは塩と黒こしょうで味を調えれば完成。

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ぽってりとしたテクスチャーのポタージュを一口すする。玉ねぎの甘みと、ごぼうらしい土っぽさのある風味のバランスがよく、牛乳とも相性がいい。

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あとから少しだけコンソメの粉末を加えたバージョンを食べてみたのだが、やっぱり何も入れていない方が、素材の味がよく感じられて好きだ。不安になってついつい味を足してしまいがちだけれど、こういうシンプルな料理をするたびに「もっと僕たちのこと信じてくださいよ」と食材に言われている気がする。

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