おしえてミニトマト農家さん!あまいミニトマトをつくるには、どうすればいいですか?〜栽培編〜
食べものにまつわる、こどもたちの「なぜ?」「どうして?」。おうちの方もよく聞かれるのではないでしょうか。そこで、こどもたちからのお手紙を片手に、しゃしん絵本作家のキッチンミノルさんに、実際に工場やお店の方に疑問の答えを聞いてきていただきました!写真と動画で、楽しくリポートします。社会科見学に出かけたつもりで、ぜひお子さんといっしょに楽しんでくださいね!今回は、さらさん(8歳)からの、「あまいミニトマトをつくるにはどうしたらいいですか?」というお手紙を持って、愛知県に出かけました!
編集部にさらさん(8歳)からのお手紙がとどきました。
ミニトマトをつくっている人へ
わたしは ミニトマトが好きです。
あまいのもあまずっぱいおいしいと思います。
それに、いろんな形があっておもしろいです。
わたしは学校でミニトマトをそだてています。
しつもんがあります。おねがいします。
・おいしくそだてるにはどうしたらいいですか?
・いっぱい実をつけるためにはどうしたらいいですか。
・わたしはいつもサラダでたべています。
おすすめのたべかたはありますか。
・おいしいミニトマトの見わけかたはありますか。(スーパーで)
これからもおいしいトマトをいっぱいつくってください。
東京都板橋区 さら8さいより
編集部はいつものようにしゃしん絵本作家のキッチンミノルさんに相談です。キッチンミノルさんもいつものように答えます。「わかりました!ミニトマトを育てている農家さんに会って代わりにきいてきますね!」
(ビュ〜ン!)キッチンさんはあっという間に飛び出していきました。
勢いよく飛び出してみたものの、ミニトマト農家さんを知らなかったキッチンミノル。困った困ったさてどうするか。
「そうだ!困ったときにはひとりで悩まず友達に相談だ」と急に明るい表情。農業のことなら日本農業新聞さん(編集部注:日本で唯一の日刊農業専門紙)に連絡してみよう。思い立ったら即実行ということで、キッチンさんはさっそく相談してみます。
「日本農業新聞さん、こんなお手紙が届いたのですが…」
日本農業新聞さんはニコニコして答えます。
「キッチンさん、よくぞ聞いてくれました!おすすめのミニトマト産地が愛知県の田原市にありますよ。農家さんが「みなみレッド」というチームを作って、ミニトマトの『アイコ』『イエローアイコ』『シンディースイート』という品種に絞って栽培しています。最近では『とまらん♪』というブランドを立ち上げて、自分達の作るミニトマトのおいしさをみなさんに知ってもらう活動も積極的にしているので、いろいろ教えてくれると思いますよ。ぜひ会って話をきいてきてください!!」
「おお〜さすがの情報通!ありがとうございます!!」とあいさつもそこそこにキッチンさんはすぐに飛び出していきました。
編集部:注
みなみレッド
愛知県の渥美半島でミニトマトを栽培する45の農家さんが作ったチーム。おいしいミニトマトを食卓に届けるために、チーム全体で栽培技術の向上や販促活動に情熱的に取り組んでいる。
ということでやってきました!愛知県の渥美半島。
東京駅から豊橋駅まで新幹線に乗って、そこから車で約一時間のところに田原市はあります。
指定された場所に近づくと、おおきなガラス張りのハウスが出現!おとずれたのは6月の中旬。ふだんなら梅雨真っ最中のはずが、今年はすでに梅雨があけて肌に刺さるような日差しが降りそそいでいます。
おーい!キッチンさん。
あっ、中神さん。おはようございます。わざわざ外で待っていてくれたんですね。
ちがうよ、中があついんだよ〜!!
あはは、そうですか…
出迎えてくれたのは、みなみレッドの中神史詞さん。中神さんはミニトマトの中でアイコという品種を専門にそだてています。
今日はよろしくお願いします。
まぁまぁまずは冷たい水でも飲んで一息入れてから。
ありがとうございます!グビグビ、プハ〜〜。生きかえります。
いい飲みっぷりだね。
冷えた水が五臓六腑にしみわたります。それにしてもおおきなハウスですね。
一つのおおきさが240 坪くらいかな。それが4棟と、ほかのところには280坪のハウスが1棟あるよ。
す、すごい!ぜひ中に入って取材したいのですが、中神さんが外で待っていたくらいですから、中はきっとあついんでしょうね……
ふふふ、覚悟しておいた方がいいぞ〜
おぉぉぉ……でもきっと、トマトは夏の野菜だからあつい方が元気ということなんですよね?
いやいや、いまの日本の夏はトマトにも厳しいときもあるよ。それにうちはハウス栽培だから夏はあつくなりすぎるんだよ。だから8月9月は出荷はおやすみして、10月からの出荷の準備期間にしているんだ。
8月9月はすずしい北海道で育てられたアイコが出回っていると思うから、今度買うときは栽培地域のを見てみてよ。
一年中あるとおもっているミニトマトも、時期によって栽培地域が変わるんですね。常に一つのところで作っているわけではないんだ!
