恋した数だけ、思い出のレシピがあるーーバービーさんのおうちごはん

きのう何作った?

2020.12.25

img_nanitsuku_012-01.jpg

著名人の方々に、おうちごはんをテーマにお話を聞くインタビュー連載「きのう何作った?」。今回のゲストは、お笑い芸人のバービーさん。YouTubeで料理動画を配信するなど、料理好きとして知られる彼女ですが、「レシピ通りには作らない」など、料理観はかなりユニーク。自由な発想で料理をする理由を伺いました。

img_nanitsuku_012-guest.jpg

お話を伺った人:バービーさん

1984年北海道生まれ。2007年にお笑いコンビ「フォーリンラブ」を結成。テレビコメンテーターや執筆業、下着プロデュースなども手掛け、幅広く活動中。

過去の恋愛から得たもの

ーーバービーさんはエッセイで「男の胃袋を掴みたくない」と書かれていましたよね。とても面白い考え方だなと思いました。

私、ルームシェアしたり、ホームパーティーをしたりしていたときは、ずっと台所に立って料理を作ってるタイプなんですよ。だけど、まだ付き合いの浅い恋愛対象の人に手料理を振舞うのは、慎重になります。

ーーと、いうと?

好きな人が作ってくれた料理をよろこんで食べてくれるのはすごく嬉しいんだけど、もし、手料理を作ることで「彼女としての素養があるか」をジャッジされるのが、すごく嫌なんです。もちろん、そうじゃない人もいますが。

img_nanitsuku_012-02.jpg
それって、どういうこと?

よく男性が「彼女に作ってほしい料理」として、「煮物!」とか言うじゃないですか。「それ、本当に食べたくて言っている?」ってなるんですよ。グリーンカレーとかなら、「ああ、グリーンカレーが好きなんだな」と、分かりますよ。でも煮物だと、「煮物がメインの幕の内弁当よりから揚げ弁当を選ぶでしょう?」って思っちゃう。手が込んでそうなものを作ってもらいたいのかな?

ーーあー、なるほど……!とはいっても、パートナーに何か料理を作る場面もあります……よね?

はい。私が多国籍な料理を作れるのは、これまで恋した男性のおかげだと思いますね。現地の人に直接教えてもらっているから、本場の味を再現できるんです。恋愛の数だけ、レパートリーがあります(笑)。

ーー恋愛の数だけレパートリーが……!超かっこいいです。バービーさん、このインタビュー記事のタイトル、即決まりましたよ。ここ、絶対使います。

あはは(笑)!私、「パートナーには料理をしないぞ!」と決めているわけではなくて。付き合う前、ジャッジされる段階では手料理を振る舞いたくないなと思うんですけど、いざ付き合ったらめちゃめちゃ作る(笑)。

ーー(笑)。振り返って「彼のために、あればっかり作ってたな」みたいな思い出のメニュー、あります?「カレーライスの女」的に言うと、バービーさんは何の女ですか?

「干豆腐の女」、かな(笑)。東アジアで食べられている干し豆腐の麺なんですけど、未だに冷蔵庫に常備してますね。

img_nanitsuku_012-03.jpg
マニアック〜!

ーー「干豆腐の女」!干豆腐を食べながら、過去の恋をふと思い出して、センチメンタルな気持ちになること、ないですか?

いや、お料理に罪はないですから。別れたとしても、普通に作って、モリモリ食べます(笑)。

パートナーとの料理が変えた価値観

img_nanitsuku_012-04.jpg
恋愛の話もまっすぐお話してくださいました。

ーー過去の恋人たちと食べたおうちごはんを通して、価値観が変わったことってありますか?

今までは、私と同じぐらい料理をしてくれるパートナーが多かったんです。女性が料理を作るべきという考えは日本では根強いかもしれないですけど、特に海外の人からそういう空気感を感じ取ったことはないんですよね。それで楽になったかも。

ーーたしかに。海外に行って、現地の方とお話しすると、自分の「こうあるべき」から、解き放たれることがあります。

ありますよね。インドや中国あたりの人は、ねぎや玉ねぎを丸かじりするんですよ。生で、そのまま食べるの!夏に冷蔵庫から長ねぎを取り出してかじりついて、体を冷やすそうです。「あぁ、私たちってなんでこんなにルールに縛られて生きているんだろう」って、思いませんか(笑)? 

ーー「玉ねぎって、水にさらさなきゃいけないんだ!」みたいな固定観念を捨てて、自由になれる気がしてきました。生でそのまま食べていい、と。

あとは、食べることと体への作用は直結していて、「これを食べて、体をこうしよう」とか、逆に「今、体がこういう状態だから、これを食べよう」と思うようになりました。

ーー面白いですね。恋愛や旅先での経験がバービーさんを作っているんでしょうね。

そうかもしれないですね。海外旅行から帰ってきたら、現地で食べた料理を再現することが多いんです。でも、インドネシアから帰ってきた後、ナシゴレンとかミーゴレンのような、ぐちゃぐちゃに混ぜて食べる物が、どうやっても再現できなかったなぁ。悔しいです。

ーーたしかに、難易度が高いですよね。なかなかスーパーで手に入らない食材もありますし。

あ、あと、ベトナムで食べた、くさい葉っぱのボールも。葉っぱしか入っていない料理で、日本では再現できないだろうなぁ。また食べたい料理の一つです。

おやつに生姜焼きもアリ 食はとにかく、自由でいい

ーーバービーさんが料理に目覚めたきっかけは、なんだったんですか?

