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無理せずおいしい、無理しないからおいしい。山崎怜奈さんの自炊論

きのう何作った?

PEOPLE
2025.11.10

ラジオパーソナリティとして、タレントとして、日々活躍する山崎怜奈さん。忙しい日々の中でも、「食べること」を大切にしているそうです。面倒くさがり屋を自認しながらも、便利グッズやお気に入りの器を味方に、自炊を「自分を励ます時間」に変えているのだとか。「完璧じゃなくていい、おいしければ正解」と語る彼女のおうちごはんとは?

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お話を伺った人:山崎怜奈さん

1997年5月21日生まれ、東京都出身、慶應義塾大学卒業。2022年に乃木坂46を卒業。ラジオ『山崎怜奈の誰かに話したかったこと。』(TOKYO FM 毎週月〜木13:00~14:55)を担当中。Hanako Webにて連載中のエッセイ『山崎怜奈の「言葉のおすそわけ」』が書籍化し『まっすぐ生きてきましたが』(マガジンハウス)として好評発売中。

自炊はできる範囲で。無理をしないおうちごはん

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ーー普段から自炊派という山崎さん。どれくらいのペースでキッチンに立ちますか?

外食も好きですが、人との予定が入っていない日はなるべく自炊したいと思っています。お仕事でいただくお弁当はどうしてもボリュームや塩分が多めになりがちで。「今日はちょっとむくみそうだな」と思う日は、家で握ったおにぎりを持っていくこともあります。

ーーランチもお手製のものを持っていくんですね。

ランチと呼べるほどのものではありませんが、ラジオも生放送が昼の時間帯なので、時間がある時は前日の残り物を包んだり、朝にさっと作ったり。きっちり決めず、“できる範囲で”がモットーです。

ーー昔から、料理は習慣化してましたか?

中学の頃、母に「朝ごはんは自分で用意しなさい」と言われていて、毎朝作っていました。といっても、グラノーラにバナナをスプーンで切って入れるとか、簡単なものをぱぱっと。

ーー毎朝、ごはんをしっかりと食べるんですね。

どんなに簡単でも「自分で作った!」というだけで、「今日の私、えらいな」と思えるんです。レシピを考えたのは私じゃないけれど、おいしくできた瞬間は、純粋に「自分、なんて素晴らしいんだろう」って思うので、作るのは好きです。

自分のことってかわいがれないじゃないですか。掃除も洗濯も面倒。でも、“明日を元気に迎えるための準備”として自炊をしている自分には、「えらすぎる!」って素直に言ってあげたくなります。

ーー自分をかわいがる手段としての自炊、という感じですね。

コンビニも外食もおいしいものがたくさんある時代だからこそ、わざわざ作る行為そのものに意味がある気がします。

しかも、仕事柄ラジオで旬や食材の話題に触れることも多いので、「今年のさんまはおいしいですね」と言う時に、ちゃんと実感を持って話したい。それも自炊を続ける理由のひとつです。

作り置きは気分がのる日にまとめて

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ーー買い出しや下ごしらえの工夫は?

毎日スーパーに行くのは面倒なので、空のリュックやトートを持って一気に買い込んで、まとめて5〜6品ほど作ることが多いです。ラジオを聴きながら、だいたい2時間くらいかけて。

ーーすごい!なかなかの作り置き量ですね。

といっても、たいしたことはしていないですよ。日持ちするおかずを何品か作りつつ、きのこをほぐして「いつでも何でも入れられるよパック」を作っておいたり、鮭の切り身を冷凍しておいたり。冷凍庫はいつも充実しています。

お取り寄せも好きで、スープや薄皮の餃子など、「解凍するだけで一品」になるものを常備していますね。ほかにも、肉、野菜、魚…とにかく「スタンバイ食材」をいろいろ揃えておくのが安心。

ーー冷凍庫が頼れる存在になっているんですね。

そうですね。冷凍できない食材や、納豆や豆腐のようなちょっとしたものは、その日にコンビニで買うこともあります。

「料理しなきゃ」と考えると途中で面倒になってくるので、動画を流したり、ワインを片手に気分を変えたりしながら、日々のんびりやっています。料理はだましだましやるくらいが、私にはちょうどいいんです。

「面倒くさがり屋」が自炊を続ける理由

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ーー山崎さんはエッセイ『まっすぐ生きてきましたが』の中で、ご自身を「面倒くさがり屋」としています。それでも自炊を続けるのはなぜですか?

