料理も演技も、自分の直感を信じてアレンジーー工藤遥さんのおうちごはん

きのう何作った?

PEOPLE
2022.11.24

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俳優として活躍する工藤遥さんは、一人暮らしをきっかけに料理にハマったそう。「レシピ検索はしない派」という彼女に、自炊継続のコツや、ホームパーティーの定番ごはんについても聞きました。

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お話を伺った人:工藤遥さん

1999年10月27日生まれ。2018年より俳優として活躍。出演作品は、映画『のぼる小寺さん』、ドラマ『あせとせっけん』(毎日放送)『ロマンス暴風域』(毎日放送)、『ダブル』(WOWOW)など多数。ラジオ番組『若月佑美と工藤遥のMBSヤングタウン』(MBSラジオ、毎週月曜22:00~23:30)も。

一人暮らしをきっかけに自炊をスタート

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ーー工藤さんに取材させていただくにあたり、ブログやSNS投稿を読ませていただきました。すると2017年の時点では「料理はしません」と断言していたのに、2019年には「料理ができる!」と公言されていました。この2年間で、どんな変化があったのでしょうか。

モーニング娘。を卒業した18歳の冬に、一人暮らしを始めたんです。最初は料理をする気なんて全然なかったけど、目の前に自分専用のキッチンがあると何かしたくなって、完全に目覚めました。

実家暮らしだと、待っていればごはんが出てくるし、冷蔵庫に何かあるから、料理をする機会ってあまりないんですよね。

ーー工藤さんは、何事も「できる」と宣言するまでのサイクルがとても早い印象があります。基本的に、すごくポジティブですよね。

小さな成功体験を、人の何百倍にも受け取れるんです。誰かのちょっとした一言をきっかけに、「自分、天才!」と思えるタイプで。

ーーそのポジティブさは、もともとの性格ですか?

母の教育の賜物だと思います。母はできないことに対して容赦がなくて、「できないものなんてないんだよ。やらないだけ」とよく言ってました。ごほうびを多めに与えてでも、子どもになんでもやらせて、「できない」を徹底的になくす人だったんです。

例えば、学校の持久走大会では「◯位以内」という目標と、達成した時のごほうびの上限額が決まっていました。そうやって「ごほうびというエサがあれば、あなたたちは何だってできるんだ」と教わりましたね(笑)。

大人になってからは、人からもらえる言葉だったり、いつもより100円高いコンビニスイーツだったりとごほうびを自分で決めて、続けています。

食には欲望のまま向き合うことも大切

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ーー料理初心者は、「一人前の量がわからない」ところから始まると思うんです。工藤さんは、どうやってステップアップしていったんですか?

一人暮らしを始めたのが冬だったから、まずは一人鍋から始めました。300円くらいの小さい土鍋を母が買ってくれて。市販の鍋用スープから試して、「これを足したらおいしくなるかも」と自己流でやっていくうちに、なんでも作れるようになっていきました。

ーー自己流で!レシピ検索はしないんですか?

よほど凝った料理やお菓子作りじゃない限りは、レシピ検索しないですね。母が作ってくれたおいしい料理を、記憶を頼りに作るのが楽しいんです。

演技と料理って、通じるものがあると思います。料理は、完成図を想像しながら作りますよね。演技もそうです。役の表情や仕草など、自分が「これだ!」と思ったものを一つ一つ掛け合わせることで出来上がっていきます。どちらも、先に完成図を思い描いているからこそ、感覚的に作りながらも自分の作品を見つけ出すことができるんです。

ーー意外な共通点があるんですね。工藤さんが料理で気を付けているポイントはありますか?

母は「食べるならおいしい方がいい」という方針で、インスタントラーメンを食べる時も、野菜炒めをのせたり、調味料を足したり、ちょっとでもおいしくしようと努力する人だったんです。だから、私も同じように作っていますね。

家庭の味はそれぞれあるけど、私は母のおいしい味や工夫を覚えて育ってきているから、それに近い感覚が染みついているんだと思います。

ーー工藤さんがおうちごはんを楽しく感じる瞬間って、どんな時ですか?

