鬼まんじゅう

ボルサリーノ関好江の笑食同源おしゃべりごはん #7

2020.10.28

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芸人ボルサリーノ関好江さんに料理を作ってもらいながら、おいしさのポイントなどを伺う本連載。今回は秋の味覚・さつまいもがたっぷり入った、東海地方のローカルフード「鬼まんじゅう」。ローカルフードというと、地域限定という印象があるかもしれませんが、ごく身近にある食材だけで自宅で気軽に楽しめます。


材料(作りやすい量)

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  • さつまいも…1本(300gくらい)
  • 砂糖…40g
  • 塩…小さじ1と1/2
  • 小麦粉…60〜70g
  •  
  • 黒ごま…少々

作り方

1. さつまいもは半分皮をむき、半分皮付きで1センチ角に切り、2〜3回水を変えながら15分ほど水にさらす。
2. 1の水気を切り、砂糖と塩をまぶし、さつまいもから水分が出るまで30分ほど置いておく。
3. 2の水分は捨てず、そのまま小麦粉をまぶし、粉っぽさがなくなるまで混ぜる。
4. 10センチ×10センチ程度に切ったクッキングペーパーの上に、3をスプーンで盛り、黒ごまを散らす。蒸し器に並べて入れ、中火で15分ほど蒸す。竹串がスッと通れば完成。
※蒸し器がない場合は、フライパンに箸を置いて、その上に皿を載せ、お湯をはり、簡易蒸し器にしてもOK。

全国の人に食べてほしい

東海地方に息づくローカルフード「鬼まんじゅう」。

初めて聞く人にとっては、謎のおまんじゅうかもしれません。「めちゃくちゃ大きいおまんじゅうのこと……?」と思う人もいるのでは。一方、その文化圏で育った人にとっては、各々の思い出とともに脳裏に刻まれているであろう親しみ深い食べ物。

どんな風貌かというと、さつまいもの角切りが表面にたっぷり顔を出しており、ぱっと見の印象は「ごつごつ」。まんじゅうと呼ばれていますが、中にあんこは詰まっていません。

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「名古屋出身の自分にとって、さつまいもといえば鬼まんじゅうなんです」と関さん。

「小さい頃から頻繁に食べていました。好きなときに食べられるように、お皿にぼんって山盛りに置いてあったりして。」

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一方で、文化圏を離れるとなかなか理解してもらえないこともあるようす。

「食べたことのない人に『いもに砂糖をまぶして、小麦粉をまぜて、ふかした料理』だと説明したら、『全然おいしそうじゃないね』って言われちゃったこともあるんです。違うのになぁって(笑)。わたし、これはほんとうに全国の人に食べてほしいです。」

調理も材料もすこぶるシンプル

シンプルな素材の組み合わせで作られていることも、鬼まんじゅうの特徴のひとつです。

「でも、家庭によって全然違う。作り方次第で全く違う食べ物になるんです。いもが多めでゴロゴロ入っていたり、蒸しパンみたいにふわふわしていたり。あずきが入っている家もありました。コンビニにも置いてあるんですけど、コンビニのは少しパンっぽくて。わたしは実家直伝のもっちりしたタイプが好きです。」

まずはじめにさつまいもの皮をむいていきますが、皮を半分残すのが関さん家流。

「皮がついていると、生地の部分に皮の色が付いてしまうこともあるので、気になる場合には全部むいちゃっても大丈夫です。お好みで!」

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皮をむき終わったら、1センチ角の角切りに。

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切り終わったら、2〜3回水を取替えながら、15分ほど水に浸します。

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「待つ作業が多いんです。でも作り方は至ってシンプルです。」

母のレシピには「分量」の概念がなかった

15分経ったら水を切り、さつまいもに砂糖をまぶしていきます。

「甘さも家によって違いがあるんです。実家の鬼まんじゅうは甘さ控えめでした。」

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今回のレシピは、そんな実家の味の再現を目指しているのですが……

