なすとみょうがのすだち和え/焼きなす/なすの揚げ浸し

五感をひらくレシピ #6

2020.08.28

旬の食材を使った「五感をひらくレシピ」を、自炊料理家の山口祐加さんに教えてもらいます。第六回のテーマは、この季節毎日でも食べたくなる「なす」。そのまま食べる、焼く、揚げる…。調理法ごとに食感が変わるなすの魅力を、山口さんが余すことなく教えてくれました。読むとすぐ作りたくなるレシピばかりです。


サクサク、とろとろ、ふわふわ。料理の仕方によって食感を変える「なす」は、夏の大定番。食感だけでなく、スポンジのように味がよく染み込むのもなすの特徴。夏の暑い日、冷蔵庫に入ったキンと冷えただしの中に浸かった揚げなすを想像するだけで、帰り道を急いでしまう。

……と書いたものの、実は数年前までなすが食べられなかった。

子どもの頃の私には、なすのふにゃっとした食感と、さほど味がしないところが魅力的には思えず、「嫌いな野菜」に仲間入りしたのだ。ところが数年前の夏になすの揚げ浸しを食べたとき「どうしてこんなにおいしいものを今まで食べずに生きてきたのだろう」と思ったことを覚えている。それから今まで食べてこなかった分を取り戻すかのように、夏場は毎日と言っていいほどなす料理を作っている。

きめ細やかななすの肌には、どんな料理の味もおいしく染み渡る。大好きななすを食べるために料理しているのか、なすに染み込ませる味つけを存分に味わうために料理しているのかわからなくなる。いずれにせよ、なすは夏野菜の万能選手なのだ。今回はそんななすを使って3種類の調理法のなすをご紹介したい。

なす

最近、なすは定番の千両なすだけでなく、長なす、水なす、米なす、とろなすなど、さまざまな種類がスーパーに並ぶようになってきた。定番以外をときどき買ってみたくなるが、万能さでいえばやっぱり千両なすを選んでしまう。

五感ポイント・目で楽しむ

全体的に黒々しく、皮にハリがあって、ぐっと抑えてもぱつんと跳ね返されるようなものを選ぶ。なすの肌触りは赤ちゃんのようにすべすべで、気持ちがいい。ヘタのところにあるトゲがピンとしているものも鮮度の良い証。

夏野菜はまじまじと観察するとかわいらしい見た目のものが多い。光が当たった時、紫と黒の間のように見えるなすの色はとてもきれいだと思う。

なすとみょうがのすだち和え

揚げや焼きなどの定番なす料理に行く前に、まず食べてもらいたいのが「生なす」。さらっとした舌触りのなすに味が馴染んで、玄人らしい和え物になってくれる。

なす1本を縦に切り、さらに1cm幅ほどに斜めに切る。塩をひとつまみ加え、全体を手のひらで優しく混ぜ合わせる。

なすの水分を拭き取る

5分ほど置いてから表面の水分を拭き取る。同じようにみょうがも縦半分に切ってから薄切りにし、季節のすだちを絞って和えた。

なすとみょうがのすだち和え

油やごま、醤油などいろいろ加えてみたくなるのだが、まずはこのまま一口食べてみてほしい。さくさくとふにゃふにゃの間の食感のなす。みょうがのほろ苦さとすだちの香り、食べているだけで涼やかになるような味。食べ疲れない料理は夏にうれしい。このままそうめんに乗せたり、醤油を加えてご飯に乗せて食べるのもおすすめだ。薬味もみょうが以外に、大葉や青ネギと変えてみるのも楽しい。

焼きなす

焼きなすのおいしさといえば、焦げた皮の燻された香りだと思う。けれどお家で網を使って丸ごとなすを焼いてくださいというのは、道具もない人が多いだろうし、熱い皮を剥くのもなかなかむずかしい。

2つの切り方で実験

なんとかしてあの香ばしい香りを再現できないかと、2つの切り方で実験してみた。

一つは皮付きのまま輪切り。もう一つは先に皮を剥いてしまって丸ごと焼きだ。
油を吸ってしまうと焼きなすらしくなくなってしまうので、油を敷かずにフライパンになすを入れる。

蓋をし、弱めの中火で1分半〜2分に一度動かすくらいで、焼き目がつくように焼く。4〜5分焼くと表面に焼き目がつく。

もう一つの丸ごと焼く方は、もう1分くらい追加で焼きたい。

フライパンでなすを焼く

焼きなす

お皿に盛っておかか醤油で食べてみた。切って焼いた方はフライパンに触れる面積が多い分、表面がカサっとした。

五感ポイント・香りを楽しむ

一方、丸ごと焼いたものは、口に運ぶとなすの塊が一瞬にして形が崩れて水になってしまうくらいにジューシー。見た目も堂々としていて様になる。しっとりした口当たりで、皮目を焦がした焼きなすには敵わないがそれに近い香りもある。二口目には鼻ぎりぎりになすを近づけて、香ばしい香りを胸いっぱいに吸い込もう。

この作り方なら見た目も味もよく、熱いなすの皮を急いで剥いてやけどする心配もないので作りやすい。

なすの揚げ浸し

食卓の人気者・なすの揚げ浸し。油を吸ったなすはお肉レベルの満足度があり、「明日の分も」と思って作ってもすぐ食べてしまうので、毎回「倍量作ればよかった…」と後悔する。

なすに切り込みを入れる

なすは縦半分に切り、皮目に2mm幅の切り込みを入れる。無心で切り込みを入れる作業が好きで、無限に続けたくなる。頭は働かさずに、身体任せに切っている感覚になると、とても気持ちがいい。

五感ポイント・耳で楽しむ

フライパンに大さじ3の油と、切り込みを入れてから食べやすいサイズにきったなす2本を入れる。少しずらして蓋をし、中火で5〜6分揚げ焼きする。少しずつ焼けてきたときのじゅわじゅわする音に耳を澄ませよう。油はなすが一旦全部吸ってしまうが、またなすから油が戻ってくるので追加しないで大丈夫。
火入れしているあいだに3倍濃縮のめんつゆを大さじ2、水大さじ4の漬けつゆを用意しておき、揚がったらすぐつゆにつける。

めんつゆにつける

時間が美味しくしてくれる料理は、明日の自分へのささやかで大きなプレゼント。

なすの揚げ浸し

へなへなになって、つゆの旨味をこれでもかと吸ったなす。クリーミーな口当たりはデザート級のおいしさ。箸が止まらないとはこのことを言うのだ。

冷やし中華にアレンジ

最後に、冷蔵庫にあった中華麺を見て、ひらめいてしまった。漬けておいたつゆに、黒酢(お酢でも◎)を足して冷やし中華に。今回使った食材のみょうがとすだちも乗せてみた。中華料理屋でも蕎麦屋でも出てこない、極上のおうちご飯が完成して、一人小躍りしながら食べた。


これからは秋なすもおいしいシーズン。思う存分になすを味わって季節を楽しみたい。

山口祐加

自炊料理家、食のライター。共働きで多忙な母に代わって、7歳の頃から料理に親しむ。出版社、食のPR会社を経て2018年4月よりフリーランスに。日常の食を楽しく、心地よくするために普段は一汁一菜を作り、ハレの日は小さくて強い店を開拓する。料理初心者に向けた対面レッスン「自炊レッスン」や、セミナー、出張社食、執筆業、動画配信などを通し、自炊する人を増やすために幅広く活躍中。好物は味噌汁。

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