料理とは趣味であり、脳内整理のための瞑想ーー寺田有希さんのおうちごはん

きのう何作った?

PEOPLE
2021.11.02

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役者やタレントとして、また「ホリエモンチャンネル」のアシスタントとして知られている寺田有希さん。最近は初のビジネス書『対峙力』を出版するなど各方面で活躍していますが、どんなに忙しくても料理の時間は確保しているそう。「料理は瞑想」という寺田さんに、おうちごはんの楽しみ方について伺いました。

お話を伺った人:寺田有希さん

1989年4月21日生まれ、大阪府出身。2004年に芸能事務所のオーディションをきっかけにデビューし、ヤングジャンプ「制コレ05」でグランプリを受賞。その後、フリーの“ベンチャー女優”へ転身し、「ホリエモンチャンネル」や「B.R.CHANNEL」のMCを務める。初書籍『対峙力』は1万8000部を突破。2021年10月31日(日)からシアターサンモールにて舞台「あれから」に出演。

外食を通して、家のごはんのおいしさに気づく

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ーーお酒好きの寺田さん。インスタのお料理写真にも、いつもお酒が見切れていますね。献立を決める時も、お酒が軸なんでしょうか?

いや、そんなことはなくて(笑)。スーパーをふらっと歩きながら「カツオの時期か、カツオ安いな」とか「この時期はピーマンがおいしそうだな」とか、食材から入ることが多いんです。

ーー旬のものを見極めて食材ベースで考えるんですね。その場合、レシピや調理方法はどんなツールで検索するんですか?

基本的に、レシピを検索することはないです。

ーーえっ!?どうやって組み合わせを覚えていったんですか?

ええっ、どうなんでしょう……。ピンときた食材をとりあえず買って、それを眺めながら「どんなの作ろうかな」と考えて、必要そうな食材を思い浮かべて、家に帰ってからキッチンに立って考えます。お刺身を買ったら、切り身にしながらカルパッチョの味付けを考える、みたいな。

ーー「困った時はこれ」という鉄板の味付けはありますか?

あまりなくて、まずはいろいろやってみようという意識の方が強いです。旨味とコクと、味を引き締める塩気がバランス良く組み合わさっていればいい。それは醤油でも塩でも、白だしでもなんでもいいけれど、その足し算は自然とやっているのかもしれません。毎回きちんと考えているわけではなくて、今までの経験から大体のものは、見れば味がわかるようになりました。

ーーそれはすごいですね。料理への目覚めはいつだったんですか?

親が大の料理好きで、家のごはんがとにかくおいしかったんです。それに気づいたのは中学生の時。初めて友達同士で食べ放題のお店に行ったら、「あれ?家の方がおいしくない?」と思ってしまい(笑)。外食を通して家のごはんのおいしさに気づきました。

ーー相当、料理上手のご家族だったんですね。

そうなんです。母はもともと料理が得意ではなかったらしいんですけど、料理好きの父と一緒になってからどんどん料理が上手になったみたいで。私の中では、家庭料理は母、ちょっと凝った料理は父。おいしいお店のレシピを真似して家で作ってくれることもよくありました。

小さい頃から、キッチンで料理をする両親の姿をずっと見てきました。母の手元を見るのが好きだったんです。だから「こういう料理には、この調味料をこれくらい」というのを、自然と覚えたのかもしれません。

ーー本格的に自炊をはじめたのは、いつ頃からですか?

大学進学で親元を離れてからです。最初はうまくいかなかったけど、料理をする親の記憶を参考にしていたら、だんだんとできるようになりました。

気持ちを切り替えるために、あえて時間をかけて料理する

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ーー過去には、イタリアンレストランでアルバイトをされていたことがありますよね。その頃に学んだこともあるのでしょうか?

はい。アクアパッツァの取り分けは得意でした。働いていたレストランでは魚を一尾まるごとお皿に乗せて提供していて、それをスタッフが取り分けていたんですよ。どこからナイフを入れ、どう剥がしたら身が崩れずきれいに骨が取れるか、毎回考えながら分けていました。魚の構造を知ることができたのは、この時の経験が大きいです。

ーー魚の種類によって、取り分け方が違うんですか?

