お菓子のはじまり

食べものABC #1

FOOD
2020.04.20

意外と知らない身近な食べものの語源やルーツを、食トレンド研究家の渥美まいこさんにわかりやすく紐解いていただく「食べものABC」。サタケシュンスケさんのイラストとともにお楽しみください。第一回のテーマは、子どもたちも大好きな「お菓子」。お菓子のルーツ、みなさんご存知ですか?休校などで増える「おうち時間」、ぜひお子さんとも「食べものABC」の話をしてみてくださいね。


食べものABC

みなさんのお子さんは、どんなお菓子が好きですか?
チョコやパンケーキ、ポテトチップスなどでしょうか。
うちの里芋似の息子(2歳)は、ずっと「たまごボーロ」に夢中です。優しい甘さで口にいれるとほろっと崩れてとけてゆく。そのカリカリ食感の後に訪れるとける感じが好きなのか、毎度「ボーロボーロ」とせがむ息子の姿が見たくって、ついつい与えてしまいます。

子どもとお菓子って「究極の両思い関係」。
それは親からすれば「永遠の悩みテーマ」とも言えますが、それもまた思い出になるのかなと、悠長な母の私は思ったりしています。

さて、「卵ボーロ」を一緒に食べていたとき、ふと不思議に思ったのがそのネーミング。
「ボーロとは、どこの言葉なんだろう?」思い立ってスマートフォンで検索したところ、ポルトガル語で「ケーキ」という意味だったことが判明。そうか、南蛮人がやってきたときに日本に伝来された菓子だったか〜と合点がいき、すこしうれしくなりました。

「おいしいね」にもう一言、学びのエッセンスを

特別教育熱心な母ではないけれど、息子とは「おいしいね」と感想を伝え合うだけで終わらせず、食や料理の歴史、「食文化」のエッセンスをシンプルに伝えられたらなと思っています。

たとえば「このボーロって、なんか変わった名前だよね。これは昔に外国から伝わったんだって。その国では『ケーキ』という意味だったんだよ!」という具合に。

少し前置きが長くなりましたが、そんな思いから、子どもたちに伝えたい食文化の「入門編」として「食べものABC」をはじめたいと思います。食文化をドアノックするきっかけになるコンテンツを目指していきたいと思います。それではいってみましょう!

お菓子は、元々果実だった

まずお菓子のはじまりを探ってみましょう。
もともと、菓子は「果子」と書かれ木や草の実、栗や梨や桃だったとか。確かに「菓子」の元の意味が果実というのは、なんとなく納得がいきますね。

人の手が加わった現在の「お菓子」に近づいたのは、奈良・平安時代のこと。
果実ではない「菓子」の始まりは仏教文化と一緒にやってきた「唐菓子」でした。
その材料や作り方はまだよくわかっていませんが、小麦粉をこねて油でいためたものだったと言われています。そこから大きく進化したのが室町時代。禅宗文化の伝来にあわせて「喫茶」の習慣が日本でも浸透し、喫茶の必需品として「点心」がひろまりました。

「喫茶」と聞くと、現代の「喫茶店」のイメージからアイスコーヒーや紅茶を連想してしまいますが、元々は中国からやってきたんですね。これも一つの驚きです。

また、「点心」という言葉も現代で生きていますが、食事と食事の間の空芯(空腹)に点ずる食べもの=空腹を満たすもの、ということで、間食を表していたようです。

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南蛮菓子の代表選手、カステラは国の名前。

ここまで書いてきた通り、古代からずっとお菓子は中国から伝わってきていました。そんな中国経由のお菓子文化に一撃の変化が起きたのが16世紀、日本では安土桃山時代のことです。スペイン人やポルトガル人が日本にやってきて、南蛮菓子を教えてくれました。

その代表選手が今も親しまれているカステラ。卵を用いたこれまでにない柔らかな食感は、当時の貴族たちに大変喜ばれたそうです。

カステラはスペインの「カスティーリャ王国」で生まれたお菓子と言われていて、ポルトガル語で「カステラ」と発音するそうです。当時「カスティーリャ王国のお菓子だよ」と日本人に伝えるときに誤って、お菓子の名前だと認識されてしまったのかもしれません。知らない言葉での勘違いがカステラの語源だったとしたら、面白いですよね。

ビスケットは「二度焼いたもの」

戦国時代になると、私たちにとっても身近なお菓子である、ビスケットが日本にやってきます。

ビスケットはラテン語で「二度焼いたもの」という意味。
遠くへ出かける時に持っていく保存食として日持ちをよくするために、パンを「二度焼いて」作ったのがビスケットのはじまりなんだそうです。

探検家のコロンブスやマゼランも大量のビスケットを食べていたとか。世界の歴史にビスケットありという感じ!

今も馴染みのあるビスケット、森永製菓の「MARIE(マリー)」の誕生は1923年。なんと100年近く販売しているロングセラー商品なのです。

復刻版マリー
2013年には、1926年に発売された「マリー」のパッケージデザインを模した「復刻版マリー」も発売されました。

お菓子を通じて、見える景色がかわったら

和菓子にもカステラにも、ビスケットにもロマンあふれる歴史があることを知ると、次回食べる瞬間に、いつもよりもっとおいしく感じるかもしれません。

「おいしいね、これって実はすっごい昔はね‥」そんな親子の会話から、子どもたちのワクワクが溢れてくるかもしれません。食べものを通じて、ぜひいろいろな会話をしてみてくださいね。

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