
「自分は怠惰だ」と思う人はがんばり屋さん。家事代行サービスで罪悪感を手放す
仕事や育児、⽇々の暮らしに追われてとても多忙な現代人。家事代行サービスを利⽤する家庭も増えてはきましたが、全体からするとまだ少数派です。その背景にはお金の問題だけではなく、「家事は自分でするべきもの」という固定観念や、人に頼ることへの罪悪感があるようです。
そこで今回は、家事代⾏マッチングサービス「タスカジ」の代表である和⽥幸⼦さんにインタビュー。タスカジの利⽤者さん・タスカジさん(タスカジに登録しているハウスキーパー)のリアルな声を伺いました。
仕事と家事の両立に悩んでいたとき、家事代行サービスで生活が劇的に変化
――和田さんご自身が感じた「働きながら家事をする時間が足りない」という課題が、タスカジの立ち上げにつながったそうですね。
もともとはシステムエンジニアをしていたんですけど、新規プロジェクトの立ち上げに関わるのが好きで、いつかは起業したいと思っていました。会社から派遣されてビジネススクールに通ったこともあります。
その7年ほど後、子どもが生まれて、育児と仕事と家事のバランスに悩みました。子どもが生まれる前のように時間を自由に使えるわけじゃないから、すべてを完璧にはできない。何より、気力が奪われるんです。仕事を終えて家に帰っても家事というタスクが残っているので、だんだんしんどくなってしまって…。でも、周りを見渡すと、困っているのは私だけじゃなかったんです。同期で入社して出産した女性の多くは、家事や育児との両立のために時短勤務にし、お給料も減って簡単な仕事ばかり回されるようになって、仕事にやりがいを感じられなくなっていました。
直感的に、「女性がこんな状況になっているのは家事の問題が大きい」と確信しました。どうにかして家事時間を減らそうと思ったのが、「タスカジ」を立ち上げたきっかけです。
――当時、家事代行サービスを利用することはあったのでしょうか?
家事代行サービスは当然チェックしていましたが、当時は価格がかなり高くて躊躇していたんです。そんなとき、知人に「海外では家事代行は個人間契約が一般的だし、リーズナブルだよ」とネットの掲示板を教えてもらって。それは在日外国人のためのサービスで、登録している家事代行の方も外国人しかいませんでした。とりあえず募集したら、10人くらいの外国人の方が応募してくれて、全員と面接しました。そのうちの1人と契約したんですが、その人はすぐにやめてしまって、3人目くらいでようやく信頼できる方と巡りあえましたね。
その方に家事をお任せしたところ、生活が劇的に改善されました。それまではお恥ずかしながら、床に埃が舞っていて、食事もスーパーのお惣菜が多かったんですね。だけど家事代行の方はお掃除もお料理も上手で、息子も「おいしい!」と言ってごはんをいっぱい食べるようになりました。帰宅した夫も「なんか家の空気が違うね」と言っていましたね。これは本当にいいサービスだと思ったんです。

――とはいえ、「家事は自分でやらなければ」と抱え込んで無理をしてしまう方も多いと思います。
そうですね。私の場合は、家事を人にやってもらうことに対して罪悪感が全然ないんです。私の母は「お父さんは会社、私は家事と、役割分担をしているだけ」と、ある種のプロ意識を持っていました。そういう母に育てられたので、「家事=愛情」「家事=家族のため」という意識がなかったんです。どちらかといえば「家事=仕事」という感覚で。私は他の仕事をしているので、家事という仕事は別の方に発注してもいいかな、と。
ただ、やっぱりまだ家事を人に任せることに抵抗感を持つ方は多いようです。
――どのような抵抗感があるのでしょうか?
