よく噛んで食べる子は、『ひみこのはがいーぜ』!

六車奈々の子育てコラム「あいことばは、まあいっか」 #11

FAMILY
2020.11.30

img_nanarokusha_011-title.jpg

娘が二歳の頃だったでしょうか。
納豆を食べていると、

「納豆って、噛んでもおいしいね。」

と、衝撃の発言をしました。

母:えぇーっ!ちょっと待って。今、『噛んでもおいしいね』って言った?
娘:うん。
母:ってことは、今まで納豆、噛んでなかったの?
娘:うん。
母:丸飲み?
娘:うん!

ギ、ギエーーーッ!!!
いくら小粒納豆とはいえ、丸飲みする大きさではないぞ。
私は驚きのあまり、ひっくり返りそうになりました。

img_nanarokusha_011-01.png

これまで、娘の食事に関しては『栄養』を第一に考えてきました。
「食物繊維、とれてるかな。」
「タンパク質、十分かな。」
など、いかにバランスよく食べさせるかを考えてきましたが、まさか、まさか、こんな落とし穴があるなんて…!

母:せりちゃんさ、これからは、よく噛んで食べるようにしようか。
娘:どうして?
母:せりちゃんが食べたものはね。カミカミモグモグしてゴックンするとね、この『食道』というところを通って、『胃』の中に入っていくんだよ。胃はね、ここだーっ!

私は、娘の胃袋をコチョコチョしました。

娘:キャハハハハハ!
母:でね、この胃の中ではね、せりちゃんが噛んだものを、ベチャベチャドロドロになるまで、もーっと細かくするんだよ。
娘:うん。知ってる。(胃を手で揉みながら)グッチャグッチャだよね!
母:おお!そうだね。エライぞ!
娘:えへへ。

前回のコラムでもお伝えしましたが、
娘にウンチの大切さを教えるために、よく一緒に『ウンチごっこ』をして遊んでいたので、消化吸収に関しては、娘は既に理解していました。

母:でね。どうして噛んだ方がいいかというと、もし、せりちゃんがあまり噛まないでゴックンしたら、胃の中には大きなままの食べものが入ってきちゃうよね。
娘:うん。
母:そしたらさ、せりちゃんの胃は、ものすごーく頑張らないといけなくなっちゃうんだ。
娘:どうして?
母:小さいものをもっと小さくするのは簡単だけど、大きなものを小さくするのって、大変じゃない?せりちゃんも、大きなハンバーグを噛むのは大変だよね。でも、お母さんが細かく切ってあげると食べやすいでしょ?
娘:うん。こうして、『あーむ』って!
母:だよね。だからね、せりちゃんがしっかりカミカミモグモグしてあげると、せりちゃんの胃はお仕事がラクになるから、とっても喜ぶんだよ〜。
娘:『せりちゃんありがとう』って?
母:そう!だから、しっかり噛んで食べようね〜。
娘:はーい!

img_nanarokusha_011-02.png

「噛むこと」の大切さについては、かつて教職員200人ほどの前で講演したこともあり、詳しく勉強していたのに。いやぁ、我が子の子育てでは落とし穴だったー!

アイスム読者の皆さまは、いかがでしょうか。
子供の『咀嚼』に関して、意識されたこと、ありますか?

噛むことって、大切

今回は、大人にも子供にも大切な『咀嚼』についてお伝えしますね。
まず私たち現代人は、噛む回数が戦前の約半分以下になったとも言われています。その原因の一つは、食の欧米化。パンやハンバーグ、グラタン、スパゲッテイなど、やわらかい食べ物が主流になったことです。
しっかり噛んで食べないと、どんなデメリットがあるのでしょう?