毎日きっちりしているわけではありません。夕方に帰れて、気が向いた時だけ。「お腹は空くし、家を出るのは面倒」とか、そんな時に、自分のペースでキッチンに立つ感じです。

ーーペースを保つために意識していることは。

できるだけ効率化したいタイプなので、“手抜き”ではなく“手間抜き”ができるアイテムはとても大事にしています。無印良品のレトルトもよく使いますね。

輪切りにして焼いたなすのフライパンに直接レトルトのカレーを入れて「なすカレー和え」にしたり。レトルトを調味料感覚で使っています。手軽なのにちょっと満足感が出るし、野菜もたくさんとれてヘルシーなんです。

ーーレトルトにちょい足し、ではなく「レトルトをちょい足し」といった感覚ですね。

そうですね。思い返すと、実家では母がよく「クックドゥ」を使っていたんです。子どものころは「なんでだろう?」と思っていたけれど、今は仕事と日々の生活の中で、そのありがたみがすごくわかります。手間は抜きつつ、おいしいものも食べたい。そんな時の心強い味方ですよね。

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ーーエッセイでも、料理の「レシピに沿って答えにたどり着く感覚」が好きと綴られていましたね。

「こんな簡単な工程でおいしくなるなんて!」という、アハ体験が好きなんです。「料理酒ってこんなに使えるんだ」とか「みりんを入れるタイミングで味が変わるんだ」とか、どんどんわかってくるのが楽しくて。

料理家の長谷川あかりさんにいろいろ教わったり、有賀薫さんのスープのレシピを倍量で作って、ジップロックに入れて冷凍しておくこともあります。「食卓に温かなスープがあるだけで、幸福度がこんなに違うんだ!」と気づいてからは、スープを常備するようになりました。

ーーそんな山崎さんでも、「今日はもう何も作りたくない」という日もありますか?

ありますよ、もちろん。無心でお酒を飲みながらつまむこともあるし、友達と「しゃぶ葉」に行くこともあるし。「ポテトでしか癒せない!」というレベルで疲れる日もあります。そんな夜は、大量のポテトを前に、ワインやビールを飲むことで「これでよし」と思えるんですよね。

ーー晩酌を楽しまれているんですね。

好きです。家には「おつまみボトル」を常備しています。山椒入りの青豆、さばチップ、ナッツなど、気分でつまめるものを色々と用意しているんですよ。疲れていて「ごはんどころじゃない!」なんて時は、それで済ませる日もあります。

ーー気負わずにおつまみを楽しむ時間があるのは素敵ですね。

あとは、「とにかくお腹を満たして血糖値を上げて寝よう」という日もあります。レトルトのパックごはんに卵を割ってそのままたまごかけごはん。あるいはパスタをゆでて、ソースをかけて終わり、とか。

ーーちゃんと自分をいたわる一食になっている気がします。

毎日、完璧じゃなくていい。「食べることで今日を終わらせる」という行為だけで、自分にとっては十分なんです。

「手間抜き」を支える調味料とキッチンツール

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ーー山崎さんはうまく料理と付き合っていらっしゃいますが、気負わないコツは?

お菓子作りと違って、料理はなんとでもなるんですよね。正確には、なんとかしている、かな。いつも目分量で、感覚的に作っています。

もちろんレシピを見て作ることもありますが、調味料の力を信じています。工程が多少雑でも「塩がおいしいから大丈夫!」って思うことにしているんです。

ーー調味料への信頼が厚いんですね。

そうですね。地方の仕事の時にお土産屋さんでご当地のオリーブオイルを買って帰ったり、イタリアでパスタをまとめて買ってきたり。食材と調味料がちゃんとしていれば、だいたいおいしくなる気がします。

ーー調味料にもこだわりがありそうですが、推しアイテムは?

