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ファンミーティングで有賀薫さんとレシピトレードーー「トマトン汁」と「牛乳焼きそば」

リュウジのレシピトレード 特別編

PEOPLE
2025.05.28

料理研究家リュウジさんとゲストがお互いのレシピをトレードし、料理をしながら語り合う本連載。今回は特別編として、ファンを招いてのイベントで公開レシピトレードを行いました。

ゲストは、レシピトレード第一回のゲストでもあるスープ作家の有賀薫さん。リュウジさんとはプライベートでも飲み仲間なのだとか。

リュウジさんが有賀さんのレシピ「トマトン汁」を、そして有賀さんがリュウジさんのレシピ「牛乳焼きそば」を作ります。公開レシピトレード、イベントに集まったファンの反応はいかに?(後日、リュウジさんのYouTubeチャンネルでも動画が公開される予定です。)

リュウジさんと有賀さんの味付けは真逆?

リュウジ:有賀さんはね、僕が駆け出しのときから交流があって。

有賀:最初はTwitter(現X)で交流が始まったんだよね。

リュウジ:そう。お酒好きっていう共通点もあって意気投合して、第一回のレシピトレードにも来てもらったの。

有賀:レシピトレードの撮影で、初めてリュウジさんとリアルでお会いしたんですよね。リュウジさんって「ウェイ!」って感じだと思っていたら、意外と人見知りで(笑)。スタジオに入ってきてしばらくは物静かにされていました。

リュウジ:有賀さん、それは営業妨害です(笑)。第一回のレシピトレードでは、有賀さんの「焦がしキャベツのスープ」を作ったんですが、その後、そこから着想を得て「至高のポトフ」というレシピを作ったんです。この企画は、ほかの料理研究家さんの技術を堂々と「盗める」のがいいところ。

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有賀:私とリュウジさんってよく「味付けが真逆」って言われるよね。私は基本的に「素材2、3品と塩か味噌だけ」みたいなレシピが多いから。

リュウジ:そういう料理も僕はすごく好き。長年やってると、自分にないものを求めちゃうから。

有賀:私もリュウジさんのレシピ好きですよ。リュウジさんのすごいところはね、味の素を取り入れるセンスだと思うんです。いろいろな調味料がある中で、味の素はフレーバーがそんなについていない純粋なうまみなんですよ。

リュウジ:そう。かつおだしとか鶏ガラスープは主張が強いけど、味の素はシンプルにうまみだけを加えてくれる。

有賀:でも、今日作ってもらうのは味の素を使わないレシピです!(笑)

トマトン汁

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材料(2人分)

  • トマト…2個(400g)
  • 豚肉薄切り肉(バラ)…100g
  • ごま油…大さじ1
  • 味噌…大さじ2と1/2

作り⽅

1. トマトはへたを取って8つ切りにする。豚肉は5㎝幅に切る。
2. 深型のフライパンにごま油を強火で熱し、ヘラで押し付けるようにしてトマトを軽くつぶしながら2~3分炒める。トマトの汁が油と混じって乳化したら、豚肉を加える。
3. 水400mLを注ぐ。ひと煮立ちしたら、弱火にして5分ほど煮る。味噌を溶き入れ、再び煮立てて火を止める。

有賀薫さんのトマトン汁をリュウジさんが作る

リュウジ:今日はトマトの豚汁を教えていただけるということで。うちのおじいちゃんがよく味噌汁にトマト入れてたんだよね。

有賀:ハイカラなおじいちゃん!そうそう、トマトと味噌って実はめちゃくちゃ相性がいいの。

リュウジ:では、材料を教えてください。

有賀:トマト、豚肉、ごま油、味噌。以上!

リュウジ:シンプルすぎません?大丈夫ですか?

有賀:大丈夫です!

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トマトはへたを取って8つ切りにする。豚肉は5㎝幅に切る

有賀:トマトはくし切りで。皮はそのままで大丈夫です。

リュウジ:湯むきとかしないんですか?

有賀:トマトって皮の内側の薄いところが一番おいしいから、むしろむかないほうがいいと思っています。豚肉もふつうにザクザクと切ってください。下ごしらえは以上です。

リュウジ:ラクすぎる!

