いざというとき、あわてないための「食と防災」知っておきたいポイント
「やろうと思いつつ、後まわし」になりがちないざというときの備え。食料や水のストックをはじめ、何が必要なのか?東日本大震災を経験された漫画家のアベナオミさんに「食と防災」の話をじっくり教わってきました。

はじめまして、防災士で漫画家のアベナオミです。私は26歳になる年に、東日本大震災を経験しました。幸いにも自宅は大きな被害を受けずにすみましたが、当時子どもはまだ1歳。子育ても大変な時期で、震災後しばらくは不安がいっぱいの生活でした。大きな災害があったとき、どうやってより安全に過ごし、家族と暮らし、食を守るか。震災の経験を元に、今私が大事にしていることを、お話させてください。
「けがをする確率」を下げよう!

(画像提供:アベナオミさん 『マンガでわかる防災のトリセツ』(マイナビ出版)より)
自分のごはん、家族の食事を用意するにも、けがをしたらどうしようもありません。ここでまず考えてほしいのが、「靴」なんです。
私は幸運だったのが被災時、外で車を運転していました。つまり、靴をはいていたということ。
大地震があると照明が落下してガラスが割れ、家の中の移動が大変になることは多いです。また、玄関の照明が落ちて靴の中にガラスが入り、はきなれた靴がダメになってしまった人も多くいました。これでは避難や、給水所に行くことなどもむずかしくなります。
「玄関に割れるものを置かない」ようにしましょう。そして「一人一足、はきなれているスニーカーを持っておく」といいです。

(画像提供:アベナオミさん)
キッチンを「危険な場所」にしない
キッチンは家の中で最も「物が多い場所」になりやすいところ。平時のうちに「地震でこれが落ちたら割れて、通れなくなるかも」といった想像を、してみてほしいのです。
具体的には…
・重たいものは棚の下のほうに
私は食器棚の一番下を、ペットボトルのストック置き場にしています。こうすると重心がしっかりして、大きな揺れにも強くなり、棚が倒れにくくなります。

(画像提供:アベナオミさん)
・なるべくむき出しで置かない
戸がついているタイプ、引き出しタイプの棚に収納するといいですね。
・炊飯器やレンジなどの家電は、下にすべり止めマットを敷く
大きな地震を経験しないと、レンジなどの重たい家電が揺れて動くことは想像しにくいと思います。東日本大震災では、「レンジや炊飯器が飛んだ」ケースが多発しました。「レンジが飛んで、シンクに入っていた!」という人も。
レンジや重たい鍋が横に飛び、その場にいる人にぶつかることもありえます。置き方を考え、すべり止めマットを敷くことで、「けがをしない」可能性を上げてくれます。
・小物類はケースにまとめると揺れても落ちにくい
調味料やコップ、小皿、カトラリーなど、キッチンはとにかく小物が多いもの。100均などで売っているカゴやケースにまとめて入れると、地震が来ても落ちにくくなり、散らかりにくくなります。このケースの下にもすべり止めマットを敷きます。
・物はなるべく奥に置く習慣づけを
毎日使うものだと、「いちいちしまっていられない」「戸のあるところに置いておけない」のも分かります。その場合は「なるべく奥の壁側に置く」ようにしてください。それだけで落ちて割れる可能性や、飛んできてけがをする可能性が低くなります。

・割れにくい素材のものを選ぶようにする
プラスチック製などなるべく割れにくいものを選ぶと、災害時にけがをする可能性は低くなります。でも日常は「好きなものを置く、使う」楽しみも大事ですよね。安全を優先しすぎて、ストレスになっては台無し。ここはバランスも大事にしてください。
災害が起きたら、まず水と電気をチェック
大きな地震などが起きたら、まず水道と電気をチェックしましょう。そのときは大丈夫でも、時間差で断水や停電になることは、よくあるんです。
ですから私は、大きい地震があったらまず「水のくみ置き」を確認します。お風呂をためてなければ、まずためる。こうすると、いざというとき、飲料以外の生活用水になります。
お湯が足りなければ、沸かしてポットなどに入れる。次の食事の用意もするようにしています。炊飯器で炊けるうちにごはんを炊いて、おにぎりを用意しておくというのもいいですね。
ごはんをお鍋で炊く練習をしておこう
災害時、電気が止まると炊飯器も使えなくなります。でもガスがあればお鍋でごはんが炊けます。お鍋でなくとも、ふた付きのフライパンでも大丈夫。使い慣れている鍋とふたを使ってごはんを炊く練習をしておくと、いざというときに不安なく調理ができます。
例えば、休日などに家族とイベント的に体験するのもおすすめ。お米は日持ちする最強の防災食だと私は思っています。家族全員が炊けるようになっておけば、災害時の分担もスムーズにいきますよ。
「火」のキープ
調理をするとき大事なのがカセットボンベ、そして卓上コンロです。うちは5人家族ですが、カセットボンベを6本ほど常備するようにしています。
バーベキューセットやフォンデュセット、七輪など調理できる道具は様々ですが、何かしら使い慣れているものを持っておくといいですね。旅館の食事などで登場する固形燃料、そしてライターをセットで持っておくのもひとつの手です。
水が止まったときの備え
水は飲料水と生活用水の二つが必要になります。
・食器を洗う
・洗濯
・トイレを流す
・歯や顔、髪を洗う
といった行為にも水は必要ですよね。