1. 唾液の量が減る
『噛むこと』と『唾液の分泌』は、密接にかかわっています。 唾液には洗浄作用や抗菌作用があるので、よく噛んでしっかりと唾液が分泌されると、口の中を清潔に保つことができます。逆に唾液が減ると、口臭やむし歯のリスクが上がります。

2. 太りやすくなる
よく噛まないと早食いに繋がり、満腹中枢が働く前に食べ過ぎてしまうため、肥満の原因になることがあります。

3. 歯並びが悪くなる
噛まないことで顎が未発達になり、歯並びが悪くなる可能性が出てきます。
すると、

  • 食べ物が噛みにくい
  • 滑舌が悪くなりやすい
  • 歯磨きが行き届かず、虫歯や歯周病になりやすい
  • 顎関節症になりやすい

などの不具合が出てくることがあります。

『噛むこと』って、とっても大切なんですね。

ひみこのはがいーぜ

では、よく噛んで食べると、どんなメリットがあるのでしょう?
咀嚼の効用について、「学校食事研究会」がわかりやすい標語を作っていますのでご紹介しますね。

『ひみこのはがいーぜ』です。

img_nanarokusha_011-03.jpg
<参考>学校食事研究会 https://www.gakkounosyokuji.com/

『ヒ』・・・肥満予防
よく噛むことで、食べ物を十分に摂取したという満足感が得られ、肥満予防に。

『ミ』・・・味覚の発達
よく噛むと素材そのものの味がよくわかるようになり、子どもたちの味覚の発達につながります。

『コ』・・・言葉の発音はっきり
よく噛むことで顎が発達し、歯が正しく生え揃い、噛み合わせも良くなります。すると自然に正しい口の開き方ができ、正しい発音ができるようになるといわれています。

『ノ』・・・脳の発達
咬合力の強い子ほど、幾何図形のテストの点数が高いことを示すデータがあります。

『ハ』・・・歯の病気予防
よく噛むと顎が発達するので、歯がきれいに生えます。また歯の根がぐっとはって磨きやすくなり、むし歯や歯周炎、歯槽膿漏予防になります。

『ガ』・・・ガン予防
発がん物質は唾液に30秒つけておくと毒消しの効果があるとか。よく噛むと唾液がよく出て、食物と混ざり、がん予防に役立ちます。

『イ』・・・胃腸快調
よく噛むことは消化吸収をよくし、胃腸の働きを活発にします。

『ゼ』・・・全力投球
歯並びと運動能力には関係があることがわかっています。
歯を食いしばると、力が出ますよね。よく噛んでいれば力がみなぎり、日常生活への自信も生まれてきます。

幼児期から学童期にかけては、咀嚼機能を育てる大切な時期です。
おうちでもしっかり噛む習慣をつけたいですね!

子供がよく噛んで食べるために

子供によく噛んでもらうために私がおうちで実際にやっていることを、3つ挙げてみました。

1. 噛みごたえのある食べ物を取り入れる
食物繊維が多いものやかたいものは、自然と噛む回数が増えます。

おうちでできること:

  • 食物繊維豊富なゴボウや蓮根などは、やわらかく煮過ぎない。
  • 野菜を炒めるときは、強火でシャキシャキにする。
  • おやつで、スルメや煮干しを食べさせる。

ちなみに子供用のおやつスルメは、無塩で無添加のものもあり、便利でおすすめです。娘は煮干しもスルメも大好きです!

2. 急いで食べない
ゆっくりと味わって食べるようにしています。
食事時間は、約 30 分程度が目安。1 口 30 回噛めると素晴らしい。

おうちでできること:

  • 「一緒に噛んでみよう!」と、楽しく30回を数えながら子供と食べてみる。
  • 「さっさと食べなさい!」と急かさないことも大切。

3. 姿勢
人間が食事をするときの噛む力は、一般的に自分の体重くらいと言われているため、足がブラブラすると力が入りません。

おうちでできること:

  • 足がブラブラしている場合は、足が着くように台などを置く。

img_nanarokusha_011-04.png

よく噛んで食べることはとっても大切。ですが、叱りつけながら強制してしまうと、食事そのものが嫌いになってしまいます。

一番大切なのは、『食事を楽しむ』こと。
我が家では、できる限り家族が揃って食卓を囲み、会話を楽しみながら「おいしいね」「楽しいね」と食べています。
また、娘がパクパク食べている時や、茶碗の米粒を一粒残らず集めている時など、
「エライねー!」と沢山褒めてやります。

『食事=楽しい』となるには、家族が笑顔で食卓を囲むのが一番!できることを少しずつ取り組んでみてくださいね。

この記事をシェアする

撮影:馬場伸子(SIGNO)
ヘアメイク:菅野綾香(ENISHI)
イラスト:あきばさやか

アイスム座談会