実家だと、「もっとこうしたい!」と思っても実際にはやらないことがたくさんあるんです。出された料理に調味料をいっぱいかけるとか、マヨネーズやチーズをたくさん使うとか。一人暮らしでは、実家でなかなかやらなかったことを自由に、好きなだけ楽しんでいます。

ーー俳優さんは食事をセーブすることもあると思いますが、工藤さんはどうやってバランスをとっていらっしゃいますか?

食には、欲望のままに向き合うことが大事だと思っているんです。その分、どこかで量は制限するんですけどね。

私は料理も芝居も、常に「おもしろい方がいいじゃん!」って思っているから、あまり制限しません。例えば、体を絞らないといけない役が来ても、ヘルシーなメニューでどこまで遊べるかを楽しんでる。料理も仕事も、そのマインドは共通ですね。

ーー撮影が続くとロケ弁を食べることも増えるかと思いますが、調整はどうしていますか?

ロケ弁って揚げ物が多くて、食べ続けると肌が絶対に荒れるんです。でも、茶色いものっておいしいから、見ると食べたくなっちゃう(笑)。しっかり食べて、撮影の前だけちょっとだけ我慢したり、サラダを持って行ったりしています。でも、山場を越えたらガッといく。そうやってバランスを取っているのかもしれないですね。

ーー大きな役が決まった時など、思い出のごほうびごはんなどはありますか?

自分の卒業コンサートが終わった後に、人生で初めてビックマックを2個食べました(笑)。

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ーー工藤さん、元気ですね!終演後、きっと関係者の方へのあいさつなどもあって、夜遅い時間帯ですよね。

当時は戦隊シリーズの作品が決まっていたし、忙しすぎて意識していなくても痩せていた時なんです。卒業コンサートという大舞台を目指して食事に気を配っていたけど、終わったら、卒業おめでとうのケーキとか、ケータリングの余りものとか、体が全部胃袋になるくらいがっつり食べました。

次の日からドラマの撮影に向けた打合せや衣装合わせが始まるタイミングだったんですけど、思いっきり目が腫れていて。泣きすぎて腫れたのか、それとも塩分の取りすぎか…(笑)。

ーー(笑)。

食生活を気にして美を保つのは、もちろん大切だし、役者としてやるべきことなんですけど、そこで苦しくなりたくないんです。だから、ごはんだけは自分を甘やかしてあげる存在にしたい。私のごほうびは、基本的に食べ物だと思います(笑)。

仲間たちとホームパーティーも

ーーおうちでお客様に手料理をふるまう機会もあるんですか?

ありますよ。実家でもよくホームパーティーをしていたから、家に人を呼ぶのに抵抗がないんです。おもてなしメニューは、参加型の方が楽しいから好きなんです。

同期の石田(亜佑美)とはよく互いの家を行き来しています。うちにでっかいホットプレートがあるので、それで餃子パーティーをしたり、焼肉をしたり、たこ焼きをしたり、アヒージョをしたりもしました。

ーーメンバーが集まる時って、どんな空気なんですか?

先輩がいる時は、後輩が動きます。けど基本的には、うちでやるなら私が料理して石田が洗い物。石田家なら石田が料理して、私が洗い物担当です。飯窪は調理はしないけど、飲み物をそそいでくれたり、精一杯もてなしてくれます。

小田(さくら)は凝り性で、自分が好きな料理を好きに作るんですよね。彼女はカニが好きだから、ゆでて、むいて取り分けてくれるんです。少し不思議で、小籠包は作れるけど、餃子は焼けないって言うんです。生田(衣梨奈)さんは元気によく食べます。譜久村さんも。そして、よく笑ってる(笑)。佐藤(優樹)も自由ですけど、あの子はどちらかというと、じっくり食に向き合うタイプですね。

ーー食卓を囲むと、それぞれのキャラが出てきますよね。

そうなんですよね。同じ環境で、10年以上一緒にいたのに、こうも違うものかと驚きます。なんだかんだみんなよく食べてよくしゃべる。感心しちゃいます。

自炊は冷凍機能を使って、過去の自分に感謝

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ーー工藤さんのおうちの冷蔵庫は、一人暮らしサイズなんですか?

