個人商店で季節の食材を買い、果物を料理に取り入れる。食道楽な夫婦の大人な食卓

となりのおうちの「1週間ごはん」 #7

2020.12.21

普通の家庭のリアルな1週間のごはんを紹介するシリーズ、「となりのおうちの『1週間ごはん』」。今回取材したのは、中央線沿線の西荻窪に住むご夫婦、千葉正幸さん・野田りえさん。季節の食材を活かしたお店のようなごはんを作る野田さん。おいしいものとお酒が好きで、週末の料理を担当する千葉さん。野菜がふんだんに使われたお二人の食卓は、毎日とってもおいしそう!もちろん、身体にもよさそうです。

千葉正幸さん・野田りえさん

千葉正幸さん・野田りえさん

千葉さんは、出版社勤務の書籍編集者。野田さんはフリーランスでレシピ本などを手がけるライター。結婚9年目。2008年頃から東京・西荻窪在住。二人とも食べることが好きで、週末どちらかは外食をしにいく。お酒も好きで、毎晩何かしらのお酒を飲んでいる。

落花生ごはんとピーマンの肉詰め。うちだけの秋の定番

千葉家の1週間ごはん

——今回は西荻窪にお住まいの、千葉正幸さん・野田りえさんご夫婦の1週間の夕食を見せてもらいます。まずは、月曜日から。


月曜日

鯖缶キーマカレー、レンコンとさつまいものカレー、オクラのスパイス炒め、ビーツのパチャディ(ヨーグルトとココナツで和えたもの)、焼きなすのカレー、にんじんのインド風サラダ


野田 鯖缶キーマカレーは、以前『dancyu』に掲載されていた稲田俊輔さんのレシピで、鯖缶を使うから簡単なんです。レンコンとさつまいものカレーとオクラのスパイス炒めは、『カレー&スパイス伝道師がおしえる 四季の食材でつくるスパイスカレー入門』(standards books/渡辺玲)のレシピ。焼きなすのカレーも渡辺玲さんレシピですね。

——お店で食べるカレーみたいですね! 色とりどりですごくきれい。

野田 スパイスカレーは、いろいろな種類を盛るとそれっぽく見えるなあと思って。手間がかかっているように見えますが、この日作ったのは焼きなすのカレーとにんじんのインド風サラダだけ。あとは先週作った残りや以前から冷凍してあったものを盛り付けています。

千葉 この金属の容器に盛ると、途端にインド感が出るよね。

野田 そうそう。疲れているときなんかは、無印良品のレトルトカレーをこの金属の器に盛ったりすることも。けっこう本格的に見えるんです(笑)。この器はアジア雑貨店の元祖仲屋むげん堂で買ったのかな。1個200円くらいの安いものです。下もステンレスのお皿にするとよりインド料理屋さんぽくなるんですけど、そこまではしなくていいかなと。

——南インド系のカレーって感じですね。スパイスカレーはよく作るんですか?

野田 はい。去年、スパイスカレーのレシピ本のお仕事をしたんです。それから家でもやるようになって。スパイスカレーだけでなくて、じゃがいもと豚こまを使った一般的なカレーも好きだし、タイ風のグリーンカレーも作ります。


火曜日

落花生ごはん、ピーマン肉詰め和風トマトソース、にんじんしりしり、かぶの葉の炒めもの、キャベツとしめじの味噌汁


千葉 西荻窪に「たべごと屋 のらぼう」という、地野菜を使った旬のごちそうを食べさせてくれる名店がありまして。そこは土鍋ごはんが名物で、このくらいの時期になると、栗や生落花生、むかごなどを炊き込んだ「秋の実りごはん」というメニューが登場するんですが、それが感動的においしいんです。

野田 それで、家でも生落花生ごはんを炊くようになりました。これは、「白ごはん.com」のレシピを参考にしています。落花生はハサミで殻がとれるし、栗ごはんより簡単なんですよ。

なぜかうちでは一緒にピーマンの肉詰めを作るのが定番になってるんです。一昨年、落花生ごはんと合わせて作ったときに夫にすごく好評だったので、それから毎年作ってます。

千葉 なんだかすごくおいしく感じたんですよ。わが家では、この組み合わせは秋の特別メニューです。

飲み屋には事欠かない西荻窪

野田 トマトソースっていうと洋風みたいですが、ごま油や生姜、豆板醤、オイスターソースなどが隠し味になっていて、ごはんのおかずにちょうどいい味なんです。これは、「おっさんひとりめし」というサイトのレシピです。

——「おっさんひとりめし」……!そういうおいしいレシピはどうやって探しているんですか?

