かぶのグリル/かぶのサラダ/煮かぶ/かぶの葉とじゃこの炒めもの

五感をひらくレシピ #10

2020.12.30

旬の食材を使った「五感をひらくレシピ」を、自炊料理家の山口祐加さんに教えてもらいます。第十回のテーマは、「かぶ」。焼く、煮る、生でいただく…。いろんな調理法で、かぶのおいしさを引き出します。今回もとてもシンプルで、すぐに作ることができるレシピばかりです!


一気に冷え込み、冬本番という感じになってきた。冬になると食べたくなるのが、ぷりっとした見た目がかわいらしいかぶ。かぶは日本書紀にも記述があるほど日本での栽培の歴史が長く、聖護院かぶ、あやめ雪かぶ、赤かぶなど品種もさまざまで、サラダ、煮物や炒め物、味噌汁など、活躍の場が多い、頼れる野菜だ。

と、書いたものの、実はかぶが苦手だった。実家では煮物で食べることが多かったのだが、だしを含んだかぶの柔らかい舌触りがどうも好きになれなかったのだ。

しかし、大人になってからはじめてかぶを買って、軽く塩で揉んでサラダを作り、そのまま食べた時に、ぎゅっとつまった甘味とシルクのような舌触りに目を丸くした。

なんだ、かぶって、めちゃめちゃおいしいじゃないか!と目が覚めた。

しかもかぶには、「食べてください」と言わんばかりの、立派な葉っぱもついて売っているものが多い。野菜の葉が大好物な私にとって、かぶは一石二鳥のラッキー食材なのだ。

今回は私がよく作るかぶの料理を4種ご紹介したい。

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かぶを選ぶ時は、丸くぽってりとしていて、大きすぎず、かつ小さすぎない頃合いのものを見つける。できるだけ表面に傷が少なく、葉が元気なものが良い。ぱつんと皮がはったかぶに出会えると、我が子を見つけたようなうれしい気持ちになる。

かぶのグリル

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かぶ料理の中で一番好きなものはどれかと聞かれたら、「かぶのグリル」と答える。

皮は剥かずに1cmの輪切りにし、油を多めにしいたフライパンでただ焼いていく。様子を見ながら4〜5分、あまり触らずに焼いていくだけの、レシピにするほどでもないシンプルな料理。このとき、2秒でいいので焼ける音に耳を澄ましてみてほしい。いい音……、と気付くはずだ。

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今回は醤油をちょろっとかけて食べてみた。焼き立てパンのような、しっかりとした香ばしい風味。ジューシーなかぶのうまみが口いっぱいに広がる。甘さがあるので、子どものおやつにしてもいいと思う。

最近は料理をするとき、具体的な献立を考えずに手をつけることが増えてきた。とりあえず野菜を焼く。その後、肉を焼いて付け合わせにしても良いし、冷蔵庫に残った他の野菜を追加で焼いて、酢や塩と和えてサラダにしても良い。それらをちょっとだけ残してお弁当に使うのもいいと思う。

他にも野菜を切って、塩もみまでしておくということもよくやる。例えばメイン料理を醤油味にしたなら、塩揉みにした野菜はさっぱり味のサラダに。「そうだ、昨日の酢の物を食べちゃわないと」と気付いたなら、塩揉み野菜は「刻んだ野菜」としてスープにしてしまう。

そうやって最初から味付けを決めずにいれば、急な変更にも柔軟に対応できる。簡単な下ごしらえや、シンプルな調理までしてしまうことは、次にキッチンに立つときの自分をちょっと気軽にしてくれる。全部一度にやろうとすると「あぁ体力が残ってない…」となりやすいので、リモートワークの息抜きや余裕があるときに先回りしてしまうとラクになるのだ。

かぶのサラダ

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かぶのサラダは、きめ細やかな生のかぶの舌触りを存分に味わうのにぴったりの料理だ。好きな厚さにスライスして、一枚食べてみる。甘味が強く、大根のような辛さは全く感じない。塩をして軽く揉む。塩辛くなってしまっても、洗い流せば問題ない。これだけで、水分が抜けてくたっとし、料理らしくなる。

薄く切ったものはへろへろとした食感で、少し厚めのものはかみごたえがある。4〜6等分してぼりぼりと食べるのも歯触りが良い。夏のきゅうりのようにぱくぱく食べられて、すっと体に馴染んでいく。

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今回は塩をして5分おき、水気を絞ってからオリーブオイルとレモンで和えた。お好みで大葉やパセリ、ハムやしらすを加えるとよりおいしくなる。

とりあえず塩揉みまでしておいて、その日のおかずが多くなりそうだったら、昆布の切れ端と一緒にポリ袋に入れておけば、翌日には浅漬けができる。

煮かぶ(油揚げとかぶの炊いたん)

かぶは煮物にすると全く違う顔を見せる。ゆっくり炊いたかぶは水分が多く、舌で潰せるほど柔らかくなる。昔はこの柔らかさが苦手だったのに、いつのまにか好きになっていた。

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かぶの煮物は、味が染みやすいように皮を剥く。かぶの上の方から下に向かって一気に剥くと仕上がりがきれいになる。今回はだしを吸ってくれる油揚げも一緒に煮る。

昆布や鰹節などの素材から、あるいはだしパックや顆粒だしからとっただしを鍋に400mL入れる。醤油大さじ1、みりん大さじ1/2、塩ひとつまみを加え、かぶと油揚げも一緒に入れて弱火で20〜25分、程よく煮えたら火を止める。少しだけかぶの葉を入れておくと、盛り付けるときに彩りになる。

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ほろほろに煮えたかぶから、じゅわっとだしが染み出す。煮物はほうっておいておいしくできるので、手がかからなくてラク。

外食のピカピカした料理も好きだけれど、こういう地味な味もホッとすると思わせてくれる一品だ。

かぶの葉とじゃこの炒めもの

この料理は、母がよく作ってくれた思い出の味。葉っぱのついたかぶや大根が手に入ると必ず作ってくれた、「地味おいしい」おかず。白いごはんによく合って、手が止まらなくなる。

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かぶの葉を1cmほどに刻み、多めの油でしなっとするまで炒める。そこにじゃこやしらすなどを加え、味付けはみりんと醤油を1:1。調味料を入れた時の立ち上がる湯気が、なんともいい香り。水気を飛ばすように炒めたら、鰹節を加えて、少し残った調味料を鰹節に吸わせる。ごまも一緒に加えるとなお風味豊かに。

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かぶの葉があれば、毎回このおかずを作ってしまう。オイル蒸しなんかもおいしいのだが、食べ慣れたこの味にやっぱり帰ってきたくなる。食材の切り方、調味料の配合、水加減、出来上がりの状態、全部頭ではなくて身体が覚えている。そんな数少ない料理なのだ。

この冬は丸ごと楽しめるラッキー食材・かぶの魅力を存分に味わってほしい。来年も食材そのものの素顔をしっかりと感じながら、作って・食べて、楽しい料理をお届けしたい。

山口祐加

自炊料理家、食のライター。共働きで多忙な母に代わって、7歳の頃から料理に親しむ。出版社、食のPR会社を経て2018年4月よりフリーランスに。日常の食を楽しく、心地よくするために普段は一汁一菜を作り、ハレの日は小さくて強い店を開拓する。料理初心者に向けた対面レッスン「自炊レッスン」や、セミナー、出張社食、執筆業、動画配信などを通し、自炊する人を増やすために幅広く活躍中。好物は味噌汁。

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