ひとり飯は「究極のわがまま」で楽しむーーチュートリアル・徳井義実さんのおうちごはん

きのう何作った?

PEOPLE
2023.02.01

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お笑いコンビ「チュートリアル」のボケ担当である徳井義実さん。自身のYouTubeチャンネル「徳井video」にアップしている料理動画「こじらせ飯」シリーズでも注目を集めています。今回は、ひとりごはんへの向き合い方や料理動画のこだわりについて伺いました。

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お話を伺った人:徳井義実さん

1975年生まれ。京都府出身。NSC大阪校 13期生。個人YouTubeチャンネル「徳井video」はチャンネル登録者数45万人を突破(2023年1月現在)。ゼロから開発したこだわりのオリジナル商品も発売中。

一人分をわざわざ作るからこそ、ちゃんとしたものを作りたい

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ーー「こじらせ飯」シリーズ、楽しく拝見しています。徳井さんの料理は、ひとりごはんでも、丁寧でこだわりが詰まっている印象があります。

自分一人分のごはんって、極論を言えば、別に作らなくてもいいわけじゃないですか。外食や出前で済ませても、誰にも何も言われないし。「わざわざ」作るからこそ、「ちゃんとこだわろう」と思うんですよね。

ーー調理中も、手間暇をかけるところと、手を抜くところのバランスが絶妙ですよね。どのような基準なのでしょうか?

意味のない無駄が嫌いなんですよね。「これ、ホンマにいるか?」と考えたときに、「いらんやん!」って思ったらそのままにしておけない性格で(笑)。料理に限ったことではなく、何でもそうなんです。

たとえば、キャンプをするときも、特定の工程に時間をかけて全体がせかせかしてしまうより、手を抜けるところは時短をして、キャンプの醍醐味がきちんと楽しめるようにしています。

ーー料理のバリエーションはどうやって増やしたんですか?

僕は10回料理をするなら、一つのメニューを10回作るより10種類作りたいタイプなんです。一方で、同じものを繰り返し作ることで得られるものもあると思うので、3回作ってある程度の経験値がたまったら、残りの7回は他の味を試してバリエーションを楽しみたい。そうしていくうちに、自然とレパートリーも増えていきました。

外食も同じですね。相方の福田は定番人間なので同じ店に通うタイプなんですけど、僕はいろんな店に行きたい。行きつけの店にも通いながら、他の店にも足を運んで知見を広げていくスタイルです。

冷蔵庫のスタメン食材はなし。作りたいものに合わせた買い出し

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ーー冷蔵庫に常備しているスタメン食材はありますか?

特にないですね。作りたいものがあったときにスーパーに行って、極力その分だけ買うようにしています。材料が残ってしまったら冷凍保存して、次に料理するときに使うようにしています。

ーースタメンなしで料理をしているのはすごいですね…!食べたいものが浮かばないときはどうされていますか?

食べたいものがなくても、作りたいものや使いたい調理器具などがあるので、そこから献立を考えてますね。「新しい中華鍋を使いたいから、今日はチャーハンを作ろう」とか。

ーー道具から入るのはおもしろいですね。食生活で健康維持のために気をつけていることはありますか?

健康のために意識しているのは、食べ過ぎないようにするくらいです。

たとえば、食事制限でバターの量を半分に減らす人がいますけど、大した成果は出ないでしょう(笑)。野菜中心のメニューに置き換えるなら分かりますけどね。バターを半分にしたところで、大きなカロリーオフになってないのに、味はグッと落ちるんですよ。

それだと意味がないと思うので、食事中は無理に欲求を抑えるような行為はしないですね。太ってきたなと思ったら、食べる時間の間隔をあけて調整しています。

ーー徳井さんの「推しスーパー」はありますか?

よく行くのは、圧倒的に「サミット」です。めちゃくちゃ近いんですよ。あと、牡蠣醤油のようなちょっと良い調味料を買いたいときは、品川駅にある「QUEEN'S ISETAN」に行きます。大阪から帰ってくる新幹線内で「あれ作ろうかな〜」とメニューを考えて、買い物しに寄るときもあります。

ーー仕事が終わってからすぐ、晩御飯の献立を考えるんですね!

料理は理屈。ロジックを理解するとどんどん楽しくなる

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ーー献立のインスピレーションはどこから得ていますか?

