肉好きの彼が唐揚げを作り、激辛好きの彼女が掃除洗濯をする。働く二人の絶妙な家事バランス

となりのおうちの「1週間ごはん」#15

PEOPLE
2023.08.15

普通の家庭のリアルな1週間のごはんを紹介するシリーズ「となりのおうちの『1週間ごはん』」。今回は、郊外で二人暮らしをしている翔大さんと杏奈さんのお宅に訪問しました。食事作りのメイン担当は翔大さん。在宅勤務を終えてからぱぱっと作るという肉料理が主役の夕食、とってもおいしそうです。

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翔大さん

1994年生まれ、北海道出身。アプリ開発企業勤務。高校生の頃から食事作りをしており、杏奈さんと二人暮らしを始めてからはメインの料理担当を務める。You Tube「料理研究家リュウジのバズレシピ」の虚無シリーズなどを視聴し、参考にすることも。今後はスパイスカレーに挑戦する予定。好きな食べ物は肉。

杏奈さん

1996年生まれ、埼玉県出身。ウェブサイトの運営・管理やイラスト作成を仕事とする。家では料理以外の家事と、気が向いたときに食べたいものを作る担当。辛いもの耐性が異様に高く、刺激物を好む。好きな食べ物は酸辣湯麺。翔大さんの作る料理で好きなのはピーマンの肉詰め。

過去最高を更新した低温調理のローストビーフ

——落ち着いた雰囲気のおしゃれなインテリアですね。どのくらいこちらに住まれているんですか?

翔大 ここに引っ越したのは2年前です。以前は勤めている会社の近くに住んでいたんですけど、3年前くらいにフルリモート勤務になったんです。前の家は1LDKだったからそれぞれの部屋が持てず、専用のデスクもおけなかったので、仕事をするには厳しいなと。それで、千葉の3LDKの家に引っ越しました。

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——フルリモート勤務になってから、翔大さんがごはんを作り始めたんですか?

翔大 二人で暮らし始めた時から、基本的にメインで作っています。あ、ここに引っ越して半年くらいは彼女が作っていましたね。

杏奈 たぶん、引っ越し直後で、キッチンも広くなって、やる気があったんだと思う(笑)。当時はパンも焼いていました。

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ローストビーフ丼、冷やしピーマン(醤油マヨネーズ)


——事前にいただいたメモに「前日にスーパーに行ったら、安くて良い肉があったので購入」とあります。

翔大 買い出しは、土日のどちらかに近所の「ロピア」というスーパーに車で行きます。そこは、安くて良い肉がたくさん売ってるんです。この時はローストビーフ用の500グラムくらいの和牛のかたまり肉をどーんと買いました。

——買い物は何を買うか決めずに行くんですか? それとも献立を決めてその材料を買いに行く?

翔大 決めないで行くことが多いです。1週間分買って、金曜日まではそれでやりくりします。

——そして、買ってきた肉を低温調理器で調理しておいた、と。

杏奈 ある時、気づいたら家に低温調理器があって「おっ」と思いました(笑)。

——事前の相談は特になく(笑)。

杏奈 調理系の器具は、彼の判断で買うことが多いですね。ハンドブレンダーも気づいたら家にあった。低温調理器は、職場で流行ってたんだっけ?

翔大 同僚でダイエットしている人が「低温調理器で鶏ハムを作るとめっちゃうまい」という話をしていて、僕も作ってみようかなと思ったんですよね。セットしたら放置しておくだけでいいから、結構活用しています。この時は、日曜に肉に火を通しておいて、月曜の夕食前に焼き目をつけてカットしました。

杏奈 このローストビーフ、今までで一番おいしかった!ローストビーフは何回か作ってもらっていたけど、このローストビーフが最高を更新しました。やわらかさといい、肉質といい、火の通り具合といい、すべてが完璧だった。

翔大 いつものレシピだと肉に焼き目をつけてから、袋に肉と玉ねぎを入れて低温調理器にかけるんだけど、今回は肉だけ低温調理して、後から焼き目をつけて玉ねぎソースを作ったんですよね。それが良かったのかもしれない。肉自体も良かったし。

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——あとは冷やしピーマン。これ、氷水に入れておくとめっちゃパリパリになるやつですか?

