あちこちで違っておもしろい「みんなのお雑煮」

特集・お雑煮を知り、楽しむ

2022.12.29

みなさんは「お雑煮」と聞いて、どんなものをイメージされますか?種類が多く違いが様々なことを「千差万別」なんて言いますが、日本のお雑煮ってまさにそれですね。地域ごとにざっくり共通点があるものの、家ごとに微妙に違ってくる。どれもがオンリーワンな世界、それがお雑煮。

アイスムでは今回お雑煮を特集しています。第1弾は関東地方でおなじみの「おすまし雑煮」の作り方をお伝えしました。

重信初江さんに教わる、基本の関東風おすまし雑煮

早いもので、もう年末となりました。あと少しで新たな一年。年明けの食卓を…

教えてくれたのは東京生まれの料理研究家、重信初江さん。彼女のお雑煮はかつおだしがベース、餅は焼かない派。同じ東京でもかつおと昆布の合わせだしの家もあれば、必ず餅は焼くという人もいますね。ディテールはホント、いろいろ。

シライジュンイチさんちの「こうとう汁」

関東圏から北上して新潟県に行くと、またガラッと違うお雑煮がありました。この方にうかがいます。

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教えてくれた人:シライジュンイチさん

新潟県長岡市(旧・寺泊町)出身、実家は米農家。炊飯系フードユニット「ごはん同盟」の企画執筆、試食担当。ライターとしても活動、日本酒に関しての造詣も深い。


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ーーずいぶんと具だくさん!お餅が見えないほどですね。

「お餅は入ってないんです。ゆでた餅をこの汁にからめて食べることもあるんですけどね。こうとう汁、と呼ばれています。野菜を薄切りにする『こうとうつき』という、スライサーのような道具があるんですが、それを使って野菜を切ることに由来するようです。」

ーーおお、餅なし雑煮なんですね。具材は何が入りますか?

「大根、にんじん、白菜、キャベツ、長ねぎ、豚肉、ちくわ、油揚げ、木綿豆腐です。出汁で煮て、醤油と酒で味つけしてあります。和風のミネストローネみたいな感じ。全国的にもこんな野菜たっぷりの雑煮は、めずらしいんじゃないでしょうか。」

ーー体にもよさそう。三が日の間はずっとこれを?

「はい。直径40cm超えの大鍋で前日大量に仕込み、三が日をかけて食べ切ります。野菜のシャキシャキ感がある元日のこうとう汁もおいしいのですが、時間が経ってクタクタになったのもまたおいしいんですよ。」

ジュンイチさん、小さい頃にテレビや雑誌で見る「お雑煮」なるものが、自分の家で出てくるものとあまりに違うので、こうとう汁がいわゆるお雑煮的な存在だと気づいたのは、かなり大きくなってからだった、とも教えてくれました。

泡☆盛子さんちの中身汁

さて次はグーンと南に飛びます。沖縄県ではお雑煮って食べられているのでしょうか?石垣島出身のこの方にうかがいます。

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教えてくれた人:泡☆盛子さん

沖縄県石垣市出身、京都在住。お酒と食をメインテーマとするライター。料理上手としても知られ、日々おつまみを調理・創作し、発信するSNSも人気を集めている。


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「沖縄ではお正月を始め、旧盆や誕生日などのお祝いに欠かせないお吸い物があります。それがこの中身汁(なかみじる)。我が実家でも大晦日から下準備を始め、元日の朝にいただくのがならわし。帰省できる年はこれが楽しみで、楽しみで!」

ーー盛子さん、かなり好物のよう。中身汁とは一体どういうものですか?

