リュウジさんの「究極の塩ホイコーロー」を東山広樹さんが作る メインビジュアル

リュウジさんの「究極の塩ホイコーロー」を東山広樹さんが作る

リュウジのレシピトレード #18 後編

PEOPLE
2025.04.15

料理研究家リュウジさんとゲストがお互いのレシピをトレードし、料理をしながら語り合う本連載。今回のゲストは『マニアック家中華(ダイヤモンド社)』が好評発売中の料理研究家・東山広樹さんです。

前編では、東山さんの絶品レシピ「えび炒飯」をリュウジさんが作りました。後編は、リュウジさんのレシピ「究極の塩ホイコーロー」を東山さんが作ります。テンメンジャンを使わない塩味のホイコーロー。はたしてどんな味になるのでしょうか。リュウジさんのYouTubeチャンネルでは動画版を見ることができますよ!

究極の塩ホイコーロー

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材料(2人分)

  • 豚こま⾁…200g
  • キャベツ…250g
  • 長ねぎ…1/2本
  • しょうが…5g
  • にんにく…5g
  • ごま油…⼩さじ2
  • ラード…⼤さじ1
  • ⽚栗粉…⼩さじ2半
  • 酒…⼤さじ1
  • 塩こしょう
  • ⾖板醤…⼩さじ2/3
  • オイスターソース…⼩さじ1半
  • 砂糖…⼩さじ1/3
  • 塩…⼩さじ1/3
  • 味の素…6振り
  • 黒こしょう
  • レモン汁…⼩さじ1

作り⽅

1. 長ねぎを斜め薄切り、にんにくと生姜をみじん切り、キャベツをざく切りにする。
2. 豚こま⾁に塩こしょう、⽚栗粉、酒をよくもみこんでおく。
3. ごま油で豚こま⾁を炒め、にんにく・しょうが・長ねぎを入れて炒める。
4. ⾖板醤、オイスターソース、砂糖、塩を加えて炒める。
5. キャベツを入れ、味の素と黒こしょうを振る。
6. 仕上げにレモン汁を振り完成。

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材料カットを撮影したあとに「やっぱり長ねぎ入れるわ」とリュウジさん

中国で60店舗の火鍋を食べ歩き

リュウジ

東山さんは数々のマニアックな中華を作っていますが、塩味のホイコーローは作ったことありますか?

“東山”

いや、初めてです。レモンを使うのも初めてですね。

リュウジ

塩味の時点ですでにホイコーローじゃないんだよね、原理主義者からすると。

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リュウジ

東山さんの『マニアック家中華』、本当にマニアックなのよ。麻婆豆腐にピーシェン豆板醤を使ってるの。

“東山”

この麻婆にはピーシェンが必要なんですよ。

リュウジ

(ページをめくりながら)あ、目玉焼きサラダだ。僕も作ったことありますよ。

“東山”

中国の雲南省の定番サラダなんです。安い惣菜屋でよく出てきますよ。

リュウジ

そうなんだ。あ、火鍋もあるじゃん!僕、火鍋が大好きなんです。

“東山”

火鍋のレシピはガチでこだわりました。火鍋、中国で60店舗くらい食べ歩いたんですよ。

リュウジ

マニアックすぎる!

二人とも包丁は「引き切り」派

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リュウジ

じゃあ、まずは野菜を切ってもらいます。長ねぎは斜め薄切りで。

“東山”

了解です!

リュウジ

あ、東山さんって引き切り派なんですね。引き切り派の人は洋食出身が多いんですよ。僕も洋食出身なんで「包丁は引け、押し切りはダメだ」と教わりました。なぜかはわからないけど。

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にんにくと生姜をみじん切りにする

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リュウジ

キャベツはいい感じのざく切りにしてください。

“東山”

一般的なホイコーローの切り方で大丈夫ですか?

リュウジ

ばっちりです!

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リュウジ

レモンは搾るので、搾りやすいくし切りで。

“東山”

じゃあ1/8カットにしますね。

固くなりがちな豚こま肉を柔らかく仕上げる方法

リュウジ

では、お肉に下味をつけます。

“東山”

ホイコーローに豚こま肉を使うの、めずらしいですね。

リュウジ

歳を重ねるにつれて豚バラの脂が苦手になってきちゃって…。

“東山”

わかります、豚バラってちょっと重たいですよね。豚こま肉のほうが安くていいかも。

リュウジ

豚こま肉って火を入れすぎると固くなるじゃないですか。でも、片栗粉とお酒を揉みこんでおくと柔らかいまま仕上がるんです。

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リュウジ

豚こま肉だから切らなくてもいいかな。もし大きい肉があれば手でちぎってください。

“東山”

手でちぎるの、楽しい。

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豚こま肉に塩こしょうを振り、片栗粉小さじ2と1/2、酒大さじ1をかける

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豚こま肉に酒と片栗粉を揉みこむ

リュウジ

片栗粉がお肉をコーティングしてくれるので、水分が逃げずに柔らかくなります。あと、味が絡みやすくなる。

“東山”

お酒の香りで肉の臭みが消えてますね。

リュウジ

ホイコーローはお肉に卵をまぶすレシピもあるんですけど、卵を使うと面倒だし原価も上がっちゃうし。酒と片栗粉でできるなら、そっちのほうがいいと思って。

“東山”

たしかに、安いし手間いらずですね。

面倒な「油通し」を家庭で簡単に行うには?

