親も子も育つ、はじめの一歩!ご入園おめでとう!!!

六車奈々の子育てコラム「あいことばは、まあいっか」 #15

FAMILY
2021.04.05

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4月から保育園や幼稚園が決まった皆様。
ご入園おめでとうございます!

うちの娘は2歳児クラスから保育園に入園しました。初めて娘を登園させた日は、私と離れるのが辛くて泣いている娘を見て、こちらまで泣けてきました。同じ思いをされたママ、パパも多いのではないでしょうか。

でも今、園に通うことができて本当に良かったと思っています。その理由はたくさんありますが、その一つは、「社会生活が始まる」ことです。

これまでは、主に家族の中だけで生活をしてきた子供たち。ここからは「家族」というコミュニティの中でしっかりと信頼関係や愛着を築いていきながら、今度はその枠を広げて、外の世界でのコミュニティに参加することになります。

さて、ここでちょっと考えてみたいことがあります。
人間はなぜ、『人間』というのでしょう?

実はこれ、保育士の資格を取得した後、ふと気になったのでした。というのが、私たち人間を生物学上で分類すると、『サル目(もく)ヒト科ヒト族』に属する『ヒト』になります。ならば自分たちのことを「ヒト」と呼ぶだけで良さそうなものですが、私たちは『人間』という表現も一般的に使っていますよね。

じゃあ、『ヒト』と『人間』の違いってなんだろう???

『人』との『間』に生きている

私たちは、家族というコミュニティだけでなく、学校や職場、地域などに所属して、それぞれの役割を担っていますよね。そしてその中で、「言葉を話す」ことによってコミュニケーションをとります。これは『ヒト』だけに限られたことで、非常に高等なことです。

ところが、です。

こんなにも優れているはずの『ヒト』は、生まれたときは、どんな動物よりも未熟なのです。自分の足で立つことすらできない。自分でオッパイを探すこともできない。「生きていく術」という点では、全くの無力で生まれてきます。

そんな無力なヒトの赤ちゃんは、誰かに守られ、世話をしてもらわなければ生き続けることができません。そこで、ヒトの赤ちゃんのほとんどが「家族」というコミュニティの中で、人生最初の時間を過ごすことになります。オッパイやミルクを飲ませてもらったり、オムツ替えやお風呂などの世話をしてもらうことによって、今後生きていく土台となる「愛と信頼」を獲得していきます。

その過程で、「言葉」を使って話しかけられ続けた赤ちゃんは、発達とともに自分もそのコミュニティで使われている言葉を話すようになります。それは単に「伝達」のためだけではなく、話すことを通じて「倫理」や「道徳」 など、そのコミュニティ(家族、地域、国など)での「ルール」も習得していきます。

これが達成されたとき、『ヒト』は、コミュニティに属する「人」の「間」で生きていくことができる『人間』になるのです。

つまり『人間』とは、「人」との「間」に生きているから『人間』なのです。

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こうした理屈で考えてみると、保育園や幼稚園という「社会」に出るはじめの一歩は、『ヒト』として生まれた子供たちが、『人間』として生きていくために、様々な経験を積み、発達をしていくためのスタートと言えます。そう思うと、保育園や幼稚園に入園することに感動すら覚えてしまいますよね(笑)。

うちの娘は保育園に入園した当時、ほとんど言葉を話せませんでしたし、オムツの訓練もしていませんでした。しかし保育園に入って同年代のお友達と毎日過ごすと、あっという間にベラベラと話せるようになり、オムツもすぐに取れました。これは保育園のお友達が刺激になったからこそだと思います。

また、お楽しみ会や運動会、お芋掘りなど、クラスみんなで一つの行事に参加するという経験を通して、困っているお友達を手伝ってあげたり、逆に助けてもらったり、「えいえいおー!」と気持ちを一つに合わせたり、人間として大切なことを多く学んできました。さらに日常の遊びの中でも、自分がいやなことをされた時には、家に帰って私に相談したり、保育園の中でみんなで話し合ったりと、トラブルを乗り越えようとする強い心も育っていきました。

このような「社会生活での経験」は、どんなに親が愛情をかけたとしても、絶対にさせてやれないこと。とっても貴重な経験だと思います。

自分の人生を俯瞰する、親にとっても大切な時間

そしてもう一つ。保育園や幼稚園へ子供を登園させることは、親にとっても大きな意味があります。

これまでは子供とベッタリだった親も、自分の時間を少し持てるようになります。実は、この時間がとても大切。近くにいることで見えないことに気づけるのはもちろんですが、親自身が「子供には子供の人格があり、社会やコミュニティがある」ということに気づき、子供に依存することなく、しっかりと自分の人生を見つめるときでもあるのです。

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娘・せりが初めて保育園へ行った日。

これまでずっと一緒に過ごしてきた娘と離れる寂しさから、無理矢理カフェへ立ち寄り、涙をこらえてモーニングを食べたことを覚えています(笑)。

そして、モーニングを食べながら、

「そうか。こうして娘は、いつか私の手を離れて巣立っていくのだなぁ。」

と、巣立ちのリハーサルを経験したような気持ちになりました。

ですが、ぽっかりと穴が空いたような気持ちになるのも最初のうちだけで、慣れてくると生活にメリハリが出てきました。

娘と離れている日中は、思い切り仕事ができます。私は基本的に仕事が好きなので、この時は「せりのお母さん」ではなく「六車奈々」として、また違った楽しい時間です。

この時間を持つことによって、自分の人生を俯瞰して見られるようになり、こんな思いが生まれました。

「娘が巣立つまでの限られた時間を、もっともっと大切にしよう」

「娘が巣立った後も、自分の人生は続く。その時に、私らしい生き方をしていたい」

そう考えると、自ずと毎日を大切に過ごそうと思うようになったのです。

娘の人生に寄り添いながら、自分の人生をしっかりと歩く。 

これが、今の私の生き方となっています。

親も子も育つ、はじめの一歩

娘は4月から年長さん。保育園最後の1年となります。娘は、泣けてくるほど心身ともに成長しました。そして私自身も、しっかりと自分の人生を歩いています。

さあ、4月から新生活がスタートした保護者の皆様。お子さんたちの大きな一歩が始まりました。

社会生活を経験することは、子供たちの人生において、非常に大切なこと。これから自分のコミュニティを作り上げていくことになります。

入園した子供たちは、一進一退を繰り返しながら、新しい環境に馴染んでいきます。

ぜひ、お外で頑張ってきたお子さんを、おうちではたくさん抱きしめてあげてください。スキンシップによって、お互いに心が癒され穏やかになることは、以前のコラムでもご紹介した通りです。おうちでたくさん甘え、安心すると、子供はまた次のことにチャレンジできるようになります。

子供の一歩は、親にとっても大きな一歩。
ぜひ、お子さんと新しい一歩を楽しんでくださいね。

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撮影:馬場伸子(SIGNO)
ヘアメイク:菅野綾香(ENISHI)
イラスト:あきばさやか

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