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120歳まで元気に生きたい——管理栄養士を目指すみきママの「食」と「学び」

きのう何作った?

PEOPLE
2025.12.26

料理研究家・みきママさんは、仕事と子育ての合間を縫って管理栄養士を目指し大学へ通っています。その背景には「120歳まで健康に生きたい」という思いがあるそう。

食べることの大切さ、子どもたちとの食事を通じて見つけた母としての生き方。チャレンジを続ける、みきママさんのパワーの源を探ります。

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お話を伺った人:みきママさん

2008年から開始したブログ『藤原家の毎日家ごはん。』が人気を博し、おうち料理研究家として活動。2022年4月には、管理栄養士の資格取得を目指し、大学に進学。レシピ本『藤原さんちの毎日ごはん』シリーズ(主婦と生活社)は累計売上100万部を突破。YouTube『みきママChannel』も好評。

みきママが管理栄養士を目指す理由は「120歳まで生きたい」

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ーーみきママさんは今、管理栄養士の国家資格取得を目指して大学に通われているとか。大学受験も、お仕事をしながら挑戦されたんですね。

はい。大学受験すると決めてから試験まで半年しかなかったんですが、無料のオンライン講座を見つけて、小学校の基礎から勉強し直したんです。

あとは息子のお友達に英語を教えてもらったり、小論文の添削をお願いしたりもしました。泣きながら何度も書き直しましたね。

ーー息子さんのお友達からの、心強いバックアップがあったんですね。「管理栄養士の資格を取りたい」と思った理由は?

プロとして栄養のことをしっかりと伝えたいからです。健康のためには食べ物に含まれる栄養が大切だと思っていますし、料理を教えるなら、やっぱり栄養や体の仕組みについて正しく知っておきたいと考えるようになりました。

それに、私自身が「120歳まで生きたい」と思っているので、健康に長生きしたいんですよ。

ーー120歳、ですか!?

これからの時代、医療の進歩によって、粘れば120歳まで生きられる可能性もあると思うんです。私は健康寿命を伸ばしたうえで、120歳まで生きたい。そのためには、やっぱり食べ物がとっても大事だと思います。仕事が忙しくて、ごはんを食べられないときってありませんか?

ーーありますね。

お腹がすいたら、常に食べられるようにしておいた方がいいと思うんです。だから私はいつも、朝おにぎりを作って持ち歩いています。

ーー見せていただいてもいいですか?

いいですよ。出かける前に、息子用と自分用に仕込んでいるんです。お腹が空いたらすぐ食べられるので、夜までめっちゃ元気に過ごせますよ。

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ーーおいしそう!大きいおにぎりですね。具材にはどんなこだわりが?

おにぎりの具は、たんぱく質が摂れるお肉かお魚をおすすめします。炭水化物とたんぱく質、ビタミンが組み合わさって、熱を作り出します。定番の焼き鮭とか、前日の残り物のお肉料理、例えば生姜焼きなんかもいいですね。ごはんにのっけて、ラップで包んでねじり上げて完成です。

ビタミンが豊富なみかんも一緒に。これで髪の毛や肌もキレイに保てますよ。大学受験を控えている次男にもランチを持たせているんですけど、「おにぎりがいい」って言うんです。

ーーお弁当よりもおにぎり?

おにぎりなら勉強しながらでも片手で食べられますからね。私も大学の休み時間に、勉強しながら食べられるおにぎりって最高だなって思います。

体を元気にする三つの栄養素とは?

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ーーみきママさんでも、忙しくて食事が疎かになったり、栄養が偏ってしまうような時期もあったんですか?

