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添い寝はいつまで?を改めて考えてみた

六車奈々の子育てコラム「あいことばは、まあいっか」 #38

FAMILY
2023.05.09

その日の朝、いつものようにベッドで目覚め、まだ重い瞼を開けられずにいたとき、突然目がまわりました。ぐるぐると猛スピードで目玉が回転しているような感覚です。

「うわぁぁぁ。ぐるぐるまわってる〜!」

そう思いながらも何もできず、声すら出せません。幸い十秒ほどでおさまってくれたので、私はゆっくりと体を起こし、ベッドから降りました。すると今度は歩こうとした途端、ぐらりと体が揺れました。大きくふらついて、まるで波に揺れる船上にいるみたい。どこかにつかまらないと転びそうなほどです。

「え…?どうしちゃったの私?」

初めての出来事に戸惑いながらも、とにかく娘を学校へ送り出さなきゃいけない。私はふらつきながら娘を起こし、朝食など準備をして、なんとか学校へ送り出しました。

これが、噂に聞く「めまい」ってやつかしら。
疲れ?
ストレス?
更年期?

うーん。どれも思い当たることばかり。午前中は動くことすらできない状態だったので、少し症状が落ち着いてから耳鼻科へ行きました。耳の中を診ていただき、検査も終えた後、医師からこう尋ねられました。

「いつも同じ方を向いて寝ていませんか?」
「えっ???…あ!いつも左を下にしています。」

私は添い寝をするとき、いつも娘の方を向いて寝ていました。

「それが原因ですね。いつも同じ向きで寝ていることで、剥がれた耳石(じせき:カルシウムでできた小さな石)が三半規管に迷い込んで、めまいが起きたんです。」
「えぇっ!?そんなことでっ!?」
「はい。テレビをいつも同じ向きで見ている人や、寝返りの少ない人にも多いですよ。」

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まさか、寝ている向きでめまいが起きるなんて!
そんなこと、ある〜っ!?

それが、案外あることらしいです。病名は、「良性発作性頭位めまい症」。

私の場合は症状が軽かったので、治療法は「ベッドに横になり、右向いて左向いて、最後はうつ伏せ」これだけ。これを就寝時と起床時にすることで、三半規管に入り込んでしまった耳石が移動するそうです。なんだか狐につままれたみたいな話ですが、実際にかなり良くなりました。

それにしても、添い寝がそもそもの原因とは。実のところ、娘が生まれてから添い寝をしてきましたが、今のマンションに引っ越してからはずっと娘の右隣で寝ていました。娘がベッドから落ちないよう壁側に寝かせるため、これが定位置だったのです。

読者の皆様は、いかがですか?ドキッとされた方も、多いかもしれませんね。
ベッドや住居などさまざまな事情で、いつも同じ位置で添い寝しているご家庭は多いのではないでしょうか。すると毎日同じ方(子どもの方)を向いて、体をトントンしているうちに一緒に朝まで寝てしまった!なんてことも、きっとよくある話ですよね。ここで自由に寝返りを打てれば問題ないのでしょうが、我が子のダイナミックな寝相のおかげで、寝返りなんてできない!ってことも。

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子どもの寝相で、大人はすみっこに(笑)。身動きが取れない!

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壁側はこんなスペースがあるのに、なぜか寄ってくる(笑)。

子どもにとって寝返りが大切なのと同じように、大人にとっても寝返りは大切。
「同じ向きで寝ている」「寝返りが打てない」ということが長年積み重なることで、腰痛やめまいなど、何らかの形で体に支障が出ることもあるかもしれません。

では、添い寝は一体いつまで必要なのでしょうか?

我が家の添い寝事情

まず、添い寝って何のためにするのでしょう?