翔大 それです。この2週間前くらいに、居酒屋で「冷やしピーマンめっちゃうまいんだよ」って先輩から勧められて、食べたら予想外においしかったんです。それから、家でもよくやってます。

柔らかいものしか食べられない時期に登場した揚げ出し豆腐


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唐揚げ、なすの揚げ浸し、冷やしピーマン、たくあん、十六穀米


——うおお、仕事の後に唐揚げを揚げるなんて、えらすぎる。

杏奈 そうですよね。私は絶対に平日に唐揚げ作りたくないです。

翔大 僕はけっこう頻繁に作ります。唐揚げは何も考えず、目分量でばばばって作れるので楽。

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——いただいたメモには「なんとなく冷蔵庫をみたらなすもあったので、揚げ油もあるし揚げ浸しを作ろうと思いつき、唐揚げの漬け込み時間の間に作成」とあります。時間のやりくりがうまいですね。

杏奈 マルチタスクできるタイプだよね。

翔大 仕事が終わってから作るので、30分以内になんとかしたいんですよね。それ以上かかると、「早く飯にしろ」っていうプレッシャーを感じるというか…。

杏奈 え、私から?そんなプレッシャーかけてないよ(笑)。

翔大 なんとなくこっちが感じてる(笑)。


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手羽先、ローストビーフ、なすの揚げ浸し、中華スープ、揚げ出し豆腐、十六穀米


——ローストビーフは月曜の残りですか?

翔大 そうです。食べきれなかった分をとっておきました。連続だと飽きるかと思って1日あけたんです。手羽先は塩こしょうして焼いただけ。その手羽先の先を少し切り取って、軽く焼き目をつけて、煮て出汁をとって中華スープにしました。

——まさに鶏ガラスープですね!メモには「揚げ出し豆腐は前日の揚げ油がそのままだったので、絹ごし豆腐の水をきり、片栗粉をまぶして揚げ、麺つゆとかつお節、ねぎを合わせて」とあります。揚げ油の活用、わかる。回収面倒くさいですよね。でも私、揚げ出し豆腐、油がはねるのがこわくて作ったことないんです…。

翔大 そんなに油、はねないですよ。豆腐の高さの半分くらいまで油があれば、ひっくり返しながら全体を揚げられます。豆腐を30分くらいキッチンペーパーにくるんで水を切って、片栗粉をまぶして揚げるだけ。超簡単です。

杏奈 揚げ出し豆腐は、私が歯の矯正で硬いものが食べられない時期に登場して、今は定番のおかずになっています。当時は冷奴と蒸しパンをローテーションしていたんですけど、やっぱり飽きてくるんですよ。そうしたらある日揚げ出し豆腐が出てきて「揚げ物だ…!」と感動しました。

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——中身は同じ豆腐でも、印象が全然違いますよね。それはうれしい。

翔大 この日は品数が多いんですけど、調理時間は30分もかかりませんでした。ローストビーフとなすの揚げ浸しはもうできてるし、手羽先も味付けしてグリルに突っ込んで焼くだけだし。

——献立はその日に決めるんですか?

翔大 基本的にはそうです。仕事が終わったタイミングで冷蔵庫を見て、「もう20時過ぎてるしサクッと作れるものにしよう」とか、「今日は時間があるから、手間をかけて自分が食べたいもの作ろう」とか、そんなふうに考えています。

唐揚げは面倒くさくないが、味噌汁は面倒くさい


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野菜とキノコのオイルパスタ


翔大 冷蔵庫にあった野菜とにんにくをオリーブオイルで炒めて、塩こしょうして、パスタと合わせて盛り付けただけです。惰性で作ったからか、この週で一番おいしくなかった(笑)。

杏奈 私はおいしくいただいたよ!

翔大 困ったらパスタ、というのはありますね。でも僕はチーズがあんまり好きじゃなくて、食べられるパスタの範囲が狭いんですよ。お店で食べるなら、ミートソースかペペロンチーノの二択。だからこれも、ペペロンチーノ風に作りました。

杏奈 この人、北海道生まれなのに、北海道の名産品がことごとく好きじゃないんですよ。

翔大 ジンギスカンも好きじゃない。くさみがあるもの、香りが強いものが苦手なんです。だから香草も苦手だったんですけど、杏奈は香草が好きなんです。なので、最近は大葉とか食べるようになりました。大葉はむしろ好きになってきました。


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名古屋風手羽先唐揚げ、ユッケジャン風スープ、もずく酢、たくあん、十六穀米


杏奈 この手羽先唐揚げ、おいしかった!

