心と体のために身につけたい、子どもたち自身の「食を選ぶ力」

やさしい「食育」のハナシ #4

FAMILY
2020.07.22

「日本キッズ食育協会」チーフトレーナー/理事の爲我井あゆみさんに、やさしい「食育」についてお話していただくシリーズ。最終回の今回は、食育を通して身につけたい、「食を選ぶ力」のお話です。


先生見て!ママ見てみて!は「ほめて!」の合図

小学生のお子さんでも、レッスン後、お迎えにきた保護者の方に向かって「ママ!見て!」と、とてもうれしそうに話す様子が時々見られます。

この「見て!」というのは、ただ見てほしいだけではなく、「ほめてほしい」という合図でもあるのだと思います。

もちろんこれは、おうちでも同じ。「ママ見て!」と言われたら、「すごい!」という3文字の言葉だけでもいいので、お子さんと向き合ってみてください。

レッスンでも、「先生見て!」と言われることがよくあります。それぞれの「見てほしいポイント」をしっかりアピールしてくれるのですが、その際、「先生!これ写真撮ってもいいよ」と、決めポーズをしてくれる上手な生徒さんもいて、いつも笑顔にしてもらっています。

食育を通し、自分も子どもも「ほめる」

そして、食育を通してほめてもらいたいのは、お子さんのことだけではありません。ぜひご自身のこともほめてもらいたいと思っています。

このコラムで何度かお話してきた通り、調理の仕方を学ぶことだけが、私たちの目指す食育ではありません。目の前に食材がなくても食育を楽しむことはできます。例えば一緒に歩く帰り道、どこからかいい匂いがしたら、「何の匂いか当ててみよう!」とクイズを出して楽しむ。これも立派な食育なのです。

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忙しい毎日の中、「食育ができてないな」というモヤモヤを感じることもあるかもしれません。でもそう感じることこそが、「食育への意識がある」という証拠です。

「一緒に調理する」というハードルは高くても、親子のコミュニケーションで食育を楽しむことはできます。そんな時、「ちゃんと食育してるな〜!」と、ぜひ自分をほめてあげてくださいね。

ほめられる機会は、大人になるにつれ減っていきますが、食育をどんどん「自分をほめるきっかけに」してください。

具体的な栄養について学ぶ

日本キッズ食育協会の運営する青空キッチンでは、幼児クラスでも、例えば「どうしてカルシウムを取ると体に良いのか」など、具体的な栄養についても学んでいます。

「カルシウムは骨にとって大切な栄養だよ!食べた後に骨を叩いてみてね!」と言うと、骨をトントンと叩き、強くなった!と喜んでくれます。

その翌週、教室に来るなり、「先生。僕のことを叩いて!」と生徒さんが言ってきてくれたことがありました。一瞬驚いたのですが、朝食にヨーグルトを食べて、「カルシウムのおかげで骨が強くなったよ!」と教えてくれました。その様子がとてもかわいらしく、また、覚えていてくれたことが嬉しかったです。

小学生クラスになると、五大栄養素についてしっかり学びます。その日のレッスンに出た食材を使い、バランスの良い献立を考えるという問題にも取り組んでいます。

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小さいうちから「食を選ぶ力」を

このように栄養について学ぶ理由は、食育を通して子どもたちに「食を選ぶ力」を身につけてもらいたいからです。

小学校や中学校では多くの学校で給食があるため、基本的に平日の昼食は管理栄養士さんがきちんとバランスを考えてくれたものを食べることができます。

でも高校生になると、ほとんどの学校でお弁当を持参することになります。忙しい日々の中、お弁当が作れないことも多くあるかと思います。そんな時は、子どもたちが自ら食を選ぶ機会が多くなります。

そうすると、子どもたち自身が、自分の体のことをしっかり考え、「食を選ぶ力」が必要になってくるのです。

大きくなってから食生活を変えるのは、大変なものです。小さいうちから、食が体にとっていかに大切であるかを学び、しっかりと考えていくことが、「食を選ぶ力」につながります。そしてその習慣が、心と体の健康への近道となります。

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忙しい毎日、「第3の食育の場」の活用も

何度もお話してきましたが、「食育」を難しく考えず、まずは一緒に「おいしいね」と言い合うこと、そして作ってくれた人や、さらにその食材を作ってくれた人がいるということを知り、食に関わる人へ感謝することから始めてみてください。

その上で、お子さんの「料理をしたい」という気持ちに応えたい、でもなかなか一緒にキッチンに立つ時間はない…という方も多くいらっしゃると思います。

青空キッチンのレッスンでは失敗も成功も、友達と先生と一緒に体験するので、ご自宅で料理するよりもより多くのことを学ぶチャンスがあります。

粉の計量でこぼしてしまったとしても、どうしたらこぼれないのかを自分で考えたり、友達のやり方を参考にしたりと、失敗から学べるきっかけが、レッスンにはたくさんあります。

すでに食育スクールに通ってくれている子の保護者様から、「ほめるだけで良いからありがたい」と感想をいただくことがよくあります。お手伝いしたいと言われると、今日は時間がないから…と断ってしまいたくなることもあるそうです。でも、生徒さんはレッスンで一度予習済み。大人が思っている以上に頼もしく、名アシスタントになってくれるかもしれません。

昔のように、おばあちゃんとお母さんとお子さんが一緒にキッチンに立つことは少なくなってきています。もしこのコラムでお伝えしたことがなにかの参考になった時は、「第3の食育の場」としてぜひ青空キッチンを活用してみてくださいね。

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イラスト:坂道なつ

アイスム座談会