リュウジ

ホイコーローのキャベツって、お店だと一旦油にくぐらせる「油通し」をするじゃないですか。それを、家庭で簡単に行う方法を考えました。まずは、耐熱ボウルにキャベツをほぐして入れてください。

“東山”

「これは何の工程なんだろう?」ってワクワクします。

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リュウジ

ボウルに入れたキャベツの上に、ラードを大さじ1くらい絞ってください。

“東山”

えっ、キャベツの上に?

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“東山”

こんな感じですか?

リュウジ

ばっちりです!そしたらラップをふんわりとかけて、600Wで1分半レンチンします。

“東山”

油を入れてレンチンすることで油通しをするんですね!この方法なら、フライパンで炒める時間も短縮できますね。

リュウジ

ホイコーローのキャベツをシャキシャキに仕上げるのって火加減が難しいじゃないですか。その点、先にレンチンでキャベツに油を絡ませておくと、水分が逃げないからシャキッと仕上がるんです。

“東山”

キャベツに油の膜が張って、水分が蒸発しないんですね。

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レンジで加熱したキャベツを取り出す

リュウジ

まだラードが溶け残っているので、菜箸で全体に絡めてください。すると、ラードがぜんぶ溶けます。

“東山”

本当だ。余熱でグングン火が通っています。炒めたキャベツの香りがするし、色も濃く鮮やかになって、まさに油通ししたキャベツです。やばい、こんな調理法はじめて。

キャベツがシャキシャキ!まるでお店のホイコーロー

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リュウジ

5段階の4くらいの火力にして、ごま油をひいてください。フライパンが温まったら、豚こま肉を広げながら入れていきます。

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リュウジ

お肉の色が変わってきたら、にんにくと生姜を入れます。にんにくと生姜を後から入れるのは、先に入れると焦げちゃうから。

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にんにくの香りが立ってきたら長ねぎを加える

“東山”

お肉に片栗粉をまぶしているから、水が出ませんね。

リュウジ

そうなんです。水分が出ないから、ベチャベチャしないんですよね。

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豆板醤、オイスターソース、砂糖、塩を加えて炒める

“東山”

ホイコーローなのにテンメンジャンを入れないのが画期的です。

リュウジ

まさにそこがポイントなんですよ。

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キャベツを加えてさらに炒める

“東山”

レンチンしただけなのに、すでに1回炒めたキャベツみたい。

リュウジ

何回かフライパンをあおったら、味の素と黒こしょうを入れます。

“東山”

町中華的な味わいになりそう。

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リュウジ

さらに何回かフライパンをあおって、最後にレモンを搾ったら完成です!

“東山”

見た目は完全に中華料理屋のホイコーロー!

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お皿に盛り付ける

“東山”

これ、分量も作りやすいし簡単ですね。大盛りごはんと一緒に食べたい!

リュウジ

さすが東山さん、めっちゃうまそうに作ってくれました。

“東山”

生のキャベツを入れるとフライパンの熱が奪われるじゃないですか。このホイコーローはレンチンで油通ししているから、それがないんですよね。食べる前からキャベツがシャキシャキなのが伝わってくる!

東山さんのうますぎる食レポにリュウジさんもびっくり!

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リュウジ東山

いただきます!!

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“東山”

…あー!めちゃくちゃうまいな、これ。がっつりした感じなのに上品さもあって、ごはんも酒も進む味。レモンの酸味が味をまとめています。

リュウジ

レシピを作ったとき、最後になんかちょっと足したいなと思って。レモンを足したら味がまとまりました。

“東山”

豆板醤やオイスターソースも入っているけれど、味の印象は「塩味」なんですよね。あと、粗挽きの黒こしょうとレモンが合わさることで、すごく上品な香りになってる。普通、豆板醤で辛みをつけるときは黒こしょうを使わないんですよね。だけど黒こしょうを重ねたことで、塩味が強調されています。3口くらい食べた後から来るこの爽やかな豆板醤の辛味、めっちゃ気持ちいいです。

リュウジ

東山さん、食レポがうますぎる…!

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“東山”

豚こま肉に片栗粉を揉みこんだことで、お肉に味がしっかり絡んでいますね。お肉とキャベツを一緒に食べることによって、全体に調和が生まれる。豚こま肉なのにすごくしっとりしていて、まったくパサついていないし。

リュウジ

東山さんにそう言ってもらえると自信になります。

“東山”

キャベツの油通しがレンチンでできるのは革命ですよ。あんなに簡単なのに、こんなにキャベツのシャキシャキ感が出るなんて。

リュウジ

褒められすぎてどうしたらいいのかわからない(笑)。

“東山”

本当に感動しています!