「“中身”とは豚の内臓のこと。『鳴き声以外は全部食べる』と言われるほど沖縄では豚食文化が盛んです。スーパーや精肉店では胃袋や大腸、小腸を5cmほどの短冊状にカットしたものが日常的に売られていますよ。」

ーーああ、沖縄の空港や市場でも豚の各部位を使った製品、よく見かけます。中身汁、味つけはどんなものでしょう。

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緑の葉がピパーチ(島こしょう)、豚モツの臭み取りに役立つ

「我が家の作り方をお教えします。まず中身(内臓)をピパーチという八重山地方特有の島こしょうの葉と共に数回ゆでこぼし、臭みをとります。その間に豚赤身肉のかたまりをゆでてだしをとり、肉は細かく刻んで具の一つにします。別の鍋で濃いめのかつおだしもとり、豚だしと合わせ、さらに干し椎茸の戻し汁も加え、中身(内臓)、豚肉、刻んだ椎茸、こんにゃくを静かに煮て、塩と少々の醤油、お酒で調味すれば完成。吸い口はおろし生姜でさっぱりと。」

ーーいやはや、手間のかかるものですね!そして複合的なうま味のクリアスープ、おいしそうだ…。

「あっさりとしながらも滋味があり、上品な味わいですよ。中身(内臓)はプルプル、むっちり、シャコシャコと小気味のいい歯応えで、噛むとほんの少し内臓らしい一抹の野趣が。内臓をこれだけ完成度の高い料理に昇華させてくれた先人に深い敬意をおぼえます。」

ーーお正月におせちやお雑煮をいただくと、「続いてきた時間」を思うこと、ありますね。祖父母やその前、もっともっと前から食べられてきた味。

「私の母は能登(石川県)から沖縄に嫁いできたのですが、半世紀の島暮らしですっかり中身汁のプロになり、亡き祖母(母からみれば姑)も母の味が大好きでした。母が多忙で私が代わりに作った年、すぐに箸を置いて『お母さんの方がおいしい』と言い放たれ、正月から悔し涙を流したのも今ではいい思い出。母が元気なうちに一回でも多く一緒に作り、グソー(あの世)の祖母がうらやむほどおいしい中身汁を作りたいものです。」

ーー素敵な思い出を教えてくださり、ありがとうございます。盛子さんの中身汁、食べてみたいなあ…。

辻村哲也さんちの日替わりお雑煮

さて、お次は親御さんが九州、ご自身は日本各地に滞在経験のある料理家のツジメシさんこと、辻村哲也さんのお雑煮です。思い出の味をベースにしつつ、三が日でそれぞれ違うお雑煮を楽しんでいるようですよ。

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教えてくれた人:辻村哲也さん

プロダクトデザイナー兼料理人。メシ通、オトナサローネでレシピ記事を連載中。著書に『付箋レシピ』がある。


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「子どもの頃は親の仕事の都合で、転居の多い生活でした。母は各地の味を日々の食事に取り入れていく人でしたが、正月の雑煮となるとやはり地元の長崎流でしたね。すまし汁に鶏肉、焼いたぶり、大根、にんじん、里芋などの根菜、椎茸、かまぼこ、かつお菜、焼いた丸餅と、具だくさんなんですよ。」

辻村さんはその味わいをベースにしつつ、もっとシンプルなお雑煮を作られているそう。

「昆布とかつおのだしで鶏もも肉を煮て、塩と醤油で味つけし、焼いた丸餅とせりを加えたものがここ数年、元日の雑煮の定番です。」

上の写真、左側にあるのは福岡のお正月に欠かせないぶりのお刺身。辻村さんは福岡で暮らした経験もあり、長崎と福岡のスタイルがお正月のベースにあるようです。ぶりのお刺身は、二日目のお雑煮用に少しとっておくのだとか。

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辻村さんの二日目のお雑煮。ぶりと焼いた丸餅、根付きのせり入りのおすまし汁

「何切れか残して塩をしておき、二日目は鶏肉の代わりにその簡易塩ぶりを半生に火を通して雑煮の具にする、という流れが気に入っています。雑煮の具材は年々シンプルになっていき、自分的最小限の構成要素に落ち着きました。せりは大人になってから知った野菜ですが、寒い旬の時期には必ず使うお気に入りです。」

実家で食べていたお雑煮が、自分好みにだんだんと変わってゆく。そういうのも、お雑煮の一つの在りようですね。

辻村さん、三日目以降は「豚汁っぽく味噌仕立てにしたり、ナンプラーとパクチーでエスニック風にしてみたり」と、より自由な味わいでお雑煮を楽しまれているとか。うーん、それもおいしそうだ! 