大学に入る前までダイエットしたくて、夜にごはんを抜いていたんです。体重が減っていい感じだと思ったら、どんどん体がシワシワになっていくんです。元気がなくなっていくんですね。

なんでだろう?と思っていたら、炭水化物とたんぱく質、ビタミンの三つの栄養素が足りていなかったんです。

その経験もあって、お肉のおにぎりはすごくいいなと思います。お肉にはたんぱく質だけでなく、身体に大事なビタミンも入っているからバランスが取りやすいんです。

ーー大学で学んだ栄養学を、すでに食事に取り入れているんですね。

そうなんです。夜に白米を食べると太るのかなと思っていたけど、いざ食べてみると全然そんなことはないんです。お米はちゃんとエネルギーに変わるから。夜に白米を抜いていたときより、体がすごく元気になって、肌も髪も状態が良くなった気がします。みかん(ビタミンと糖分)を追加すればもう完璧。超キレイでいられますよ。

ーーみきママさんのように「長生きするぞ!」の気持ちで栄養学を学んで、理論に基づいた食事を摂れば、本当に120歳まで元気に生きられそうですね。

絶対に長生きしてやるって思ってます。子どもたちには「私が看取るからね」って伝えてます(笑)。

“鉄人”のレシピで料理に開眼

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ーー料理研究家として活動される前は、会社員としてお仕事されていたんですよね。料理することはもともとお好きだったんですか。

いえ、料理は全くできなかったんです。旅行会社で新入社員として働いていたとき、家でごはんを作って食べるようにしたら、お金が貯まるってことに気がついて。

最初は貯金のために自炊していたんですけど、得意じゃないからおいしく作れない。おいしく作るにはどうしたらいいかなと思って、図書館で料理本を探しました。陳建一さんとか、道場六三郎さんとか、料理人の方たちの立派な本を見つけたんです。

ーーあの頃の「料理の鉄人」たちですね。

そう。図書館に通って、料理人のレシピとか、味付けのコツをメモって、家でそのレシピを再現してみたんです。そしたら、超おいしいじゃん!ってびっくり。

でもプロが使う食材や調味料を持っていないので、家にあるもので代用して、自分なりにおいしい味を見つけるまであれこれやってみました。そんな風にしておいしくできたら、レシピをブログで紹介していったんです。

ーー料理研究家・みきママの誕生ですね。料理本の中でも、巨匠と呼ばれるようなプロの文献を参考にするところがさすがです。

プロの料理人の方のレシピは、本を見てひと通り全部やりましたね。

調理の工夫で乗り越えた。食が進む、離乳食のコツ

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ーー第一子出産後、離乳食も始まり、大変な時期があったと思うんですが、どのように乗り切ったんでしょうか。

週に1回くらい、にんじんやほうれん草を茹でて、ミキサーにかけて製氷機でブロック状に冷凍して保存していました。それをいくつか組み合わせてレンジでチンするだけで簡単な離乳食が完成です。

生後5〜6カ月くらいはペースト状のものがいいので、ミキサーにかけて。生後7〜8カ月は細かく具材を刻んで、同じように冷凍しておけばラクでしたね。同じブロックで量を増やしていくだけで大丈夫です。もし離乳食ブロックが余ったら、それを全部鍋に放り込んでカレーにしちゃってました。いろんな野菜の出汁が溶け込むので、とってもおいしいカレーができるんですよ。

ーーアイディアがすごい。 みきママさんのお話を聞くと、だいぶラクにできそうな気がしてきます。

それでもひとり目のときは産後うつになったんです。おっぱいが大好きな子だったから、あげないと泣き止んでくれなくて。自分でなんとかしなきゃいけない状況が長かったので辛かったです。

ーーみきママさんにもそんな時期があったんですね。

だからこそ、離乳食はいろんな工夫をしました。1歳近くになると「離乳食後期」になり大人と子どもの食事を作りわけるのが大変な時期だと思います。食べる量も増えてくる時期ですね。その時期、うちは“とりわけ離乳食”にしたんです。

ーーとりわけ離乳食、ですか?

例えばお好み焼きにする場合、途中までは同じレシピで、大きいサイズ、小さいサイズのお好み焼きを焼きます。最後にソースの味や量を調整して、大人味と子ども味に分けていました。

子どものためだけに食材を用意しなくていいからラクですし、子どもは大人と同じものを食べられる状況がうれしいので、食が進むんですよね。

大ゲンカしても、ごはんを食べれば仲直り

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ーーお子さんとの食事において、みきママさんが意識していることは?