そうなんです。ナイフの入れ方も違うし、骨の入り方も違います。鯛は取り分けやすいけど、カサゴは骨が多くて難しい。毎日やっていたので、「小鯛くらいなら家でもさばけるんじゃないか?」と思うようになり、家で一人でさばくようになりました。

当時住んでいた家のキッチンは、フライパンが入るか入らないかくらいの狭いシンクと、ガスコンロが一つ。横幅も狭い小さなキッチンだったけど、小鯛を買って、鱗と内臓を取って、三枚に下ろして、半身をアクアパッツァに、半身をあらだきにしたりしていました。

ーーすごい……!工夫意欲をかき立てられる源泉は何だったのでしょう。

料理が大好きだし、料理中は無駄なことを考えなくて済むから、脳内を整理するのにちょうどいいんです。フリーランスになって以降は仕事とプライベートの境目がどうしても曖昧になってしまいがちで、それを切り替えられるのが、私にとっては料理であり、ごはんタイムであり、晩酌だったんです。

豚肉ともやしを炒めてごはんに乗せるだけでは、お腹は満たせるけれど、気持ちの切り替えができないんです。だからあえて時間のかかる料理をすることで、脳内をプライベートに切り替えたいんです。

ーーなるほど、仕事に関係ないことに脳のリソースを割くことで、仕事から距離を取るんですね。

大きな魚を丸ごと買ったり、逆に、イワシひと山10尾を「さあ、どう食べ切ろう?」と考える時間が私にとっては大切で、いまだに続けています。なるべく料理に頭を使いたいんです。非効率な時間をあえて設けることで、プライベートな時間を無理やり捻出するんですね。

食材はとりあえず漬けておけば、2日目以降がラク

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ーー冷蔵庫に常備しているスタメン食材を教えてください。

必ず冷蔵庫に入れているのは、桃屋の「きざみにんにく」。これ、本当におすすめです!瓶詰めだからいちいち皮を剥かなくてもいいし、油に入れた時にちゃんとにんにくの香りが出るんですよ。

ーー(調べながら)たしかに、これはすごく良さそうですね。買おう。ポチりました。

ええっ、今ですか(笑)?これのしょうがもあるんですけど……。

ーー桃屋の「きざみしょうが」ですね?はい、今、買いました。

(笑)。この二つはいつも冷蔵庫の中に並んでいます。他には、ヤマキの「割烹白だし」と、オリーブオイルとごま油も切らさないようにしています。

ーー食材はあまり常備せず、調味料系を揃えておくんですね。

そうですね。食材は、その時々のスーパーでの出会いです。食べたいと思ったもの、安いもの、旬なものを選んで、いろんな味付けを考えるのが好きで。レタスをまるごと買ってきて「これって意外と浅漬けにしたらおいしいんじゃないかな?」とか。

ーーレタスの浅漬け?ちょっと意外ですね。

レタスの浅漬け、めっちゃおいしいんですよ。ジップロックにレタスを入れて、白だしとお水と鷹の爪を入れて、空気を抜いて置いておくだけ。プラス、きゅうりやパプリカなど余った野菜を一緒に入れてよく浅漬けにしています。

ーーそれ、やってみます!ちなみに、野菜は量を取ることを意識されていますか?

野菜は足がはやいので、一気にたくさん買わないようにしています。野菜がびしっと冷蔵庫に入っていることはないかもしれないですね。多くても3種類くらい。食べきったらまた買いに行くスタイルです。

ーー時間をかけて料理を楽しむ中で、力を抜くポイントはあるんでしょうか?

電子レンジも活用しますし、洗い物が出ないようにパスタはフライパン一つで作ります。あとは、ポリ袋をよく使いますね。下味をつけて冷蔵庫に置いておく時、ボウルを使ってラップをかけて置くこともできるけど、そうなったらボウル一個洗わなきゃいけなくなるから、それが嫌で。

ーー揉み込む過程などを全部ポリ袋でする、ということですか?

そうです。全部ポリ袋やジップロックなどに入れちゃいます。今日食べる分、下味をつけて冷蔵庫に入れる分、味付けせず保存する分、と最初に切り分けますね。

ーー下味のタネの定番はありますか?

うーん…カレー粉と、ヨーグルトと、トマトペースト。それでよくタンドリーチキンの味付けはしますかね。鶏肉だけでなく、豚肉や白身魚にも使ったりもしますね。あとは、「にんにく、しょうが、それに塩と酒でシンプルに味付けといたらなんとでもなるやろ!」と思っているので(笑)。話していて気づいたんですけど、多めに食材を買ってきた時は、何かしら、漬けておくことが多いかもしれないです。

ーー漬ける?

大きい魚を買った場合、1日目はお刺身で生のまま食べる。2日目以降は、火を通すにしても、まずはジップロックかポリ袋に入れて下味をつけておくんです。カツオでもサーモンでも鯛でも。このあいだはブリを買ってきて、2日目は漬け丼にして、3日目は漬けていたものを薄く切って片栗粉をつけて焼きました。「青椒肉絲みたいにしたらおいしいんちゃうかな?」と思って。焼いたブリをピーマンとオイスターソースで炒めたら、おいしかったです。

ーーへえー!青椒肉絲風のブリとは、思いつかなかったです……!

「ブリも牡蠣も、どっちも海のものやしイケるやろ」と思って(笑)。

ーーなるほど。寺田さんはお酒好きなので、ごはんの味付けはしっかりめですか?