東山さんのシンプルさと、リュウジさんの調味料の重ね方

“東山”

リュウジさんのレシピは、誰でも家庭で作れるくらい簡単なのに仕上がりがお店レベルなんですよね。僕も時短レシピを考えるけど、このクオリティは絶対に出せません。

リュウジ

東山さんのレシピはシンプルでミニマムで、無駄が削ぎ落されているんですよね。僕は調味料を足して足しておいしくするけど、東山さんは逆で、引き算のレシピなんです。前編で作ったえび炒飯も、最低限の調味料でおいしくなってた。

“東山”

たしかに真逆ですね。僕は逆に、リュウジさんの調味料の重ね方が思いつかないんですよ。リュウジさんの調味料使いって、けっこうセオリーから外れているじゃないですか。たとえばこのホイコーローの豆板醤+黒こしょうというのはセオリーではないし、オイスターソース+豆板醤もけっこうめずらしい。

リュウジ

たしかにそうかも。僕、一時期すごく塩とオイスターソースの組み合わせにハマっていたんです。オイスターソースって醤油ほど主張しないし、魚介の旨味が立つから塩と両立するんですよね。だからこのレシピも、塩とオイスターソースをベースにして、豆板醤を少しだけ足してみました。

“東山”

普通は、オイスターソースを使うときはオイスター主体の茶色い料理にしがち。だから、塩味でありながらオイスターソースがうまく下支えして味を豊かにしてくれるというレシピは貴重なんです。

リュウジ

たしかに、このレシピはオイスターソースがないとちょっと単調すぎる。

“東山”

塩が尖りすぎちゃうんでしょうね。塩とオイスターソースでバランスを保っているからこそ、レモンの酸味が効いてくる。お酢じゃなくてレモンというところもいいですね。

リュウジ

お酢よりレモンのほうがツンと来ないし、フルーティーさが加わるので。

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“東山”

リュウジさんって、年間で言ったらものすごい数のレシピを開発しているじゃないですか。膨大なレシピ開発をしているからこそ、こういう調味料の組み合わせを見つけるんでしょうね。すごく味に厚みがある。

リュウジ

いや、よくコメントで「薄っぺらい」って言われますよ(笑)。

“東山”

いや、これは誰にも真似できないレシピです。リュウジさんが積み重ねてきたものの集大成ですよ。

最近ハマっている調味料は…

リュウジ

最近ハマってる調味料とか調理法ってあります?

“東山”

豆板醤を火入れせずに使うことですね。この前、豆板醤と味の素、レモン汁、ごま油を混ぜて、春菊と和えてサラダにしたら、めちゃめちゃおいしかったです。

リュウジ

炒めた豆板醤と炒めない豆板醤って、味がまったく違いますよね。火鍋のスープとか麻婆豆腐でもそうなんだけど、炒めてからスープに入れるのと、炒めずに入れるのとではまったく別の調味料になる。炒めない豆板醤もフレッシュ感があっていいですよね。

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リュウジ

僕が最近ハマっているのはお茶漬けの素かな。この前、お茶漬けの素で冷製パスタを作ったんです。冷やした麺にお茶漬けの素をかけて、オリーブオイルで和えるだけ。余裕があったらツナ缶と水にさらした玉ねぎを入れてもいい。たったそれだけで、ものすごくうまくて。

“東山”

それはめっちゃうまそう!

リュウジ

最近はお茶漬けの素とか麻婆豆腐の素とか、いかに既製品をうまく使うかが楽しくなってきました。コンビニの新商品とかチェーン店の新メニューも、食べるたびに「負けられねぇな!」って燃えるんですよね。

“東山”

すでにこれだけの実績があるのに、まだその負けん気があるのがすごいですね。

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“東山”

それにしても、お茶漬けの素とオリーブオイルの組み合わせって斬新ですよね。どっちも昔から知られているのに、それを組み合わせたレシピは見たことがない。

リュウジ

あったかいパスタにお茶漬けの素を使うレシピは以前からあったみたいなんですけど、冷製パスタはないんですよ。そもそも、お茶漬けの素が水で溶けることもあまり知られていないから。

“東山”

そっか、冷やし茶漬けとかありますもんね。

リュウジ

そうそう。知られていないけどおいしいから、これは僕が発信したらみんなやってくれるんじゃないかと思って。僕ね、おいしいものをみんなと共有したいんですよ。だから自分のレシピだけじゃなく、他の人のレシピやお店のメニューでも、おいしかったらぜんぶ発信しちゃう。

“東山”

わかる。僕も一緒です。

リュウジ

東山さんの料理ってめちゃくちゃおいしいじゃないですか。だけど東山さんって、インスタントラーメンやチェーン店のメニューのことも「おいしい」って発信してますよね。そこがいいなと思っているんです。「インスタントより俺の料理のほうがうまい!」ってならないところが。

“東山”

僕は無類の食いしん坊なんで。おいしいものが大好きなんです。

リュウジ

そういうスタンスに共感するので、これからも仲良くしてほしいなと思います。同じ86年生まれとして。

“東山”

よろしくお願いします!

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取材・文:吉玉サキ
撮影:村上未知