翔大 手羽先に片栗粉をまぶして揚げて、たれに絡めました。これを作った翌週に名古屋に行く用事があって、名古屋のお店で手羽先を食べたんですけど、「家で作ったほうがおいしいな」と思いました(笑)。

——お店を超えた(笑)。おつまみ感もありますね。こういうおかずの時はお酒を飲んだりするんですか?

杏奈 ハイボールを飲むことはあります。

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翔大 外で飲む機会が減ってから、家で飲むようになったんですよね。

杏奈 一時期毎日飲んでたんですけど、最近はそこまで飲んでいません(笑)。この日は汁物と野菜が個人的に欲しかったので、私がスープを作りました。汁物、サラダは私が作ることが多いですね。本当は味噌汁を作ろうと思ったんですけど、味噌がきれてて…。

翔大 代わりにコチュジャンでユッケジャンスープを作ろう、と思ったのかな。

杏奈 具材は豆腐、玉ねぎ、長ねぎ、ニラ、卵、舞茸で、牛肉が入ってないから「ユッケジャン」ではないんだけどね。味付けをユッケジャン風にしました。

翔大 僕が食事を作ると、だいたい肉料理がどーんとあって、プラスちょっとした副菜の「ザ・男飯」になりがちなんですよ。

杏奈 だから「もう少し野菜食べたい」と思って、私がサラダを作ったりします。いつもはレタスサラダを添えることが多いのですが、この週はレタスを買い忘れちゃって。あと、彼は汁物を作ることがほぼないんですよ。唯一たまに作るのが、水曜日に出てきた手羽先の一部で出汁をとる中華スープ。

翔大 味噌汁作るの、面倒くさいんですよね…。

——えっ、唐揚げのほうが面倒くさい気がしますが…。

杏奈 私もそっち派です。味噌汁は出汁とって味噌溶かすだけじゃん、と。

——翔大さんの面倒くさいポイントが、少し変わったところにあるんですね。

昼食はホットケーキミックスで作るスコーン


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野菜餃子、ユッケジャン風スープ(昨日の残りに甜麺醤と白ごまを追加して味変)、納豆、たくあん、十六穀米


翔大 買い出しした食材がほぼなくなって、ストックしてある冷凍餃子を出した日です。いざというときのために、餃子は冷凍庫に常備しています。

杏奈 50個くらい入っている大袋を買っておくんです。

——週末は餃子が登場する可能性が高い?

翔大 かなり高いです。

杏奈 わりと「餃子でよくない?」ってなるよね。


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チキンカツ(梅しそ&プレーン)、レタスサラダ、酢の物、十六穀米


——チキンカツ…!これはさすがに翔大さんでも面倒くさいのでは。

翔大 チキンカツは面倒くさいですね…衣もつけないといけないし…。

杏奈 しかもこの時、梅と大葉を挟んでたよね。プレーンと半々で作ってた。

翔大 買ってきた鶏肉をすべて衣つけるところまで作業して、当日食べる分以外を冷凍しました。こうしておくと平日に活躍するので。

杏奈 この日は酢の物が食べたくて、きゅうりとタコとわかめの酢の物を作りました。あとは買い出しに行ってレタスを買ったからレタスサラダも。

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——ちなみに昼食は普段、どうしてるんですか?