「母に作り方を聞いてみたところ、『えーころかげん(名古屋弁で「いい加減」という意味)の砂糖と粉ふって蒸すだけだに』と言われまして。分量は日によるんだそうです。」

数値的な手がかりはつかめず。

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「そのわりに、母はわたしがSNSにアップした料理を見て、『分量を教えて!』って言ってきたりするんですけどね(笑)。」

味の記憶をたぐりよせつつ、手を動かしつつ、関さんが導き出した砂糖の分量は40g。砂糖は甘さのためだけでなく、「さつまいもから水分を出す」という重要な役目をになっているため、少なすぎてもNGなのだそう。

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合わせて塩もまぶし、30分くらい置いておきます。するとじわじわと水分が……!

「このお水は捨てちゃダメなんです。」

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水分もまるごと調理に使います。

蒸し器がない場合はフライパンで代用可能

続いては小麦粉をドサっと投入。粉っぽさがなくなるまで混ぜ合わせると、徐々に粘り気がでてきます。水分がなくなるまでしっかり練るのがポイント。

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混ぜ終えたら、あらかじめカットしておいたクッキングシートの上にスプーンでのせていきます。

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「レシピには、クッキングシートを『10センチ×10センチ程度』と書きましたが、大きいのが作りたい人は、もっと大きいサイズでも大丈夫です。」

てっぺんに黒ごまを散らしたら、次は蒸す作業。蒸し器がない場合には、フライパンで代用できるのでぜひ試してみてください。フライパンの上にお箸などを置いて、底面とお皿とのあいだに隙間を作り、お湯をはると蒸し器のように使えます。

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15分ほど蒸したら、竹串をさして火の通りを確認して完成!

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翌日食べてもおいしい

蒸し上がったあつあつの状態から少し冷ましたらいざ実食。

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眺めているだけでも、さつまいものぎっしり感がひしひしと伝わってくるビジュアル。穏やかな甘い香りもたまりません。

食べてみると………わ!

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小麦粉の食感がもちもちつるつるで、さつまいものホクホク感とのコントラストが楽しい!素朴な味わいだけど、素朴なだけじゃない。甘みのなかにふと感じる塩っけも、いもの風味を引き立てています。

おなじみの素材の組み合わせでありながら、初めて体感する味。さつまいも、小麦粉、砂糖、塩。それぞれが、お互いのポテンシャルを高め合っていて、「あなたたち、力を合わせるとこんなことができるんですね!」と褒めちぎりたくなる……。

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「あつあつでも、冷まして食べてもおいしいですし、翌日に食べても味が馴染んでおいしいんです。しかも経済的だし作り方も簡単!」と関さん。なんと良いことずくめなんだ。

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さらに付け加えると、食べやすくもあります。「いもらしい味わいはそのままに、ふかしいもよりも食べやすくなった状態」ともいえるかもしれません。

ほっくりした食べ物のおいしさが体にじんわり染み渡る季節。鬼まんじゅう文化圏の人たちは大切な思い出の味として。食べたことがまだない人は、さつまいもの食べ方の新たな選択肢として。鬼まんじゅうの扉、ぜひドバンと開いてみてください。

ボルサリーノ関好江

1971年2月15日、愛知県生まれ。吉本興業所属。山田真佐美とのお笑いコンビ「ボルサリーノ」で活躍中。芸人仲間に振る舞う料理に注目が集まり、食べると運気が上がると評判に。著書に『食べると人生が変わる!開運飯』『使いきり!レシピ』(マガジンハウス刊)など。

ネッシーあやこ

1981年群馬県生まれ。ライター兼イラストレーター。主な執筆領域は、体験、 食レポ、食・働き方に関するインタビューなど。

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取材・文・イラスト:ネッシーあやこ
撮影:美坂広宣(SHAKTI)
フードスタイリング:松井あゆこ(Smile meal)