
親ががんばっても子どもが食べない日はあるし「楽しい」食事が一番ーー横澤夏子さんのおうちごはん
等身大の育児トークや飾らない人柄で幅広い世代から支持を集めている芸人の横澤夏子さん。3人の娘さんの子育ての様子をInstagramや、藤本美貴さんとMCを担当するテレビ番組『夫が寝たあとに』(テレビ朝日)で紹介しています。
アイスム編集部一同も、横澤さんのファン。「ぜひ、横澤さんのおうちごはんのリアルを聞かせてください」とオファーしたところ、「お料理は得意ではないんです…」と一度お断りのご連絡がありました。
アイスムは食のメディアですが、料理が苦手だったり、好きじゃなかったりする方にも届けたい。みんながいつでも前向きに料理ができるわけではありません。そんな人たちにこそ届けたいことがたくさんあります。
そのコンセプトを伝え、改めてもう一度オファーしたところ「得意ではないですが、ぜひ」とご快諾いただき、取材が実現しました。
食べて欲しいと願って工夫した「バナナおにぎり」
ーー料理はあまり得意ではないと伺いました。そんな中で、毎日おうちごはんと向き合っているのだとか。
基本的には、料理は苦手なんです。でも今は「逃げられない日課として」なんとか向き合っている感じですね。
ーーまさに、料理好きではない横澤さんにお話を伺いたかったんです。
よろしくお願いします。自分の中で「よし、やるぞ!」とスイッチが入った時だけは、料理を楽しめるタイプでもあるんです。「これ作ってみたいな」と思えるメニューをインスタで見つけたり、ママ友から「せいろ蒸し、ラクでいいよ!」と聞いたりすると、ちょっとがんばろうかなって思えます。
ーー最近は、どんなメニューを作りましたか?
「土鍋ごはんなら食べる!」というお子さんがいると聞いて、「ホントに?」と気になって試しました。
あとは、『ノンストップ!』(フジテレビ)でご一緒している三上真奈アナウンサーに「冷凍ごはんをせいろで解凍するとおいしい!」と教えてもらって、早速やってみました。実験感覚で、「なにそれ、やってみたい!」と思えることを試すのが好きなんです。
ーー3人のお子さんが離乳食期から幼児食に移行していく中で、苦労されたことはありましたか?
大変なこと、たくさんありました〜。「この子の栄養が私にかかっている!」っていうプレッシャーがあって。「私がいないと子どもが生き延びられない!」と、命を背負っている感覚でしたね。毎日ほんとにしんどかったです。
ーー昨日ハマっていたメニューを今日出したら全然食べない…なんてこともありますよね。
あるある!あとは…そうですね。たとえば、ごはんにひじきを混ぜるとか、いろんな具材を入れた“混ぜごはん”をよく作っていたんです。でも、そうしているうちに、白いごはんを全然食べなくなっちゃって。どうやって打破したらいいのか、かなり悪戦苦闘していました。
ーーあるあるですね。よく外出時もふりかけを持ち歩く親御さんもいらっしゃいますよね。
最近は、十六穀米なら食べられることがわかって、それをよく炊いています。栄養もあるし、自分の気持ちも少しラクになるんですよね。「これなら大丈夫かな?」って。
あとは、棒状の長いおにぎりをラップでくるんだ「バナナおにぎり」がヒットしました。
ーー「バナナおにぎり」は、どんなきっかけで生まれたんですか?
