これまでの旅と、ソウルで見つけた古いもの、新しいもの
世界の市場巡り
時間を見つけては旅に出ている。
旅先、特に海外では、市場やアンティークショップをめぐるのが好きだ。その土地の生活に根付いているものを、自分の生活にそっと照らし合わせてみて、これはこんな風に使えそうだな、と考える時間が楽しい。
2000円くらいだった気がする。かわいい。ふくろう。
例えば、パリの「クリニャンクールの蚤の市(Marché aux puces de Saint-Ouen)」では、古いピッチャーや古布、あとふくろうの指輪(かわいい)を買った。
ここのお店にはホーローのピッチャーとポットがたくさん並んでいて、現金のユーロが足りなかった私に、優しいムッシュがそれでいいよ、おまけするよ、と言ってくれた。
フィリピンのボホール島の市場では、錫(スズ)でできたピッチャーや、かごバッグを。ベトナムのダナンの市場では、地元の人たちが野菜入れに使うカラフルなかごバッグを買った。
子どもたちと訪れたモロッコの旧市街フェズでは、それなりのお値段がするヴィンテージのラグや銀食器を、それはそれは迷いに迷って吟味して購入した。
ちなみに私は根が関西人だからか、東南アジアの島の市場で適当に値段をふっかけてくるお店の人と交渉したり、"世界三大うざい国"とか言われるモロッコの混沌としたお店でものすごい圧におされながらなんとかやりとりするのも、そんなに嫌いではない。特にモロッコなんかでは、価格を交渉すること自体が、その目の前の「モノ」の価値を、自分で本気で考えるということだったから。
フェズには革のなめし工場がたくさんあって、圧巻だった。
ちなみにモロッコでは、路地で前を通るたびに「オレンジジュースは?」って声をかけてきた青年に「いらないよ」と断り続け、最後の日にまた声をかけられた時に「もう帰るよ」と言うと、息子に向かって「そっか、また来てね!!ここはいいところだからさ!バイバイ!!」と、にこにこ言ってくれた。一度もオレンジジュース買わなかったのに。"うざい"なんて言われているけれどそれは決して「暴力的」なものではなくて、振り返ってみると憎めない、なんか魅力的な人たちだったなと思う。
路地を歩くと延々と誰かに話しかけられた
そうは言ってもそういう交渉がストレスに感じることももちろんあるだろう。苦手な人だってもちろんいると思う。関西人の私だってシンプルに買い物ができるならそれに越したことはない。異国での価格交渉って、そういうものだと思えば楽しめるけれど、ある程度の覚悟というか、思い切りが必要だから。
ソウルの古いもの、新しいもの、そして白いもの。
さて、そういう意味では、韓国にはとってもお気に入りの場所がある。
以前この編集部通信でも少しだけ書いた、「踏十里古美術商街」。
ここは本当に、旅の楽しさみたいなものがぎゅっとつまっていると思う。
今回は「ソバン」という、韓国で古くから使われていた小さなちゃぶ台の天板がほしくて、あらかじめ、この中にある「香美堂」というお店のインスタのDMで、扱いがあるかを確認しておいた。すぐに「たくさんありますよ!」と、返信が来た。うれしい。わくわくして、渡韓の日を待った。
ビルに入ると、こんな風にいろんなお店が教室のように並んでいる
ソウルのここは建物の雰囲気こそなかなかディープだけれど、お店の人はいたって親切で、初めてでも買い物がしやすい。
もちろん、一つ一つの商品に値札なんてものはついていない。なんて素敵な壺…と、思ってお値段を聞いたら、70万ウォン(約7万円!)なんてこともある。たぶん、この奥の棚には、それどころではないお宝もまぎれていることだろう。お店の優しいオモニ(お母さん)が、「これは200年前の器」なんて、さらりと教えてくれたりもする。だけどそういうものと、お店オリジナルのものだったり、2000円くらいの手頃なお皿が並んでいるところが楽しい。だからこそ、過剰に値段が高くなっているということもない。と、思う。
市場のような活気があるわけではないけれど、その分落ち着いてゆっくり見られるのが私は好きだ。
他にも色々と見せてもらい、お店オリジナルのポジャギ(韓国の伝統パッチワーク)と、古い時代の、アンティークのポジャギ、そして念願のソバンの天板をそれぞれ購入。オリジナルのきれいなものも、アンティークの味も、どちらも良さがある。
店舗情報
香美堂(踏十里古美術商街2棟内)
https://www.instagram.com/hyangmidang/
https://maps.app.goo.gl/CdSBSmBEYLFpKkMo8
さて、今回は「キッチン用品を色々見てまわろう」と決めて行った旅だったので、定番の「南大門市場」にも足を伸ばした。
ふらりと歩いて見つけたここ、シンフン商会。
ここは竹の専門ショップ。一見、東南アジアの市場で見かける光景のようだ。でも、観光客で賑わう南大門だけれど、このお店はなんだか落ち着いた雰囲気でゆっくりと見ることができる。お店の人も親切で、カメラで撮っていい?と聞くと、「もちろん!インスタ?」と、言いながらショップカードを渡してくれた。
ちなみに、明洞や江南のレストランやホテル、洋服屋さんなんかでは英語が通じるお店も多いけれど、市場では英語も日本語も通じない、ということも多い。でもそれはもう、今の時代。スマホの翻訳機を駆使すれば、問題なくコミュニケーションが取れてしまう。本当に、便利な時代だ。「テクノロジーが世界を狭くする」というのは、何も飛行機ですぐにどこでも行けるとか、交通の便がよくなるとかそういうことだけじゃなくて、翻訳アプリや配車アプリなんかによって、世界中の人とコミュニケーションを取りやすくなる、スムーズに旅ができるようになる、そういうことなんだなあと思う。
一階にも様々なかごがあって圧巻されるけれど、奥に実は階段があり、上がっていい?と聞くと、どうぞどうぞ!と。上がってみるとさらにたくさんのざるやかごが!!ただでさえ、わが家にはかごがあふれているというのに、またまた買ってしまった。かごに関してはこれまたフィリピンでもバリでもベトナムでも買ってしまうくせがある。もうこういうものは仕方ないですね。
店舗情報
シンフン商会(신흥상회)
https://www.instagram.com/sinheung_kr/
https://maps.app.goo.gl/ktc7fGYk7fqPxZ529
古いものというのは、なぜか新しいものとの相性がとてもとても良い。というわけで、今回も大好きな器やさん「日常餘百 ilsangyeoback」へ。
前に購入した小さいカップと同じ作家さんの、白磁の器を購入。韓国の白、ってとても好きだ。以前、ノーベル賞を受賞したハン・ガンさんの『すべての、白いものたちの』(河出書房新社)を読んだ。そこに出てくる「白いものたち」が、どれもとても印象深く、美しく、そして悲しかった。韓国にとっての「白」は、なんだか特別なものなのかもしれない。
店舗情報
日常餘百 ilsangyeoback
https://www.instagram.com/ilsangyeoback/
https://maps.app.goo.gl/7JiYXt8L5G35gFk79
安国の「NR CERAMICS」では白いセラミックのカップを。ここはセラミックのお店で、オリジナルの器が手に取りやすいお値段でたくさんあって楽しかった。なんだか最近、白ブームだ。
店舗情報
NR CERAMICS
https://www.instagram.com/nrceramicsofficial/
https://maps.app.goo.gl/VCD3tGHAQmYPC6us7
世界の古いものと、新しいものを、並べてみる。古いものと、新しいものが混ざった部屋で、お茶を飲む。過ぎた旅を思いながら、また行ける日のことを、考えながら。