春キャベツとあさりのさっと蒸し/春キャベツと粉チーズのサラダ

五感をひらくレシピ #2

2020.04.24

料理は「味覚」だけでなく、「五感」で楽しむもの。旬の食材を使った「五感をひらくレシピ」を、自炊料理家の山口祐加さんに教えてもらいます。第二弾の食材は、やわらかな春キャベツ。今回は、山口さんが自炊を始めるきっかけになった、7歳の頃のエピソードも!


私が料理をはじめたのは7歳の頃。ある日、疲れた顔をした母は、私に向かってこう言った。

「あなたが夜ごはん作らないと、今晩のごはんないの。作ってくれる?」

仕事と育児に多忙な日々を送っていた母は「娘に料理役を担ってもらったらいいのでは?」と思いつき、私にそう提案したようだ。母の提案に驚きつつも、まずはやってみることにした。

最初は、母に教えてもらいながらのうどん作り。鍋に湯を沸かし、野菜を切って入れる。硬い人参や大根にゆっくりと火が入り、食べ物になっていく様子に心が踊った。そこに冷凍うどんを入れ、最後に味を整える。

記念に母が写真を撮り、私は自分で作ったうどんを、母と一緒にすすった。

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子どもながらに、料理のプロセス自体が楽しい。しかも、出来上がったものは自分で食べられる。自分で作ったものだからなおさらおいしい。食い意地は誰にも負けなかった私にとって、最高の遊びを見つけた気持ちだった。

しかも、料理を作ると母が喜んでくれる。それが嬉しくて、小学校の図書館で子ども向けのレシピ本を探しては、本の端から端まで作った。

母は料理が好きだった。でもいくら好きだからといって、毎日毎日作り続けるのはなかなか大変だっただろうと思う。

家にいる時間が増えた人も多い今の世の中なら、家族の料理を作る人は、心も体もいつもと同じではいられなくてもっと大変だろう。

こんなときは、お子さんや、普段は料理をしないパートナーに「スペシャルサポーター」として手伝ってもらうと良いと思う。困ったときは「ちょっとヘルプしてほしい」とお願いしてみよう。最初は手間取って時間がかかるかもしれないけど、もしかしたら将来「今日は夜ご飯作るよ」と言ってくれるようになるかもしれない。

春キャベツとあさりのさっと蒸し

今回のテーマは春キャベツ。春に出回る普通のキャベツに比べて葉っぱの巻きがゆるく、水分が多く柔らかいキャベツだ。やや小さくて、丸っこいのがかわいらしい。

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寒玉キャベツ(冬キャベツ)は包丁にぐっと力を入れないと切れないが、春キャベツは葉が柔らかく、さくっと切れる。

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断面をまじまじと見てみると、寒玉キャベツよりも葉と葉の間に隙間が多いのがよくわかる。外側は大きな葉になっていて、中心部に行くほどくしゃっとしていて、迷路のよう。

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あさりは1パック(200g前後)を塩抜きしておく。ピューピューと水を吐くあさりがかわいらしい(おいしく食べるからゆるして)。

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img_gokanrecipe_002-06.jpgキャベツは半玉ほど使う。包丁で切ってもいいし、手でちぎってもいい。(手でちぎるときの野性味が好きなので、私は手でちぎる。)葉が柔らかいから、子どもでも簡単にできる。葉脈の軸は薄めにスライスしておく。

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フライパンにキャベツを入れて、その上にあさりを入れる。上から水50mlと酒大さじ2〜3ほど入れ、蓋をする。中火にかけ、4分ほど一気に加熱する。

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フライパンの隙間からシューっと湯気が出てきたらできあがりの合図。

湯気の火傷に気をつけて、蓋を開けよう。ふわっと漂う甘いキャベツの香りを、目一杯吸い込まずにはいられない。おいしそう!という気持ちが一気に高まる。「食材」が「料理」に変化した瞬間だ。

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最後にオリーブオイルをひと回しかけて、熱々のうちに食べよう。

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あさりに塩気があるので、足りなければ食べながら塩を足すくらいでいい。最初は柔らかさがありつつも歯ごたえがあった食感が、食べ終わる頃には余熱で火がはいってヘナヘナになる。食べ進める中で変化があるのもこの料理のいいところ。

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ちょっと変化をつけたければ、途中で黒胡椒をガリガリひいてみよう。

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そしてこの料理のいいところは、微々たる「特濃あさりキャベツスープ」がついてくるところ。あさりのだし、キャベツの甘み、オリーブオイルのコクが溶け込んだスプーン一杯のスープは至高だ。誰かと分け合うならこのスプーン一杯をきっちり半々にしないと喧嘩になりそうなくらいおいしい。

春キャベツと粉チーズのサラダ

春キャベツは生で食べるのもおすすめ。葉が柔らかいので、千切りキャベツ独特の口に刺さる感じもない。

好きな量の春キャベツを食べたいだけザクザクと千切りにし、「オリーブオイル:レモン果汁:塩=3:1:少々」の割合で、少しずつ味付けしていく。

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この時点で終わりにしてもよいのだけれど、もう一つアクセントがほしいところなので粉チーズを入れてみた。

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粉チーズでもいいし、粒マスタードを入れてもいい。

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たった5分ほどでできあがり。

作ってすぐは、柔らかいながらも歯ごたえがある仕上がり。一晩おけば、味が染みてクタッとした仕上がりに。ベーコンやウインナーと一緒にパンに挟んでもよい。

***

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先月、初書籍『週3レシピ 家ごはんはこれくらいがちょうどいい。』を出版した。料理ができない友人が「苦手だけどやってみたい」と話してくれたところから始まった週3レシピ。旬の食材と定番食材を合わせて8種類ほど買い、週3日の自炊で食材を使い切れるように組み合わせを組んでいる。今まで残り食材をどう使っていいかわからず、しなしなにしてしまっていた…という人にぜひ手にとってもらえるとうれしい。

紹介しているレシピは、私が普段食べている「ふつうのごはん」ばかり。食材をシンプルに使って、最小限の手間をかけて、そこそこおいしい料理。ガツンとくるおいしさはないけれど、食べおわったあとにほっとするような、家で食べるべき(外では値段がつけられない)「ふつうのごはん」だ。

毎日食事は続くものだから、力まずマイペースに、テイクアウトのお惣菜なども活用しつつ、心地よい食卓を作れるといいなと思う。

山口祐加

自炊料理家、食のライター。共働きで多忙な母に代わって、7歳の頃から料理に親しむ。出版社、食のPR会社を経て2018年4月よりフリーランスに。日常の食を楽しく、心地よくするために普段は一汁一菜を作り、ハレの日は小さくて強い店を開拓する。料理初心者に向けた対面レッスン「自炊レッスン」や、セミナー、出張社食、執筆業、動画配信などを通し、自炊する人を増やすために幅広く活躍中。好物は味噌汁。

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