野田 「おっさんひとりめし」は偶然見つけただけなんですが、もともと仕事でレシピ本などのライターをしているので、レシピ情報はよくチェックしているし、レシピ本もわりと買うほうだと思います。あとは、インスタなどで料理家さんや食いしん坊な人のアカウントをフォローしておくと、そこからおいしいもの情報が入ってきます。外で食べたものや、旅行先で食べたものをどうやったら家で再現できるか、調べて作ることも多いです。


水曜日

野田 「焼きとりよね田」のジャンボつくね


水曜日

千葉 ビストロ「山下食堂」のテイクアウト(ビーフストロガノフ、鶏もものフリット、芽キャベツのブレゼ、キャロットラペ)


野田 この日は友人と「焼きとり よね田」という店で飲みました。ここはジャンボつくねが名物なんです。

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——駅の近くのお店ですね。西荻窪は駅のすぐ近くに、小さな飲み屋が立ち並ぶ小路があるんですね。

野田 あのあたりは、何軒もはしごして飲むのが楽しいんですよね。もうちょっと落ち着いて飲みたい場合は、少し歩いたところにもたくさんいいお店があります。

千葉 僕はこの日在宅勤務だったんですが、仕事を切り上げるのがけっこう遅くなってしまって、その時間に開いているお店もあんまりなかったんです。そこで、遅い時間になってもテイクアウトをやっている「山下食堂」というビストロでお弁当を買いました。ここは、こんなところにおいしい料理を出してくれる店があるなんて到底思えないような、カラオケパブなどが入っている雑居ビルの2階ある不思議な店なんですよ。

——西荻窪はおもしろい街ですね。

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駅の南口を出ると、小さな店が立ち並ぶ「柳小路」と呼ばれる飲み屋街が続いています。ここは戦後しばらく、闇市があった場所だそう。


木曜日

アジの干物と甘唐辛子の網焼き、いり豆腐、柿と水菜のサラダ、ゆで落花生、オクラとしいたけの味噌汁、白飯


野田 いり豆腐は、『向田邦子の手料理』(講談社/向田和子監修)という本のレシピ。いわゆる「家庭料理」が食べたいときに、よくこの本を開きます。私にとっての「おうちごはん」はかなりこの本がベースになっているかも。いり豆腐のレシピに「百合根やきくらげを入れても良い」とあったので、今回は百合根を入れました。八百屋さんで今年初めて百合根を見かけたので、うれしくなって。

千葉 百合根とか、くわいとか好きだよね。

野田 うん。ああいう食感の野菜が大好きで。あと、柿と水菜のサラダ。こういう料理には、固めの柿のほうが向いていますね。ゆで落花生は落花生ごはんの残りです。私は基本的に、こういう白飯と干物と醤油味のおかずとお味噌、みたいな食事が好きなんだなあと思いました。

店や旅行先で食べたものを、家で再現してみる


金曜日

アジの干物と白いんげん豆と赤玉ねぎのマリネ、ポルトガル風たこ飯、いちじくと生ハムとマッシュルームのマリネ、ピペラード


野田 金曜はワインを安心して飲めるので、ワインに合うメニューです。全体的に、ポルトガル風にしています。

——ワインを安心して飲めるのは、週末だからですか?

野田 そうですね。いつもは、夕飯を次の日の昼食にスライドさせるんですよ。

千葉 あと、僕が出社するときはお弁当のおかずになる。

野田 そういうときワインのおつまみって、次の日の昼食やお弁当のおかずにあんまり向かなくて。
あとは、やっぱり心置きなく飲めるからですね。前は月曜や火曜にもワインのおつまみっぽいものを作ってたんですけど、夫がそっと「そういうのは金曜がいいんじゃないかな」と言ってきたんです(笑)。

——お酒が進むものを、週のはじめに作られるとつらいと(笑)。

野田 干物と白いんげん豆のマリネには、前日に1枚多く焼いておいたアジの干物を使っています。これは、代々木公園近くのポルトガル料理店「クリスチアノ」のレシピですね。パクチーとクミンが味のアクセントになっています。ポルトガル風たこ飯といちじく・生ハム・マッシュルームのマリネは『ソムリエ料理家の ワインを飲む日のレシピ帖』(KADOKAWA/平野由希子)のレシピです。

——ピペラードってなんですか?

