
漬物ビギナーでも簡単!重信初江さんが教える基本の漬物とアレンジ
一品で食卓に旬を添えることができるお漬物。今回は「漬物名人」の重信初江さんが、おいしくて簡単に作れるお漬物の作り方を教えてくれました。紹介するのは、きゅうりとなすの浅漬けと、浅漬けを使ったアレンジレシピです。アイスム読者を招き、イベント形式でお漬物作りをレクチャーしてくれました。聞き手はアイスムの人気連載『旬を楽しむ』を手がけ、『はじめましての旬レシピ 忙しくても、時間がなくても、季節のものを味わいたい!(Gakken)』が好評発売中の フードライター・白央篤司さんです。
基本のきゅうりの浅漬け

きゅうり2本に対して、粗塩小さじ1/3、昆布茶小さじ1/3、酢小さじ1/2を使用。アレンジ用にコチュジャンも
<レシピはこちら>
重信:漬物でもっとも重要なのはお塩。しょっぱい塩で作ればストレートな塩味が感じられ、シママースなどのいい塩はまろやかすぎてかえって物足りないことがあります。どんな塩を使うかでだいぶ味が変わってくるので、自分好みのものを見つけましょう。
白央:重信さんはどんなお塩を使っていますか?
重信:私はよく「赤穂の天塩」を使います。粗塩の中ではしっかり塩味を感じられるので好きです。お漬物のときは粗塩など、精製塩ではないお塩を使いましょう。

きゅうり2本を5~6mm幅のななめ切りにしてポリ袋に入れ、粗塩、昆布茶、酢を加える。お好みで千切りにした生姜を入れてもOK
白央:お酢はなぜ入れるのでしょう?
重信:お酢を入れることで水分が出るため、早く漬かる効果があります。殺菌作用があるし、味もなんとなく引き締まりますよ。このくらいの分量では酸っぱくなることはありません。
白央:昆布茶は入れなきゃだめですかね?
重信:今の人はみんな舌が旨味に慣れているので、昆布茶を入れたほうが安心する味になります。もっとナチュラルにしたいなら、出汁昆布を細かく切って入れるのもおすすめです。

ビニール袋の口を結び、軽く揉む
重信:私は便利なのでビニール袋を使います。「食品用」と記載されているビニール袋を選んでくださいね。ビニール袋がないときは、きゅうりと調味料をボウルに入れて、ラップ越しに重しをしてください。
白央:そんなにぎゅうぎゅうと揉むわけではないんですね。
重信:軽く揉むだけで十分。あとは冷蔵庫で寝かせます。そのうちきゅうりから水分が出るので、気が付いたタイミングで冷蔵庫から出して、ぎゅっと空気を抜いて袋の口を結びなおしてください。
白央:袋の口を結びなおすのがポイントなんですね。
重信:その通りです。その際、必ず味見をしてください。しょっぱかったらお酢かお水を足し、逆に塩味が足りなかったらお塩を足しましょう。

冷蔵庫で半日寝かせたものがこちら
重信:半日ほど寝かせれば完成です。保存できる期間は、本では控えめに3~4日と書きがちですが、実際は冷蔵庫に入れておけば1週間程度は保ちますよ。
白央:おいしそう!
重信:飽きたらオリーブオイルやごま油、醤油などを少量かけてアレンジしてください。
きゅうりの浅漬け(コチュジャンアレンジ)
材料&用意するもの

きゅうりを厚めの輪切りにする
重信:応用編はこんな感じでコロコロと厚く切ってみましょう。薄切りに比べて漬かるのに時間がかかりますが、昼に作れば夕飯には間に合います。
白央:ななめ切りと輪切りの他にも、いろいろな切り方があるんですか?
重信:他には棒切りや乱切りもあります。切り方を変えることによっていろいろな食感を楽しめるのも自家製の醍醐味ですね。

ビニール袋にきゅうり、粗塩、昆布茶、酢、コチュジャンを入れ、袋を揉む。冷蔵庫で寝かせ、ときおり空気を抜いて袋の口を結びなおす。
重信:工程は基本編とまったく一緒で、コチュジャンを足しただけ。

半日ほど漬けたものがこちら
重信:コチュジャンは漬け汁に混ざるので、そんなに辛くはありません。もっと辛くしたい方は、食べる前にコチュジャンを足して和えてください。
基本のなすの浅漬け

ボウルにビニール袋をかまし、水150mLを入れて、塩小さじ2を加えてよく溶かしておく。なす3本を5~6mm幅の半月切りにし、塩水に入れる
<レシピはこちら>
重信:以前のアイスムの記事ではなすを輪切りにしましたが、今回は炒め物にアレンジするので半月切りにします。そのほうが炒めたときにペチャっとしないので。塩水ができたら、なすを切りながらどんどん入れていきましょう。
白央:きゅうりは調味料だけで漬けたのに、なぜなすは塩水に漬けるんですか?
重信:なすはアクが強いため、塩水に漬けないと茶色く変色してしまい、味も苦くなってしまうんです。

空気を抜いて袋の口を結び、冷蔵庫で寝かせる
重信:10~30分経つとかなりしんなりしてくるので、空気を抜いて袋の口を結びなおしましょう。重要なのは、きゅうりと違って袋を揉まないこと。なすは揉まないほうが、色がきれいに仕上がるんです。
白央:袋の口を結びなおすときは、なすが水面から顔を出さないようにするんでしょうか?
重信:その通りです。なすの顔が出ちゃうと、出ている部分だけアクで変色してしまうので。きゅうりは多少顔が出ていても漬かるんですけどね。