そうそう、おいしい時期っていうのがそれぞれの地域ごとにあるから、渥美半島では夏は作らないけど、他の地域のミニトマトがそれをおぎなうようにスーパーにならぶんだよ。
なにげなく食べていたけど、栽培地域を気にすると季節の移りかわりがわかってくるのかぁ。
こういうのを出荷リレーといって、栽培地域が変わっていくことで、年間とおしてミニトマトをみなさんが安定して食べられるようになっているんだね。
(空に向かって)ありがとうございます!!
おう、おう、どうした急に!
いや、なんとなくすべての人に感謝してみたくなって!!
そ、そうなんだ。
ところで今日(取材日は梅雨が明けたばかりの6月下旬)みたいなあつい日は、直射日光がトマトにあたらないように、遮光カーテンで屋根をおおったり、窓をあけたりして調整するんだけど、遮光カーテンをおおったりするところを見てみたい?
みたいみたい!見てみたい!!
それでは行くよ〜
おお〜風がとおりましたね。それに少し日陰になっただけなのに、たしかに涼しくなったぁ〜
そうでしょ!太陽がしずむ夕方にはまた遮光カーテンをたたむんだ。
直射日光があたらないだけであつさが全然ちがうんですね。
そうだね。さらさんが育てているミニトマトも、もし鉢で栽培しているようなら、あつすぎるときは涼しい日陰に鉢を避難させてあげてくださいね。
それに水もたくさんあげるようにしています。
おっと、それももしかしたら…
はい。これもさらさんがお手紙に書いてくれた、「おいしく、いっぱい実をつけるためにどうしたらいいのか」のこたえでもあるんだ。
やっぱり!
学校でミニトマトを育てるときは、朝に水をあげて、お昼やすみと帰りにも水をあげるといいよ。
なるほど。水のあげかたはどうすればいいでしょう?
水はたっぷり。鉢の下から水が流れでるくらいあげるのがいいね。
ケチってはいけない?
そう。
でもトマトの栽培方法として収穫のときは水を少なくするって読んだことがあるのですが、収穫前は水をあまり与えないようにした方がいいのですか?
いや、さらさんのようにたくさんミニトマトを採りたいと思ったら収穫のときも水をたっぷりあげたほうがいいかな。
最後までたっぷりの水。
そうだね。ミニトマトを少量しか採らないのなら水を与えないという方法もあるけど、たくさん採りたいのなら水はたっぷりがおすすめ。
それにしてもこれだけハウスが広いと水を与えるのも大変な仕事になりますね。
ふふふ。これを見てよ。
あっ、自動で水が出ている!!
実は、水やりは機械で管理しているんだ。
基本的には毎日同じ時間に水を与えるようにセットしているんだ。そして水といっしょに液体になった肥料を与えるようにしているんだよ。
液体の肥料!
そう、液肥と言ってね、このタンクに入っているんだ。
液肥のタンクおおきいですね!!
ミニトマトは栄養があるでしょ。
はい。
その栄養のあるミニトマトを作るには、ミニトマト自身が土からいっぱい栄養を吸収する必要があるんだよ。
なるほど、土から吸収する肥料が実を作るのに重要なんですね。
って、中神さんこんなところで急にパソコン広げてどうしたんですか!?
ハウスの様子がどうなっているのか心配になってね。
ハウスの中?その数字でわかるんですか?
ハッハッハ!わかるんだよ〜。
この数字はミニトマトの成長に重要な、温度に湿度、日射量、二酸化炭素の量なんだよ。この数字をみて栽培計画を考えたりするときもあるんだ。
へ〜すごい!ちなみに今は……
うん、異常なし!
よかったぁ。でもそこに数字がでるってことはそれを測定している機械がどこかに?
あるよ!見たい?
もちろん!!
これ!
この小さな箱が?
そう。
へ〜この箱がね〜パソコンにつながって、数字になったものを中神さんは見て作戦をたてるんですね。まさにハウスの番人みたいなものですね。
あはは。番人はいいね〜
話は少しもどるけどミニトマトは水をたっぷり与えるだけでなく、伸びてきたつるを誘引してあげるとミニトマトを長く採ることができるんだよ。
誘引?
あまり聞きなれない言葉だよね。ミニトマトはどんどんつるが伸びて、新しい葉っぱがしげってそこに新しい実がなるんだ。だから茎をどんどん伸ばしたら、また新しいミニトマトが実をつけるんだ。そこで、つるが順調に伸びていくようにこちらで誘導してあげるのが、誘引。見ててね。
伸びたつるをワイヤーに巻きつけてあげて、巻きつける…
ハウスの端まできたら、ぐるっとまわして反対側へ。
おお〜つるが収納されたみたい!