夜に仕事がある日は、ベビーシッターさんに来てもらって、子どもたちをお願いしているんです。「今日もきっとごはん食べないだろうな」と思いながら外出した日があって。でもその日に限っては、しっかり食べていたんですよ。
ーーどうして食べられたのか、気になります。
私も気になって、シッターさんに「何があったんですか?」って聞いたら、「おにぎり作る?」って声をかけたら、全部しっかり食べたんですよって教えてくれて。「同じ食材なのに、手を加えるだけで、こんなに食べるんだ!」とびっくりしました。
ーーそこから工夫して「バナナおにぎり」が誕生したんですね。
そうなんです。「とにかくこぼさないで食べてほしい」「そしてできれば早く食べてほしい!」って思って(笑)。
子どもの口って小さいから、細長くしたら食べやすいんじゃないかと思って、バナナの形にしてみたんです。ラップで巻いて、バナナの皮をむくようにして渡すと、楽しそうに食べてくれるんですよ。口のまわりも汚れないし、すごく助かってます。
ーーアイディア勝ちですね!
ふふふ。他にも素敵なアイディアごはん、ありますよ!メイクさんが教えてくれたんですけど、ざく切りしたきゅうりに「ヒガシマル醤油」のうどんスープの素をもみこんで、浅漬風にして出すんです。
子どもはうどんが大好きなんですけど、野菜を全然食べてくれなくて。ヒガシマルのうどんスープは、あまじょっぱいのがおいしいし、きゅうりもモグモグ食べるようになりました。逆に「食べすぎると、きゅうり人間になっちゃうよ!」って声をかけたくらい(笑)。
同じ方法で大根も食べられるようになりましたね。
ーー子育て仲間や経験者のアドバイス、助かりますね。
本当に。ママ友だったり、メイクさんだったり、まわりの人にたくさん聞いています。おかげさまで、「うちの子は、これなら食べたよ」というレシピをたくさん教えてもらいました。
保育園の保護者懇談会で「きゅうりを食べない子なんです…」というママがいて、私もその場ですぐさっきのヒガシマルのテクニックを伝えました。
ーー横澤さんに助けられた親御さんもたくさんいらっしゃると思います!逆に「張り切って作ったのにまったく食べてもらえなかった」という経験は?
いっぱいあります!アスパラの豚肉巻きとか、揚げ物とか。巻いたり揚げたりって、とっても手がかかるじゃないですか。だからこそ「なんで食べないんだろう」って、イライラしちゃうこともあります。
せっかく作った煮物も、あまり食べないですね。副菜にしては面倒くさいな〜、副菜のくせに!って思いながらもがんばって作るのに、結局手を付けないと悲しくなっちゃう。
ーーそんな中で「とりあえずコレさえあれば!」というごはんはありますか?
ラーメンは必ず食べるんです。生ラーメンを茹でて、野菜炒めとゆで卵を入れると完食してくれるので、お互いにラッキーごはんになっています。
ごはんにありつけたら「やったー!!!」が自己肯定の秘訣
ーー「もう今日はごはん作れない!」という日、どう乗り越えていますか?
近所のお肉屋さんで、メンチカツを買います。あとはお弁当に頼っているかな。「今日はがんばれない!」って日、よくあるんですよ。
でも、さっさとごはんを食べたい日のために、あっためてたまごでとじるだけの状態にした「親子丼の素」を作って冷凍しておいていますね。
ーー疲れていても、基本はおうちごはんなんですね。
子どもとだと、外食の方が疲れちゃう。おうちの方が手っ取り早いし、作り置きをしておいてくれた過去の私にお礼を言いたくなるんです。「数日前の横澤夏子、ありがとう!」って。
ーー横澤さんがストックしている「いざという時用」の冷凍食品やレトルトがあれば教えてください。
冷凍やレトルト、めっちゃ活用しています!特にカルボナーラソースは子どもも好きで、パスタにかけるだけであっという間に食べてくれるから楽ですね。「くるくるパスタだよ」と声をかけて、一緒に楽しんでいます。
ーー横澤さんの食エピソードはいつも明るくて、お話を聞いていても和みます。「手抜きじゃなくて“工夫”」と前向きに捉えるには、どうしたらいいでしょうか。
まずは「ごはんにありつけた!!!やったー!!!」って思うことですね。こちらのがんばりと子どもが食べるものって、まったく比例しないじゃないですか。
ーー本当にそうですよね。
うちの子どもたちはコーンスープが大好きなんです。パックのコーンスープの素を牛乳で割っただけのものですが、誕生日ケーキが出てきたんじゃないかってくらいよろこぶんですよ。毎日お味噌汁を作っても食べないのに(笑)。
だから私も「親の手間とか関係ないんだな」と思えるようになって。「じゃあ、子どもたちがよろこぶのが一番だ!」って思うんです。
ーーコーンスープを牛乳で割ったら、もう最高の料理だ!と。
保育園で「お母さんの好きなところはどこですか?」って質問された時に、「コーンスープを作るところ」って答えていたくらいですから(笑)。母の味、コーンスープになりそうです。
子どもが食べないのは、料理スキルのせいじゃない
ーー横澤さんも「家族に何を食べさせたらいいか分からない…」と悩んだ時期は長かったですか?