翔大 最近はパンを食べることが多いかな。あと、僕がスコーンを焼いたり。

——キッチンにスコーンがありましたね!これ、翔大さんが焼いたんですか。

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翔大 はい、豆腐スコーンです。

杏奈 ホットケーキミックスを常備していて、私はアレンジが面倒くさいからホットケーキしか作らないけど、彼はスコーンとか作ってくれます。

翔大 ホットケーキミックスを使うと、スコーンがめっちゃ簡単に作れるんですよ。でも毎回分量が適当なので、おいしいかどうかは食べてみないとわからない(笑)。

杏奈 すごくサクサクのときもあれば、しっとりしてるときもあるよね。バリエーションが豊か。彼はお菓子もよく作るんですよ。最近はいちごタルトやアップルパイを焼いてくれました。

——それはなにかのお祝いとかではなく…。

翔大 シンプルに、食べたいから作りました。

杏奈 気がついたらできてるんです。私は市販の甘いものをそんなに食べないんですけど、家で作る場合は甘さ控えめにしてもらえるし、ありがたくいただいてます。

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翔大 僕ばっかり作ってるみたいですけど、昼は杏奈が作ってくれることもあります。スパムおにぎりとか。

杏奈 最近は大葉と梅のスパムおにぎりにはまって、何回か作りました。

翔大 これはおいしかった。彼女のほうが、凝ったものを作りますね。僕が作る料理の倍くらい手間がかかっていると思う。キンパ(韓国風海苔巻)も作るんですよ。

——キンパ…!中の具材を一つずつ用意するのも、巻くのも大変そう。

好みに合わせると激辛料理が出てくるかもしれない

——そもそも、翔大さんはいつからごはんを作り始めたんですか。一人暮らしを始めた時ですか?

翔大 実家にいた時から、親が仕事で帰りが遅い場合は自分で作っていたんです。でも東京に来て一人暮らしを始めた時は、キッチンが狭すぎて料理をする気が起きなくて、コンビニで買っていました。一人暮らしで自炊するとコスパもあまり良くないですし。

杏奈 私も実家ではよくごはんを作っていたんです。高校生の時に親とケンカしたら「もう弁当作らない」と言われてしまって。私も意固地になって、「じゃあ自分で作るわ」とお弁当も3年間作り続けました。大学時代も基本的には自分でごはんを作っていて、翔大と暮らし始めた時は「人が作ったごはんが食べたい!」という気持ちだったんです。

翔大 彼女はずっと料理をしていたから、手際いいんですよね。僕よりいいと思います。

——杏奈さんは、できるけれどメインの料理担当ではない。

杏奈 そうですね。家事は掃除や洗濯を担当しています。

——いいバランスですね。杏奈さんが「これが食べたい」とリクエストすることってありますか?

杏奈 よっぽど食べたいものがあるときくらいですかね。でもどうしても食べたいものは自分で作るからなあ。食べたいものでいうと、私は辛味や酸味が強いものが大好きなんです。冬に「食べたいものある?」って聞かれたら、とりあえず「赤からの鍋」って答えるんですけど…。

翔大 名古屋名物の「赤から鍋」のスープって、辛さによって1から順に番号がついているんです。それの「灼熱鍋 15番」という一番辛いスープを買い置きしてあるんですよ…。

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——わあ、パッケージ見るだけで辛そう…!

杏奈 冷蔵庫には辛い調味料ゾーンがあります。

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翔大 「燃辛唐辛子」とか、一時期「デスソース」もあったよね。

杏奈 マリーシャープスというブランドのハバネロソースが好きで常備しています。ツーンとくる酸味がなく、フルーツ系のフレッシュさもあって、味がおいしいんですよ。

翔大 「このソース、おいしいから騙されたと思って食べてみて」と言われて食べて、「騙された」と思いました。辛すぎる…!

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——お話を聞き始めた当初は、翔大さんの面倒くさいポイントや食の好き嫌いが少し変わってるな、と思いましたが、だんだん杏奈さんの方が尖った好みをお持ちなんだとわかってきました(笑)。

翔大 そうなんです。杏奈は、冷めたごはんや冷たいウインナーが好きだったりして、一緒に暮らし始めた時はびっくりすることもありました。

杏奈 ウインナーは冷たいまま食べるのがおいしいよ。あなたは律儀に焼いてくれるけど。

翔大 律儀とかじゃなくて、普通だから(笑)。刺激物好きに関しては、杏奈が本当に好きな味に振り切って料理をすると、僕が食べられない可能性があるんですよね。

杏奈 だから、私が作らないほうがいいんです(笑)。

——食事作りの分担の裏にそんな理由が隠れていたとは…。今回はおもしろいお話、ありがとうございました!

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撮影:村上未知

アイスム座談会