長芋ステーキ/長芋とそぼろのほったらかし煮/揚げ長芋の明太子がらめ

五感をひらくレシピ #20

FOOD
2021.10.26

「五感をひらくレシピ」を、自炊料理家の山口祐加さんに教えてもらうこちらの連載。今回のテーマは、秋から冬にかけてが旬の「長芋」です。煮てよし、揚げてよし、焼いてよしの長芋の懐の深さに驚きます。長芋は生でも食べられるため、火の通りをさほど気にしなくていいのも気楽に料理できるうれしいポイント!


朝晩の風が涼しくなってきて、栗やさつまいも、きのこなど秋の食材が売り場で目立つようになってきた。そこで今回のテーマは、今から冬にかけてが旬の「長芋」。

長芋は実家で食べる機会が少なかったこともあり、あまり食べることなく、30年近く生きてきた。

ところが去年、ふと買って料理に使ってみると、しゃくしゃくとした食感が良く、生で食べたり、焼いたり煮たりと、かなり幅広く使うことができて驚いた。

味が淡白だからこそ、いろんな料理に使えて飽きることがない。旬は春と秋の2回あるが、一年通して流通しており、いつでもスーパーで見つけられる。日持ちも良く、皮付きで新聞紙に包めば1ヶ月は余裕で持ってくれる。もっと早く使えばよかった!と、今まで食べてこなかった分を取り戻すかのように長芋を食べている。長芋をすりおろして作る「とろろ」は、夏場にとてもお世話になった。暑くてごはんが喉を通りづらい時でも、とろろが潤滑剤となってくれて食が進んだ。

今回はもう少しで冬到来ということもあり、温かい長芋料理を三つご紹介したい。

img_gokanrecipe_020-01

先日訪れた長野県で買ってきた立派な長芋。ずっしりと重たく、身が詰まっている。

img_gokanrecipe_020-02

ガスコンロを使っている方は、弱めの火で長芋の表面を炙ると、チリチリと小さな炎を見せながら髭が焼ける。香ばしくて、いい匂い。

長芋は火の入れ方で食感がかなり変わる。生の時はしゃくしゃくとした食感で、すりおろせばふわふわ、とろとろの食感。じっくり火を入れれば、じゃがいものように舌触りが滑らか。変幻自在の食感が長芋の魅力なのだ。

長芋ステーキ

初めましての野菜を料理するときは、焼いて食べることが多い。長芋もただ油で焼いただけでおいしくなる。

この料理は長芋の食感を楽しみたいので、厚さは1cm程に切る。オリーブオイルで両面ずつ2〜3分焼いてステーキにする。

長芋は生でも食べられるため、火の通りをさほど気にしなくていいのも気楽に料理できるポイントだ。強火で表面を焼き付けるようにして軽く火を入れれば中は半生状態になるし、弱火でじっくり火を入れればポクポクとした口当たりになる。その時の気分で調理時間を決めよう。

img_gokanrecipe_020-03

ジージーと音を立てながら焼けていく長芋。生の野菜に火を入れることで、香りが立ち、焼き目がついていく様子は見ていて飽きない。なんだか本能に訴えかけてくるような魅力があるなぁ、といつも感じる。

img_gokanrecipe_020-04

出来上がったら皿に盛り付け、塩でいただく。「しゃくしゃく」と「ほくほく」の間のような食感。少し粘り気も残っている。ケチャップをつけて食べてもおいしいので、子どものおやつにもぴったりだと思う。残ったらお弁当に入れても◎

長芋とそぼろのほったらかし煮

長芋は水分が多いので早く煮える。皮を剥いてさっと煮るだけで、柔らかい煮物が出来上がる。

img_gokanrecipe_020-05

長芋を1cmの半月切りにし、鍋に入れる。長芋の1/3量の鶏ひき肉を加える(今回は長芋300gに対して、鶏ひき肉100g)。水150mL、醤油・みりんそれぞれ大さじ1を加えて火にかける。沸いてきたら弱火にして、10分程度好きな柔らかさになるまで煮る。この間は吹きこぼれることはほぼないのでほったらかしておいてOK。アク取りはお好みでどうぞ。

img_gokanrecipe_020-06

煮物の香りがキッチンに立ち込めてくるので、いい香りを肺いっぱいに吸い込むことをお忘れなく。

img_gokanrecipe_020-07

舌で潰せるほど柔らかく煮えた長芋に、鶏肉の旨味が染み込んでいてとてもおいしい。ごはんも進むし、お酒も進む、日常のごはんにぴったりなおかずだ。

最後まで食べ切りたいほど、いい出汁が出ているので、長芋を食べ終わったらかぼちゃなどを入れて第二弾の煮物を作る。長芋は味が淡白な分、次の料理に影響しない。こういう「リサイクル料理」を恥ずかしがらずに堂々と出したらいいと思う。おいしいなら、それでいいじゃない?

揚げ長芋の明太子がらめ

長芋を揚げると、これがまたうまい。長芋のあっさりした味には動物性の旨みを合わせたい。今回は明太子を合わせてプチプチとした食感も一緒に楽しもう。

img_gokanrecipe_020-08

長芋は皮付きのまま料理する。揚げることで皮の香りがぐんと立つ。食べやすい長さに切ってから、小麦粉をざっくり絡める。そうするとより表面のカリカリ感が生まれやすい。

img_gokanrecipe_020-09

フライパンに1cmほどの油を入れ、あまり触らずに3〜4分揚げる。揚げ物は魚焼きグリルのところで油切りするとキッチンを上手に使うことができる。
この油切りの方法は、以前雑誌で見かけて「天才!」と思い、それからずっとこのやり方を続けている。バットを置く場所を空けなくて済むので、緊張感のある揚げ物をしている最中に細かいことを考えなくて良いのが助かる。

img_gokanrecipe_020-10

揚げたてをつまみ食いする時の、ニヤニヤしてしまう幸せ感は他には変えられない。

img_gokanrecipe_020-11

揚げ長芋をボウルに入れ、皮を取った明太子を好みの量加えて和える。塩が足りなければ調整し、皿に盛って柑橘を絞る。

img_gokanrecipe_020-12

小さい長芋はほっくりと、大きいものはまだサクサクとした食感が残っている。カリッとした舌触りと、ホクホクの舌触りが混ざり合い、明太子の旨味が追いかけてくる。こんなおいしいもの食べていいんでしょうか?と誰かに聞きたくなるほど。「この食材には、きっとこんな食材が合うんじゃないかな?」と思いつき、料理してみて想像以上に味わい深かった時、料理って楽しい!と思う。

今回、長芋料理を作ってみて、煮てよし、揚げてよし、焼いてよしと改めて懐の広さを感じた。今年の秋は、遅ればせながら気づいた長芋の魅力をもっと深めていきたい。

この記事をシェアする
アイスム座談会