外食から、ですね。おいしいと思った料理は「どうやって作られてるのかな」とか「何が入ってるのかな」とか考えながら食べています。料理は理屈なので、何度も作っていくうちに「同じメニューでも何でこんなに味が違うんやろ、火を入れる時間が違うんかな」とか、ロジックがわかってくるんですよ。

30代の頃は結構外食する機会も多かったので、そこで得た知識が引き出しになってるのかもしれないですね。あとは、番組でご一緒したプロの料理人の方が言ってたことを何となく覚えてるとか。

ーーそこで得た知識で、今も強く印象に残っているものはありますか?

陳建一さんに教わった「麻婆豆腐の豆腐は絶対にゆがく」ですね。やるとやらないで味がだいぶ変わるので、絶対にこの作業は省かないようにしています。「なぜこれをやるのか」とか「鍋の中で具材がどうなっているか」が理屈でわかると応用が利くようになるので、料理がどんどん楽しくなりますね。

だから、献立を考えるときも、「理屈」をベースに考えながら全体像をイメージしていきます。パスタが食べたいと思ったら、他の食べたい食材と何が合うかを考えて、味付けや食材の組み合わせを描いていく流れです。

料理動画はエンタメとして楽しんでもらいつつ、自分もおいしく食べられるように

ーーYouTubeに料理動画をアップするようになって、料理への向き合い方は変わりましたか?

視聴者のことを考えて、見栄えを意識するようになりましたね。動画内の見どころを作るためにちょっと派手な調理工程があるものを選んだり、おいしく見える画角を考えたり。

ーー調理工程の見どころまで考えているんですね!

派手な音は入れるようにしていますね。焼くときの「ジュー!」って音とか、食材を切るときの「トントン」、煮込むときの「グツグツ」とか(笑)。

ーーなんだか、お笑いのネタ作りみたいですね。

料理動画はネタと同じような作り方ですね。「中盤でこれ以上ダレたら見なくなるから、ここで派手な調理を挟んどこう」「ここで大きな音を入れよう」とか思いますもん(笑)。

ただ、料理動画に関しては、雑っぽいところもあって良いと思っています。盛り付けやお皿も意識して極力おいしそうに撮るようにしていますが、最終的には自分が食べるものなので、ストイックになりすぎないようにしています。

視聴者にも楽しんでもらいつつ、自分もおいしくいただけるようなバランスを保つことが大事だと思っていますね。それがYouTubeを楽しく続ける秘訣でもあるのかなと。

ーー視聴者も自分も楽しめるバランス、大事ですよね。芸人仲間やお友達に料理を振る舞われることはありますか?

ホームパーティーはたまにやりますね。人に料理を振る舞うときは、塩分に気をつけています。濃いめの味の料理を作ったら、塩分控えめのものを出すとか。トータルの塩分のバランスを考えますね。

たまにテラハで一緒だったメンバーと家でごはんを食べるんですが、そのときは麻婆豆腐が特に好評でした。

ーーひとりごはんと、みなさんに作るごはんの違いはありますか?

料理好きな人がホームパーティーをすると、「あれもこれも食べて」ってなりがちなんですよね。食べてくれる人に「残ってるから食べ切らなきゃ」と思わせないように、「もうちょっと食べたかったな」くらいで終われるようにしています。

料理もお笑いも、完成度を高めることがモチベーション

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ーー徳井さんにとって、ひとりごはんはどんな存在ですか?

一人で作るごはんは、「究極のわがままをぶつけられるごはん」なんですよ。僕が料理にハマったきっかけは、チャーハンとナポリタン。この二つはどこで食べてもある程度おいしいけど、お店ごとにちょっとずつ味や具材が違うじゃないですか。

ーーたしかにそうですね。

「ここのナポリタンが一番うまいねん」と言っても、他の人にとってはそうじゃないこともある。料理自体のグレードではなく、好みで意見が分かれるんですよね。だからお店で食べるのではなく、「自分で自分好みの特製ナポリタンを作ろう」と思ったんです。それからたくさん作って、料理にハマっていきました。

ーー料理に対する一番のモチベーションは何ですか?

料理の完成度ですね。やっぱり「めっちゃ上手くできたな」と思えたら嬉しいですし。なかなか100点は出ないですけど(笑)。お笑いのときも同じなので、お笑いと料理の思考はすごく似ていると思いますね。

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取材・編集:小沢あや(ピース株式会社)
構成:伊藤美咲
撮影:曽我美芽

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