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観客が見守る中、トマトを炒めるリュウジさん

リュウジ:トマトを先に炒めるんだ。

有賀:本では「豚肉から炒める」と書いたんですけど、今日はトマトから。トマトの切り口がフライパンの底につくように並べてください。半分に切ったミニトマトでもできます。

リュウジ:トマトからジュクジュクと黄色い汁が出てきました。

有賀:その黄色いトマトの汁がごま油と混ざると、いわゆる乳化状態になります。乳化した液体を水で伸ばすと、油っぽさがなくなるんです。だから、水を加える前に油とトマトの汁をしっかりなじませるのがポイント。ほかのスープを作るときもそうなんですけど、沸かした水に野菜を入れるよりも、先に具材を油でしっかりと炒めたほうがおいしくなるの。

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リュウジ:めちゃくちゃいい香りがするんですけど!

有賀:なんなら、ここに水と塩を入れたらもうおいしいです(笑)。

リュウジ:トマトはグルタミン酸が豊富ですからね。

有賀:そうなの。グルタミン酸といえば…?

リュウジ:味の素(笑)。

有賀:そう、だからトマトを入れれば味の素を入れる必要がないんですよ。じゃあ、豚肉を入れていきましょうか。豚汁は豚を焼き付けるレシピも多いですが、私の豚汁はそれをしないんです。

リュウジ:僕の豚汁では豚肉を焼いています。そこのアプローチが違うんですよね。

有賀:もちろん豚肉を焼き付けたものもすごくおいしいんだけど、私の場合は野菜をおいしく食べることに重きを置いているから。

リュウジ:トマトが主役なんですね。

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有賀:水400mLを注いで、ひと煮立ちしたら弱火にして5分ほど煮ます。

リュウジ:これ、アクは取ります?

有賀:気になる方は取っていただいても構いませんが、ある意味、アクもうまみだと思っています。

リュウジ:あ、そこは僕と同じだ。

有賀:アクって、「取ったほうがいいアク」と「取らなくていいアク」があって。ごぼうや牛肉などの黒いアクは取ったほうがいいけど、白いアクは取らなくても大丈夫。特に豚汁の場合は味噌を入れるから色も気にならないし。気になる方は最初に煮立てたときに取ってください。火を弱めたあとは、もうアクってそんなに出ないので。

リュウジ:めっちゃ勉強になるわ。

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有賀:じゃあ、味噌を溶いていきましょう。トマトのグルタミン酸と豚肉のイノシン酸に、味噌で塩分を調節する感じ。

リュウジ:うん、味が決まりました!ということで、有賀さんに教わるトマトン汁の完成です!

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さっそくリュウジさんが試食

リュウジ:あ、うまみがめっちゃ出てますね!めちゃくちゃおいしい。ほんだしや味の素が入っていないから、うまみの値が高すぎずちょうどいい。

有賀:よかった!

リュウジ:僕のレシピってうまみが強いんですよ。塩味・甘味・苦味・酸味・うまみという味覚のバロメーターの中で、うまみが突出してるの。でも、うまみが強ければ強いほどおいしいってわけでもないし。その点、このトマトン汁は味のバランスがすごくいい。めちゃくちゃ整います。

有賀:汁物って身体をニュートラルな状態に戻してくれるんですよね。味が濃いものや油っこいものを食べても、汁物があるとほっとするでしょ?

リュウジ:めちゃくちゃほっとします。これ、トマトが苦手な方でも食べられそう。トマトの青くささとか、種のぬるぬる感がないから。

牛乳焼きそば

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材料(2人分)

  • 豚バラ…140g
  • キャベツ…160g
  • 牛乳…140cc
  • 黒こしょう、粉チーズ
  • マルちゃん焼きそば…2人分

作り⽅

1. 豚バラとキャベツを切る。
2. 焼きそばの麺を油で焼き、焦げ目をつけて取り出す。
3. 豚バラとキャベツを油で焼く。
4. 麺を戻し入れ、付属のソースと牛乳を加える。
5. 黒こしょうと粉チーズを振って完成。

リュウジさんの牛乳焼きそばを有賀薫さんが作る

リュウジ:まずは豚バラとキャベツを切ります。

有賀:私、焼きそばのキャベツは手でちぎるのが好き。ちょっとデコボコになって味を吸いやすくなるよね。

リュウジ:ちぎっても大丈夫です。今回はあえてキャベツと豚肉だけで作るけど、もやしやにんじんを入れてもおいしい。

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焼きそばの麺を油で焼き、両面に焦げ目をつけて取り出す

有賀:先に麺を焼き付けるの、私もよくやります。ちょっとカリッとしたところが混ざるからおいしいんですよね。

リュウジ:そう、麺を焼くことでメイラード反応の香りを出したいんですよ。

有賀:小麦のうまみって意外と注目されてませんよね。パスタとか焼きそばとか、実は小麦にもちゃんとうまみがある。だからミネストローネにパスタをちょっと入れただけですごくおいしくなるの。ペペロンチーノが塩だけでおいしくなるのも、小麦のうまみが活きるから。