あ、そうですね。結構濃いと思います(笑)。

ーーお酒に合うおつまみ、少し塩分が気になりませんか?特に寺田さんは舞台に立つ人だから、体調管理には特に気を配られていると思うのですが、どう調整されているのでしょうか。

無駄なストレスをためないことがいちばん重要だと思っているんです。だからあまりストイックに「これしか食べない」みたいなルールは設けないようにしていて。料理をする時間や食べている時間が私にとっての癒しで、スパに行くとかゲームをするとか、あるいはテレビを見るとか、そういうのと同じ感覚で料理をして食べているので、あまり気にしないようにしています。

水を多めに飲むとか。肌の調子などを見ながら、「さすがにやりすぎた〜」と思えば1週間なり1か月なりのスパンで気をつけることはありますけど、基本的に1日の中での制約は設けないようにしています。

映える料理を意識したら、ちょっと健康になった

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ーー2年くらい前の話ですが、Twitterで新じゃがの調理法を募集していましたよね。料理をファンの方とのコミュニケーションツールとして使う、というのは意識されていたんでしょうか?

ある時から、ビールを飲んでいる姿をSNSに投稿すると想像以上にウケが良いことに気づいたんです。おつまみも自分のために作っていたので「じゃあ料理の写真も出してみようかな?」と思って。正直、最初の頃は、ビールキャラを定着させようという下心が少しだけありました(笑)。そんなにキラキラした食生活をしているわけでもないし……。

ーーいや、すごくしっかりした食生活に見えます!

ほんとですか?でも本当にストレス発散のために作ってるから……カラオケで大声で叫ぶくらいの感覚で料理を作っているので……。

ーー最近つくった凝った料理はどんなものがありますか?

このあいだ、生配信でマネージャーさんに料理をふるまったんです。私の中でのテーマはアジア、なおかつビールに合う料理。一つ一つに時間をかけたわけではないけど、品数は多めにしました。

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ーーパクチー盛り盛りですね!お酒に合うごはんって茶色くなりがちだけど、寺田さんの料理はいつも、彩りが豊かできれいなんですよね。

ありがとうございます!たしかに、茶色いものがおいしいんですよね。でも「映える写真を撮りたい」という欲もあって。スーパーで食材を選ぶ時も、食べたいもの+彩りで考えていることが多いです。「緑と茶色が多くなりそうだから、一個だけ赤買っておくか」とか。

ーー映えを意識するようになって、ちょっと健康的になりました?

それはありますね!パプリカもトマトも映えを意識して買うけど、結果、それでビタミンが摂取できているという。

ーー堀江貴文さんのYouTubeチャンネルではアシスタントとしても知られている寺田さんですが、堀江さんには「体力がないと才能を活かせない」と指摘されていましたよね。体力作りとしてのごはん、というのは意識されているんでしょうか?

私、ごはんが食べられなくなる時期があるんです。それに基本的に小食で。脳内をリセットするためにできる限り料理をして量もめっちゃ作りたいけど、全然食べられない。需要と供給が合わないから他の人に食べてもらったりして。だから、食べられる時期にはとにかくたくさん食べて体力を維持・温存するようにしています。

ーー発想が完全に冬眠前の熊ですね(笑)。

あはは!ほんとにそうなんですよね(笑)。その時期はカロリーも気にせず、揚げ物も炭水化物もドカ食いしています。それが1か月も続くようなら、その時初めて摂生するという。

ーー以前は居酒屋で一人晩酌をして仕事の反省をしていたそうですが、現在はどうしていますか?

晩酌しながら、あるいは料理しながらやっています。どんなに忙しくても、あえて料理する時間を作るようにしていて。料理しながら仕事の反省もできるし、自分と向き合うこともできる。めっちゃ忙しくてすごく疲れていても、舞台の公演期間中に夜中に塊肉買ってきていきなり煮込み始めたりとか、よくあります。眠ることよりも脳内整理が大事だと思ったらキッチンに立つようにしていますね。

ーーそれはもはや……瞑想のような?

完全に瞑想ですね。わたしにとって、料理とは瞑想です。

ーーだとしたら、料理中にテレビなどはつけないですか?

時々はあります。私にとっては「瞑想の料理」と「趣味の料理」があるので、趣味の時は、料理系のYouTubeを見ながら料理することもあります。大食いYouTuberの谷やんさんが大好きで、谷やんさんがプロデュースした包丁は発売前から待機して買いました。他には、「COCOCOROチャンネル」、「Chef Ropia」、「ファビオ飯」、もちろんリュウジさんやコウケンテツさんなどの動画も見ています。

ーーそういう番組を料理の参考にしますか?

味付けやレシピを見ることもあるけど、料理の基礎知識をつけるために見ています。火入れや下処理のとってもいい勉強になるんです。でもやっぱり、わたしにとっての料理は、日々の脳内整理のための瞑想の時間ですね。

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取材・編集:小沢あや(ピース)
撮影:小原聡太
文:山田宗太朗

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