もやしのナムル/もやし炒め

五感をひらくレシピ #31

FOOD
2023.04.06

「五感をひらくレシピ」を、自炊料理家の山口祐加さんに教えてもらいます。今回のテーマは、お手頃で、いろんな料理に合う食卓の味方、「もやし」。もやしを調理する時のコツや、保存の方法も教えてもらいました!


今回の食材:もやし

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これまで「五感をひらくレシピ」では、旬の野菜を中心にご紹介してきたが、今回は最近よく食べている「もやし」を取り上げる。

一年中スーパーで売っていて安く手に入れられる食卓の味方・もやし。味が淡白で、いろんな料理に合うことからとりあえず買っておく方も多いのではないだろうか。私もそのような理由で数ヶ月前からよく買っている。そうして気づいたのだが、もやしは淡白だけれどしっかりと旨味とだしが感じられるのだ。安くてまあまあうまい食材ではなく、すごく安くてちゃんとおいしいなんてめっちゃ使えるじゃないか!と思い、頻繁に食卓に出すようになった。

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ちなみに野菜にしては珍しく、消費期限が書かれているもやしは、おいしく食べられる時間が短く、食べきれず捨ててしまったという話もよく聞く。そんな方におすすめしたいのが、もやしを大きめのタッパーに入れてかぶるくらいの水を入れて冷蔵庫で保存すること。2〜3日に1度水を替えれば1週間くらいは鮮度をキープできる。一袋使いきれなかった…!という時にお試しあれ。

それでは、私がヘビロテしているもやし料理を2品をご紹介したい。

もやしのナムル

焼肉屋や居酒屋、ラーメン屋でも箸休めとして人気のもやしのナムル。もやし料理の代表選手と言っても過言ではない。

ナムルに欠かせないのは、塩、ごま油、少しのにんにく。これらを入れた上で、醤油や鶏がらスープで風味をつけたり、ごまやこしょうでアクセントをつけたり、他の野菜と合わせたりと無限にレパートリーが広げられる。

今回ご紹介するのはごくシンプルな基本のナムル。おいしくもやしを調理する時のコツは、調理前に水を吸わせること。買ってきたもやしの袋に水をたっぷり入れ、シンクの中で10分ほど置いておく。そうするともやしが水を吸ってパリパリとした手触りになり、独特のもやし臭さも抜ける。

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取り出したもやしを耐熱ボウルに入れ、ラップかお皿で蓋をして、600wのレンジで3分ほど加熱する。火傷に気をつけながら取り出し、蒸気が落ち着いたら中の水を捨てる。

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ここにごま油を入れて和え、塩とすりおろしたにんにく(あるいはチューブのにんにく)を小指のひと関節分ほど入れる。

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さっと和えれば完成。

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噛むごとにもやしのみずみずしさを味わう。目を閉じて噛むとシャキシャキとした食感がダイレクトに感じられる。無限に食べられるとはこのこと、という味がする。

でき立てはもちろん、少し時間をおいてくたっとした頃に食べるものおすすめ。時間をおくと、おいしいもやしのだしが出てくるので、ぜひ味見してみてほしい。

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余った時は、蒸し鶏を入れてアレンジしたり、酢を入れてさっぱりさせるのも良い。何食わぬ顔をして日常を支えてくれる、滋味深い料理だ。

もやし炒め

もやし炒めは、ナムルと同じくらい定番のもやし料理。あと一品欲しい時や、ごはんを食べ終わったはいいものの、少しお酒を飲みたかったり、食べ足りなかったりする時、すぐに作れて助かる料理だ。

事前準備として、ナムル同様に水を吸わせておくとよりおいしく作ることができる。もやしのひげ根を取るかどうかは悩ましい問題だが、時間があって、黙々と作業したい日は取ってみるのもいい。一袋作業するのに20〜30分かかってしまうが、ひげ根を取ったものはまるでラーメンのようにするすると口当たりがよく、クセもなく本当においしい。

一方で、もやしは火の通りが早く、慌ただしい日々に寄り添ってくれる食材でもある。取らなくても満足度は高い。ということで私は「取る:取らない」=「1:9」くらいの割合で料理している。

もやし炒めの材料はもやし一袋に対してにんにくのみじん切りを少々、ごま油、酒、塩。書いてみて気づいたが、ナムルとほぼ同じ食材である。調理法が変わるだけで全然違う印象になるから料理はおもしろい。

にんにくのみじん切りとごま油をフライパンに入れ、強めの中火で加熱する。フライパンが温まっていくとともに、にんにくの香りが立ち、しゅわしゅわと火が通る。

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この香りがしたらもやしを一気に入れ、酒を大さじ1ほど加えてすぐ蓋をする。こうすることで蒸気をフライパンの内側に充満させ、上の方にあるもやしにも素早く火を入れていく。1分ほどしたら蓋を取り、全体を混ぜ合わせて塩をふる。すぐ盛り付けて、すぐに食べる!

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熱々を口に運ぶと、もやしの香りがふわっと広がる。歯応えがよく、噛むのが楽しい。

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味が薄いなと思ったら、お皿の下に溜まった水分をちょいっと飲んでみる。塩気とともに、もやしの優しい出汁が味わえる。手頃な食材を料理して、さっと食べる。この自由さが自炊の良さだなと改めて感じる。

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それにしてももやしって安すぎない?と調べてみると、昨年11月、もやしの生産者団体が意見広告を出したそう。

「『物価の優等生』として家計に貢献できることはわたしたちの誇りでもありました。しかし、安さばかりを追求していては、もう続けていけない状況です」
「30年前と比べて、原料種子は3倍以上、最低賃金は1.7倍、様々なコストが上昇。一方のもやしの全国・平均価格は2割以上も下落しているのです。もやし生産者は8割減少し、今も減り続けています」
とある。(J-CASTニュース 2022年11月9日記事より

メーカーさん、今まで努力を続けてきてくれて本当にありがとう。そして20円や30円高くても、なんなら100円でも買うので、無理しないでください。どうかこれからも、食卓にもやしが並びますように。

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