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有賀薫さんがアイスム編集部と語る、ごはんを作る気持ちとの向き合い方

耳で楽しむおいしいスープレシピ #38

PEOPLE
2024.01.05

スープ作家 有賀薫さんの声でお届けする“聴くレシピ”。2024年最初にお届けするのは…有賀さんとアイスム編集部スタッフ(中辻・虫明)による、スペシャルトーク第三弾!今回はアイスムに届いたお悩みにお答えしつつ、「ごはんを作る気持ちとどう向き合うか」をテーマにトークを展開します。毎日ごはんを作っていると、どうしてもしんどい日ってありますよね。そんな気持ちにどう向き合うか、自分にあう解決方法は何か。3人のトークをお聴きいただきながら、ぜひ一緒に考えていただけたらと思います。


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ごはんを作る気持ちが家出することってありますか?

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中辻 お悩み相談を募集したところ、何通かメッセージをいただきました。今回は寄せられたお悩みについて、有賀さんと一緒に考えられたらと思います。

では早速、真美さんからのメッセージをご紹介します。

有賀さん!大ファンです。

お悩み…時々、ある日突然にフッと
「今日は、なーんにもごはん、作りたくない」
と、心が旅に出てしまうときがあります。

外食すればいいじゃない?…という気にもならず、
そんな気持ちが1週間くらい続いたことがあります。
(現在は復帰しました!…まぁ、気分の問題だと思うのですが…)

結局、丼ものや、普段はあまり食べない菓子パンや
おいしいサンドイッチを買ってみたり…。

有賀さんもそんなときってあるのですか?
ごはんを作る気持ちが家出したとき、有賀さんならどんなメニューを作られますか??


有賀
 真美さん、メッセージありがとうございます。

あります、あります!真美さんの「ごはんを作る気持ちが家出したとき」というフレーズがすごくいいなと思って、皆さんと一緒に考えてみたいと思いました。まさに、家出ですよね。「やる気がどこかに行っちゃった!」みたいなことって、ありません?

中辻 あります。

虫明 しょっちゅうです。

有賀 料理家である私でも、毎日のおうちごはんはやる気満々というよりは、「あぁ、今日は何作ろうかな…」と悩みながら作っています。お二人はどういうシチュエーションのときに、ごはんを作る気持ちが家出しますか?

中辻 やっぱり疲れているときとか、余裕のないときですかね。考えなきゃいけないことがたくさんあるときに、さらに献立を考えなきゃいけないとなると、「誰か考えて!」という気持ちになったり、手を動かすことが億劫になったりします。「考えられないとき」と「手を動かしたくないとき」と、2パターンあると思いますね。

有賀 そうですよね。ごはん作りって、頭を使う作業だと思います。買い物をどうするか考えて、献立を考えて、分量や味付け、盛り付けまで考えて…。考えずにできるのは洗い物くらい。考えることの連続だからこそ、私も仕事が重なったときは、ごはん作りがしんどいなって思いますね。

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中辻 有賀さんはお仕事も料理ですもんね。

有賀 仕事で料理をたくさん作った後に、「家でもまた料理か」と考えてしまうときはありますね(笑)。でも、仕事と家庭で別のメニューを作ることで、しんどい気持ちが解消される場合もあるので、やる気って不思議だなと思います。虫明さんはどうですか?

虫明 私も仕事で帰りが遅くなったときですね。それと、私はよく旅行に行くのですが、家を3〜4日空けると、帰宅後1週間くらい、ごはん作りに向き合おうとする気持ちが家出してしまいますね。

有賀 あ~、体は帰ってきているのに、料理に向き合う心が帰ってこないんですね。

虫明 はい…。そもそも旅行に出掛けていますから、家事も仕事も溜まっていて気持ちに余裕がないというのもあるのですが、単純に冷蔵庫に食材がないというのもあります。旅行前に冷蔵庫を片づけて出発するので、帰ってくると食材が何もないんですよね。

有賀 たしかに、ゼロからのスタートですよね。

虫明 ゼロから全部組み立てるのがしんどいんです。最近は、帰宅日にネットスーパーから食材が届くようにしておいて、その億劫さを乗り越える工夫をしようとするのですが、いかんせん計画性がないのでよく注文を忘れるんですよね(笑)。

ただ、それも「しょうがないな」と思うようにしています。一番良くないのは、「なんでごはん作れないんだろう、私ダメだな」と思ってしまうこと。作りたくない気持ちがあるなら、「今週は(デリバリーなども使って)おいしいものいっぱい食べよう!」と考え、気持ちを切り替えるようにしています。

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アイスム編集部の中辻(左)、虫明(右)

気持ちが家出したとき、どう考え、どう動けばいいか

有賀 虫明さんの考え方、すごく重要ですね。真美さんの「普段はあまり食べない菓子パンやおいしいサンドイッチを買ってみたり」というのも、とても良いことですよね。しんどいときこそ、外食やテイクアウトを活用するなど、情報を外から集める“インプット期間”と捉えてみるのはいかがでしょうか。仕事でも、知識を得たり、情報を集めたりする時期があるからこそ、アウトプットできるものですよね。「この期間はアウトプットよりインプットに力を入れているのよ」と考えたら、少し気が楽になるんじゃないかなと思います。中辻さんはどうですか?

