2023年、私を満たした沖縄グルメ

晴れでも雨でも食べるのだ。 #42

LIFE STYLE
2023.12.21

食べものや飲みものにまつわるあたたかな記憶とその風景を、奥村まほさんの言葉で綴るエッセイ「晴れでも雨でも食べるのだ。」今回のテーマは、沖縄在住の奥村さんが今年よく食べた沖縄グルメトップ3です。


2023年が終わろうとしているので、急いで写真フォルダを整理しはじめた。年末を迎えるたび、私はそのデータ量に頭を抱えながら撮りっぱなしの写真をアルバムに放りこんでいくのだが、これが一年を振り返る良い機会になっている。

縁もゆかりもない沖縄に引っ越すことになりあたふたしていた冬。台風に怯えつつも新しい暮らしに慣れていった春から夏。毎週のようにドライブに出かけ、すがすがしい気候と雄大な自然を満喫した秋。その間に沖縄本島の北から南まですべての市町村に足を運び、読むのが難しい沖縄の地名もだいぶ読めるようになってきた。

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引越し当初はどうなることかと思ったけれど、今では沖縄のちょうどよい都会度や温暖な気候、穏やかな空気感を気に入っていて、これから帰省で真冬の本州に赴くのが億劫に思えるほどだ。

そんな私の写真フォルダは、これまでもずっとそうだったように食べものと自然風景で埋め尽くされている。とりわけ今年は海の写真が多く、何も知らない人が見たら一年中のんきに南国バカンスを楽しんでいたのかと呆れてしまいそうだ。

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すっかり沖縄の色に染まったアルバムと同様に、私の胃の中も沖縄の食べもので日々満たされた。地元でとれる野菜や魚、豚肉や豆腐などを用いた琉球料理と、戦後にアメリカの影響で広がった食文化。

相容れなさそうな食文化が混在するこの土地は、飲食店も多様でおもしろいので、週末のランチがいつも楽しみだった。突然だが、今年ランチでよく食べた沖縄グルメのトップ3をランキング形式で紹介していく。

1位:沖縄そば

今年もっともよく食べに行ったランチは、県民のソウルフード、沖縄そばだ。近所で手軽に食事を済ませたいときや、お昼のタイミングを逃してしまったときに、ラーメン屋に立ち寄る感覚で食べに行った。

いたるところにあり、営業時間も長い店が多いので、「ランチに困ったら沖縄そば」と思わせてくれる心強い存在だ。そういえば、沖縄上陸後初のランチも沖縄そばだった。

ちなみに今日のランチもソーキそば。疲れた脳と体にかつお出汁のやさしい風味が染みた。個人的には、沖縄そばはうどんとラーメンのいいとこどりをした食べものだと思う。うどんのようなやわらかさとやさしさに加え、ラーメンのようなコクと強さも備わっている。

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沖縄そばにはさまざまな種類がある。一般的に「沖縄そば」と呼ばれるスタンダードな「三枚肉そば」、骨付きのスペアリブ(=沖縄の方言で「ソーキ」)をトッピングした「ソーキそば」、柔らかく煮込んだ豚足をトッピングした「てびちそば」、郷土料理のゆし豆腐を加えた「ゆし豆腐そば」…。地域性によって名付けられた「八重山そば」や「宮古そば」、「大東そば」なんかもある。

基本は豚とかつお節でとったスープだが、味は店によってけっこうちがう。醤油風味にしたり、ラー油やもやしを加えて担々麺風にしたりと、アレンジを効かせたメニューを提供している店もある。

とはいえ私はシンプルな味が好きなので、あっさりしたものを食べたいときは基本の三枚肉そばを、そこそこお腹が減っているときはソーキそばを頼むことが多い。とんでもなくお腹が減っているときは沖縄の炊き込みごはん「ジューシー」も追加する。

和風の出汁が効いているからだろうか。ここで暮らしはじめるまで、沖縄そばもジューシーもほとんど食べたことがなかったのに、食べるたびにずっと昔から知っていた味のように思えて安心する。