食べるときは、いつも一緒に食べるようにしています。キッチンで料理とか洗い物をしながら、子どもに「早く食べなさい」ってやりたくなることも多いと思うんです。でも、そうすると親子で会話ができる時間がないですよね。ちゃんと座って一緒に食べると、やっぱりごはんがおいしいから、子どもはいろんな話をしてくれます。

ーー確かに、そうかもしれません。

大学生になった今でも、息子が帰ってきたらごはんを出してあげて、隣で見ているんですけど、そうすると「今日こんなことがあって」みたいな話をしてくれます。

ーーおいしいものがあると自然と会話が生まれるんですね。

そう思います。子どもは子どもなりにストレスを抱えているから、意外とイライラしているんですよ。イライラしているときは、ビタミンCが不足しているので、みかんを食べさせます。ケンカになりそうなときには「とりあえずみかんを食べなさい」って、みかんを口に入れてあげます(笑)。

ーーおもしろいお母さんですね(笑)。食事を通じて、お子さんの成長を感じることは?

うちの子たちは、夕飯のとき1時間くらいずーっとしゃべっているんです。話を聞いているとおもしろくて、「そんなことも考えるようになったのか」って成長を感じますね。

子どもが友達を連れてくるので、ごはんを出してあげて、みんなで食べることもあります。食事の場を楽しんでくれるようになったことに成長を感じますね。

ーーお友達も集まってごはんが食べられる場所があるって最高ですね。ちなみに、息子さんに反抗期はありましたか?

ありますよ!思春期の頃は息子もイライラしていることが多いから、たわいもないことでケンカになりました。

ーーケンカをしていても、食事は一緒にするんですか?

そうですね。イライラの原因のひとつはやっぱり「お腹が空いている」からだったんです。お互いにむかついていても、食べ始めると「うまい」とか言って、だんだん仲直りしていきます。

「結果で返さなきゃ」息子が励まされた母の“受験弁当”

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ーー国立大学に合格した長男の受験期を支えた、みきママさんのお弁当のレシピ本『東大合格弁当』(扶桑社/2024年)も話題になりました。受験生のお弁当ということで、栄養面で意識したことはありますか?

記憶力がアップするレシチン、精神が落ち着くカルシウム、免疫力アップのビタミンC、この三つの栄養素は欠かさずに取り入れるようにしました。食材としては、魚と卵とフルーツがあればだいたいカバーできます。

ーー毎日作るとなると、同じようなお弁当に偏りがちです。みきママさんのお弁当は巻き寿司だったりハンバーガーだったり、バリエーション豊富ですごいなと思いました。

前の日の残り物を使うこともありますよ。でもやっぱり、毎日同じものを食べたくはないだろうなと思って。

受験勉強をがんばるのは息子なので、私にできることはおいしいお弁当を作ることぐらいしかありません。朝30分しか時間がないんですけど、諦めずに時間ギリギリまで作っていました。

ーー愛情たっぷりのお弁当。息子さんもうれしかったのでは?

息子はこの努力をちゃんとわかってくれていたんです。後から聞いた話では「お母さんがお弁当を作ってくれたんだから、マジでがんばらなきゃ」、「ちゃんと結果で返さなきゃ」と思って、がんばったらしいです。

ーーみきママさんの思いが、口で言わなくてもちゃんと伝わっていたんですね。

それを聞いて、本当に超うれしかったです!今は次男の受験を控えているので、がんばってくれていることを信じておにぎりを作って渡しています。

みきママが、母になったあの日の私に伝えたいこと

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ーーお子さんが成長した今、母になったときの自分に、伝えたい言葉は?

母になったときの自分に「子どもも、自分と同じ人間。だから尊重してあげようね」と伝えたいです。

ーーどんなときに「子どももひとりの人間」だと感じますか?

私は、辛いときに子どもに話を聞いてもらったり、悩みを相談したりします。小学生の娘はしっかりしていて、私にすごくいいアドバイスをしてくれるんです。

初めての子育ては、未来が見えないんですよね。赤ちゃんの頃は、「本当に育てられるのかな?」と不安でした。でも成長していく子どもを見ていると、あらためて「子どももひとりの人間なんだなあ」って思えました。いつか力になってくれる日がきますよ。

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取材・構成:川崎絵美
撮影:小原聡太
編集:小沢あや(ピース株式会社)