リュウジ:僕はそこにうまみ調味料も入れちゃうんだけどね(笑)。

有賀:それもいいと思います。私もね、味の素やほんだしを使うこともありますよ。食材ってその日によってコンディションが違うから、ちょっと古かったり旬じゃないときは、うまみ調味料を使って補うんです。

リュウジ:有賀さんが反対派じゃなくて良かった~!

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豚バラとキャベツを油で焼く

有賀:焦がしキャベツのいい香り。料理の何が楽しいって、料理中の香りでお酒を飲むことよね。

リュウジ:野菜が少し焦げたときの香りって本当に食欲をそそりますよね。

有賀:キャベツもそうだけど、アブラナ科の野菜が焦げたときの香りって特にいいよね。

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麺を戻し入れ、付属のソースと牛乳を加える

有賀:本当に牛乳入れちゃっていいの?

リュウジ:これがうまみになります。このまま煮詰めて、麺に牛乳をまとわりつかせて。汁気がなくなったら完成です。

観客:豆乳でもできますか?

リュウジ:豆乳だとちょっとモッタリした感じになるから、これは牛乳のほうがおいしい。

有賀:牛乳の汁気は完全に飛ばしたほうがいい?それとも、ちょっと残っていてもいい?

リュウジ:完全に飛ばしてください。汁気が残ると味が薄くなっちゃうんで。

有賀:そのあたり、個性が出るよね。私はスープ作家だから、こういう場合にちょっと汁気を残してウェットな仕上がりにしちゃうかも。

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リュウジ:そろそろいいですね。器に盛って、粉チーズと黒こしょうを振って完成です!

有賀:見た目は普通の焼きそばとそんなに変わらないね。

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試食する有賀さん

有賀:おいしい!言われなかったら牛乳入ってるのわかんないかも。でも、焼きそばのピリッとしたスパイシーさがいい感じに抑えられてマイルドになってる。優しい味だからお子さんもめちゃくちゃ喜ぶと思う。

リュウジ:ブラックペッパーをかけなければ、小さなお子さんでも食べられます。

有賀:なんだろう、ふつうの焼きそばのはずなのに、ふつうの焼きそばとはぜんぜん違う。具材もシンプルにキャベツと豚肉だし、付属の粉ソースを使ってるし、牛乳を入れただけなのにね。牛乳がかなり味に影響しています。カルボナーラみたい。

リュウジさんとお客さんとの交流も!

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公開レシピトレードの後は、会場にバースデーソングが流れ、集まったファンの皆さまと一緒にリュウジさんのお誕生日をお祝いしました。

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ファンの方からの質問にリュウジさんが答えるコーナーも。リュウジさんが、さまざまな料理のお悩みにズバッと回答しました。

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イベントの最後にリュウジさんからのご挨拶

リュウジ:僕は自炊に救われた人間なので、自炊の楽しさを伝えたくてこういう活動をしています。でも、ひとつだけ忘れないでほしいことがあります。それは、毎日の料理を義務としないこと。よく「料理をしたくない日はどうしたらいいですか?」という質問をもらうんですが、正解は作らないことです。なぜなら、無理をするとだんだん料理が嫌いになってしまうから。1日3回の食事のたびに義務感で憂鬱になっていたら、人生楽しくないでしょ?そういうときはレトルト食品やコンビニ飯に頼ればいいんです。それに罪悪感があるなら「だってリュウジがそう言ってたから」と言ってください。

今日は皆さん、本当にありがとうございました!

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ハイタッチでファンをお見送りするリュウジさん

会場に集まった皆さんはみんな、リュウジさんに会えて満足そうな表情をされていました。リュウジさんも、(すっかり酔っぱらっていたけれど)ファンの皆さんと交流できて嬉しそう。明日からも料理を楽しんでいけますように!

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ご参加いただいた皆さま、ありがとうございました!

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取材・文:吉玉サキ
撮影:村上未知