フルーツで彩る、梅雨と夏。

晴れでも雨でも食べるのだ。 #14

LIFE STYLE
2021.06.10

食べものや飲みものにまつわるあたたかな記憶とその風景を、奥村まほさんの言葉で綴るエッセイ「晴れでも雨でも食べるのだ。」今回のテーマは「フルーツ」です。雨の多い季節にも、暑い夏にも、救世主となってくれるフルーツ。エッセイには奥村さんのフルーツ愛がたっぷり詰まってます。


全身が清涼感を求めている。

このエッセイを執筆している五月後半、東京はまだ梅雨に入っていないものの、天気が不安定でちょくちょく雨が降るし、晴れの日もじめじめしている。今年の五月はちょっとおかしい。

五月晴れの青空。涼しい初夏の風。きらきら萌える緑。待ちわびていた新緑の季節はいったいどこへ……。

ため息をつきたくなってしまう。

でも、そんな毎日の救世主として大活躍中の食べものがある。カラフルでジューシーなフルーツたちだ。

フルーツ × ヨーグルトではじまる一日

わたしの一日は、フルーツでヨーグルトを彩るところからはじまる。

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まっしろなヨーグルトに絵を描くようなイメージで、冷凍のミックスベリーを散らしたり、マンゴーやぶどうを添えたりする。フルーツの色彩ひとつで、部屋全体が明るくなるようで気分が上がるし、フレッシュな酸味と冷たさ、しゃりっとした食感が眠気覚ましによく効く。

最近、フルーツ入りヨーグルトのバラエティーパックも家に常備しはじめた。頭痛やだるさを感じやすい雨の季節には、切り分けてすぐに食べられるヨーグルトの存在がものすごく心強い。眠くて体が動かなくても、とりあえずこれだけは食べておこう、という気持ちになるのだ。

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朝食はワンパターンになりがちなので、「今日はどれにしようかな」と主体的に味を選ぶ機会があると、いい気分転換になるという発見もあった。

逆に余裕があるときは、生のフルーツを切ってヨーグルトと一緒に食べる。「なにこれめっちゃおいしい!!」と今季もっとも気に入ったのは、「清見タンゴール」というオレンジと温州みかんをかけ合わせた品種だ。たまたま通りかかった八百屋の店主のおじさんに、「種がなくて食べやすいよ」と教えてもらった。

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食べ方はとっても簡単。ナイフでさくっと8等分して、内皮ごとがぶりといく。口に入れた瞬間にみずみずしい果汁がじゅわ〜っと溢れてたまらない。果肉は弾力がありつつもやわらかくて、手品みたいにあっというまになくなる。

柑橘類は食べるのがめんどうなイメージがあってなかなか手を出せなかったけれど、これなら毎日でも食べられそう!と感激した。

果実ゼリーやジュースで休憩する昼下がり

蒸し暑さが増す日中には、さっぱりした甘味がほしくなる。

チョコレートやクッキーなど、砂糖と脂質をたっぷり含んだお菓子が大好きなわたしは、ちょっと前まで果実ゼリーにもジュースにも全然興味がなかったのに、夏日が増えてきたとたん、磁石のごとく吸い寄せられるようになった。

涼しげなゼリーを容器からぷちんっと出して皿にのせ、透明感とぷるぷる感をじっくり味わいながら食べたり。

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晴れ間をねらってコーヒースタンドに行き、レモネードを片手に雨の匂いを感じながら散歩してみたり。

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ちょっと疲れてきた昼下がりに、甘酸っぱくてひんやりしたデザートやドリンクを味わえば、身も心もじわじわと生き返る。

たまには贅沢しちゃおう。癒しのごほうびデザート

出かける用事があると、つい自分に買ってあげたくなるのがごほうびのデザートだ。これもやっぱり、もはや病気なのではないかと思うほどフルーツに目が行ってしまう。

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ここのところ見かけると自然に手が伸びるのが、ビタミンカラーのフルーツサンド。「見た目だけなんじゃないの?」とずっと穿った目で見ていたけれど、一年前にはじめて食べて、失礼ながら「意外とおいしいじゃん!」とびっくりした。

とにかく元気がほしい。特別感がほしい。クリームの甘さもほしい。でも、こってりしたものは食べられない。そんなときにぴったりなのだ。

フルーツをふんだんに使ったパフェも、ここ数年で好きになったデザートのひとつだ。なかでも、果実の味をそのまま生かした甘さ控えめのものに惹かれる。

つい先日は、「京はやしや」で期間限定の「日向夏と柚子の煎茶パフェ」を食べた。

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いくつもの要素が組み合わさって優美なフォルムとグラデーションを織りなすパフェは、まるで芸術作品のよう。食べるのがもったいなくて、何分もかけてあらゆる角度からじっくり眺めてしまった。

シャーベットやジュレの爽やかさ、メレンゲやクリームの軽さ、煎茶の苦味と旨味、すっきりとした後味。パフェとは思えないほどサクサク食べた。平日のお昼前、人が少ない店内で静かに甘味を食べていると、マイナスイオンを浴びている気分になる。

から揚げにもハイボールにも、風呂上がりの体にも。レモンで〆る一日

柚子やレモンなどの柑橘類の果汁は、夕食においても大活躍する。我が家ではから揚げやとんかつをよく作るので、ポッカレモンに日々お世話になっている。

レモン果汁は、ある意味魔物だ。たった一滴、ぽちょんと垂らしただけで、脂っこい料理が爽やかな風味に早変わりする。おかげで、わたしはカロリーなど気にせずにパクパク食べてしまうことになる。なんて罪な奴なのだろう。

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夫はハイボールにスライスしたレモンを添えるし、わたしは夏場にキリンレモンをよく飲むし、レモンだらけの食卓になることもしょっちゅう。

さらにお風呂上がりに氷菓子の「サクレ」で頭をキーンとさせれば、夏はレモンのために存在する季節なのでは?と疑ってしまうほど、レモン尽くしの夜が完成する。

外出の機会が減るなか、もっとも身近なところで季節感を演出してくれる風物詩は、食べものなんじゃないかと思う。もう夏だなあ、と食べることで実感するのだ。

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ちなみに先日、わたしの枕カバーもレモン柄になった。ニトリでつい目が止まって買ってしまった。やっぱり全身が切実に清涼感を求めていて、その代表格がレモンなのだろう。脳が完全に味覚に支配されている。

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今宵もレモンに包まれて眠り、明日の朝はフルーツヨーグルトをしっかり食べよう。

フルーツを味方につけて、どんよりとした雨の季節にも、代わり映えのない日常にも、明るいビタミンカラーをちょっとずつ塗り重ねていくのだ。

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