これだけ畑が広いとすごい作業量になるから、なるべく早くしないとおわらない。でも早くやりすぎて葉っぱや花を巻きこんでしまったらいけないので注意だよ。夏はどんどん伸びるから大変なんだ。
ハウスの中はものすごくあついですしね!
本当にそう、汗が止まらないよ。
でもこれはプロの技ってかんじですね。
そうね。学校ではここまではできないと思うけど、上に伸びてきたつるを支柱の途中にあるリングに巻きつけてあげるといいよ。高い位置からひもやあみを垂らしてあげてそこに巻きつけるのもいい方法だと思うよ。
ちなみにここのミニトマトのつるはどれくらいの長さになっているんですか?
一つの苗を8月下旬から育てて7月初旬くらいに収穫が終わるんだけど、最後は13メートルにも伸びていることもある!!
13メートル!?
4階建てのマンションくらいの高さと同じかなぁ。
はぁ〜ミニトマトって伸ばそうと思うとすごい伸びるんですね。そして、育てようとしたらほぼ一年かけて育てられるんですね。
ハウスのように環境を整えられればだけどね。育てようとしたらもっと育つはずだけど、わたしたちは夏でトマトが弱ってしまうので、7月で終わりにするんだ。そしてまた新たに苗を買ってきて育てていくんだよ。
これが新しい苗だね。
かわいいですね〜でもこれが一年後には13メートルにも伸びるんですよね?
そうだね。
ふしぎですね〜
そして、こんなかわいい黄色い花が咲いたら実がつきますよ。緑の実がなって、上の方から実が赤くなってくる!
おお!
そしたら、いよいよ収穫です。
やったー!
次回の「収穫編」はみなみレッド仲間の小久保さんが案内しますのでお楽しみに!
最後に中神さんはどんなミニトマトの食べ方が好きですか?
そうだなぁ、やっぱりそのままパクッと食べるのが好きかなぁ…うちの子どもなんかビニールハウスにきて収穫の手伝いをしてくれるんだけど、夕ごはん食べられなくなるぞってくらい食べるもんね。バクバク食べる。手伝いに来てるんだか食べてに来ているんだかわからない(笑)。
コラム JA職員さんにごあいさつ
JA愛知みなみ 青果農産部 青果販売課 みなみレッド事務局
中村栄美さん
わたしの仕事は、農家さんが収穫して出荷場にもってきたミニトマトを全国のどこの市場にどれくらい届けるかを日々決めています。
朝は8時に出勤して、出荷場から上がってくる出荷量を元に全国の市場と電話で連絡を取り合いながら出荷量を決めていきます。
午後は出荷場やビニールハウスを回ります。ビニールハウスではミニトマトの色づきを見たり試食したりしながら日々のことだけでなく、ちょっと先のトマトの出荷量などを予想して全国の市場さんと情報共有しています。そうすることで売り方が変わってくるのでとても大事にしています。
わたしが決めた出荷先や出荷量によって農家さんの収入が左右されるのでとても責任を感じていますし、やりがいも感じています。時期によっては全国の出荷量が増えて、値段が下がってしまうこともあるのですが、そういうときに値段が下がらないように調整できたときはうれしいです。
みなみレッドの仲間で「とまらん♪」のポスターを作ったりするのも楽しいですね。
みんなで一緒にスーパーに直接販売に行くこともあるんですよ。うちのミニトマトは本当においしいなぁと思います。だからこそ、わたしたちが届ける「とまらん♪」がもっと全国に広まったらいいのになぁといつも思っています。
わたしは「とまらん♪」の中では、シンディースイートという品種が好きです。酸っぱくて甘みがある昔ながらのミニトマトです。火に通すのに適していてこれでトマトソースを作っています。水を入れないで煮込むのがポイントですよ〜!
編集部:注「とまらん♪」とは、みなみレッドのみなさんが作っているミニトマトのブランドです。
さらさんへ
お手紙ありがとうございます。
うちの子ども8才も、さらさんと同じで学校でミニトマトをそだてています。
ミニトマトは水が大好きなので水をたくさんあげてくださいね。朝、学校にいったら鉢の下から水が出てくるぐらい水をあげて、昼休みにも水をあげてくださいね。そうすれば、おいしいミニトマトがたくさんとれますよ。
わたしは、アイコというミニトマトをつくっています。お店で見かけたら食べてみてくださいね。アイコもおいしいですよ。
愛知県田原市 みなみレッド部会代表 中神ふみのり
「届け!お手紙!キッチンミノルのおうちで社会科見学」では、子どもたちからのお手紙を募集しています!
キッチンミノルさんに行ってもらいたい、食を扱うお店や工場に、お手紙を書いてみませんか?
知りたいこと、前から不思議に思っていたこと、聞いてみたいこと…。どんなことでも大丈夫です!
応募は、アイスム公式LINEよりご連絡をお願いいたします。
LINEトーク画面より「おうちで社会科見学」と送信の上、お子様のお名前(ニックネームなどでも可)と年齢をお送りください。