18歳の時に大学進学で北海道から上京してきて、そこから自炊は生活の一部としてやり始めました。

ーー北海道からの仕送りは、なんでもおいしそうですね。

大人になってから、北海道でしか食べられないもののおいしさに気がつくようになりました。飯寿司(いずし)って、分かります?魚を米飯で漬け込んで、発酵させたものなんですけど、実家によくリクエストしています。

ーー飯寿司、初耳でした。北海道ならではの料理なんですね。バービーさん、ひとり暮らしで自炊を始めてから、大変なこともあったのでは?

私、定番料理をレシピ通りに作るとか一切しなくて。料理はこうあるべきという考え方をしないんです。食材を好きな味付けにして、自由に組み合わせて食べようっていう感じ。肉じゃがに、肉とじゃがいもが入っていなくてはいけないルールなんてないと思ってるし。

ーー柔軟ですね。

毎日3食必ず食べなくてはいけないルールもないし、おやつに生姜焼きを食べても全然いいと思うんです。ブロッコリーが好きなら、ひたすらブロッコリーを食べればいいし。食は自由でいいんです。

img_nanitsuku_012-05.jpg
自由奔放な「バービー」を作るのは、食でした。

自炊は体調を整えるためのもの

ーー日々の献立のルールや、料理のときに気にしているポイントはありますか?

冷蔵庫の中にある、賞味期限が近いものから献立を考えるかな。私、やりたくない時は本当にやらないので、むしろ野菜を切りたくて料理をするみたいなところもあります。

ーー野菜を切りたくて?

ストレス解消になるんですよ。千切りとか野菜を切っていると、無心になれるし、気持ちがいい。それをしたくて、じゃあ料理をするかという感じ。誰かに強要されるようになったら嫌だなと思うし、そういう状況にはなりたくないですね。

img_nanitsuku_012-06.jpg
取材中、白米をかっこむジェスチャーをサービスしてくれた、陽気なバービーさん。

ーー「男の胃袋を掴みたくない」話にも通じますね。ところで、バービーさんにとっての「勝負飯」はありますか? 気合いを入れる仕事の前に食べる、勝負ごはん。

仕事が忙しいときは、本当にロケ弁しか食べられないんですよね〜。脂っこくて、こってりしたごはん。でも、ロケ弁を食べている時は「私、バラエティしてるな〜!芸人だわ〜!」って感じるから、結構好きで。

ーーそれ、いいですね。「私、今日もお弁当で済ませちゃった……」って、食事に罪悪感を覚えちゃう人もいるんですよ。

え〜!そんなこと、全然思わなくていいんですよ〜!でも、私も30代からはおうちごはんで「調整」はするようになりましたね。それまでは、料理は「自分が食べたいものを再現する場」だったけれど、「体調を整えるための自炊」に変わったんです。発酵食品を多く食べています。

ーー体が資本ですものね。バービーさんはデビュー後、比較的早くブレイクした印象がありますが、下積み時代の思い出の「貧乏飯」はありますか?

あります、あります。大学を卒業してから、フォーリンラブを組むか組まないかぐらいまでの2年弱は、経済的に厳しかったです。そのときは、豆板醤と練り梅を混ぜて、パスタに絡めて食べてました。

ーーお、すぐ出来そうでいいですね。

私、酸っぱ辛い味付けが大好きで、練り梅と豆板醤が組み合わさると不思議な深みが生まれるんですよ。安っぽくない味で。そこに卵を落として食べたこともあります。最近食べていないので、久々に食べてみたいな。やってみようかな。

ごはんが、何年か先の自分をつくる

ーー改めて、バービーさんにとっての『食』とは?

食は、何年か先の自分を作り上げていくものだなという感覚はあります。だから長い目で見たときに、こういうものは体に入れといた方がいいなとか、入れておかない方がいいなとかは考えます。選ぶ基準は、自分の血となり肉となるものかどうか。その感覚はあるかもしれません。

でも一方で、卵かけごはんは大好きですし、デカいステーキ肉も大好物! ファーストフードが異様においしいと感じる時もある。それに罪悪感を感じることはないですね。結局、食べたい時に、食べたいものを食べればいい。それに尽きると思います。

img_nanitsuku_012-07.jpg

小沢あや

フリーランスのコンテンツプランナー / 編集者。音楽レーベルで営業とPRを経験後、IT企業を経て、2018年に独立。エッセイのほか、女性アイドルやミュージシャン、経営者のインタビューを多数執筆。Engadget日本版にて「ワーママのガジェット育児日記」、「フリーランスな私たち」連載中。豊島区公認の池袋愛好家としても活動している。

この記事をシェアする

インタビュー・構成:小沢あや
文:五月女菜穂
撮影:飯本貴子