中辻 私の場合は、夫も料理をするので、私の気持ちが家出していてもごはんが出てくるんです。それはとっても助けられていますね。

有賀&虫明 (拍手)それはありがたいよね~!

中辻 日によっては二人ともごはんを作りたくないことがあるので、そんな日のために冷凍食品をストックしています。アジフライを揚げるだけとか、餃子を焼くだけとか。とりあえず何かハードルの低いものから始めると、やる気が戻ってくることがあるんですよね。

有賀 そうなんですよね。体が疲れているときは作業自体が億劫だけれど、考えられないときには、体を先に動かすとやる気が後から付いてくることはありますね。私の場合、まず味噌汁のだしを取ります。それが難しかったら、まずお湯を沸かします。これをやるだけで、椅子にベッタリ座っていたところから、少し腰を浮かした状態になるんですね。少しずつ気持ちを乗せていくための「ステップ」があるといいのかなと思います。

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まずは味噌汁のお湯を沸かして、気持ちを切り替えよう!

有賀 私自身は、主婦として30年くらいごはん作りをしてきて、「やる気って波があるなぁ」って思うんです。全然やる気が起きない1か月があったり、その後にやる気満々の期間があったり。落ち込んでいるときに無理をすると、そのときはがんばれても、さらに落ち込んでしまうこともあると思います。そういうときは「やる気のなさを放っておく」という方法もあります。

私は全然やる気がないときに、使う手を3パターンくらい決めています。「ピザをとる」とか、冷凍や常備している食材で作れる「簡単パスタ」とか。あとは「たいしておいしくないようなごはん」。あんまりおいしく作ろうとせず、残り野菜やさつま揚げ、ちくわなどを適当に炒めるだけ。やる気がないなら、ないままに、そーっとしておく。放っておくと、また自然にどこかで気持ちが上がってくるから、無理はしない。そういう考え方もあるのかなと思います。

ピンチを「楽しみ」や「特別」に変える

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中辻 一人暮らしなら気持ちを放っておいてもやり過ごせるかもしれませんが、家族のためにどうしても作らなければならない方もいるかなと。外食やお惣菜などで済ませようと思っても、子どもが小さいと、外に出ること自体が大変なんですよね。最近はデリバリーサービスも増えたので、うまく活用できればいいのかなとも思います。

有賀 たしかにそうですよね。虫明さんはピンチのとき、どうしていますか?

虫明 ピンチの時はUberEATS頼みです。子どもが小さかった頃はUberEATSはまだなかったんですが、よくココイチの宅配カレーを頼んでいました。1歳くらいから食べられる子ども向けのカレーがあって、500円弱でお菓子も付いてくるんです。「今日はココイチにしよう!」と言うと子どもたちは「わーい!」と喜ぶし、私も「カツでも付けようかな」って親子共々テンションが上がります。

中辻 そういえば私はレトルトカレーを活用していました。いろんな種類をストックしておき、もう今日は無理だという日に「好きなの選んで!」と。子ども用のカレーはステッカーも入っていて、子どもは大喜びしますね。

有賀 デリバリーや市販のものを楽しみに変えるって素晴らしいですね!わが家ではピザをとるとき、いつものダイニングテーブルではなく、テレビの前のローテーブルで食べるんですよ。場所を変えるだけでも一気に楽しくなります。「手を抜いた」というよりは、「今日は特別なのよ」という雰囲気作りをしています。

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自分にあった解決方法を見つけてみよう!

有賀 ここまでの話が真美さんや皆さんの参考になったか分からないのですが、こういう話はみんなで共有するととても参考になるので、ぜひアイスムに感想メッセージなどをお寄せいただいて、「私はこんなふうにしているよ」という情報を教えていただけたら嬉しいです。

中辻 他の人がどうしているかを知るだけでも、困ったときに「そういえば、こんなことを言っていたな」ってふと思い返して、助けになるかもしれないので、アイスムが共有できる場になったらいいなと思います。

有賀 解決方法は人それぞれ。自分にあった解決法じゃないと、どんなに良いものでもしっくり来ないので、何か自分の手持ちの「これだ!」=それぞれの「ココイチ」を作れるといいんじゃないかなと思います。それさえあれば、いざというときに乗り切れるはずです。家出した気持ちが早く戻ってくることを祈っています!

料理の「しんどい」と向き合うヒントはこちらにも
 
奥村まほさんエッセイ
 
山口祐加さんと星野概念さん対談
 
甘木サカヱさんコラム
 
様々な業界で活躍中の皆さんにも「ごはんを作りたくない日」について聞いています!


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次回はいつも通り、スープレシピをお届けする予定です。
レシピは「牡蠣と春菊、しめじの味噌汁」です。お楽しみに!

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撮影:木村琢也

アイスム座談会