野田 バスク地方の家庭料理で、パプリカやピーマン、トマトを炒めて溶き卵でとじたもの、らしいです。ポルトガルじゃないけれど、まあ、近い地域の料理ということで。何年か前にバスク地方に旅行で行って。そのときからスペインやポルトガルの料理が気になるようになりました。


土曜日

いちじくと秋刀魚の春巻き、アスパラと生ハムの春巻き、パクチーと水菜のサラダ、かぼちゃの塩蒸し、鶏トマトそば


野田 この週は平日に外食したから、週末は家飲みしようかなと思って。週末だと少し気持ちに余裕が出て、揚げ物をやる気になります。基本的に家で揚げ物はやらなかったんですけど、最近春巻きと素揚げはやるようになりました。

——揚げ物、心理的負担が大きいですよね……

野田 油を大量に処理しないといけないと思うと気が沈むんですよね……。でも、小さいサイズの深鍋でやれば、そんなに油を大量に使わなくてもいいということがわかりまして。しかも深さがあると油はねもそんなにしない。そういう鍋を見つけてから、これならやってもいいかなと思いました。それでも、唐揚げやコロッケはやる気が出ないですね(笑)。

——わかります!特にコロッケ。具材を作るところからと思うと……

野田 春巻きは、食材をそのまま包むだけなんで楽なんです。二人でも一食で食べきれるミニサイズの春巻きの皮を見つけたのも大きかったですね。

——いちじくと秋刀魚の春巻き、絶対おいしいですね。

野田 おいしいんですよ。熱を加えるといちじくがとろっとしてソースになるんです。秋刀魚をおろすところまでは魚屋さんにやってもらうので、具をぽんぽんと並べてたたむだけ。簡単なんです。

——この日は麺もあるんですね。

野田 この「鶏トマトそば」、SNSで見かけて気になっていたんです。私はけっこう飽きっぽくて、ときどきは話題になっている料理を作って変化をつけたいと思うことがありまして。飲み屋さんなどで出てくる、締めの麺のつもりです。まあ、飲んでいると途中で作るのが面倒くさくなるので、最初から出しちゃいましたが(笑)。

夫が作る日は、食べたいものをがっつりと


日曜日

豚キムチ炒め、銀鱈の西京焼き、アボカドのナムル、白飯


千葉 僕が作りました。土日のどちらかは自分が夕食を担当することになっているんです。この日も作るつもりだったんですけど、仕事が忙しくて余裕が全然なくて。時間をかけずにさっと作れて、白飯がすすむおかずにしようと考えました。

銀鱈の西京焼きは、漬けてあるものを買ってきて焼いただけ。豚キムチ炒めは、2週間くらい前からずっと食べたいなあと思っていたので作りました(笑)。なんか、栄養バランスを考えて毎日献立を組み立てている人から見たら、食べたいものを適当に作ってるだけのように見えると思うんですけど……まあ、そのとおりですね。僕が作る日はチートデイということで。

——チートデイ(笑)。ダイエット中の好きなものを食べていい日のことですね。小松菜でなんとかバランスをとろうという意志が感じられます。

千葉 ははは。本当はもう一品くらい、野菜メインのおかずを作りたかったんですけど、断念(笑)。小松菜をゆでて添えるのが精一杯でした。

野田 昔はもっと、肉・肉・肉みたいな献立だったので……、小松菜を添えただけでも、私が作る食事に少しは寄せようとしてくれてるんだと思います(笑)。だいぶ魚のレパートリーも増えてきましたし。

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西荻窪駅南口を出てすぐの「西荻南口仲通り商店会」のアーケードにはなぜかピンクの象が吊るされています。実はこの象、三代目。地元で愛されているキャラクターなのだそうです。

