アジの塩焼き/アジのりゅうきゅう

五感をひらくレシピ #32

FOOD
2023.07.24

「五感をひらくレシピ」を、自炊料理家の山口祐加さんに教えてもらいます。今回のテーマは、「アジ」!やってみると意外と扱いやすく、栄養もたっぷりとれる魚料理。ぜひチャレンジしてみてくださいね!


今回の食材:アジ

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今までの五感をひらくレシピでは野菜を紹介してきたが、今回はアジの料理を二つご紹介したい。アジは初夏から夏にかけてが旬といわれ、身がぷっくりと太ったアジを見つけると今年もこの季節になったなぁと感じ入る。
魚はもちろん、処理済みのものを買っても、スーパーや魚屋さんでさばいてもらってもいい。でもせっかくなので、最後にさばき方も載せてみた。やってみると結構楽しいので、時間がある人はぜひやってみてほしい。

アジの塩焼き

アジの塩焼きというと「魚焼きグリルで焼くのか…洗い物が面倒だ…」と思われがちだが、フライパンでも大丈夫だ。魚焼きグリルの、直火で焼いた時にしか出ない香ばしさには若干劣るかもしれないが、フライパンでも十分おいしく焼ける。

アジはできるだけ新鮮なものを選びたい。目が透き通っていて、キズのついていないものが良い。私が住んでいる茅ヶ崎は、朝に相模湾で獲れたアジが手に入るので、魚好きには最高の住処だ。

魚料理はなぜか苦手に感じる人が多いが、肉より火が通るのが早く、実は時短料理に向いている。さらにDHAなど魚介類にしかない栄養素もあるので、たまには家で食べることを全力でおすすめする。

では、塩焼きを作ろう。

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まずさばいたアジに軽く塩をふる。冷蔵庫で10分ほど置き、表面の水分をキッチンペーパーで拭き取る。こうすることで魚の臭みが取り除ける。

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フライパンにお好みの油(ごま油や米油など)を入れ、アジをのせる。試作時は忘れていたのだが、頭を左にした状態を表面として皿に盛り付けたいので、裏面から焼き始めると何度もひっくり返さなくて済む。

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あとはできるだけ触らずに、表裏合わせて中火で10分ほど焼く。

アジは肉のように平らではないので、時々フライパンが当たっていない場所をヘラで押し当てるようにして焼くと、きれいな焼き目がつく。この時、魚の状態をよく見て、火が強そうであれば弱める。自分の感覚を頼りにやってみよう。

焼いているうちにアジのいい香りが漂ってくる。焼く間に大根おろしを作り、皿にのせる。

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あとはお好みで醤油を大根おろしにつけ、熱々のうちに食べる。身が驚くほど柔らかく、フライパンでも十分おいしく作れるよ!と誰かに言いたくなった。

新鮮な魚を買ってきて、塩焼きにする。すごくシンプルな料理だけれど奥が深く、贅沢な体験だなと思った。

アジのりゅうきゅう

りゅうきゅうとは大分の郷土料理である。魚に醤油、酒、みりん、ごま、しょうがなどで作る甘辛いたれと、薬味を合わせてつけ込み、おつまみとしてそのまま食べたり、ごはんと一緒にかきこんでも大変おいしい。大人も子どもも満足できる、日々の料理にぴったりで今まで何度作ってきたかわからない。

りゅうきゅうはたれの味が濃いので、淡白な魚よりもアジやカンパチ、カツオやマグロなど脂ノリの良い魚がよく合う。

新鮮なアジはお店の人に刺身にしてもいいか聞いて、OKであれば自分でさばいてもいい。(もちろん一口サイズに切ったお刺身で料理してもOK)

すりごまと「みりん:醤油」=「1:1」でタレを作り、刺身に和える。みりんのアルコール分を飛ばしたければ、レンジで30秒ほど加熱する。その場合は、冷まして使うと良い。

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ここにみょうがや大葉などお好みの薬味を加え、10分程度おいて味をなじませる。なじませる前に待ちきれなくて一切れ食べちゃうほど、大好物。

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甘辛のタレと薬味の爽やかな風味、コクのあるごまが加わることにより、アジの刺身が一気にごちそうになる。

作りたてはプリッとした食感だが、一日置くことで水分がぬけ、ねっとりとした食感に変わる。たくさん作って二度楽しむのもいいが、だいたいは箸が止まらず残すことができない。

大人は日本酒とともに、子どもは白ごはんと一緒に食べられる、家族みんながうれしいおかずだ。

アジのさばき方

魚は上手にさばけると達成感があるので、時間がある週末になると小さめの魚を買ってきてはさばくのが趣味になった。中でもアジは小さすぎず大きすぎず初心者でも扱いやすい。わかりやすさでいえばYouTubeの動画などを観た方が早いと思うので、ここではざっくりとご紹介する。

1. ぜいごを取り除く

まず「ぜいご」と言われる尾の付け根の側面にある、とげ状の部分を取り除く。尾びれ側の根本から包丁を水平に動かして、少しずつ前に進めると案外かんたんに取れる。

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ちなみにこのぜいごはスズキ目アジ科アジ亜科の魚だけが持つのが特徴で、他の魚には見られない。

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2. 内臓を取り出す

表裏のぜいごが取れたら、肛門あたりから包丁を入れて、包丁の先を使いながら内臓を取り出す。

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3. よく洗って水気を拭き取る

お腹をよく洗い、血を取り除く。その後、キッチンペーパーで水気を拭き取る。
頬肉や頭の肉も食べられるので、塩焼きなどの場合、頭は落とさずにこのまま料理する。

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4. 三枚おろしにする

刺身にする場合はまず三枚おろしにする。

頭を落としてお腹をよく洗ったら、キッチンペーパーで水気を拭き取り、これ以降は水洗いしない(水で洗うと魚の身が白っぽくなる)。

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背中→お腹の順番で包丁を入れ、包丁の先が背骨にあたってゴリゴリっとした感触を感じられたらうまくいった証拠。

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尾びれの近くに包丁を入れ、尾びれをしっかり掴んでトントンと包丁を頭の方に向かって動かすと身が取れる。

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これを反対側も繰り返す。

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3枚におろしたら、包丁ですくうようにして腹骨を取る。皮をとって、背骨の細かい骨の部分を包丁で薄く切り、これで完成(骨抜きを使ってもいいが、我が家にはないのでこのやり方)。

私も最初は上手くさばけなかったけれど、アジと包丁の接地面を目でよく見て手の感覚を研ぎ澄ませて続けるうちに、あるタイミングでコツを掴み、そこからはすんなりとさばけるようになった。

料理は、自転車が漕げるようになるような感じで、動作を身体に記憶させ続けることによりできるようになると実感する。五感をひらいて料理する楽しさは、普段頭を使いがちな自分が、身体で感じとることができるのかと知ることができるところにもあると思う。

魚は野菜と同じように旬があり、旬の時期以外は食べられないものも多くある。旬ならではのおいしさを、五感をひらいてとことん味わおう。

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