「よいものをおなかいっぱい」食べたい日に ーー「キッチンほりぐち」の唐揚げ

テイクアウトのある風景 #3

2020.06.18

写真家の中川正子さんに写真と文章で綴っていただく「テイクアウトのある風景」。
第三回は、中川さんが「大好き!」だという、「キッチンほりぐち」の唐揚げです。ジューシーな唐揚げがたっぷり入ったお弁当と、シェフの堀口さんのお人柄。読んでいるだけでなんだかおなかが空いてきます。


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突然訪れたステイホーム期間。なんだかいつもおなかをすかせているのはわたしだけでなく、我が家のボーイズ(夫&息子)も同じ。10歳の「ボーイ2」に至っては11時半にもなると「お昼なにー?」と言い出す。ついさっき朝ごはんをきみは、もりもり平らげたばかりじゃないか。まったく、これじゃ仕事にならない。こんな日はほりぐちさん一択だ。お電話して予約だ。

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お店でいただく時には、信じられないくらいうず高く積まれたその存在感に一瞬ひるむ。竜田揚げに近いサクサクの衣に包まれた柔らかい鶏肉。ソースはスイートチリソースとポン酢。これを交互につけちゃったりすると、その驚きの量がするするとお腹に吸い込まれていく。そして脇を固める野菜が新鮮で実においしい。こちらも、これでもかと山盛りの堂々たる姿。つけあわせ、という枠をはるかに超えている。醤油ベースのドレッシングが名アシストで、永遠に食べていたい。

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シェフの堀口さんは、つぶらな目がかわいい笑顔のひと。大きな体をコンパクトなキッチンに据え、キビキビと働く。カウンターのお客さんとも気さくに話しながら両手はずっと無駄なく動いている。スタッフのみなさんがシェフとずけずけ話す空気も、風通しがよくとても気持ちがよい。

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小学5年の時に見た『味いちもんめ』の最終話に胸を打たれ、それからずっと料理をやりたかったという堀口少年は、大阪の有名ホテルで懐石の修行を始める。その後地元岡山に戻り、うどん店での勤務を経て2016年にお店をオープン。丁寧な仕事、美しい盛り付けに懐石修行の日々が垣間見えるような気がする。大人気のここは、常に大行列で、そのすごい量にもかかわらず、女性客がとっても多い。わたしも大食いというわけじゃないけどつい、足が向くから気持ちはわかる。なんだろう、よいものをおなかいっぱい食べたいきもちにすごくフィットしちゃうのだ。

定食屋のここは他にもおいしいメニューはいくつもある。わたしは豆腐ハンバーグと唐揚げでいつも悩んでしまう。日替わり定食も捨てがたい。でもやはりダントツ人気は唐揚げ。唐揚げ専門店と思っている人もいると聞く。わかる気がする。

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堀口さんはレシピをお客さんにも惜しみなく教えてしまう。鶏肉は下味をつけて片栗粉もつけた状態でしっかり一晩冷やして温度差をつけるのがコツ、とか、調味液に水を何%足して鶏から抜ける水分を補うことが大切、とか。野菜はアクを抜いて和包丁で細胞を潰さず切れば持ちがよい、とか。

大阪のホテルを辞める際に一度料理から足を洗おうと思った彼に、先輩が贈ってくれたという美しい包丁が、今も大活躍していた。

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レシピも教えていただいたし、近々家でも作ってみよう。でも、今日は堀口さんの唐揚げを食べたい。お店でいただいていたあれを、家でも。それはとてもうれしいこと。

テイクアウトしてみると、もりもりの唐揚げの部分は案の定、蓋がまったく閉まっていなかった。いつものフレッシュ野菜もこれでもかとパンパンに容器に入っている。堀口さんがお店でやってくれるみたいに、きれいに盛っていただいちゃおうと思う。

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うちに来る時はおなか減らしてきてくださいね、そういつも言う堀口さんのテイクアウトはやはり、おなか減らして挑むべき、最高のお弁当でした。わたしもボーイズも、まんぞくまんぞく。

店舗情報

キッチンほりぐち
岡山市北区内山下2-5-2 内山下Fマンション102号
086-206-3701
営業時間 11:00〜15:00 売り切れ次第終了
定休日 日曜・祝日・第一月曜日

※専用駐車場はありません。ご注意ください。

中川正子

写真家。津田塾大学在学中、カリフォルニアに留学し写真を始める。自然な表情をとらえたポートレート、光る日々のスライス、美しいランドスケープを得意とする。写真展を定期的に行い、雑誌、広告 、書籍など多ジャンルで活動中。2011年3月より岡山を拠点に、国内外を旅する日々。最新作は『Rippling』ほかに写真集に『新世界』『IMMIGRANTS』『ダレオド』などがある。文章執筆の仕事も多数。fua accessoryとのコラボレーションで短編「モキク」を発表。開設したオンラインストアも好評。

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