そうです。一番上の棚はジュースやお酒なんかで埋まっています。無糖のアイスコーヒーと粒マスタードが大好きなので、切らさないようにしていますね。

ーー粒マスタードって、そんなに量を使わなさそうですが…。

私は結構使うんですよね。「マイユ 種入りマスタード」を常備しています。ポテトサラダを作るのに使ったり、ウインナーが見えなくなるまでかけたり。ちょっといい値段なのにすぐなくなるから、いつも買いだめしておかないといけなくて。

ーー調味料へのこだわりが強いんでしょうか?

いえ、粒マスタード以外には、特にないんです。スーパーで買えるようなものばかり。

あ、でも天才的においしいと思ったのが、北陸に行った時にお土産コーナーで買った「室屋のしろえび入昆布つゆ」。めっちゃおいしくて、「2リットル欲しい!」と思いました。卵焼きにも使ったし、祖母の畑で取れたナスとゴーヤを使って冷たい蕎麦を作ったりしました。

ーーおいしそう!えびの出汁つゆってめずらしいですね。

あとは、実家がマーガリン派だったので、マーガリンも冷蔵庫に常備しています。それに卵も。野菜は切って冷凍しちゃいますね。

ーー冷凍を使いこなすタイプなんですね。

TikTokで料理動画を発信している、四郎さんがきっかけなんです。四郎さんは、「昨日料理してくれていた私、ありがとう」ってマインドなんですよね。それを見ているうちに、「確かに、あの日冷凍しておいた自分、えらいな」と思えるようになったんです。

おかずがない時も、ごはんを3~5合炊いて冷凍しておけばなんとかなるじゃないですか。「あの日ごはんを炊いた私、天才!」って思える。そうやって全部に感謝できるようになったら、一気に料理がおもしろくなりました。

工藤家の鉄板朝ごはん「砂糖バターパン」

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ーー演技をする時には、役柄から食生活を思い描くこともあるんですか?

ありますね。健康的な食事か、あたたかな家庭の味か、ジャンクフードか。飲み物も、コーヒーばかり飲んでいそうなキャラクターだな、と連想することがあります。

ーーその暮らしぶりを自宅で再現したことはありますか?

それはないかも。特殊なものを食べて育ってきた役柄じゃなければ再現しないと思います。ただ、アウトローな役だと自分の食生活も雑になって、質素になる瞬間はありますね。

ーー最後に、工藤家の鉄板飯を教えてください。

父命名の「砂糖バターパン」ですね。8枚切りの食パンに「これでもか!」ってくらいマーガリンを塗って、その上に、うそみたいな量の白いお砂糖を、平らに敷き詰めるんです。5ミリくらい積もっているイメージで。その後はオーブントースターで砂糖の色が変わって、焦げるか焦げないかくらいまで焼きます。4等分に切ったら、IKEAのカラフルなプラスチック皿に乗せて、完成!ジャリジャリ食べるのが、おいしいんですよね。

ーー砂糖をそんなに!なにより、バターパンだけど、マーガリンを使うのがポイントなんですね。

はい。実家は、バターよりマーガリン派なんです。オンラインの配信イベントでも取り上げたんですけど、打ち合わせでスタッフの皆さんが「何それ…?」ってざわついて。その時に初めて一般的な料理じゃないって気が付きました(笑)。

「砂糖バターパン」は、週末に父が作ってくれた料理なんです。うちは、平日は母が、週末は父が家事をするっていう役割分担がなんとなくあって。

ーー子どもって、週末はバラバラに起きてくるから、手軽に作れて助かるメニューだったのかもしれませんね。

そうだったのかも。うちはごはんよりパン派で、ホームベーカリーもよく使っていました。

砂糖バターパンは市販の食パンでもおいしいです!積もるくらい砂糖を使うのがポイントです。

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取材・編集:小沢あや(ピース株式会社)
構成:結井ゆき江
撮影:曽我美芽

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