極太アスパラガスの目玉焼きのせ/アスパラガスの塩炒め

五感をひらくレシピ #3

2020.05.27

料理は「味覚」だけでなく、「五感」で楽しむもの。旬の食材を使った「五感をひらくレシピ」を、自炊料理家の山口祐加さんに教えてもらいます。第三弾の食材は、アスパラガス。アスパラには、実はオスとメスがあるって、知っていましたか?


普段通りの生活が送れなくなってしまって、2ヶ月が過ぎた。外食が大好きな私としては、生きがいがどこか遠く見えないところへ行ってしまった気分だ。好きなお店で友達とごはんを食べることのできない毎日が人生で訪れるなんて、考えたこともなかった。

今のところ私の大切なお店はなんとかこの時間を耐え忍んでいる。テイクアウトで営業を続けるお店には、週に一度通い、店主との新しい絆のようなものが生まれている気もする。

でも、テイクアウトとお店で食べる料理は圧倒的に違う。私たちがお店で食べていたものは、食べ物だけじゃない。厨房から聞こえる調理の音、運ばれてきた料理の香りや口に入れた温度、店の活気や店員さんとのやりとりも含まれていたのだ。

大事なのは料理の味や見た目だけではなく、五感で感じられる空気感そのもの。そう思ってから、この連載のタイトルにあるように「いつもよりもっと五感をひらいて料理をしよう。料理するプロセスをもっと楽しもう」と思うようになった。

とはいえ、そろそろ自分の味に飽きてきたし、「いつもおつかれさま」と誰かに甘やかされたい気分だ。そういうとき、私は想像するだけでにやけてしまうような、かわいらしくて、間違いなくおいしい料理を作るようにしている。

最初に紹介するのは、「甘やかし料理」の鉄板、「ゆでアスパラガスの目玉焼きのせ」。見た目から味をイメージしながら、読み進めてほしい。

極太アスパラガスの目玉焼きのせ

4月の下旬、近所の八百屋に入った瞬間、ぴかぴかに輝くアスパラガスと目があった。さっき収穫されました!と言わんばかりの活きの良さと、立派な見た目に惹かれ、すぐ購入した。

穂先までツンとしていて、小さい子どもの頭のようにかわいらしい。

これだけ立派なアスパラガスが手に入ったら、まるごと料理したい。


まずアスパラガスの下1/3ほどの皮をむき、半分に切る。皮も捨てずにとっておく。

鍋に1リットルの湯を沸かし、小さじ2ほどの塩を入れる。

このタイミングで目玉焼きも作っておく。弱火に熱したフライパンに油を小さじ1入れ、蓋をせずに弱火でじっくり焼くと黄身がとろりとした仕上がりになる。

湯が沸いたところでアスパラガスと皮を入れ、2分ほど茹でる。茹でている間、湯気からアスパラガスのいい香りが漂う。鼻を近づけすぎるとやけどするので、少し遠めに香りを楽しもう。

2分経ち、断面の白っぽさがなくなったら完成。

茹で汁は後から使うので、捨てずにアスパラガスだけを皿に盛る。その上にどどんと目玉焼きをのせ、残り少ないチーズがあったので削ってみた。


見た目がもうかわいくて、食べる前からノックアウト。

それをナイフで切って、口に運ぶ。しっとりとした舌触りとゆっくり広がるアスパラガスの香り。卵黄とチーズを絡ませて食べれば、「あー、最高においしい……」と口角が上がる。

茹でた後の湯は、アスパラガスの旨味がたっぷり溶け出していて、捨てるにはもったいない。ほんの少しの鶏ガラスープを入れ、水で塩気を薄め、水溶き片栗粉でとろみをつけてみた。


アスパラガスが入っていないのに、その旨味がしっかり感じられる澄ましスープ。このような野菜の茹で汁を使って味噌汁を作ることもある。栄養と旨味の二つを取れて一石二鳥なのだ。

アスパラガスの塩炒め

前から不思議に思っていることがある。アスパラガスには、穂先がキュッと締まったものと、バラバラとしているものの2つがある。この日もスーパーに、締まった穂先とバラバラ穂先の2種類が売っていたので、どちらも買ってきた。

品種の違いなのかと思っていたのだが、実はそうではないらしい。

調べてみると、なんと、オス・メスの違いなのだそうだ!

上の写真でいうと、左がメス、右がオスということ。メスはオスよりも、芽を出す数が少ないため、一本あたりに栄養素が多くいき、甘みが凝縮されるそう。では、アスパラガスの「オスメス炒め」を作ってみることにしよう。

まずアスパラガスの下1/3ほどの皮をむく。垂直に切っても良いのだが、おしゃれな感じがするから斜めに切る。


中火に熱したフライパンにサラダ油、ごま油小さじ1ずつとアスパラガスを入れる。

蓋をして2分蒸し焼きし、蓋を取って強火で1分間焼き目をつける。

最後に塩ひとつまみと胡椒をふり、皿に盛る。

シンプルな炒め物だが、香ばしい焼き目のついたアスパラガスは「これで十分」と思えるおいしさ。つい、肉やほかの野菜も足してみたくなるところだが、ぜひこのシンプル塩炒めを一度試してみてほしい。

オスとメスを食べ比べてみると、確かにメスのほうが甘くて旨味も強く感じられた。今まで一緒くたにアスパラガスだと思っていたものに、オスとメスがあったなんて驚いた。店頭に二種類あったら食べ比べてみると楽しいと思う。

***

最後に…。

毎日キッチンに立つ自分を、たまには甘やかしてあげましょう。「甘やかしごはん」の威力は想像以上です。もう少しでこの生活から抜け出せることを願って、おいしいものに頼りながらいきましょう。

山口祐加

自炊料理家、食のライター。共働きで多忙な母に代わって、7歳の頃から料理に親しむ。出版社、食のPR会社を経て2018年4月よりフリーランスに。日常の食を楽しく、心地よくするために普段は一汁一菜を作り、ハレの日は小さくて強い店を開拓する。料理初心者に向けた対面レッスン「自炊レッスン」や、セミナー、出張社食、執筆業、動画配信などを通し、自炊する人を増やすために幅広く活躍中。好物は味噌汁。

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