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沖縄そばは、家庭にも浸透している。スーパーには沖縄そばコーナーがあり、地元の各メーカーがしのぎを削る。出汁や麺、三枚肉やソーキなどの材料がずらりと並び、初めてスーパーを訪れたときは興奮した。きっといろいろな種類を組み合わせて研究を重ねる在宅沖縄そばのプロみたいな人もいるのだろう。

私もあれこれ買って研究してみたいものだが、種類があまりにも多いのでどれを買っていいかわからず、何も買えないまま今にいたる。その気休めとして購入するのが、お湯を注ぐだけの即席沖縄そば。夕飯の残りの煮卵やチャーシューをのせ、昼にひとりで食べる時間は至高だ。

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2位:ステーキ

沖縄にやってきて驚いたことのひとつが、ステーキ店の多さだった。ステーキハウス88、ビッグハート、やっぱりステーキ、JUMBO STEAK HAN'Sなど、チェーン店だけでも複数あり、老舗で有名なジャッキーステーキハウスをはじめとする個人店もそこかしこにある。人口10万人あたりのステーキ店の店舗数は全国1位で、全国平均の約3倍だそうだ。那覇の中心部でGoogleマップに「ステーキ」と入力したら、20店舗もヒットした。

肉と魚なら肉のほうが好きな私は、引っ越しが落ち着いたころにごほうびとして食べて以来、ときどき無性に食べたくなることがあり、たびたびステーキ店に行くようになった。東京にいたころはステーキなんてめったに食べなかったのに、今では月1を超えるペースで食べている。内臓脂肪や血管の状態はやや心配だが、熱々の鉄板から放たれるじゅうじゅうという音を聞くたび、子どものころに戻ったみたいにわくわくしてしまう。

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ステーキ店は、サラダとスープはおかわり自由、ライスかガーリックライスを選択可能、追加でドリンクバーも注文可能など、ファミリーレストランのような仕様になっていることが多い。選べる肉の種類やランク、セットメニューが充実している店も多く、メニュー表を眺めるだけでも楽しい。

これまで食べた中で個人的に一番おいしかったのは、O’s House(オズハウス)という個人店のステーキだ。格子柄が美しいお肉は、やわらかく厚みがあってとってもジューシー。バターや特製ソースが肉のうまみと絡み合い、口に入れたとたんに幸福を食べている気がしてくる。沖縄に来たらぜひ食べにいってもらいたい。

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3位:タコス

今年もっともハマった沖縄らしい食べものは、タコスかもしれない。ご存じのとおり、肉や野菜、チーズなどをトルティーヤ生地で包み、好きなサルサ(ソース)や玉ねぎなどのトッピングを盛り付けて食べる料理だ。スパイシーな味はもちろん、具やサルサ、トッピングの多様さ、自分で味付けをする楽しさ、食感のおもしろさ、意外とさっぱりしていて食べやすいところなど、語り尽くせない魅力がある。

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ステーキ同様にアメリカの影響で広まった食べもので、こちらも県内のいたるところに専門店があるが、今のところ一番好きなタコス店は、北谷町にあるEsparza's Tacos & Coffee (エスパーザーズ タコス&コーヒー)というお店。肉汁が溢れるビーフステーキタコスとさくさくのガーリックシュリンプタコスがおすすめだ。

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わが家では、ドライブ中にタコス店に立ち寄ることが多い。ランチの候補を話し合うときに「うーん、じゃあタコスは?」と私がいつもさりげなく提案するからだ。片手で食べられるタコスはピクニックにももってこい。晴れた日に眺めのいい場所でかぶりつくのが最高に気持ちいい。

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食後のデザートやおやつについても語りたいところだが、今日はここでストップしておく。来年もまたおいしい沖縄グルメに出会えることを期待しつつ、年末は久しぶりに日本蕎麦を食べにいこう。

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