いま食べたい料理を、自分好みに仕上げる!一人暮らしの自炊だから味わえる、最高に幸せな時間

一人暮らし自炊座談会 #3

2022.08.09

自炊料理家として活動する山口祐加さんが、「一人暮らしの自炊について、もっと聞きたい!」と企画した今回の座談会。#3では、一人暮らしの自炊の楽しみを掘り下げます。自分一人のために同じパスタを二回作る、ホカホカのごはんを食べるために少しずつ何度も盛る、「天才!」と自画自賛しながら食べる、食材の焼き加減を見ながらちびちび飲む…。自分だけの小さな幸せを噛みしめる。そんな自炊のすばらしさが存分に伝わってくる、シリーズ最終回です。

お話を伺ったみなさん

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浅利圭介あさりけいすけさん

1992年生まれ。ITベンチャー勤務。料理を小学生から始め、自炊を本格的にやるようになったのは社会人から。パスタ全般を作るのが得意で、よく作るのはペンネアラビアータ。自家製トマトソースを常に作り置きしてあり、パスタに並々ならぬこだわりがある。

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志村優衣しむらゆいさん

1988年生まれ。新卒で通信会社に入社し、法人営業とSEを経験。その後、書店員、編集者を経て、2019年4月にnote株式会社に入社。noteディレクターとして活動中。自炊とサウナが好き。よく作る料理は、納豆ごはんと味噌汁。

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山田和正やまだかずまささん

1989年、岐阜県高山市生まれ。料理人、生産者への取材を通じて、食の楽しさに開眼。現在は全国の逸品が集まる食のECサイト「GOOD EAT CLUB」の編集担当を務める。ほぼ毎日晩酌をする。よく作る料理は肉豆腐。

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山口祐加やまぐちゆかさん

1992年生まれ。自炊料理家、食のライター。共働きで多忙な母に代わって、7歳の頃から料理に親しむ。出版社、食のPR会社を経て2018年4月よりフリーランスに。日常の食を楽しく、心地よくするために普段は一汁一菜を作り、ハレの日は小さくて強い店を開拓する。料理初心者に向けた対面レッスン「自炊レッスン」や、セミナー、出張社食、執筆業、動画配信などを通し、自炊する人を増やすために幅広く活躍中。好物は味噌汁。

普段着の「映えない」ごはんも、SNSに上げていこう

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山口

ここからは、一人暮らしの自炊ならではの楽しみについて伺っていきます。

私、一人で食べる時は、自分の食べたいタイミングで順番に料理を作ったりするんですよ。例えば、仕事が終わって家に帰ったら、とりあえずお腹が空いてるので、サラダや冷奴など簡単なものをちゃちゃっと作って食べる。これが前菜。で、余裕ができたところでメインにとりかかる。こうした食べ方は、一緒に食べる人がいると難しいなと思います。

浅利

わかります。僕はパスタを作って、その出来に納得いかなかった時、もう一回同じレシピのパスタを作ることがあるんですよ。

山口

同じ味のパスタを、二回連続で作るんですか!?

浅利

一回目に気づいた「あそこをもうちょっとこうしたら、よりおいしくできただろう」という改善点を、もう一度作って確かめたいんです。変わったとしても本当に繊細な違いで、自分以外誰もわからないと思うんですけど。これは、自分のために作る自炊だからこそできることだと思います。

山口

たしかに。誰かと一緒に食べていたら、「せめて違う味のパスタを作って」と言われちゃいそう(笑)。志村さんは、一人暮らしの自炊の良さって、どういうものがあると思いますか?

志村

人の目を気にしなくていいので、見た目が良くなくてもいいところでしょうか。私、お豆腐が好きで、冷奴や温奴をよく食べるんです。時間がない時は、豆腐の上に納豆をのせてぐちゃーっとかき混ぜて食べたりする。これ、おいしいんですけど、人にはなかなか出せないですよね。

山口

そういう料理って、世の中には出てこないんですよね。でもみんな、やってると思うんですよ。自分だけがテキトーに食べているわけじゃない。

浅利

世の中で言われる自炊って、理想が高いですよね。それこそ、ウィンナー茹でるとか、目玉焼き焼くとか、それだけでも自炊は成り立つのに。

山口

表に出てくるのは、一汁三菜の食卓とか、栄養バランスがとれていて見た目もおしゃれな料理ばかり。でもそれはやっぱり外向きの情報であって、もうちょっとみんな適当なものを作っているはずなんですよ。自炊のハードルが高いと感じる人に、そういう部分を見せてあげたいなと思うんです。

でもやっぱり、きゅうりに味噌をつけるだけとか、私もSNSに上げないもんな……よく食べてるけど…。

山田

あげていきましょう!(笑)

山口

そうですよね、あげるべきだなって思います(笑)。

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「映えない」けどおいしいきゅうりと味噌(山口さん提供写真)

山田

自炊って、自分が欲しいものを、材料を一から集めて作って、欲を満たす行為なんですよね。そういうのって、他にあんまりない。

娯楽って、すでにあるものを提供されて、享受するだけのものが多いじゃないですか。自炊は工程から味わって満足するまで、フルセット一人でできるのがすごいと思います。

浅利

めちゃ手軽なクリエイティブ行為なんですよね。

お気に入りの調理道具で、料理がもっと楽しくなる

山口

気に入っていて、よく使う調理道具などはありますか?

