ブリのおろし煮/フライド大根/大根葉のポタージュ

五感をひらくレシピ #22

FOOD
2022.02.08

「五感をひらくレシピ」を、自炊料理家の山口祐加さんに教えてもらうこちらの連載。今回のテーマは、「大根」です。大根をまるごと楽しむことのできるレシピ三種、ぜひためしてみてくださいね!


今回は冬真っ盛りに味がのってくる大根をテーマに、料理してみたい。

大根は白菜と並んで冬野菜の大定番だと思う。料理する人には誰しも「とりあえずこれを買っておけば安心」という野菜があると思っていて、私の冬の料理には大根が欠かせない。サラダで、和物で、炒め物や煮物で火を通して、どんな食べ方でもだいたいおいしくできるし、何より日持ちするので冷蔵庫にいてくれると心強い。

今回の食材:大根

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サラダや煮物などは定番のレシピがたくさん出ているので、今回はちょっと変わった大根の使い方をご紹介したい。

ブリのおろし煮

大根は安くて使い勝手がいいからと丸ごと買ったけれど、最後のちょっとが使いきれない……なんてことがある。そんな時、私が決まって作るのが「おろし煮」だ。これは大根をおろして、その水分ごと一緒に肉や魚を煮る調理方法。そうすることで、大根が持っている酵素がたんぱく質をやわらかくしてくれるのだ。

火が通ると大根の味も甘くなり、子どもでも食べやすい。

いつもは鶏もも肉で作るのだが、今回は同じく脂がのっているブリで作ってみた。

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鍋にブリの切り身を二切れ入れ、身がひたひたになるくらいまでの大根おろしを汁ごと入れる。この時、大根おろしの量が多くても大丈夫。醤油と酒を大さじ1ずつ加え、蓋をして弱火で6〜7分火を入れる。

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ブリの身がほろほろとほぐれ、甘さをたっぷりたくわえた醤油風味の大根おろしが絶妙に合う。

弱火で煮るので固くなったり焦げたりする心配もなく、疲れた日でも作りやすい。

フライド大根

大根を揚げ物に?と思うかもしれないが、これが意外とおいしい。大根は食べやすいサイズに切って醤油とニンニクで軽く下味をつけ、10分ほど置いておく。

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出てきた水分は捨てて、片栗粉をまぶし、160度の低温で4〜5分揚げる。

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下味だけだと薄いので、塩か醤油で塩気をととのえる。

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一口食べると、さくっとした大根の食感に驚く。噛むたびにほんのりとした甘さが感じられ、大根の香りが鼻に抜ける。片栗粉の衣は、揚げたては粉砂糖のようにほろほろ、時間が経つともっちりしてこれまたおいしい。お弁当に入れるのにもぴったりなおかずだ。

大根葉のポタージュ

大根の葉は切り落として売られていることが多いが、たまに葉付きのものを見つける。触ってみると棘がついていて、新鮮であればあるほどえぐみもある。これをどうにかしておいしく食べられないか?と考えたときに、オイル蒸しにしてからポタージュにしたらおいしそう!と思いついた。

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鍋にざく切りにした大根の葉を1本分入れ、オリーブオイルを3周ほどたっぷり入れる。葉の1/3くらいまで水を入れ、蓋をして5分中火で蒸し煮にする。

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そうすると最初は深緑だった緑色が鮮やかに変わる。なんてきれいなんだろうと思う。

ここで弱火に落とし、7〜8分、たまに蓋を開けながら、再びくたっとした深緑色になるまで煮る。

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そこへ水と鶏がらスープの素、塩を入れて10分弱火で煮詰める。

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出来上がったら、食べやすくするためにブレンダーで繊維質がほどけるまで撹拌する。

まるでブロッコリーのポタージュのような見た目で、鶏がらスープを入れたからなのか少し牛乳を入れたように白っぽくなる。塩で味をととのえて、お好みでオイルをかけていただく。

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大根の葉の滋味深い味を鶏ガラスープの旨味が下支えしてくれる、シンプルながら力強いスープだ。大根の葉が手に入った時はぜひお試しあれ。

大根の魅力は火入れや切り方によって姿をガラッと変えてしまうところ。生で食べれば水々しく、パリッとした食感があり、火を入れれば柔らかくなる。今回のようにすりおろしたりすることで、煮汁にもなれば薬味にもなる。

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生で食べる際は、うす緑色をした大根の上の方を使うと甘みが強く、下に行くにつれて辛みが強くなる。生食でも二通りの味が楽しめる。

火を入れると甘くなり、大根ステーキのように主役を張ることもあれば、肉の旨味を吸って醤油の香りをまとい、脇役になることもある。いい意味で主張しない味わいが縁の下の力持ちという感じで、みんなに愛される理由なのだろう。年中手に入る食材ではあるが、甘さとみずみずしさを味わうなら冬が一番だ。

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