食べる分だけ絞り、器によそう
重信:絞るとなすが少し透き通った感じになります。アク止めのミョウバンなどを入れていないので、食卓に出したらなるべく早く召し上がってください。生姜やコチュジャンを入れるなど、お好みで自由にアレンジするのもいいですよ。
なすの浅漬けと豚肉の炒めもの
材料

豚こま切れ肉(もしくは肩ロース)150gに、酒大さじ1、片栗粉小さじ1、塩こしょう少々を揉みこむ。フライパンに油を熱して、豚肉をほぐしながら中火で2〜3分炒める
重信:豚肉は表面をコーティングしたほうがおいしいので下味をつけます。フライパンを温めたら、ほぼ火が通るまで豚肉を炒めましょう。

なすの浅漬けを絞って加え、1~2分炒める
重信:なすは軽く絞って入れてください。ぎゅっとかたく絞りすぎないように注意して。
白央:お漬物を炒める良さってなんでしょう?
重信:特になすはそうなんですけど、たとえば麻婆茄子を作るときってなすが尋常じゃないくらい油を吸うじゃないですか。大さじ4くらいの油もぜんぶ吸っちゃう。だけど浅漬けにすることで、余分な油を落とすことができるんです。火が通るのも早いから時短にもなります。
白央:生のなすを炒めるのと、なすの浅漬けを炒めるのとでは、どんな違いがありますか?
重信:食感がまったく違います。なすの浅漬けを炒めると、生のなすよりもハリのあるしんなり感になるんです。

醤油を少々加え、大葉5~10枚をちぎり入れて軽く炒めあわせる
重信:大葉は最後にトッピングしてもいいんですが、私は完全に加熱したほうが味が馴染んで好きです。わさわさ入れて、クタッとなるまで炒めちゃう。

器に盛ったら完成!
重信:なすは淡白でなんにでも合うので、豚肉の代わりに鮭を使ってもおいしいです。もっとボリュームがほしい方は、長ねぎや玉ねぎ、きのこなどを加えてみてください。
地域や季節によっても違う。奥が深いお漬物の世界
重信:白央さんは、自分でもお漬物を作るんですか?
白央:はい。はじめて浅漬けを作ったとき、なんだか自分がすごく料理上手になったようでテンションが上がりました。重信さんは中学生のときに漬物の道を志したそうですが、おいしい漬物がおうちにある環境だったのでしょうか?
重信:いや、そんなこともないんですよ。でも、とにかく漬物を食べるのが大好きでよく作っていました。
白央:よく漬ける食材はなんですか?
重信:キャベツが多いです。撮影でキャベツを使うときって、緑のきれいな部分だけ使うから芯の部分が余るんですけど、芯こそ甘くておいしいんですよ。白菜もそうなんですけど。にんじんとかきゅうりとかセロリの葉っぱとか、余った野菜はぜんぶまとめて浅漬けにします。
白央:ミックス漬けみたいな。漬けるのが難しい野菜ってありますか?
重信:たとえば里芋など、生で食べない野菜は難しいと思われがちですが、茹でてから漬けるとおいしくできます。逆に、アクのない野菜や生で食べられる野菜はなんでも簡単に漬けられますね。

白央:日本でも地域によっていろんな漬物がありますよね。たとえば奈良漬けとか。
重信:奈良漬けにクリームチーズを合わせるとおいしいんですよ。
白央:わかります。僕は、奈良漬けをフリットにするのが好きです。
重信:味の想像がつかない!私も旅先で変わった漬物があると買っちゃいます。青森に「すしこ」というもち米の漬物があるんですけど、これがおいしいんですよ。
白央:漬物って地域によっても違うし、季節によっても違うからおもしろいですよね。
重信:そうですね。たとえば、春なら行者にんにくの漬物がおいしいです。醤油、唐辛子、酢、砂糖で漬けるの。
白央:夏は生姜とか?
重信:そう。生姜の漬物はピクルスみたいに、甘さ控えめの漬け汁を煮立ててかけるのが好き。かたまりでゴロゴロ漬けてます。
白央:梅干しも漬けますか?以前は3回干しが一般的でしたが、最近は気温が上がりすぎているため、「2回干しでいいんじゃないか」なんて声もあるみたいですね。
重信:梅干しも漬けます。たしかに、気候の変化によって漬物も変わってきていますよね。野菜の旬も、物によっては前倒しになっているし。柔軟に対応したいものです。
参加者の皆さんによる試食&交流会

今日紹介したお漬物とアレンジ料理を参加者の皆さんにも食べていただきました。
試食した皆さんからは
「全体的に塩分控えめで、お漬物なのにサラダみたいにパクパク食べられます。」
「きゅうりの浅漬けは昆布茶の旨味が効いていて、昆布茶を入れるだけでずいぶん違うんだなと感じました。」
「なすの浅漬けの炒め物がすごくおいしい!油っぽくなくてさっぱりしています。」
などの声が上がりました。

会場では重信さんと白央さんの書籍を販売

試食のあとは交流会。参加者の皆さんが重信さん・白央さんとお話をしたり、書籍にサインをもらったりしました。
今回重信さんが教えてくれたレシピは誰でも失敗なく作ることができます。「お漬物を作ってみたいけど、何から始めたらいいのかわからない」という方は、まずは基本のきゅうりとなすの浅漬けをマスターしましょう。アレンジの幅も広いですし、慣れてきたら他の野菜を漬けるのも楽しくなりますよ!お漬物ライフの一歩を踏み出し、食卓に旬を取り入れましょう。