山田

僕は卵焼きが好きなので、卵焼き器ですね。最近新調して、銅製にしたんですよ。

浅利

おおー!銅の卵焼き器、めっちゃいいですよね。僕も使っています。

山口

私は鉄製のを使ってるんですけど、やっぱり銅は違いますか?

山田

熱伝導率がいいのか、表面だけ焼けちゃわないというか、じっくり焼けてふんわり仕上がるんです。おいしいですよ。

山口

いいなあ、使ってみたいけれど買ったことのない道具の一つです。

浅利

僕はペティナイフですね。といっても、刃渡り15センチくらいのものなので、小さすぎず、軽くて扱いやすいので愛用しています。刃の薄い包丁が好きなんです。

山口

私は先日、菜切り包丁を買ったんですよ。刃が長方形の、野菜を切るために作られた和包丁。使ってみたくて買ったんですけど、今は慣れようとしている最中です。刃先が尖っていないので、トマトや玉ねぎのみじん切りがやりづらいんですよね…。葉物の野菜はすごく切りやすいんですけど。志村さんは?

志村

買ってよかったのは木製の蒸し器、せいろです。せいろって、二段に重ねて魚や肉と野菜を同時に調理できるので、一気に二つの料理が出来上がるんですよね。材料を切って入れて、10分くらい蒸すだけでおいしくなるので、超便利だなと思っています。

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志村さん愛用のせいろ(志村さん提供写真)

山口

私も最近せいろを買って、いま仲良くなってる最中なんです。人によってやりがちな調理法ってあると思うんですよ。蒸し料理が得意な料理研究家さんは何でも蒸すし、煮るのが好きな人もいる。それでいうと、私は焼きがちなんです。

浅利

僕も焼きがちですね。

山田

僕は、グリルで焼きがちです。

山口

グリルって、ガスコンロの魚焼きグリルですか?

山田

そうそう。グリルで魚とか野菜とか焼いて、「そろそろ焼けたかな?」と様子を見ながらお酒を飲むのが楽しいんですよね。

山口

それいいなあ。

流行り言葉でいうと、料理とウェルビーイングって大いに関係あると思いませんか? おいしいごはんを作って食べることは、心身の健康にすごく影響する。私は作っているだけで楽しいんですよね。何なら、出来上がって食べている時よりも、プロセスの方が楽しい。

浅利

わかります。僕は、この手順を変えた場合どうなるのか、とプロセスを検証するのが好きなんです。例えば、このパスタでにんにくは薄切りがいいのか、潰したほうがいいのか、みじん切りがいいのか、それをどのタイミングでいれるのがいいのか、少しずつチューニングしていくのが楽しい。

山口

志村さんは、自炊の楽しさをどこに感じますか?

志村

好きなものを作って食べる、それ自体がすごく楽しいです。実は以前結婚していて、二人で暮らしていたんですけど、その時はほぼ料理をしなかったんですよ。お惣菜屋さんで買ってくるか、外食ばかりで。

山口

それは忙しかったから?それとも相手の方と食の趣味が合わなかったんですか?

志村

最初はちょっとがんばって作ってたんですけど、相手は食が細くて、あまり食べることに関心がない人だったんですよね。私は「めっちゃおいしくできた!」と思っても、向こうからは何のリアクションもない。そういうことが続いて、作る気力がなくなってしまったんです。二人で住んでいるのに、自分のためだけに作るのはなあ、と。

山口

たしかに。なんだか悪いことしてるような気がしますもんね。

志村

3年前くらいに一人暮らしに戻ってからは、めっちゃ料理が楽しいです。

一生自炊をするか、一生外食するか。ここで自炊を選ぶ人を増やしたい

山口

タイミングってありますよね。料理教室の生徒さんから、「自炊をしていないことに罪悪感がある」と言われることがあって。もし、自炊の楽しいポイントが見つけられてないだけなら、私にできることがあるかもしれないんですけど、人生が自炊に向かないタイミングなら無理にやらなくてもいいと思うんです。

私が教室をやっているのは、やっぱり自炊でしか味わえない楽しさ、おいしさがあると思うから。家にある食材を使い切ることができた時の、テトリスのような快感とか、聖域のような誰にもふれられない自分だけのおいしさとか、何にも代えがたいですよね。

私は、これから先の人生、一生自炊をするか、一生外食するかを選べと言われたら、自炊する人生を選ぶと思うんです。そういう人が増えてほしい。

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山田

外食が非日常の好奇心を求めるものだったら、自炊は日常の自分の糧という感じがします。かっこつけずに、自分が本音で食べたいものを、その日の気分で作って食べる。そういう瞬間が味わえるのがいいですね。