タスカジの利用者様に「家事代行サービスを使うことへの抵抗感はありましたか」というアンケートをしたところ、以下のような声が上がりました。
・他人が家に入ることへの抵抗感
・がんばれば自分でできるから
・他者に家事をしてもらうことへの罪悪感
・人を家に入れるからにはまず掃除をしないといけないから
もう、「抵抗感」だらけですよね(笑)。タスカジ利用者に聞いてこの結果なので、家事代行サービスを使ったことがない方は、もっと抵抗感が強いと思われます。
「まだがんばれそう」と思っているうちに、どこまでがんばればいいのかわからなくなる
――家事代行サービスをはじめて利用する際、みなさんどのようにして抵抗感を乗り越えているのでしょうか?
そこに関しても、タスカジの利用者様にアンケートを取ったことがあります。「他人が家に入ることに対して抵抗感がある」という方の中には、自治体の産後サービスなどを利用して人が家に入ることに慣れてからタスカジを利用したという方もいました。また、タスカジのサイトでは、タスカジさん(タスカジに登録しているハウスキーパー)一人ひとりのレビューが読めます。レビューを読み込み、「この人なら信頼できそう」という人を見つけて安心を得てから利用したという方もいますね。
「家事はがんばれば自分でできる」と考えていた人の中には、「限界に達したからタスカジを使いました」「いよいよ家庭が回らなくなって使いました」という方もけっこういらっしゃって…。みなさん、どうしても限界までがんばっちゃうんですよね。家事ができないことを、「自分が怠惰だからだ」と考えてしまう方が多いんです。
だけど、そんな方には、ぜひ考え方を変えてほしい。「余裕がないときは時間と手間をお金で買う。それは何も悪いことじゃない」。そう割り切れば、限界まで無理をする前になんとかできます。大事なのは、本当に限界になる前に頼ることです。
――食洗機ですら購入をためらう人は多いですよね。「がんばったら自分で洗えるのに贅沢をしている」という感覚もあるのだと思います。
「まだがんばれそうな気がする」と思っているうちに、どこまでがんばればいいのかわからなくなるんだと思います。だけど1日は24時間しかないので、何をがんばるか、何をがんばらないか、優先順位をつけることが大切です。家事に多くの時間を割くことがその人にとって幸せなのであれば、家事を優先すればいいですし。私の場合は子育てと仕事のほうが優先順位が高かったので、結果的に家事を手放しました。
優先順位は人によって違います。「そこまで仕事したいわけじゃない」という人もいれば、「家事を通して子どもに愛を伝えたい」という方もいるでしょう。人それぞれなんです。だからぜひ一度、自分の優先順位をじっくり考えてみてほしいですね。
家事代行を利用することで、家族に優しくできるようになった

――家事代行を利用することで、家族関係やQOLにどのような影響があると思いますか?
時間と心に余裕ができるので、家族に優しくなれますね。たとえば「子どもが部屋を汚してしまったとき、以前はイライラしていたけど、今は『タスカジさんに掃除してもらえるからいいか』と思えるようになりました」なんて声もあります。
あとはやっぱり、家ってきれいであることがQOLに直結するんです。家はエネルギーチャージをする場所ですよね。それなのに家が散らかっていたら、視覚情報が多すぎて脳が休まりません。家が整っていると、そのぶんリラックスできます。タスカジの場合は整理収納というメニューもありますし。整理収納は生活の土台です。
――生活の土台とは?