チューブの生姜とにんにくは常備していますね。スープに少し入れるだけで身体が温まるし、味が締まるんです。

あとは山椒を6種類ほど。風味が変わるので楽しいです。七味をなんでもかける人の感覚で、私はわりと何にでも山椒をかけてみます。中華炒めにも和食にも、納豆にも合うんですよ。

ーー6種も!山椒はそれぞれ、メーカーによる個性が際立ちますよね。山崎さん流の“手間抜き”ツールは何ですか?

ぶんぶんチョッパーは必須です。みじん切りをしたくないんです。あとは電子レンジをフル活用。

それと、きのこの冷凍セットは“神食材”ですね。繊維がいい意味で崩れてクタッとするので、「凍らせたほうがいいのか!」と気づいてから常備しています。カット野菜も使うし、シーフードミックスも常にあります。

ーー道具や器にもこだわりがあるそうですね。

まな板にもなるしプレートにもなるお皿とか、無印良品の「横置きできる ストレーナー付き冷水筒」とか、便利アイテムが好きです。

ーー作り置きや食材の使い方にもコツがありそうです。

唐辛子を使って保存できるようにしたり、食べ切れなかった鍋の残りはスープジャーに入れて仕事現場に持って行ったり。フリーズドライの味噌汁に豆腐を適当に入れて、かさ増しするのも定番です。

ーースーパーでつい買ってしまうものや、「これさえあれば大丈夫」という食材は?

納豆です。大好きで、絶対に切らしたくないですね。お肉や魚でたんぱく質を取ろうと思うとスーパーに行く必要があるけれど、閉店までに間に合わなければ、コンビニでも手軽に買える豆腐と納豆で補おうとしています。

豆腐、納豆、冷凍しているきのことねぎ。この三つがあればなんとでもなります。豆腐の上にひきわり納豆とめかぶ、かつおぶしをのせて食べるとか。

どうしてもがんばれない日だってある

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ーー「料理をしない日」も含めて、自炊との付き合い方をどう考えていますか?

決まりごとを作ると性格的に疲れてしまうので、あまり決めていません。
「元気な時しかやらない」「絶対に無理しない」。それがルールです。

どうしても栄養が気になる人には、餃子のお取り寄せは本当におすすめです。「富山の餃子専門店 ミッちゃん餃子」「まさし」「ぎょうざの宝永」など。餃子はお肉と野菜が入っているし、完全食だと思っています。

「野菜とらなきゃ」と思う時は、カルディで買ったライスペーパーを水でふやかして、野菜を巻くんです。ちまちま食べるより、まとめて野菜をとれるので便利だなと思って。「山盛りサラダの太巻き」みたいな感覚で。家にあるピリ辛ソースで味を変えて楽しんでいます。

ーー生春巻きのようにするんですね。たくさんのヒントを、ありがとうございました。

ご家族がいる方は「どうしても料理をしなきゃいけない」タイミングもあると思います。「まずは日々、おつかれさまです」という気持ちです。

私のように一人暮らしの方なら、自由でいい。自分の機嫌を優先して、作って食べたほうがテンションが上がるならそれでいいし、そうでないなら無理に作らなくてもいいと思います。自炊が偉いわけではないので。

ーーそう言ってもらえると、肩の荷が下りる人も多そうです。

私も、コンビニのメンマにハマって、そればかり食べていた時期もあります。「食べても食べなくても合格」。誰かに褒めてもらうのを期待するのではなく、自分で自分にハナマルを押してあげる。

ごほうびごはんは外食でいいし、普段のごはんがおいしかったらそれだけでご機嫌。工程や手間なんて、気にしすぎなくていいと思います。

ーーエッセイにも、そんなごはんの話がよく出てきますよね。

私も、「自炊を続けよう」と思ってやっているわけではないんです。続けようと思うと気合いが必要になってしまうから、「気づいたら続いていた」くらいがちょうどいい。何を食べても、食べなくても、自分がそれで幸せなら合格。それくらい気楽でいいと思います。

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