——柿と水菜のサラダやいちじくと秋刀魚の春巻きなど、けっこう果物を料理に使われるんですね。

野田 数年前、スムージーを朝食代わりに作っていた時期があって、果物をよく買うようになったんです。その頃に、果物と肉や魚を組み合わせた、お酒に合うレシピも増えてきて。季節感も出るし、おつまみにもいいので、よく作るようになりました。

千葉 ちょうど昨日、夕食を食べながら妻とその話をしてたんですよ。以前、吉祥寺に「日本酒と料理 横尾」という秋田出身の大将がやっている店があったんです。15年ほど前にそこで柿と白菜のサラダをいただいたのが、僕にとっての果物料理の原体験。で、2008年頃から「桃モッツァレラ」がおいしいもの好きの間で話題になりはじめて、一般的に広まったのは2014年あたりかな。このへんで果物を他の食材と合わせてお酒のつまみにするのが定番化してきたように思います。

野田 これは食いしん坊がよくやる、「食事をしながら別の食べものの話をする」というやつです(笑)。果物を使った、少ししゃれた料理を出すビストロやバルなども増えた気がします。

身体のことを考え、野菜や魚が多めの献立に

野田 あとは、夫が数年前に腎臓を少し悪くして、たんぱく質と塩分の制限をしたほうがいいと言われたんですね。それで、食事を野菜多めに変えたんです。その後、私のコレステロール値が上がってきて、油の多い肉を控えたほうがよいかなと思いまして。振り返ってみると、やっぱり肉の脂にうまみを頼りがちだったなと。

——「肉の脂にうまみを頼りがち」(笑)。簡単においしくなりますもんね。

野田 そうなんです。でもそれ以来、肉より魚を多くするようにしたんです。

——たしかに、サバ、アジ、タコ、サンマ……魚が多めですね。

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北口近くにある、地域密着型の八百屋「小高商店」。大将が気さくに今日のおすすめを教えてくれます。

野田 西荻窪は、個人商店の八百屋や魚屋も多くて買い物しやすいんです。5年前に会社をやめて家で仕事をするようになったので、そうすると個人商店の店にも買いに行けるんですよね。八百屋や魚屋って、スーパーよりも季節の食材がわかりやすいし、旬だと安い。それで、季節の食材をよく使うようになったんです。正直、「塩・糖分・脂」がおいしいというのは揺るがない事実なんですが、それにあらがうために(笑)旬の食料や季節の果物の豊かさの力を借りている感じですね。あ、でも「糖分」はあんまり控えてないかも(笑)。

——ずっと西荻窪にお住まいなんですか?

千葉 もともと僕が吉祥寺に10年くらい住んでいて、野田が高円寺に住んでいて、一緒に住もうとなったときに中間地点という感じで西荻窪に引っ越したんですよね。それが2007年くらいの話です。そこから1回引っ越したんですけど、西荻窪内での転居だったので、ずっと西荻窪にいます。

野田 もともと御茶ノ水の会社に勤めていて、毎日のように遅くまで働いていたので、なるべく終電が遅い路線がいいなと思っていたんですよね。中央線は終電が遅いからいい……と、当時は思ってたんですけど、今考えるとかなりブラックな理由ですね(笑)。

——でも結果的に、西荻窪は生活が楽しい街だったと。

野田 そうですね。食事のための買い物もしやすいし、外食もいい店がたくさんあるし、暮らしやすいです。西荻窪は駅から少し歩けば野菜の無人販売所なんかもあるし、珍しいところでは栗園もあるんですよ。

——えっ!すごいですね。

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住宅街のなかに突如現れる「本橋栗園」。販売日には、500g単位でいくつかの種類・サイズの栗を購入できます。

野田 秋になると、そこで採れたての栗が買えるんです。そういうところもおもしろいですね。

——季節の食材があると食卓が豊かになりますね。今回は素敵でおいしいお話、ありがとうございました!

崎谷実穂

札幌生まれ。2012年、ライターとして独立。現在はビジネス、教育関連の記事や書籍のライティングを中心に活動。著書に『ネットの高校、はじめました。新設校「N高」の教育革命』、『Twitter カンバセーション・マーケティング』、共著に『混ぜる教育』。構成協力に『発達障害を生きる』(NHKスペシャル取材班編)など。食に興味があり、ホームパーティ料理を習う連載を担当していたことも。料理をするのも外食するのも好き。
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撮影:村上未知