我が家の場合、子どもの成長につれて、添い寝そのものの意味合いが変化していきました。
一番大きく変わったのは、保育園に入ってからです。これまでの「布団を蹴飛ばして風邪をひいてはいけないから」「お母さんにくっついて、お話を聞きなが寝られるから」というのに加えて、「胸の内を話す時間」へと変化していきました。

娘が3〜4歳の頃、いつものように一緒に寝ていると、「ママ。保育園でね…」と、保育園でのことを話し始めました。子どもながらにこんなにも周りを観察し、自分なりに考えを巡らせているのかと、内容の深さに驚きました。と同時に、こうした話は昼間のバタバタとした時間ではなく、寝る前の二人きりの時間に、ふと話したくなるものなのだなぁと強く感じました。

と言っても、毎日そのような話をしているわけではありません。基本的には、娘がお母さんにくっついて安心して眠れるように添い寝をしているので、部屋を暗くするとお話を聞きながらスヤスヤと眠っています。ですが年に1〜2回ほど、不意に娘と深い話をすることがあります。「人生について語る」というと大袈裟かもしれませんが、そう言いたくなるほど大切な話をしていると私は感じています。

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そんなわけで我が家の場合、「添い寝卒業」は本人の意思を尊重することにしました。私にとっても「娘とこうして一緒に寝られるなんて、いつまでかしら」と娘の寝顔を見ながら眠ることが幸せで、寝返りを打てないことで体の節々が痛いこと以外(笑)は、添い寝は大切な時間でした。

そんな娘も、つい最近になって小学校一年生で添い寝を卒業。自らの意思で、自分のベッドで寝るようになりました。お気に入りのぬいぐるみを好きなように並べて眠ることが楽しいようです。

自分で決断すると、あっけないほど切り替えが早いものですね。今のところ「やっぱり一緒に寝ていい?」なんてことは一度もなく、朝まで一人でぐっすり眠っています。本人に聞いてみると、「大事な話は、別々のベッドでもできるから大丈夫」「広ければママと一緒に寝たいけど、狭いし」「自分のベッドが寝心地良くて気持ちいい!」と、すっかり自立。私の方が、寂しいやないか〜い(笑)。

添い寝期間は、それぞれのご家庭で決めるのがベスト

では一般的に、添い寝はいつまでが良いのでしょうか?
私は保育士の資格を取得しましたが、その中で「添い寝は何歳まで」という明確なものはありませんでした。また添い寝に関する研究論文を国内外合わせて読んでみましたが、「添い寝は絶対に○歳まで」というような強い結論づけをしたものも見当たりませんでした。

その理由としては、

・住宅事情や母親のメンタル状態(産後うつなど)、国や地域、風習などによって状況が違うため
・子どものメンタルや人格形成に与える影響は、添い寝の有無だけではなく、むしろ起きているときの家族との関係性の方が大きい

などが挙げられると思います。

こうして自分なりに調べてみた結果、「添い寝期間」は各ご家庭で話し合って決めるのがベストではないかなぁと思いました。住宅事情、親の睡眠の質・体調、子どもの思い、兄弟姉妹の有無などを踏まえながら、まずはご家庭で「話し合ってみる」のが大切です。

ちなみに、添い寝に関してママ友に聞いてみると、

「うちはね、年長組さんのときに一人で寝るようになったよ。小学校に上がる準備をしようねって、一人部屋を与えてね。」
「うちは姉弟二人だから、下の子が2歳のときから子どもたちだけで寝ているよ。」
「うちは5歳かな。私が添い寝で寝てしまった後、また起きて用事をするのが辛いから、そのことを正直に伝えたの。子どもも納得してくれて、一人で寝てもらうことになった。」

など、各家庭によって本当に様々でした。

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睡眠は、子どもの成長に大切なだけでなく、大人にとっても健康の基本。今、質の良い睡眠がとれていない場合や、何となく添い寝を続けていたり、一人寝のタイミングを迷っている場合は、一度ご家族で話し合ってみると良いかもしれませんね。

ベストなのは、親も子も安心してぐっすり眠れること。
ぜひ、良いお話ができますように。
私はこれから好きなだけ寝返りを打つことにしま〜す!

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イラスト:あきばさやか
撮影:曽我美芽
ヘアメイク:岩川えり

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