土台がしっかり作られていないと、その上で掃除や料理などのオペレーションを回しても、やりにくかったり、一度片付けてもリバウンドしたりします。一方で土台作りをしっかりしておくと、家事のオペレーションが無駄なく効率よく回り、家もきれいに保てるんです。
ちなみに私、創業当時は家がめちゃくちゃ汚かったんですよ(笑)。だから自分のために整理収納サービスを追加で作りました。そうして土台を作って家がきれいに保てるようになった結果、なんとワンちゃんを飼えるようになったんです。床に物が散らばっていた頃は、まさかワンちゃんと暮らせるなんて思ってもみませんでした。今は、掃除ロボットを毎日稼働させて、ワンちゃんの抜け毛も掃除しています。

――和田さんがこれまでに接してきた利用者さんの中で、「タスカジを利用したことでこんなに素敵な変化があった」という印象的なエピソードがあれば教えてください。
たくさんの熱いメッセージをいただくんですけど、「パートナーとの家事の押し付け合いが減って関係が円満になった」という声はよく聞きます。時間の余裕は心の余裕を生みますから、そのぶん家族に優しくできるんです。
また、「出世のオファーが来ていたけれど、家事との両立が難しくて断っていた。だけどタスカジで負担が減ったことで、オファーを受ける決心がついた」という話もわりと聞きます。それくらい、みなさん家事に重圧を感じていたんですね。「家事をやめたことで、自分が本当にやりたかったことに気付けた」という方もいます。
――タスカジさんとして働いている方についてはどうでしょう?
「今まで家事をしても誰からも評価されることなんてなかったから、タスカジで作り置きを作っただけでお客様からものすごく感謝されて驚いた」という声をよく聞きます。あるタスカジさんが、シンクの中にお皿がいっぱい溜まってるのを見つけて、時間があったから頼まれてないけど洗っておいたそうなんです。そしたら、利用者様が「ありがとうございます」と泣いてしまったそうで…。きっと「お皿を洗わなきゃ」というプレッシャーが限界のところまで来ていたんでしょうね。「自分が普段やっていることを普通にやるだけで感謝されるから驚くけど、嬉しいしやりがいにつながる」という話をよく耳にします。
――家事のスキルって本来はそのくらい貴重なものですよね。
タスカジさんは主婦の方が多いんですけど、「家族から『お母さん、料理上手なんだから家事代行とかやったら?』と勧められてタスカジさんになる方も多いですね。家事のスキルは貴重なものなので、もし時間に余裕のある方がいれば、ぜひタスカジさんに応募してほしいです。
――家事代行を上手に生活に取り入れるポイントを教えてください。
家に他人を入れることに抵抗感のある方は、最初は水回り(トイレ・洗面所・お風呂場)の掃除を頼んでみるといいですよ。水回りはリビングからちょっと離れた場所にあるので、初対面の人がいても気になりにくいです。それでだんだん慣れてきたら、リビングやキッチンの掃除を頼んだり、洗濯物を畳んでもらったり。
料理の場合は、「野菜を多めにしてほしい」とか「子どものために薄味にしてほしい」などのリクエストにも対応できます。応用編で、子どもの離乳食作りや、子どものお弁当おかずの作り置きをオーダーする方もいます。
優先度をつけて、手を抜けるところは抜く。そのくらいでいい

――家事代行サービスに頼るという選択肢がもっと当たり前になることで、これからの家庭や社会はどのように変わっていくとお考えですか?
時間にも心にも余裕ができることで、家族の時間が増えたり、家族との関係が良好になると思われます。すると日々の満足度も高くなるし、エネルギーが満タンになります。そのエネルギーを、仕事や、社会をよくすることに使ってほしいです。家事代行サービスに頼ることでエネルギーがチャージされて、それが社会をよくしていく。タスカジのビジョンは「家の中から世界を変える」ですが、まさにそういった循環をイメージしています。
――ついがんばりすぎてしまうアイスム読者に向けて、メッセージをお願いします。
ただ歯を食いしばってがんばるのではなく、「私は何をやりたいのか」「何が自分にとって重要なのか」の優先度をつけて、手を抜けるところは抜く。そのくらいでいいのではないでしょうか。「手を抜いたらサボってるんじゃないかな」という罪悪感を一瞬でも感じる人は、その時点でもうがんばり屋さんなんですよ。がんばり屋さんじゃない人は、手を抜くことに罪悪感なんてありませんから。だから自分ががんばり屋さんであることをまず自覚して、罪悪感を手放して、頼れるところは人に頼ることもぜひ検討してみてください。
