料理は頭を整理する大事な時間――松岡広大さんのおうちごはん

きのう何作った?

PEOPLE
2022.03.14

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俳優として、舞台や映像作品で活躍している松岡広大さん。放送中のドラマ『ムチャブリ! わたしが社長になるなんて』では、フレンチレストランの見習いシェフ役を演じています。
普段は「ポイントデー」も意識して買い出しするという堅実な松岡さんに、シェフ役を演じるにあたって勉強したことや、おうちごはんについて伺いました。

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お話を伺った人:松岡広大さん

1997年8月9日生まれ。東京都出身。2012年に俳優としてデビュー。2015年には『ライブ・スペクタクル「NARUTO-ナルト-」』で主人公のうずまきナルト役として初主演を果たした。舞台やミュージカル、ドラマに映画とさまざまな演技の仕事で活躍中。

料理は自分だけの大事な時間

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ーー松岡さんは、先日のこがけんさんとのインスタライブでも慣れた手つきでお料理されていましたね。料理を始めたきっかけは何ですか?

20歳から始めた一人暮らしです。もともと、「生きるためには食事が一番大事だ」と思っていたし、料理への興味もありました。キッチンペーパーで落し蓋を作ったり、クックパッドの有料会員になって、主婦の方の意見やレシピを参考にしたり…。生活の変化とともに、料理は必要不可欠になっていきましたね。

今は、ほぼ毎日自炊しています。やらないとリズムが狂う感じもあって。

ーーそうなんですか!SNSには写真をほぼ投稿されていないので、どんな料理をしているのか気になります。

自分は「これ、おいしいかな?」って実験的に作ることが多々あるので、見栄えがあまりよくないんです(笑)。それに、自分の欲…と言ったらあれですけど、自分の幸せのためだけに作っているものなので、(SNSにアップすることは)あまり考えなかったです。

「これは凝ったらおもしろいな」って思う料理は、カレーです。まずはルーを使わない無水カレーから作り始めたのですが、トマトと塩を入れると浸透圧で十分に水気が出るんです。その仕組みに気付いた時は、「料理って科学だな」「勉強していてよかった!」って思いました(笑)。カレーは毎週作って、2日ぐらいかけて食べています。

ーー毎週作るカレーは、レシピを変えながら試しているんですか?

そうです。キーマカレーにしても、長時間水でふやかしたひよこ豆を入れるとか、中身を変えてみて。バターチキンカレーなら、クリームをちょっと入れてみよう、とか。

料理は時間もかかるんですけど、キッチンの前にいるのが苦じゃないし、待っている時間で他のこともできるし。煮込んで色が変わっていく様子とか、見ているとおもしろいです。読書が好きなので、合間に本を読むこともあります。

ーー人に見られるお仕事をしていると、オフモードへの切り替えも大切かと思います。完全に自分のための、ぼーっとすることもできる時間として、料理タイムを大事にされているんですかね?

とても大事な時間です!俳優という仕事をしていますけど、僕は性格上、仕事に根を詰めすぎてしまうので、台本をいただくと他のことが手につかない状態になることがあるんです。

そういった時に料理をすると、刃物も使うし火も使うので、注意をそちらに向けられる。少し芝居から離れる時間ができるんです。「次は何しよう?」って料理の段取りを考えていると、頭の中のセリフも一緒に整理される気がしています。

「ポイ活」も意識したスーパー選び

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ーー松岡さんの「推しスーパー」はありますか?

「オオゼキ」です。カレーを作るとなるとコリアンダー、他にもタイムやローレルが欲しいなと思うのですが、なかなか置いていなかったり、値段が高かったりするんです。でも、オオゼキはすごくお手頃な価格で僕たち消費者に提供してくださる。ありがたいです。

「ちょっと一品買い忘れた」って時は「まいばすけっと」にも行きます。スーパーは結構使い分けていますね。「何曜日はポイント何倍デー」とかもあるので。

ーー「ポイ活」もされてるんですね!