はい。「うちの子どもの栄養は足りているのか?」って考えてしまうこともあったんですが、保育園に入ったら、一日一食は管理栄養士さんのごはんが食べられるじゃないですか。それがとてもありがたくて。「うちの子どもの栄養を考えてくれる方が増えた!」と思えたし、肩の荷が下りました。
ーープロが監修しているごはんを食べているから大丈夫、と気楽になりますよね。
うちの3人娘を見ていると、本当に食べる子と食べない子がいるな〜って思うんです。だからミシュランの調査員だと思うことにしました。「食べない!」「これはイヤ!」とか言われても、こちらが腹を立てると疲れちゃうし、もう私の料理うんぬんじゃなくて、「そっか、舌が合わなかったんだね」って、割り切るんです(笑)。
ーーそう思えるようになったきっかけは?
前に、料理家のSHIORIさんに「お子さんは何を食べますか?」って聞いたことがあるんです。そうしたら、「なにも食べないですよ」って明るく返してくれて。SHIORIさんが「お母さんの料理の腕は関係ない!」と言い切ってくれたおかげで「私のせいじゃないんだ!」と思えたんです。
私は昔からSHIORIさんのファンで、『作ってあげたい彼ごはん』(宝島社)のレシピを真似して、作りまくってきたんですよ。そんな家庭料理のスペシャリストのSHIORIさんが「最近はもう、ポテトとうどんしか食べないよ〜」って話してるのを聞いていたら「じゃあうちの子たちが食べなくても、仕方ないじゃん!」って思えて。
ーーSHIORIさんのレシピに慣れ親しんでいた世代の親御さんたちにも、刺さりますね。
それまでは子どもに対して「食べろ食べろ!食べないと死ぬぞ!」って、焦って食事を与えていたけれど、「楽しさ」を忘れてたなと思って。おいしく食べる、楽しく過ごす、ごはんって楽しい!ってことを伝えていきたいなと思うようになったんです。
「食べる」だけじゃない「楽しむ」食育
ーーお子さんたちと食事を楽しむために工夫していることは?
子どもたちが好きなものを、一品だけでも出します。
あと、子どもたちにはよく「早く食べて!」って言っちゃうけどやめたい。急かすのは自分に余裕がないからだし、反省するんですよ。でも結局言っちゃう。やめよう、という気持ちだけはあります。
ーーあるあるですね。
だから、家事をする前に、子どもたちに見つからないように、まずシュークリームを吸うんです。
ーー食べる、じゃなくて「吸う」んですね(笑)。
そうです、それくらいの勢いで「吸う」んですよ。甘いものをこっそり補給したら、イライラしなくなるので。いいですよ〜。
ーー最後に「子どもとのおうちごはんを楽しみたい」という方へ、アドバイスをお願いします。
子どもって、食べない時は食べないです。無理に食べさせようと焦るよりも「お味噌汁に野菜を入れていれば、汁になんらかの栄養エキスが出てる!」とか、そんな感じでいい。みんな、せーの!で、肩の力を抜いていきましょう!