そもそも、「食育」ってなに?

やさしい「食育」のハナシ #1

FAMILY
2020.03.05

子育てをする中で、きっと多くの人が耳にしたことのある「食育」。大切なことなのはわかるけれど、忙しい毎日の中、なかなか取り組む余裕がないと感じたり、できていないことに後ろめたさを少し感じてしまったり…。

普段からお母さんたちの「食育」の悩みと向き合っていらっしゃる「日本キッズ食育協会」チーフトレーナー/理事の爲我井あゆみさんは、「実は『食育』って、決して難しいことではないのです」と、おっしゃいます。「食育」ってそもそもなに?忙しい毎日でもできる「食育」って?など、「食育」を身近に感じられる爲我井さんのコラムを、全4回にわたり、お届けします。


「食育」は難しくなくていい!

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「食育」という言葉にどんなイメージをもっていますか?とお母さんたちに聞くと、こんな声があがります。

  • 何から始めれば良いのかわからない
  • 教育の「育」というイメージから、難しそうという印象が強い
  • 一緒に作らなきゃいけない
  • 野菜を育てて食べること
  • 命の大切さを知ること
  • 魚の切り身しか知らない子にはなって欲しくないけど…
  • 食材がどういうふうに作られているか知ること

それらももちろん、大切なことです。だけど、目指している意識が高いからこそ、食育が難しく感じられるのかもしれません。

でも実は、食育は難しくなくて良いのです。

食事中、子どもと「おいしいね」と目を見合わせる。実はこれだけでも、「食育」です。平日は、この5文字を笑顔で言うことだけを心がけてみてください。

こう聞くと、簡単に感じませんか?

そもそも、「食育」という言葉を知っている、それだけで、お子さんを思いやっている立派な証拠です。まずはお母さん自身に、「私、食育ができていたんだ!」と、自信を持ってください。

一緒に野菜を育て、食べることも素敵なことですが、土や苗を買いにく手間、毎日水をあげる手間などを考えると、ついつい後回しになってしまいますよね。

理想が高いからこそ、「実践できなかった」と、落ち込んでしまうこともあるかもしれません。でも、まずは食育に対するハードルを下げ、「頑張らなくてもできる食育」の方法を実践してみてほしいと思います。

「思いやり」を育む食育

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スーパーで品出しをしている人に、「ありがとう」と言えるようになる。こんな思いやりの気持ちを育むこともまた、立派な食育です。

例えば、「子どもがわがままで、思いやりがないんです。喧嘩も多くて…。」

こんなご相談をよく受けます。

幼い子どもたちは、相手に自分と違う感情があるということが、なかなか理解できません。年齢を重ねるにつれて学んでいきます。だから、「思いやりのない子」だと落ち込む必要はないと思います。

例えば「食」を通して、「思いやり」の気持ちを伝えていくこともできます。

例えば、「米」。稲やもみの状態を見たことがないお子さんも多いのではないでしょうか。そんな時は、ごはんとして普段の食卓に出てくるまでの過程を知ることで、その一粒の大切さを知ることができます。

お米には、育ててくれた人や、それを運んでくれた人。スーパーで並べてくれる人や、レジを打ってくれた人。そして、働く人をお家で待っている人。たくさんの人たちが関わっています。

目の前にいる、作ってくれた人への「ありがとう」は、誰もが普段から持ちやすいものです。でもその背景を伝えることで、そこからさらに一歩進み、食に携わるすべての人に、「ありがとう」という感情を持つ。感謝の心を養う。これが、思いやりを育む「食育」です。

このように、私たちが目指す「食育」とは、食について「学ぶ」というよりも、食を通し、前に進む力や、思いやり、感謝の心、協調性を養えるきっかけ作りをすることです。

バナナでできる食育

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「バナナで食育」と聞いてもピンとこないかもしれません。でもこれもまた、とても良い「食育」のきっかけとなるのです。

大人に「バナナを描いてみてください」と言うと、ほとんどの方が黄色の色鉛筆を選びます。

一方、子どもたちに「よく観察してごらん」と一言伝えると、シュガースポット(黒い斑点)を描いたり、付け根のとげとげを描いたり、お尻の部分の茶色い部分を描いたりと、様々な絵を描いてくれます。

実際に食育レッスンに取り入れたところ、ヤシの木にバナナがぶら下がり、太陽が照りつけ暖かい国にバナナができているところや、お猿さんの絵まで描いてくれた子どももいて、微笑ましく思いました。

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「バナナを描く」ということだけで、観察力だけでなく、想像力も豊かにしてくれるのです。このように、子どもたちの探究心や想像力を引き出すのもまた、食育の役割です。

インターネットやSNSも発達した今の時代、子どもたちが情報を入手する機会は昔よりずっと多くなっています。

でもそんな中でも、見えない背景を知ろうとすることや、そこから先の世界に興味を持ち、子どもたち自ら探究することは、子どもたちの無限の可能性を引き出してくれます。

「食育」という言葉からくる難しいイメージや、栄養や食の知識という概念をまずは外し、「食」を題材に子どもたちの心を豊かにする。まずはそこから、食育と向き合っていただければと思います。

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イラスト:坂道なつ
アイスム座談会