ポイントは端数の支払いに使えるのですごく大事ですよね。毎日、楽しく貯めています。

ーー節約もエンジョイしてらっしゃるの、いいですね。松岡さんの冷蔵庫のスタメン食材は何ですか?

にんじんや大根などの根菜、それから玉ねぎは確実にあります。最近はじゃがいもも。夜中に小腹が空いたら、チャチャッとスープを作ることもあるので、そこで使う野菜はストックしています。お肉はあまりないですね。

ーーじゃあ、お肉やお魚、足がはやい食材は都度買い出し派ですか。

はい。一人暮らしを始めてすぐの頃は、たくさん買っておけば何かあっても大丈夫だろうと思っていたのですが、世の中には消費期限というものがあるんですよね(笑)。その頃は冷凍するってことも頭にありませんでした。

今は、炊きすぎたごはんを冷凍することはありますが、それぐらいですかね。解凍にも時間がかかるし。生鮮食品は、大体その都度買い出しに行っちゃいます。

ーー自分の消費ペースがわからなかったところから、ポイ活もしつつ食材管理ができるようになるまで、4年で駆け上がっているんですね…!どのタイミングから、うまく食材管理できるようになったんですか?

いつ頃ですかね…。一番難しかったのは、一人分の量の把握なんですよね。自分の疲れや胃袋の許容量がわかるようになってから、食べるものを調整できるようになって、買い出しの効率がよくなったり、食品管理ができるようになりました。

味は、自分が満足できればOK

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ーー松岡さんの食卓は、品数としてはどれぐらいですか? 

3品ぐらいですかね。メイン1品に、ほうれん草のおひたしと、お味噌汁とか。お味噌汁もおもしろいんですよね。赤味噌白味噌、麹の割合…。果たしてどんな味がするんだろうって、おたまでちょちょっと溶いて試しています(笑)。

ーーお味噌もいろいろと試して、こだわってらっしゃるんですか?

こだわりますね。オオゼキさんでも買いますし。他にも、スーパーで「これ、ちょっとしか仕入れできなかったんだろうな」っていう、1個1000円以上の高いものが置いていたりするので。そういったものを使っています。

ーー調味料、なかなか奮発されるんですね。

料理を始めた頃は特にそうでしたが、今でも調味料が増えていくのが楽しくて。「パッタイ作りたいからナンプラーが必要だ」「スイートチリソース買おう」とか、そういうのが好きですね。ふふふ(笑)。

ーー何かおすすめの調味料はありますか?

カルディでも買える、TAKAHASHI SHOTENの「YUZUSCO(ゆずすこ)」です。柚子胡椒の液体版、タバスコ版だと思っているのですが、とてもおいしいです。しゃぶしゃぶを味変したい時や、白身魚によく合うんじゃないかと思います。

あとは、辛いものが好きなので「デスソース」。罰ゲームの定番みたいになっていますけど、用法用量をちゃんと守れば、すごくいいスパイスになるんですよ。チリコンカンを作る時に使ったりしています。

ーーどちらも、あまりレシピでは見かけないような調味料ですよね。料理する時は、「これ入れてみたらおいしいんじゃない?」ってチャレンジしていくタイプなんでしょうか。

そうですね。「これは酸味が強いから、こういうものに入れよう」「甘みが強いから別のものに合わせてみよう」とか。ほんと、実験ですね。

「料理はヘルシーさが一番」って感覚があると思うんです。それで味の濃いものを控える人もいるけど、摂取量の問題だと思うので。料理は自分の味覚に一番合うものを探して、自分の満足がいくように、やってしまえばいいと思うんです(笑)。

舞台の日は手軽な鍋で

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ーー料理は自分の好きなものを…と考えつつも、お仕事のコンディション調整のため、食事に気をつかうこともあるかと思います。そんな時は、ご自身の気分とどうバランスをとっていますか?