山口

まあまあのおいしさも含めて、おうちごはんの良さですよね。毎食フルスロットルでおいしかったら、疲れてしまいます。

山田

食に関する仕事をしていると、自炊も含めて、食べることってまだ解明されていないことが多いと感じます。僕は自分で作るとなんでもおいしく感じるんですけど、それってなぜなんだろう、とか。懐かしく感じる味って何なんだろう、とか。

山口

たしかに。おいしさってすごく個人的な感覚ですよね。もちろん、塩や砂糖、旨味によっておいしくなる方程式みたいなものはあるけれど、全員に当てはまる解法はないというか。

山田

そう、料理は科学だと言われることがあるけれど、僕は少し違うと思ってるんですよね。もちろん、科学的に分析しておいしいものを作ることはできるでしょうけれど、それが万人に当てはまるわけではない。でも、解があると思っちゃうから、みんなレシピを参考にするのかなと。

山口

レシピは絶対的な正解ではないんですよね。もちろんレシピ通りに作ればそれなりにおいしく作れると思うんですけど、自分の味にはならない。自分はもう少し塩気少なめがいいかなとか、この食材がない時はこの食材で代用したらおいしいかも、とか、そういうことを考えられるようになると、レシピが自分に近づいてくる。そうすると、もっとおいしく作れるようになります。

志村

自分で作った料理がおいしく感じるのは、自己肯定感が上がることと関係があるんじゃないでしょうか。「これを作った私、天才!」と思いながら食べるから、おいしく感じるのかなと(笑)。

山田

たしかに、料理すると自己肯定感上がりますよね。

山口

自己肯定感が低いことに悩んでいる人には、猛烈に自炊をお勧めしたいですね。一人暮らしだと、誰かとおいしいと言い合えない寂しさはある。でも、自分で自分のこと評価してあげられるんだったら、むしろ誰にも何も言われたくない。それだけで最高に幸せを感じられるんですよね。

味付けも提供温度も、すべてを自分の好きな状態に

浅利

僕は、自炊したものがおいしく感じられるのは、単純に出来たてほやほやの料理を食べられるからかな、と思っています。僕は熱々を口にしたいので、お酒などは全部食卓に並べておいて、料理が完成したらすぐ食べられる状態にしておく。自炊だったら、できてから提供されるまでの時間3秒でいけるじゃないですか。

山口

わかるなあ。私は、常にあったかいごはんを食べたいんですよ。だから家だとお茶碗に少しずつ、何回かごはんをよそいにいくんです。あとお味噌汁も熱々で飲みたいから、最後に温めて持ってくるんです。自分の好きな温度に調整できるのはいいですよね。

浅利

シェフとホールスタッフと客が同一人物なんで、すべてを自分好みに提供できますよね。

山口

確かに(笑)。自分のこだわりを全開にできます。

浅利

味付けも、外食は基本的にバランスよく作られていますよね。でも、自炊だと自分が好きな味のメリハリをつけられる。僕は辛い味が好きで、パスタは絶対イタリア・カラブリア州の唐辛子を使うんです。辛くて鮮烈な香りがするのがいいんですよ。それを、通常の二倍くらい入れます。

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パスタに欠かせない唐辛子(浅利さん提供写真)

山口

わあ、それはもう浅利さん専用パスタですね。外食でそこまで辛いものって出てこないもんな。

浅利

そうなんですよ。後はよく聞く話だと、家では思いっきり肉を多めにしてカレーを作る、とか。

山口

外食のカレーだと、三切れくらいしかお肉入ってなかったりしますもんね。私は、外食で食べると薬味が少ないっていつも思うんです。カツオのたたきとかも、もっと薬味をつけてほしい。家だったら、好きなだけどさどさのせられていいなと思います。

志村

エスニック料理屋などでパクチーを追加しようとすると、小皿にちょびっと入って100円とか150円とかするじゃないですか。

山田

うわー、わかる…! あれ、なんか悔しいですよね。

志村

家だったら、一袋全部切ってのせても180円くらいだったりする。そういうのはいいですよね。

山口

ふふふ、こんな風に楽しく自炊のことを話している記事って、めずらしいと思うんですよ。

私は仕事柄、料理が苦手な人に教えることが多く、どうやったら上手にできるかとか、コツはありますか、とよく聞かれるんですよね。でも私くらい自炊を楽しんでいる人って、実はいっぱいいるから、そういう人たちの姿を見せたら楽しそうと思われるんじゃないかと思い、今回の場を設けたんですが、まさに狙い通り。

こんなにじっくり一人暮らしの自炊について話を聞いたのは初めてで、すっごくおもしろかったです。超、心が満たされる時間でした。

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取材・文:崎谷実穂
撮影:猪原悠

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