飲料水に関して、私がおすすめしているのはウォーターサーバーの利用です。定期的に重たい水を運んでくれるのは、やはりとってもありがたい。被災生活が長引くと、いちいちペットボトルから出すのも結構なストレスになるんです。サーバーですぐに水を出せると、かなり日々のストレスが軽減されますよ。タンクが下で電気で水を汲み上げるタイプではなく、タンクが上で停電しても引力で水が出せるタイプを選んでください。
(ペットボトルで備蓄する場合は、500ミリリットルと2リットルボトルの両方でストックしておくと、飲むとき、料理するときなど使い分けられて便利です。ストックしたお水で消費期限の切れたものは、生活用水として使えます。そのまま備蓄し続けましょう。)
水の節約
被災生活において、水はとにかく貴重になります。料理をしたら必要なのがお皿ですが、平時のような水洗いはむずかしい。よくやるのが「お皿にラップ」ですが、箸やフォークで突き破ってしまうことも多々あるんです。
こんなとき、調理用のポリ袋にお皿やお椀を入れて使うのがおすすめ。丈夫ですし、食品の保存もラップよりラクで、時に手袋代わりにもなります。また食材を入れて湯せんで調理することも可能。
また、お米は、水が足りなければ研がずとも炊けます。今の精米技術は優れているんです。
食べたら口の中のケアも大事ですから、水のいらない液体歯みがきなども用意しておくといいです。また、シンクなどの掃除に便利なのがウェットティッシュや除菌シート。いつもはザーッと水を流せば済むことが、災害時にはなかなかできません。
余談ですが、私は被災時に子どもが1歳だったので、おしりふきのストックが家にありました。除菌シートよりも大判なので、家族用の体ふきにも、各所の掃除にも非常に便利で重宝しました…!肌あたりがやさしいのもうれしいところ。もし夏だった場合、体を清潔に保つのはとてもむずかしくなります。体をふけない、洗えないというのはかなりストレスになることなので、ぜひ対策を考えておいてほしいと思います。
食べたら「出す」もセットで考えて
食べたら人間、当然のごとくトイレに行きたくなります。水が流れないと、「流れないトイレ」をずっと家族で共有することになります。「家族の人数分×3日~1週間分」の非常用トイレをぜひ、用意しておいてください。「大人1名で、1日5回分」を目安に。災害用持ち出し袋や車などにも用意しておくの、おすすめします。

食べ慣れたものを用意しておく大事さ
非常食もいいのですが、やはり食べ慣れているもの、自分で「おいしい」と思えるものをストックしておくのがおすすめ。「少し多めに買いおきして、期限の近いものから日常で食べ、また買い足す」、いわゆるローリング・ストックをぜひ習慣にしてください。
うちの子はアレルギーもあったので、被災中は食べられるものも少なく大変でした。大きな災害があった場合、「最初の1週間は物流が止まる」という想定でストックをしておくことをおすすめします。大人は空腹をがまんすることもできますが、子どもはなかなかそうもいきません。
電気が止まったときの冷蔵庫対応
まず、冷凍庫のものを冷蔵庫に移して保冷材の代わりにします。自然解凍で食べられる冷凍食品を買いおきしておくといいですね。そして冷蔵庫の中にあった、いたみやすいものから食べていきましょう(肉、もやしやレタスなどの野菜など)。
さいごに

私は被災生活中、なぜか「食事を楽しむ」ということを忘れていました。楽しむなんてことをするのは不謹慎だ、もっと多くの被害を受けた方に申し訳ない…という気持ちがあったんだと思います。好きなコーヒー1杯を飲むことすら、知らず知らずのうちに自粛していました。でも今は、そういう時間を1日のうち5分、10分でもいいから持つべきだったと思っています。自分の心を休める時間も、絶対に必要だから。
特に「お母さん」という立場は被災時、孤立しやすいんです。もし今後、被災生活を余儀なくされるようなことがあれば(ないまま続くのが一番ですが…)、ぜひ1日のうち、好きな紅茶やお茶1杯を楽しむような時間も作ってほしいと思います。「自分をケアすること」も日課にぜひ、入れてください。