僕、特に舞台の期間は、毎回鍋を食べるようにしているんです。満腹感を得やすく、食べ過ぎないので。「帰ったらすぐに寝たい、でも栄養は摂りたい」という日は、野菜を適当に切って、お肉も入れて火にかけて、一人前の「プチッと鍋」や「鍋キューブ」を活用しています。

だから、そういう期間はそこまで「これを食べたい」っていうのは考えていないですね。

ーーへぇー!稽古や本番に脳のリソースを使っている期間でも、お鍋の素が救世主になって、献立にリソースを割くことなく自炊ができているということですかね?

そうですね。いくら手間がかかっていなくても、自分で食材を切って作っていることには変わりないので、「料理してるぞ!」って肯定感、自己効力感も得られますし。メンタルの部分でもすごくいいのかなって思っています。

厨房近くの席で、シェフの動きを学習

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ーー松岡さんは現在、ドラマで見習いフレンチシェフ役をされています。演じるために、自分でフレンチを作ってみたりもしたんでしょうか?

僕は、人を見て学び、模倣するということが多いです。今回ならフレンチレストランにランチだけでも行くようにして、厨房に一番近い席で、シェフの動きや動線を見ていました。撮影現場には料理監修のスタッフさんもいるので、見たことがない器具があったら「これはどういう時に使うんですか?」と聞いて、知識をつけていきました。

ーーなるほど、そういう勉強の仕方が!あらためて間近でプロの仕事を見て、感じたことはありますか?

料理一つ作るのに、とにかく手間がかかっているんだなと。工程も多いし、なんなら2、3日前から仕込んでいて時間もかかっているし、その前には仕入れもある。一皿を時間通りサーブするために、どれだけその人たちの苦労や工夫があるか考えると、並大抵のことじゃないなと思います。

僕、高校生の時にラーメン屋でアルバイトをしていて、鶏油(チーユ)の仕込みをやったことがあるんです。それもすごく手間がかかっていて、大変で。芸能の仕事以外でお金を稼ぐことを学びたくて始めたバイトなんですけど、そこで接客と食に対する関心がグッと上がりました。

ーー作る側を経験すると、食のありがたみも感じますよね。松岡さんは食の出費を抑えるところは抑えつつ、実際にお店に食べに行ってみるなど使うところでは使う、という感覚ですかね?

そうですね。お金を払うことで、これまで知らなかったことを新たに知る経験ができるなら、たくさん経験してみたいんです。

お店によっては、お品書きの最初のページに「この空間がどう構築されていて、どんな時間を過ごしてもらいたいのか」が書いてありますよね。料理の味だけじゃなく、そこも含めて楽しめる。そのお店という物語を読んでいる感じです。

「食」は自分の礎

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ーー昔は料理上手=「女子力」なんて言われていましたが、松岡さんのお話を聞いていると、本当に、それぞれが好きなように料理を楽しむ形に変わってきているんだなと感じました。

「女性=料理ができて当然」みたいなステレオタイプが世間に存在しているという感覚、僕もあります。でも、本当にそんなことないと思います。声を大にして言いたい!

家にいる時間が増えたことで、料理に対する意識が変わったって人もいると思うんです。「個人が何をしたって、そんなの自由でしょう」っていう、開けた考えになっていくのはいいですよね。

ーー最後に、松岡さんが考える料理や食と仕事の関係性を教えてください。

まず、僕は「衣食住」が生きる上での基本だと思っているんです。そしておもしろいことに、昔の戯曲を読んでいても「気分が落ち込んでいる時は、温かいスープを飲めば大体のことがよくなる」というようなことが、あちこちに書かれている。食は精神を安定させてくれるし、自分の礎(いしずえ)になっています。

それから、食事の時って「おいしいものを食べて喜びたい」「人にもこれを食べて喜んでもらいたい」「この幸せを共有したい」「これを通じて人とつながりたい」って瞬間があると思うんです。一人でも楽しいし、人と共有する楽しさもある。こういう瞬間は食事以外、例えば仕事にもあると思います。自分にとっては料理や食事と仕事って、密接な関係ですね。

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取材・編集:小沢あや(ピース株式会社)
原稿構成:佐々木優樹 
撮影:曽我美芽
ヘアメイク:RYO
スタイリスト:カワサキタカフミ

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