虫明麻衣さんちの鯛しゃぶリメイクお雑煮

さて、最後は京都出身の編集者、アイスム編集部の虫明麻衣さんのお雑煮を見せていただきます。関西といえば白味噌のお雑煮が一般的ですが…。

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教えてくれた人:虫明麻衣さん

アイスムのエディター、京都府生まれ。ライティングや企画なども担当している。大のスポーツ好きで、特にヤクルトの大ファン。


「うちは亡き母が白味噌雑煮、苦手だったんです。京都生まれで京都育ちなんですけどね。岡山出身の父と結婚してから、ここぞとばかりに父の実家のお雑煮を作るようになったそうです。」

ーー関西の人でも「白味噌雑煮が苦手」という方、わりにいらっしゃいますよね。お父さんのほうのお雑煮って、どんなものでしょうか?

「ぶりと大根とにんじん、ゆでた丸餅入りのおすましです。岡山のおばあちゃん直伝で、お餅は『レンジでチンすると楽だよ』って教わりました。私の中でお雑煮といえばこの『お魚が入ったもの』というイメージ。独特のいいおだしが出るんですよ。私はここ数年、その流れをくんだ『最高のお雑煮』を編み出して、せっせと作っているんです。」

ーーおお、それは気になる!教えてください。

「まず大晦日に、ふるさと納税でお取り寄せした鯛しゃぶを楽しみます。」

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「鯛のうま味が存分に出たおだしと、数枚残しておいた鯛で、翌朝お雑煮を作るんです。これがほんっとうにおいしい!おだしを一からひく必要もなく、青菜も前日の鍋の残りをそのまま使えるから、もう一石三鳥くらいのお雑煮で。」

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大のヤクルトファンである虫明さん、にんじんをつばめ型に抜くのがお雑煮のお決まりだそうです。

「これで東京ヤクルトスワローズの一年の浮上を祈願するんです。わが家の大事な一年の始まりの行事!」

ーーああ、願いを込めてお雑煮をいただくというのもいいものですね。虫明さん、ありがとうございました。

ちなみに関西風の白味噌雑煮、兵庫県は神戸出身の料理研究家、上田淳子さんに作り方を教わっています。ご興味がある方、ぜひチェックしてみてください。こちらの記事では島根の海苔雑煮も登場しますよ。

自分のための「白味噌雑煮」と家族でいただく「海苔雑煮」ーー上田淳子さんが作る二つのお雑煮

「所変われば品変わる」を料理で実感するのが、お雑煮です。年明けの食卓を…

インスタントで作るお雑煮もあっていい

さて、いろいろなお雑煮を見せていただきました。
最後にちょっと、とてもカジュアルなお雑煮をご覧ください。

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こちら、今私が5分ちょいで作ったお雑煮です。

永谷園のお吸い物の素と、オーブントースターで焼いた餅、なるととほうれん草を加えて作った即席のお雑煮。ほうれん草は冷凍野菜をチンしました。我ながら手軽で、かなりのおいしさ!

お雑煮は食べたいけど、おだしから作るのは大変という人もいますよね。こんな作り方も全然アリじゃないでしょうか?

日本のお雑煮、今後も広くリサーチしていきたいと思っています。みなさんの「私のお雑煮」、よかったら教えてください。

それではどうぞ、よいお年を!

白央篤司

「食と暮らし」、郷土料理がテーマのフードライター。著書に『自炊力』(光文社新書)、『にっぽんのおにぎり』(理論社)など。料理家としても活動し、雑誌や食品メーカーへのレシピ提供も定期的に行っている。

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